takt op.Destinyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
東へ進むタクト達の前に、溢れる人の波。
再来するD2は人々の日常を食い潰し、それでもかすかな幸福は街に煌めいていた。
旅の中優しき自我を創り上げてきた”運命”に、自立と懐旧を見るアンナの瞳は、儚く揺れる。
タクトの指は、眼前の音楽を白紙の五線譜に刻みうるのか。
そんな感じの復讐するは我にあり、タクト第7話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
シントラーが叩きつけてきた地獄の真実と、その前奏たる日々の輝き、魂のうねりが激しく衝突し、心を揺さぶられるエピソードだった。
傷ついた大地に息づく土の匂い、人の営みを、しっかり描いてきたこと。
音楽が本来果たすべき祈りを、ちゃんと言葉にしてきたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
ここまでのエピソードがあればこそ刺さる、”運命”を取り巻く人達の描写であり、それを蹴り飛ばす選良気取りの傲慢であった。
いやー、許されざるよそれは本当に…。こんだけ納得できる『殺す』も久々だわ。
D2復活の兆しに、人々の暮らしは揺れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
音楽を求め、しかしその形を未だ知らない少年の指先は、がむしゃらに答えを求めてノイズを生み出す。
でもそれは、確かに触れ合い、託された祈りがあればこそ。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/ewyogpYz2P
命を選別する指揮棒と、形にならない歌を探す指先。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
洗濯物が干したまま死地となった街と、幻の繁栄に包まれたニューヨーク。
運命の宿敵たるタクトとシントラーが、それぞれ何を求めているか、どこに足場を置いているのかが良く見えるスタートである。
人類世界を揺るがしたD2の襲来、それを唯一倒しうるコンダクターの特権。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
シントラーはここまでタクトが旅し、触れ合った当たり前の”アメリカ”に、どれだけの音楽が満ちていたかを知らない。
知らないからこそ、人間の住まう土地を”ゴミ溜め”と蔑し、命の選別を行えるのだろう。
ゴミとは力も立場も違う選良であることが、シントラーの傲慢を支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
ザーガンがタクトを特別に選んだことは、そんな彼のアイデンティティを壊すことになる。
彼の拳はロッカーに叩きつけられ、破壊の不協和音を奏でる。
それは受け取ったものの重さに悩む、タクトのノイズとは違う。
タクトがひとり抱え込んだ悩みは最初、頭がおかしくなりそうな雑音として車内に満ち、素直に全てを語ることで意味を与えられて、周囲はそれを見守れるようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
対向車線、車中に逃げ惑う親子。
シントラーが踏み潰すものを、”運命”は真っ直ぐ見る。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/Mz7vQYSOuQ
都心に近づき、”This is America”といった塩梅の良いモーテルが出てきて、僕のテンションも上がるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
前回純朴に、タクトの音楽、その存在への好意を語っていた”運命”が、音楽バカが抱え込んだものを吐き出させるため、色々おせっかいしてくるのは、健気で可愛かった。
パプーと間抜けた音を出す鍵盤ハーモニカは、後に戦う獣でしかないはずの”運命”が、手ずから探し出した真心だと判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
スタイリッシュに決めすぎない、自分を特別なアーティストだと思い込まない。
傷ついた大地を巡礼する一人の旅人、そこに根を下ろした一人の人間として、音を出す存在。
何かと自分が特別だと、孤高が音楽家の生き様だと思いたがるタクトの危うさに、かつてコゼットは手を差し伸べ、今”運命”も同じことをしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
その音色は違っても、誰かを思う気持ち、それが形になる尊さは同じだ。
タクトも目の下にクマを作りながら、差し出されたものの意味をちゃんと解っている。
解っているから、目の前の存在を未だ”運命”とは呼べず、受け取った五線譜を前に真剣に悩みもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
性格がネジ曲がって見えるのは表面だけで、魂の奥底に優しさと強さを宿す主人公の、素直には進まない旅路。
それを見守ることに、僕は喜びを感じるようになっている。タクトはいい子よ…。
えっちな雰囲気になるかと思いきや首ゴキしたり、キメきらない鍵盤ハーモニカの音色だったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
どっか半音外したやり取りに、暖かな温もりと思いがしっかり宿る。
ダイアログに独自の面白さがある、それが旅の中継続されているのは、作品の強みだなー、と思う。
同時に鮮烈な”絵”の強さも健在で、せっかくいい調子に作曲してたのに突然、ペンを握る腕が赤く分解される衝撃とか、大変良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
自分の指揮を跳ね除け、勝手に暴れるポンコツ兵器。
しかし彼女こそが、明るい光の中にすっくと立っている。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/a7T0EmivWg
