ルパン三世 PART6 第10話、第11話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ロンドンの地図を血で染める、関連なき連続殺人事件。
その奥にレイヴンの気配を嗅ぎ取ったルパンとホームズは、真実とお宝を求めて動き出す。
積み重なる死体と記憶の先にあるのは、たった一つの真実。
怪盗紳士と探偵のダンスが、今終わる…。
そんな感じのPART6第1クールラスト、前後編一挙放送でレイヴン事変決着! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
合間にゲスト脚本を挟みつつ、色んな伏線と思いを積み重ねて辿り着いた決着は、納得する部分あり、意外な面白さあり、新たな謎へ繋がる導線ありで、大変面白かった。
ぶつ切りになったメインエピソードを、繋ぎ合わせて一つの絵にしていく形態もあって、PART6メインストーリーは視聴者自身が探偵となって、謎がどんな感じであったか再編成する面白さがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
これはテーマと形式を上手く噛み合わせる視聴体験で、なかなか野心的だったと思う。
TVSPで一繋ぎになってみると、また別の見え方がするのであろうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
例えば第8話で別角度からの視線が入り込んだりしつつ、リアルタイムでロンドンの景色を楽しみつつ、何が重要なファクターなのか取捨選択したり、ルパンにとって”謎”とはなにか考えたり…
どんな顔も”ルパン”になってしまう芳醇なジャンルを踏まえて、色々てんこ盛りに考えながら1クール見続ける体験は、(PART5の完璧な”ルパン”論を踏まえた上で)新しく、面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ルパンとホームズ、二人の探偵を作中に起きつつ、それを見守る視聴者もまた、物語を読む一人の探偵である。
一つの区切りがついてみると、そういう仕掛けに挑んだメタ・ミステリとしての側面があったのかな、などと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
合間に挟まるゲスト脚本がまた、ルパンの多彩さと謎の意味を上手く照射し、メインテーマを下支えする構成にもなっていた。
デカいシリーズに胡座をかかず、かなり野心的なことしてる印象。
大倉崇裕がシリーズ構成を努めた今回、5話のメインストーリーは様々な事件を巻き込みながら展開していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
10年前のワトソン殺し、リリィの成長と封印された記憶、秘密結社レイヴンによる数多の殺し。
ここに可憐な少女をめぐる男たちの思いが噛み合って、独特の味がある。
第1話で見えた血生臭い香りを再び蘇らせて、たくさんの死体から始まるこのフィナーレ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
点と点に見える要素は繋がり、一旦見えた全体像は霧散して、しかし真実を掴み直すヒントは適切に出されている。
やりすぎ感あるフォークナー爆殺が、レイヴンとの実態を暗示してたのは、嬉しい不意打ちだったね。
第7話でリリィが大事な自分を掴み取ったはずのホームズは、今回リリィをあえて過酷な状況に追い込んで、相棒殺しの真実だけを追う復讐者の顔を濃く見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ルパンもまた、お宝だけが大事な下卑た香りを少し漂わせ、ふたりとも”らしく”ない表情が印象的だ。
(”ルパン”というシリーズ全体、あるいは様々なバリエーションを持つ”ホームズ”の文脈も含め)ここまで開示された、『このキャラクターは、こういう事が大事ですよ』というメッセージに版下違和感が、”出題編”となる第11話ではかなり色濃く際立つよう、話が編まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
これが読解の足がかりで、『二人は”らしく”ない事をする理由は、一体何故なんだろう?』と、視聴者≒探偵は魅力的な謎へと引き込まれていくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
レイヴンの実態、ワトソン殺しの犯人といったミステリらしいミステリから、すこし角度を変えた普遍的な面白さ。先を読みたくなるヒキ。
それを二転三転する謎と真実に上手く絡め、面白く描けたのは良い終章だなー、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
真実を暴いてみれば、レイヴンは既に形骸化したロンドンの亡霊であり、数多の殺しも実態なき亡霊に踊らされた哀れなダンスでしかなかったわけだが。
『大鴉の正体見たり枯尾花』という肩透かしは、あまり感じない
むしろ身近にいた真犯人最後の謝罪が、しみじみ刺さる良い真相だと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ロンドンという舞台で確かに想起される、謀略と鮮血のエスピオナージ。
戦争の影、大国の闇に潜む正体不明の組織は、しかし時代遅れのポンコツでしか無かった。
この決着は、ある種のメタ・メッセージを内包してるように思う
正直エピソードが始まった時、その背後に見え隠れする大鴉の影に「は、『ちょっと古いな』と思わされた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
冷戦が30年前に終わり、新・冷戦ともいうべき構造が新たに顔を出している現状に、こんな古典的謀略組織をぶつけるのか?
