白い砂のアクアトープを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
ティンガーラ付属海洋研究所の設立と、そのための海外留学。
突如開いた未来への扉に、風花は戸惑い惹かれる。
くくるを置いて旅立つべきか、”姉”の心地よさに留まるべきか。
月はいつでも明日を照らし、海が未来につながってるなら…
そんな感じの水族館青春群像劇、最終話一個前の決断回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
くくると風花を切り離すだけの魅力ある夢を描いて、母なき少女のへその緒を切ってやるエピソードでした。
W主人公が未来を選ぶ話であり、ティンガーラ自体が主役になる回…でもあったかな?
くくるは父母を失ったトラウマが相当大きい子で、なおかつその喪失を表に立てて適切に悲しむチャンスが、なかなか無かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
甘え、支えられ、導かれる。
フラッとがまがまに立ち寄った少女に、くくるは喪失された”母”をかなりの強さで投影していたと思う。
その危うさと期待に応えようと、風花はネイルを引っ剥がし赤いガラスの靴を履いて、どんどん逞しくなっていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
職業人として一人間として、自分の成すべきことをしっかり見据えて、くくるがもたれかかれる大きな宿り木として、存在意義を見出してもいた。
そんな関係は甘く麗しいけど、同時にお互いの旅立ちを阻害しかねない危ういものでもあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
第21話見てもまだまだ未熟な部分もある風花が、人格的傾斜が固定された関係に囚われることで、本来の自分と向き合えない様子も、これまで描写されてきた。
今回くくるが飼育ではなく営業を自分の道と選ぶこと、風花が新しい夢に漕ぎ出すことで、とても”正しい”場所へと二人は、お互いを運ぶことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
でもそれは、強く繋がっていたものが剥がれる痛みがあり、悲しむべきはずじゃないのに魂の血に満ちている。
あるいはそういう愛しさを育めたからこそ、ここで手を話す決断が二人には出来るのであり、今ここにしか無い”機”を掴んでより広い場所に、漕ぎ出していけるのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
体外的な正しさとは裏腹に、しっとりと湿る内心の疼きを、上手く切り取るカメラの冴え。
そこにティンガーラ経営陣がどんな大人で、どんな夢見てるか描く筆が上手く混ざって、面白いバランスを生み出していました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
今回、雅藍堂さんが企業の部長として持ってて当然の…でも若い部下たち相手には見せようとしなかった、シビアでシリアスな顔を描かれたの、僕は凄く良いと思った。
館長が水族館を入り口に夢を育み、奇跡を引き寄せる野心を持っていたと、そのための揺り籠としてティンガーラを作ったと解ったのも、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
かつて夢を持っていた青年たちは、経験を積み重ねて立場を作り、頑なになったり気さくを演じたり、色んな顔を手に入れていく。
そんな年輪の奥にはそれでも、やっぱり青雲の志が元気に踊っていてる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
身の丈が小さかった頃には見えなかったものが見え、触れられれるようになったからこそ出来ることを積み重ねて、自分だけの譲れない夢へと、おじさん達だって進んでいく。
諏訪さんにだって、守りたい志がちゃんとある。
僕はこのアニメ、”世代”の断層と接続を書き続けてる所が一等好きなんですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
今回強く結び合っていた手を離して夢に進んでいくことで、くくると風花はまた一つ大人になる。それは何かを置き去りにしたり、風化させることではない。
見えてる世界を広げ、出来ることを増やすのは”正しい”からじゃない
それをするべきだと魂の一番柔らかい場所が囁いて、その導きに素直に進めばこそ、踏み出せる一歩というものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
そんな歩みだけが見せる、新しい景色がある。
年経た仲間たちも、みなそれぞれの物語の中でそういう歩みを経たからこそ、今いる場所、そこから繋がる場所を夢見れる。
仕事が解ってくること、辛さに耐えるタフネスを手に入れること、他人を慮る優しさを掴むこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
作中成長と描かれている事は、よく分からないと思えた異様な他者、体験、認識に己を開いて、自分を保ったまま変化し、拡大していく足場として描かれている。
なんつーかな…歳を重ねることと、若く在ることがリニアに繋がって描かれてるんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
脱皮して子供から大人、部下から上司に変態する存在ではなく、知らないこと、見えないものが当然沢山あって、一個ずつそれを理解し、迷いや苦しさも納得した上で未来に踏み出せる存在として、若人を書いてる。
その先にいる大人たちがどんな夢を持っているか、夢を持ち続けることで何が成し遂げうるかは、例えば第1クールはおじいとおばあで描かれてた部分で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