まどろみの中再開した父は、作曲に大事なものを初心者に教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
誰に聞いてほしいのかを、しっかり考えろ。
それは己のムジカートと向き合いきれない、新米マエストロへのアドバイスでもある。
相手の音をよく聞いて始めて、作曲も指揮も上手くいくのだ。
ニューオーリンズでそうであったように、タクトはまどろみから目覚め、閉鎖され固定された場所から歩みを進めることで、彼の音楽と出会っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
人間から漂白された音楽それ自体と向き合っていても、タクトは音楽家として人間として、良い所に行けないのだ。
日常生活を雑音と遠ざけ、孤高の演奏家になろうとする度、誰かがドアを叩いて彼を連れ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
あるいは彼の優れた耳自身が、ノイズの中に確かに息づくハーモニーを、しっかり聞き届け誘う。
捻くれるのもしょうがない、過酷な運命の中でなお、タクトは世界を音で満たすモノから、耳を塞がない。
それは演奏家として父が大事にしていたものであり、宿敵が傲慢に踏みにじるものでもあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
大衆の…というより、全人類の音楽。
生きることも、それが断たれる理不尽も、それを超えてなお生きてしまう不思議も、全部に一繋ぎの意味を与えられる、人の営為。
D2を討ち果たす物理力と繋がってしまった結果、この世界の音楽は時に、そういうイデアを失った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
力でしかない音楽に溺れ、他人との繋がりを失ってしまった”マエストロ”。
シントラーが許されざる醜悪と見えるのは、タクトの在り方を照らす歪んだ鏡、そのものだからだ。
力の尖兵たるムジカートが、どんな魂を宿しているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
死地から逃れてきた母子に、糧を分け与える”運命”を見て、恥ずかしながら落涙してしまった。
この描写を指すために、彼女は”食べるもの”としてずっと描かれてきたのだ、と思った。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/ehn61X5nwt
”運命”は腹ペコポンコツ兵器であり、闘いの報酬として人々から食事を貰い、それを腹に収めてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
与えられるばかりだった彼女は知らぬ間に、良き魂を旅路に鍛え上げ、人が与えるべきものを手渡せる側へと変わっていた。
それは食事だけでなく、音楽も同じである。
悩めるタクトを助けるために、自分で探し出し頼み込んで受け取った、鍵盤ハーモニカ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
マエストロならぬ…もしくは、人間ならぬ彼女は音楽を生み出さない。演奏もしない。
しかし奏でるものへと思いを託し、その魂に必要な糧を手渡すことは、ちゃんと出来るのだ。
紅い獣が人となり、”コゼット”がすでに”運命”であることを示す描写として、キャンディと鍵盤ハーモニカはとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
詩情と優しさがあり、喪失のかすかな寂しさとそれを超えていく靭やかな鼓動があった。
たしかに目の前に息づく”それ”を、アンナが見落としていないのも、凄く良い。
”運命”をコゼットの代理としてしか見れないまま旅立ったアンナの歪さは、見てる側としてはハラハラするポイントであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
しかしここでそれを自覚し、冷静でありながら感情的な、優しくて寂しい表情を”運命”に向けてくれたのは、安心する描写だった。
今はたとえ、新しい名前で呼べなくとも。
アンナは目の前で必死に生き、学び、独自の存在になろうとしている”運命”を、しっかり見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
その視線は、コゼットとあまりに強く結びついていたからこそ、その死を(一見)受け入れた(風を装って、その実全然整理できてない)タクトと重なっていく。
それでも彼らは三人、ガタガタ同じ車に揺られて旅をした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
同じ食事を取り、共に闘い、楽しく言い争って、護り護られ戦ってきた。
死の後になお続く復興の日々は、けして無意味なものではない。
”運命”の変化を見つめることは、それに自分たちが及ぼした影響を知ることでもある。
それは価値も意味もあるはずのもので、でも全てを腹に収めることは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
もう戻っては来ないあまりに美しいものが棘となって、眼の前の事実を拒む。
でもその戸惑いもまた、人の生きる証で、世界に満ちる音楽なのだろう。
お姉ちゃんが彼女を”運命”ともコゼットとも呼べないのは、意味あることだ
そんな営みを叩き潰す傲慢を、闇の中から追う戦士。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
久々登場レニーさんの顔が、あまりに凛々しくてビビる。
無法の荒野に正義の証を立てるべく、鋼鉄の馬を駆る。
レニーさんは、指揮棒を持った連邦保安官なんだな。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/61LMOk1RWH
早朝のダイナーはエドワード・ホッパーの絵画のように、アメリカ的日常の美しさを切り取ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