このコテコテの007的構図で、”今”戦えると思ってんのか?
そんな疑問は狙ったとおりで、派手な爆殺はちっぽけな指輪一つを狙ったものであり、意味深なポスターは破り捨てられ、真実の光に照らされたカラスは、その残骸を無様に晒す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
中心なき組織であるがゆえの脆さが祖の身を蝕み、世界を焼き尽くす爆弾は既に腐り果てていた。
この反転現象が、かの高名なホームズ的推理術と同時に、”レイヴン”が象徴しロンドンという舞台に半自動的に想起される物語的ジャンルの現状を、上手く”批評”する形になっているのが、個人的にはとても好みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
形なき脅迫、容赦なき惨殺が世界を揺るがしえる時代は、既に終わった。
そんな真実を暴く中で、ホームズは錆びついた生活者にも、怜悧な推理機械にもなりきれない自分を取り戻し、怯えず真実を見せることで成長を促したリリィを相棒に、”名探偵”へと復帰していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
このコンパクトなヒューマンドラマが、巨大で空疎なレイヴンの真実と対比され、エピソードを支えている。
僕はリリィ・ワトソンも”この”シャーロック・ホームズも好きになったので、相棒に託された小さな女の子がもはや、自分の足で立つ強さを持っていると認める名探偵の小さな冒険は、とても好ましく見れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
彼女を”ワトソン”と呼ぶ結末は、ホームズが相棒の死を真実越えれた事を意味する。
そのためには例え真実を追う旅がリリィを傷つけるとしても…あるいはそうして切開された記憶がリリィ自身を癒やすからこそ、事件を解決しきる必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
”この”ホームズにとって、レイヴンをめぐる血みどろの事件は、とても個人的で身近な人生の問題と、強く結びついたわけだ。
ここに優しく片手を添えるのが怪盗紳士であり、形骸化し一線にもならない”お宝”を追っているように見えて、その実偶然託されてしまった信義を背負って、少女を見守る律儀を輝かせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ロマンに満ちてウェットで、しかしあくまで隣に立つべき相手を見誤らない。
事件が落着してみると、このレイヴン事変で描かれたルパンも、なかなか心地よく独特な筆致であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
エピソードがホームズとリリィを主役にするからこそ、その完成を助け、譲れぬ信念一つ抱えて割に合わない勝負に挑むかっこよさが、上手く際立った感じもある。
第1話でルパンが登場するまでかなり時間がかかる作り方自体が、ホームズとリリィが再生していく物語の主軸を、既に暗喩していた…とも取れるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
エピソード・ゲストを魅力的に立てつつ、”ルパン”を引き立て役にせず、また彼らを食いもせず、いいバランスで描ききった印象である。
その分”一味”としての活躍はやや弱い感じで、そこをゲスト脚本回で補う構成なのかな、と思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
一つの長編と幾つかの短編が、呼応しあって保管する一つのミステリ・アンソロジーとしても、PART6は面白く味わえる感じがあるね。
ここら辺、本業作家がシリーズ構成やった醍醐味かな。
怪盗を惹きつけた物理的なヒントは全てまがい物で、地下に眠る宝はただのガラクタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
ポケットに納めるには大きすぎるどころか、なんにも無い虚無が最後に顔を出すことで、偶然託された願いを義理堅く守り続ける、ロマン主義者・ルパンの肖像が強く描かれた感じもある。
それが甘くなりすぎないように、探偵と怪盗、二つの頭脳がロンドンをチェス盤に真実を差し合う構図が、上手く全体をまとめてもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