あの時老人たちに見えていた景色が、今回月光に揺れる二人には、少し近くなっていたと思う。
そんな風に、お互いの中にある異質な海を広げて繋げ、歳も性別も個性も違う存在が思いの外、繋がりうるのだと夢を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
無条件にわかり会えると描かず、他人が他人だからこその軋轢も描いた上で、行ったり来たりしながら希望を繋ぐ道を、探し示す。
そういう話らしい、最後の決断だなと感じました。
不慮の死別により幼年期を喪失してたくくるが、風花を”母”とすることで笑顔の仮面で泣いてる自分と向き合い、暖かな乳房から離してあげるまでの道のり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
そんな風に2クールの物語を見ると、第10話の段階で幼い自分自身の背中を押してた、櫂くんの成熟も際立つ感じですが。
というわけで、余裕で朝飯作って食べさせてる”距離”の描写から、今回はスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
冒頭力みのない無構えからこういう一発入れるの、やっぱ風花さんは”格”がちげーな…。
ここが色々あって辿り着いた、二人の現在地である。暖かくて、心が落ち着く。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第23話より引用) pic.twitter.com/RMnnbu951k
そんな第三の子宮から出なければ、館長がぶち上げた大構想には乗っかれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
くくるを追って向かった離島で、火を付けられた新たな興味。
第20話からくくるを翻弄した嵐の横で、風花自身の物語が実は動いている構成は、結構好みだ。
悩める”姉”の表情をちゃんと見れるようになったのは、迷子のプランクトンが自分を取り戻せた証拠だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
周囲を引っ掻き回しての凸凹旅は、未熟な少女を一段階視界が拓けた場所へと、しっかり押し上げた。
相手を見る余裕が、風花側からくくる側に移ってると判る演出はグッド。
思い返すと最序盤は、都会から来たフラフラ女の面倒を南国元気少女が見る…つう構図で、残り二話で”振り出し”に戻ってきた感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
しかし22話分の蓄積を経て、二人はもうかつての二人ではない…と同時に、魂の根っこは何も変わってない。
こういう形で”行きて帰りし物語”するのは好きだな。
くくるは将来を決める面談で、副館長の秘めたる過去を聴く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
『言えよッ! その情熱の源泉をッ!!』って感じではあるが、言わないのが彼の矜持であり、言えないのが彼の弱さでもあるのだろう。
俺諏訪さん好きだから、彼の所業に点数甘いなぁ…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第23話より引用) pic.twitter.com/V1cJ4nyEXR
飼育の仕事は楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
久々再開なったちょこは、最高に可愛い。
それでも、期待されず苦手だと思っていた人の核にあるものを覗き見て、心は揺れる。
お互いの磁場を感じながら、しかしそこから魂を引っ剥がして自分に向き合う描写が、夜景に反射して綺麗だ。
うどんちゃんの言うとおり、思い込んだら一直線で危なっかしいのが、くくるの魅力でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
でも館長との面談で思いがけず見識を広げられて、知らなかったことを知っていく面白さを、自分の中に見出してもいる。
というか、それはくくるの中にずっとあった。
風花や朱里ちゃんが、水族館から遠い立ち位置からその魅力を知っていったのとは逆の、水族館バカの世界改革。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
営業に腰を落とし、自分と真逆の理屈おばけの側にいることで、人間以外の動物に適応しすぎたくくるはもっと、人の世を知っていくのだろう。
結婚式の企画が語るように、人間に最も親しい動物としての人間に、くくるは興味と適応が薄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
人間社会に捲くりこまれた自然を扱う水族館の仕事は、シビアな経済概念が動物の生き死にを左右する場所に、常時置かれている。
諏訪さんはそういう場所を見たから、ティンガーラに来たのだ。
風花が海亀の背中にもっと広いものを見つけたように、くくるは社会と経済に新たな興味を向ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
ここら辺、もし父母とともに過ごせていたら育まれてたかも知れない、スタンダードな社会性を自力で再獲得しようとしてる感じがあって、結構好きだ。
欠けてるもの、欲しいものは人それぞれ違う。
それが誰かの中にあるからもたれかかったり、溢れてくるから支えたりしながら、二人はここまで流れてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
そんな道が、今別れようとしている。
その事実に、二人共目を瞑ろうとはしない。
静かに賑やかに、自分だけの道を自分の手で舗装していく。その力強さが好きだ。
それぞれが己の夢を載せた、会場前のプレゼンテーション。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
比嘉…相変わらずお前は面白いなぁ!
