イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

時は飛ぶように過ぎて、気づけば年の瀬。恒例の10選企画をやっていきます。
今年も集計は aninado さんにやっていただいております。ありがとうございます。

・ルール
・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

クールごとの各作ベストエピソード選出と総評はこちらから。

桜花、夢と咲き誇れ -2021年1月期アニメ総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

蝸牛、慈雨に笑う -2021年4月期アニメ総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

紅萩、野分に微笑む -2021年7月期アニメ総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

凩、歳暮の戸を叩く -2021年10月期アニメ 総評&ベストエピソード- - イマワノキワ



・PUI PUIモルカー:第1話『渋滞は誰のせい?』

モルカーを見た。

PUI PUIモルカー:各話感想ツイートまとめ - イマワノキワ

今年最初の衝撃であり、今でも残響する強靭なコンテンツをおっ立てた第一話。
セルアニメーションを日常的に見る層以外に対してリーチしたり、短い時間だからこそ深く刺さる物語をどう作るかよく考えていたり、最初のエピソードということもあって、やはりこの話数が最も”モルカーらしい”スタンダードな強さに満ちている。
何よりもモルカーは健気で可愛く人の生活に寄り添い、その隣で人は愚かしく生き続ける。
シャープな風刺性、練り込まれた背景設定…の出し方など、コンテンツ過剰の時代でどう勝ち切るか、見た目通りの甘さではけしてありえない的確さと強さを兼ね備えた、大変力強い第1話だと思う。

・ゲキドル:第4話『バースディ・パーティー』感想ツイートまとめ

さっきまでの青春絵巻の風通しが、秒速でぶっ飛ぶエロティックな急加速。良いぞ…これがゲキドルだ!

ゲキドル:第4話『バースディ・パーティー』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

ワンダーエッグプライオリティ”に”BLUE REFLECTION/澪”そして”ヴィジュアルプリズン”……同性の関係性を刃として青春を彫り込む、怪作の元気な一年であった。
その中でゲキドルを選び取るのは、その奇っ怪でトンチキな外装と並走して、『演劇をやる』というテーマ選択に異様に真摯であり、それをぶっ壊れた崩壊世界で展開することに過剰なまでの意味があったからだ。
ツルンと素朴なデザインの奥に、彼女たちはほとばしる個性とエゴ、緑に濡れる異様なリビドーを溜め込み、それぞれのやり方で爆発させて極めて奇っ怪なSF演劇青春群像劇を駆け抜けた。
過剰に本気だったからこそ力みが抜けきらず、時に異様な角度にやる気がぶっ刺さるもするが、例えばこのエピソードで見えるようなリアリティで”性欲”がギラつく瞬間を切り取るときも、またある。
ツルンと喉越しの良い『普通に面白いアニメ』よりも、こんな風にゴワゴワ特異な味わいを残してくれる作品が、やっぱり僕は好きなのだ。

 

・オッドタクシー:第13話『どちらまで?』

小戸川タクシーが何処にたどり着いたかを、この後も幾度か考えると思う。 答えは出ない。モニターの向こうに広がってる、もう一つの動物園がそうであるように。 そういう世界を物語ることが出来たのは、やっぱ凄いことだと思います。

オッドタクシー:第13話『どちらまで?』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

モルカーと並んで、狙いすまして”アニオタ”を貫通してムーブメントを生み出し、力強く広いうねりを作り出した作品。
魅力的なキャラクターと的確な情報制御、豊かなアニメ以外のメディアによる話題と物語のアプローチ作成は、複雑な奥行きのある物語世界を編み上げて、見事な余韻を残して終わっていく。
僕はラスト三分の不穏と不明がとても好きで、アレがあるからこそこの物語は長く強い残響を残して、映画化まで辿り着いていくのだと思っているけども。
動物に擬した人間模様の中で、見ているものが何を見たかったか、何を”人間”と思っているのか試されるような作品であり、そういう意味でも現在の動物寓話めいたシンプルさがよくマッチしていたと思う。
素直なのに捻くれてて、屈折しているのによく届く。いいアニメである。

 

NOMAD メガロボクス2:第13話『翼ある者は翼なき者を背負い、翼なき者は翼ある者を祝福する』

高度成長期を終え、先行きが全く見えない世情の中で蘇った”ジョー”を、どう自分の事場で語り直すか。 『立つんだジョー!』を一回しか言わなかった一期から、既に力強く脈打っていたその意識は、真っ白に燃え尽きる結末の先を、生きて生きて生き抜く辛さと喜びで描く二期で、さらに研ぎ澄まされた。

NOMAD メガロボクス2:第13話『翼ある者は翼なき者を背負い、翼なき者は翼ある者を祝福する』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