このレイヴン事変、情報を集め、真相を推理する”探偵”としてのルパンが幾度も顔を出し、名探偵との推理合戦を上手く演出していた。
そこは”ホームズ”を敵役にする意味をしっかり踏まえた運び方であり、らしからぬホームドラマの味わいを過剰にベタつかせない、巧妙な味付けでもあったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
冷徹に真実を追う理性と、それを少女が真に成長するための糧に使う情。
両方が互いを補いながら、事件は解決へと転がっていく。
脇役というか噛ませ犬というか、あんま美味しくない外野ポジに終始置かれていたアルベールが、ドーバーを挟んで”国”を背負うポジションを生かして探偵と怪盗を照射する構図も、今回一気に暴かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
リークの真相が見えることで、彼の株が持ち直すのは良い描写だったと思う。
切れ者同士がお互いを利用し、その動きが指し手を制限していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
国益を背負うアルベールをリークで動かすことで、ホームズの超頭脳がその動きを握りつぶすことを読んで、指輪一つを手に入れるべく事件を作る。
謀略の指し手達が、相互に作用し合う大きなチェス盤。
ルパンとホームズが共に抱え込む”情”を冷たく廃し、”国”に囚われればこそ怜悧な視線を状況に向けるアルベールが居ることで、お話の切れ味が上がってもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
あくまでカウンターバランスとしての見せ場なので、第2クールは美味しいところ欲しいな、とも思うけどね。
こんだけ大仕掛けを施して、人を沢山殺し人生を捧げた組織は、既に腐り落ちていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
他の指し手が『何故謀略のゲームをするのか』という目的を見失わない…あるいはルパンによって思い出す中で、レストレイドは根本を見落としてしまっていた。
その哀れさも、”探偵”の物語として良かったと思う。
八咫くんが相変わらず銭形大好き人間で、とっつぁんもまんざらじゃなくハッスルしてたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
美術が相変わらず切れていて、あえて輪郭を潰して描くセーヌ河岸が素晴らしかったり。
細かいところでも嬉しい見どころの多い、大満足の決着編でした。
一つ事件が落着し、名探偵と相棒は新たな一歩を踏み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
『もうロンドンは懲り懲りだ…』とうそぶきつつ、必ず戻ってくる気配を漂わせるルパンは、どうみても幼い少年に『古い馴染み』と声をかける。
第2クールはシリーズ構成もバトンタッチし、”モリアーティ”を相手取る話が始まる。
ここに『むむむっ!』となるヒキをちゃんと作ってる所とか、やっぱ整った構成だな、などと思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
血生臭く古きエスピオナージの残骸を埋葬したエピソードの先に続くのは、どんなロンドンの景色なのか。
これを見届けるのも、PART6というルパン・アンソロジーの面白さになりそうだ。
やっぱ僕は『何もかもが”ルパン”であり、しかし確かに”ルパン”らしからぬものはある』という、矛盾して曖昧なルパン像を見るのが好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
謎と謀略を主題に据えたこのレイヴン事変は、その捻り方、ズラし方含めて新しく魅力的な”ルパン”像を、上手く結実してくれたと思う。
このあとに続く第2クール…”モリアーティ編”と言うべきエピソードが、一体どんな”ルパン”を描くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月28日
幼子の成長をしっかり受け止め、共に歩いていく決断を無事果たしたホームズの描写も合わせて、大変楽しみである。
序盤はヒロインとしての弱さが際立ってたリリィの、逞しさが見えたの良かったですね