レニーさんはそういう場所を守りたいから、地図に刻まれた惨劇を、不正義の証を拾い集めているのだろう。
熱々パンケーキを齧る”運命”が、そんな景色の中問う重たい刃。
それはタクトの心をえぐり、瞳を大きく開かせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
今回はキャラのクローズアップが凄く冴えてて、心情が瞳によく宿っていた。
モーテル、ガススタンド、あるいはダイナー。
いかにもアメリカ的な情景の冴えと合わせて、物語の転換点をしっかり支えている。
コゼットの形を引き継いだ、コゼットとしか思えない少女からと別れる、コゼットの在り方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
それはタクトが愛した少女がもういない事実を、これ以上なく突きつける冷たい刃だ。
共にあった日々が、それを奪われた痛みが、それでも続いていく生が、どんなものであるか。
アンナと同じく、タクトもそれを飲み込みきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
何でもかんでも根掘り葉掘り聞いてくるポンコツ兵器が、マエストロの拒絶に宿った重さを感じ取って矛を収める仕草にも、成長を感じる。
それは嬉しくて、寂しい景色だ。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/mkLVQJSBk8
『多分朝雛タクトの処女作は、”コゼット”という題名を持つんだろうな』と、このあたりで感じだす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
D2の存在によってかき乱された世界は、彼が孤高の演奏家であることを許してくれない。
自分の目で見届け、舌で味わい身の養いにしたものを守るために、”運命”と共に片腕で戦場に立つ。
ヘロヘロになりつつ、タクトは今まで食った飯とか、手渡された五線譜とか、弱った親子連れとかのため、D2殲滅に走っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
その土に塗れた歩みには、とても静かで確かなヒロイズムがある。
クチの悪い警官のにーちゃんの、総身に宿ってるものと同じだ。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/GmPH4jq4c2
減らず口を常時叩きながら、荒れ果てた世界でも警官の責務を見失わず、交通を整理し銃を打つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
たとえD2を殺す特権を物語から与えられなくとも、その志をありふれた英雄が持っている事実を、この物語はしっかり切り取る。
そういう所が、このアニメの好きなところである。
だからシントラーの傲慢はあまりに醜悪で、見るに堪えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
作品が肯定するに足りると選び取った価値観を、踏みにじることで高める敵役。
そういう仕事に相応しい、狭い了見と身勝手な邪悪が、震える音叉に宿る。
世界を乱すノイズは、こういう場所から生まれるのだ。
疲弊した大地に、生き残るべきものと死すべきものを、人が定める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
その最初の犠牲となった、己の腕と愛する少女。
告げられた真実は憎悪となって瞳にやどり、一つの言葉を絞り出す。
『殺す』
ああ、全くそのとおりよ。
(画像は"takt op.Destiny"第7話より引用) pic.twitter.com/ZGm90WgO4y
同時に黒い復讐だけに飲み込まれて、人と世界を繋ぐ音楽の本分を忘れてしまったら、とても悲しいなとも感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
こんなクソみてぇな小物が吐き出した、クソみてぇな理不尽をも噛み砕いて、全てを楽譜に刻んで欲しい。
そう望んでしまうのは、ここまで彼らの旅を見てきたからだろう。
まーダイナシなメタ読みをすると、まだお話は七話、この段階でシントラーがラスボス担当するには、間尺が合わねーしな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
人間の格としても、タクトと”運命”の壁となり成長させるのにちょうど良くはあっても、世界の真理を問いただすには器が足らねぇ感じ。
まぁ卑賤なゲス野郎の行いでも、洗濯物干してる途中に殺された人たちの命も無念も、戻ってきやしねぇんだがな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
コイツのマッチポンプで死んでった、ようやく戻ってきた生活を必死に生きていた人達を思うと、さらに許せない度は上がる。
良い悪役だ…頼む、早く死んでくれ!
心底そう思えるのはやっぱ、傷ついてなお蘇る”アメリカ”を、色んな角度からちゃんと描けてたからかなー、とは感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
超常パワーに選ばれた少年の、運命のバトルを描くアニメなのに、どっしり地面に根を下ろして旅を描いてきたのが、ここで生きる。
あとコゼットちゃんの可憐さ、”運命”の健気ね…。
『やっぱ主役とヒロインがつえーアニメは、ホントつえーな…』と、当たり前のことを再確認しつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
己を過酷な運命に放り込んだ、邪悪な真実を前に我らがマエストロとムジカートは、いかなる戦いを挑むのか。
白紙の五線譜に、どんな音楽を刻むのか。
次回も大変楽しみです。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月17日
サブタイトルにある通り、理不尽な真実、そこから溢れる殺意がハーモニーを乱すノイズになるなら、タクトが目指すべき音楽はそこを超えた場所にあるはずで。
シントラーとの対峙を次回どう終えるかは、作品がどこを目指すか、その指針にもなると思う。