よく出来た作品の続きを、さらに語るのは難しい。
最初の物語で言いたいことを言い切れたからこそ、それは他人を感動させ評判を呼び、それ故に続きが描かれる。
ウケた過去と同じものを書いては物語る意義は消えていくし、過去に描いたものを否定だけするのなら、それは”続編”である意味はない。
メガロボクスはそもそも”あしたのジョー”という大傑作を徹底的に解体し、再構築した上で”ギアレス”ジョーにしか紡げない物語を描いた、大変自省的で批評的な作品であった。
その続編たる”NOMAD”は、一度己が積み上げたものを極めて残酷に切り崩した上で、そうしなければ広がらない地平へと作品とそこに住まうキャラクターを開放する、見事な”続編”であった。
あの愛すべき男が己を旅立たせた、黄金の麦畑。
その広大さを13話、見終えた後胸に宿すことが出来る最終話にしっかり辿り着いてくれたことは、このアニメを見通した僕へのとてもありがたい、誇り高いテンカウントだった。


アイドリッシュセブン Third BEAT!:第8話『未完成な僕ら』

あえてBGMを絞り、人生の1カットを長尺、どっしり見せて感じさせる。 確かにそこにあって、痛みを込めて震え、しかしもう取り返せない思い出を鮮やかに演出する手腕が冴えて、大変良かったです。

アイドリッシュセブン Third BEAT!:第8話『未完成な僕ら』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

まぁ、来年後半クールが待っている作品を選ぶのには少し悩んだけども、やっぱりこのエピソード単話での仕上がりが圧倒的で、選ぶしか無かった。
本筋に直接は関係なく、しかしアイナナ世界に確かに生きている二人のアイドル……と、一人の元アイドルが何故、そういう生き方をするのか知るためには絶対必要な、奇妙な番外編。
あおきえいの映像構築センス、演出能力が冴え渡り、青臭く捻じくれた青春が力強い質感で彫り出されていく。
ここで描かれたRe:valeの過去……そこから続く譲れない”今”を、デビューなったŹOOĻの物語とどんな風に絡め、活かし起爆していくかへの期待感含めて、ここに選ばせてもらう。
アニナナは異様な仕上がりと盛り上がりを果たした波を、上手く生かして大きなドラマに繋げるのが上手いので、そういう意味ではこのお話の真価は、未だ発揮されていない、とも言えるだろう。

 

小林さんちのメイドラゴンS:第10話『カンナの夏休み (二か国語放送です!?)』

”日常系”でやれる一番強いところでぶん殴られた感じがあり、とっても満足です。こういう話が見たかった…。

小林さんちのメイドラゴンS:第10話『カンナの夏休み (二か国語放送です!?)』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

ある意味、ご祝儀選出とも言える。
だって京アニTVシリーズに復帰して、こんだけ素晴らしい続編を仕上げてくれたのだから。
でもベタついた同情と憐憫を1ファンから向けられるのは創作集団としてのプライドが許さないだろうし、それが強くあるからこそ、復帰の挨拶を何よりも強い作品群をただただ届けることで果たしたのだとも、僕は思う。
メイドラゴンSは無理くり大きな山を作らず、人と混じって生きる竜と、竜に隣り合って生きる人の人生がどんな風に熱を持つかを、丁寧に追いかけてきた。
個人的な興味から、やっぱりカンナちゃんがどんな風に慈しまれているかに注目してしまうし、このエピソードのBパートの異様な分解能の高さ、子供と保護者の夏の一時を見守る幸福感を、至上と選んでしまうのだけど。
一番偉いのは、この話数に並び選出にとても並ぶくらい、色んな竜と人が穏やかに、豊かに、優しく強く悩みながら生きてる姿が、1クールしっかり編まれていることだ。
それは時に業火に焼かれながら、それでも靭やかに続いていくのだ。

 

・Sonny Boy:第11話『少年と海』

彼らが”お葬式”を作っているのだ、と解った時に、自分でも理解できないくらいに泣いてしまった。

Sonny Boy:第11話『少年と海』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

今すぐ、Sonny Boyを見ろ。
特に夏目真悟をただのオサレ映像クリエーター、雰囲気だけで腰の入ってねぇアニメを作る奴だとナメてる輩ほど、この奇想天外大迫力、説明少なくコンパクトに位置少年の悩める青春を彫り込んだ傑作は、見ておいたほうが良い。
テイザーPVを見た時の『こうだったら良いなぁ……』が、120%叶う喜びというのは、まぁまぁの時間アニメオタクを続け、そんな過大な欲望に実際の作品を向き合わされて『ん、ま、こういう感じになるよね……』と自分を納得させる経験が多いほど、望外に嬉しい。
どっしり腰を据えて長良と彼の友達の思春期を、その終わりと新たな始まりを追いかけたこのお話には、その異様さ故に深く突き刺さる普遍の手触りがあって、大変良いSFでもある。
そしてこのエピソードを、放送当時の総評とベスト選出以来もう一度選ぶのは、メチャクチャシンプルにこの話で俺は、一番泣いたからである。
親友の”死”を青年たちが、どんな手触りで優しく撫で、置き去りにして旅立っていくか。
それを目にする度に、幾度も涙してしまう。