ライバルの発表を風花が相変わらずメモし続けてるのと、幹部がそれをちゃんと見てるのは良い描写だ。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第23話より引用) pic.twitter.com/hHpITvMfIz
風花は候補者で唯一水族館の外に出て、自分の夢が広がる先…顧客であり教育対象である子供を間近に捉えたプレゼンテーションを行う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
これを肯定する館長が、第16話で既にしずくんをティンガーラに迎え、親身に受け入れる描写があったのが、キラキラな綺麗事にキッチリ背骨を入れる。
環境問題の解決、動物との意思疎通。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
どれも形にすらならない見果てぬ夢だが、見ない夢は現実にはならない。
より善く実り在る未来を掴み取るために、デカいビジネスを取り回し、多角的で先進的な水族館経営に勤しむ。
夢の咲く場所を作る。
それが、ヘンテコなおじさんの抱えた夢だ。
がまがまが瓦礫になった後も、おじいの人脈がくくる達を助けるように、世代を超えて受け継がれるものは確かにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
あるいはそういうモノを残すべく、館長以下ティンガーラ経営陣は、研究所を作り顧客にアプローチ可能な企画を立案・実行し続けるのだろう。
風花がこの島で、あの離島で、あるいはこの入り江で見つけたものも、同じく何かを見つけ何かを繋ぐための、とても前向きで正しいもので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
そこに突き進む時に、自分以外の道標はいらないのかも知れない。
あるいは、正しいと解かればこそ、誰かのぬくもりにもたれ掛かるのを避けたか。
風花とくくるがそれぞれ、相手に相談せずに道を決めた上で、同じ月を見つめ、同じ幻を見るのが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
潮に流されるまま沖縄に流れ着き、壊れゆく思い出を譲れずしがみついた時代から、彼女たちはここまで来た。
己で行く末を、決められる場所まで。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第23話より引用) pic.twitter.com/G9LqK9eG34
それはとても正しく喜ばしく、力強い場所である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
それが解っていても、疼く心は柔らに湿る。
第1クール終盤から、くくるの先を行って”姉”をやってた風花が、支えてきた”妹”と同じくらい脆く、幼い存在であると見えてくる夜闇。
その湿って暖かな質感が、とても心地良い。
くくるは自分を新しい居場所に、風花を旅に送り出すことで、己のへその緒を切ったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
父母を理不尽に奪われて以来、がまがまを胎盤に自立を拒んできた、頑なな幼さ。
眩い純粋さとも繋がるその資質は、くくるの魅力として今後も残り続けるだろう。
しかし自分と同じく柔らかな心を持ち、だからこそ自分の弱さを受け止めてくれた少女に、預けていた荷物があることに、迷い道を終えたくくるも気づく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
”姉”と”妹”でいることで、理不尽で苦しい世界を生きていけた。
『お母さんのところに行きたい』と、思わなくても良くなった。
そのありがたさを身を切るほど強く感じつつも、だからこそ今、離れなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
くくるがぐずる風花の頭を撫でるのは、彼女たちの勾配が平らになった証明であり、くくるが風花を追い抜けるほど己を鍛えたからでもある。
そしてそれは、風花がいてくれたから辿り着けた場所だ。
迷子のイルカがどこに行くのか、未来は分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
親からはぐれてもなお、どこに流れ着くとしても自分は自分で、生きていけると思ったから、海は優しい幻で二人を包んだのかな、とも思う。
現代的な景色の中展開する第2クール、遠ざけられ続けてきた美しいファンタジー。
それが旅立ちを寿ぐのは、なんだか因果が巡った感じで、大変感慨深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
同じく美しい夜の海辺で、ズタズタになった心を抱きしめてもらった第13話から1クール。
笑顔の奥に相当重たく暗いものを抱え込んだ少女も、親友が帰るべき場所でどっしり待つ頼もしさを、己に引き寄せた。
あるいは風花も、何かに傷つく幼子の素顔を必死に繕いながら、親友を支え仕事に打ち込んできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
この土壇場で甘えが出るのは、大人が幾重にもまとう鎧を預けられる特別な絆が、くくるとの間にあればこそだろう。
成熟と柔弱、頼もしさと甘やかさが複雑に入り混じり、大変良い味わいである。
思えばくくるが一人で旅に出て、風花以外の人と触れ合いながら自分を思い出すことに成功した時点で、この変化は必然だったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
甘えるものと引き受けるものに役割を固定し、お互いの中に確かにある強さと弱さ…そこから生まれる可能性を固定しながら、依存を深めていく。
そういう道も多分あり得たのだ(し、その母なる暗黒を望む気持ちは、なんだかんだ僕の中で元気だ)が、そうはならなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
二人は正しく別れていくために、特別な幻の仲で泳ぎ、月光に両手を繋ぐ。
その感触を覚えていられるのなら、どこまででも進んでいけるだろう。
そんな感じのエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
第19話辺りからW主人公にグッと寄せていったお話が、一つの決着に辿り着くお話であり、彼女たちの夢を乗せる大きな船が、どんな夢で動いているかを確認する回でもありました。
”水族館”という選び取ったテーマに、どんな祈りを込めたのか。
それが照れも衒いもなく、堂々ど真ん中から語られたのは、俺は凄く良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
偉い人も大人も、夢を見る。
年をとって人生の階段を登っていっても、消えない光がある。
主役たちが道を違え選ぶエピソードで、そういう事が描けたのは、とても良いなと思った。
二人がお互いに向き合いながら、あるいは離れたからこそ見た景色の先に、出会った幻の果てに、輝く未来。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月16日
それが良いものになるのは、今回のお話の…ここに至るまでの23話でしっかり保証されています。
次回最終回、とても楽しみです。
2クール、いいアニメをありがとうございました。