 

ラブライブ!スーパースター!!:第10話『チェケラッ!!』

ありがとう…ありがとうスーパースター。

ラブライブ!スーパースター!!:第10話『チェケラッ!!』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

虹ヶ咲が番外編だからこその自分たちなりのテーマ性、見せ方、キャッチーな勝負の仕方で己を打ち立てた後、”本家”といえる座組で編まれるスーパースターは何を語るのか。
放送前からそれに注目していた作品であるが、主役のキャラクター性、物語に宿るファンタジーとリアルのバランス、妖精郷としての原宿の描き方と、的確で猛烈な一撃でアンサーを返してきた。
原点回帰……をしっかり果たした上で、何が”ラブライブ”なのかをしっかり帆に蓄えて、スイングバイで加速を付けるような、四回目のラブライブ
それがどんな風に”ラブライブ”をアレンジしているか、さんざん道化役をやってくれた平安名すみれのプライドと涙をど真ん中に据えたこのお話が、一番よく教えてくれるように思う。
萌え記号論の極北に未だ立ちつつ、定形でありながら独特な笑いの空間を維持しつつ、どう作品世界を生きる一少女の思いに、挫折と再生に報いるか。
そこにしっかり答えがでているから、”ラブライブ! スーパースター!!”は”今”戦えるアニメたり得ているのだ。続編も、大変に楽しみである。

 

ルパン三世 PART6:第10話『ダーウィンの鳥』感

そんな静かな優しさが”ルパン”にあったのは、今回一番良かった描写かな、と思う。

ルパン三世 PART6:第10話『ダーウィンの鳥』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

悔しいが、やっぱり選ばざるを得ない。
衒学を気取った中身のない引用ゲームにさんざん踊らされ、『虚構と現実』なるテーマのリフレインが虚しいこだまと知りつつも、それでもやはり、押井守が語る夢の物語には独特の匂いがあり、それが酔わせる。
固定ファンが求める”いかにも”に応えた作風ではあるのだが、ゲスト脚本回で一番”ルパン”をしっかり見据え、自分なりにしっかり刻んだエピソードでもあったと思う。
人間のプロフェッショナルとしては出来る限りを尽くし、それでもなお天使の姦計に飲み込まれる不二子のヒロイン性と、あくまで一泥棒として寄り添うルパンとの、乾いた磁場。
時空間と因果すら歪ませるオカルト的大仕掛けに目が行きがちだが、実はそういう土の香りこそが、やっぱり一番酔わせるんじゃないか、と思わせるエピソードであった。
寝言山盛りウンチク沢山、ゲップが出るほど押井守な仕上がりと、色んな情感とヴィジョンをしっかり絵に納める演出の強さを合わせて、大変贅沢な”ルパン”であったと思う。

 

・ワッチャプリマジ!:第13話『ワッチャ・マジックワード

いやー…強いわ。本当に強い。

ワッチャプリマジ!:第13話『ワッチャ・マジックワード』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

佐藤順一総監督の元、新たなスタートを切ったプリティーシリーズのスタートダッシュは、凄まじいの一言であった。
アップテンポに話を回し、第4話にして最初のクライマックスを一気にぶち上げるテンポはけして緩むことなく、勝つことと負けることの意味、本気で挑めばこその痛みを深く彫りさげて、このクライマックスへと雪崩込む。
生き急いでいる。
そう評するしか無い異様な密度と速度は、しかし横幅広く作品が描くべきものを見据え、商品としてのウリと正当少女スポ根の熱量に、キャラクターごと多彩な”マジ”がぶつかりあう勝負論の火花を添えて、一気に駆け抜けた。
この速度は1クール完結深夜アニメのそれであり、同時にこれから語らなければいけない要素に周到な目配せも、既に果たされている。
ロングスパンで話を回していく1年アニメの闘い方と、短いスパンで幾重にも山場を積み重ねていくショートダッシュの強さ。
両方をプリマジが兼ね備えているか否かは、一年付き合ってみなければ判別しきれない。
しかしこの第13話に至るまでの歩み、この熱を成立させているピースの組み上げ方を見ていると、とんでもないことをやり遂げてしまいそうな期待感は、否応なく湧き上がってくる。
強いアニメである。