ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ダプシェの機械によりネーニヤを存在固定し、”殺せる相手”に縊るクロエ。
名もなき狂気が真名を思い出し、秘したる絶望は蓋を開けた。
流し込まれた狂気に飲まれ、禍名に囚われたクロエの異能は、ジェヴォーダンを喰らい尽くす。
災厄の病を、止める術はあるのか!?
そんな感じの急展開、ラスボスが本気出したら大惨事! な、ヴァニタス第17話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
いやー…一気に話が動いてきて、状況整理がおっつかないけども。
なるほどと納得する部分もあり、謎が深まる部分もあり、色んな事が解って解らなくなる、面白いエピソードだった。
ネーニヤの真名開放によりジェヴォーダン編はクライマックスへと飛び込み、クロエは”獣”とは違う…”魔女”ともいうべき禍名へと変貌する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
世界を飲み込んだネーニヤの狂気はジャンヌにも感染し、今まで伏せ札だった彼女の過去も暴かれていく。
罪を背負った、殺戮の人形。
ブロー時代を更に飛び越し、戦争当時の空疎なジャンヌに戻ろうとする所で、ヴァニタスが”治療”の可能性を示して、彼の恋人を繋ぎ止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ここで殺傷以外の選択を差し出せたのは、ノエが頭突きの至近距離でヴァニタスに信頼を差し出したからだ。
幾度も裏切られ、何も信じられなくなっても…
自分だけは、種族の壁も対立も運命も越えて、あなたを信じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
そんなノエの一本気がヴァニタスに届いたことで、彼は超ヒロイックに空から降り立ったローランにも、殺す以外の解決を提示できる。
絶望的状況でのかすかな希望は、信頼に支えられている。
その連鎖が、果たして悲劇をせき止めるか。
既にドッタンバッタン大騒ぎだが、”獣”と”魔女”を相手取る本格バトルはまだ始まっていないので、ジェヴォーダン編がどう収まるかは、来週以降のお楽しみだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ネーニヤの正体は分かっても、概念存在に粉砕された経緯とか、禍名に汚れた理由とか、狂気の奥の望みとか、見えないもの沢山あるしなぁ…
さて、クロエは愛する従者を誘惑した不届き者を殺すために、ダプシェの機械を使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
父から言い渡されていた貴族としての高潔と、吸血鬼らしい身勝手なエゴが混じり合った、なかなかいい犯行動機だ。
タイトルにもある”復讐”は、クロエにとっては領民ではなく、狂気の中心にいるネーニヤに向けるもの。
しかしその嗜虐心は、無貌の狂気に落としていたネーニヤの名前を思い出させ、紅月の女王としての真名を思い出させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ファウスティナ…Fortuneと同語源であるこの名は、絶大な支配力を持つ彼女の意思がすなわち、吸血鬼にとっての幸運、不運、あるいは運命である…という暗示か?
名前解きは後のヴァニタスに任せるとして、ネーニヤは自分の名前を忘却し、それを探して狂気のパレードを率いている感じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
トッポい格好したルカくんのニーちゃんが『砕いた』言っとったけども、マテリアルな身体は長老総出でぶっ壊して、歪められた名前だけが独り歩きしてる形か。
とすれば、甘美なる愛の復讐としてクロエが選び取った儀式は、一度砕かれた悪魔の女王を受肉させる、超危険行為でもあったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ここら辺の事情をクロエが知らないのは、彼女が人間世界に隔離され、時を止めた迷い子だった結果か。
情報のパイプになるルスヴンとも、訣別してるしね。
とまれパンドラの箱を開けた代償として、ネーニヤ・ファウスティナはかつて支配できなかった古い種族に強引に泥を流し込み、呪いに落とす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
父から受け継いだ高潔な意思で人にとどまっていた吸血鬼は、愛と憎悪故に、噂通りの”魔女”になるわけだ。
あんだけの長命種が堕ちると、その影響も”獣”程度では終わらない感じで、ジェヴォーダンは消滅寸前。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
激ヤバ状況を前に、ヴァニタスは全て分かっていたっ面で後出しジャンケンを始め、キレたノエに頭突きを食らう。
そらまぁ、怒るわなぁ…。
ヴァニタスは賢者なので、不確かな智慧がどんな惨事を招くかよく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
加えて散々な目にあってきた子供でもあるので、他人を信頼することが出来ない。
悪しざまで芝居がかった態度も、信頼して裏切られてきた経験から学んだ、他人を遠ざけるための彼なりの武器…なんだろう。
しかしノエは否応なく人生巻き込まれ、変人がどんな体温で人生生きてるか感じられるところまで踏み込んでいるので、不確かな希望を恐れるヴァニタスに怒り心頭である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
未来が怖いなら、俺の手を取って一緒に走ろう。
ネーニヤ=ファウスティナから漏れ出した狂気に、斬首されたルイの幻影を見ても…
真っ直ぐヴァニタスの目を見て、その不信を引っ剥がす努力を止めはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ダチ思いの必死さが頼もしくもあり、失うまいと足掻くのはルイを失った傷ゆえだと思うと、どこか哀しくもある。
とまれ、この熱血漢が全力疾走してくれるおかげで、ヴァニタスも諦めずに”医師”でいられる。
『安楽死だけが救イだ』などという、医師にあるまじきニヒリズムを、救済に飢えたノエは許してくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
お前には呪い持ちを救う力があり、運命を書き換える使命があるのだから、共に全力を果たせ。
そんな信頼が、ずたずたに引き裂かれた変人医師の心に染み渡る。そらー、好きにもなるわな…。
でもこの信頼関係、ルスヴン卿が埋め込んだ時限爆弾で全部吹っ飛ぶ素地が出来てて、それがいつ破裂するか、ハラハラ安心できない作りになってるの、巧いなぁ…と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
序章で予言された、ノエによるヴァニタス殺しも合わさって、『絶対上手く行くよ!』とは欠片も思えねぇの、最高に良い。
同時にノエが差し出す手こそが、孤独の奈落に落ちそうなヴァニタスに伸ばされた蜘蛛の糸なのも、間違いはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ノエが信じてくれることで、ヴァニタスは運命改変者、救済者、治療者、医師としての自分を信じることが出来る。
信頼は狂気と絶望に、唯一よく効くクスリなのだろう。
これはローランにも言えることで、彼が”狩人”の規範を越えてヴァニタス達の腹案を聞きに行くのは、聖騎士が吸血鬼を信じているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
彼は自身が信じる神を信じ、自身が信じる友を信じる。
全ての中心に『信じる我』が置かれてるあたり、とんでもないエゴイストだな…。
しかしそのエゴはより多くの幸せ、より多くの喜びと楽しみのために開かれていて、自分を信じるオリヴィエも巻き込んで、”魔女”の幸福な治療のために協力体制を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
オートクレールが期待通りのバカ武器で最高だったが、オリヴィエもローランへの”信”を優先して、組織に背を向ける形よな…。
領民一人でも殺せば、クロエの核になっている『父から言い渡された、貴族であり人間である自分』という信念は壊れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ヴァニタスが言い渡した処方箋を信頼して、聖騎士達は領民を守り、正体定かならぬ教会上層部の思惑に対峙していく。
Disってた先輩がバリバリ仕事する中、アストルフォくんったら…
さておき、色んな人に信じてもらえたヴァニタスは、クロエを救うことで彼の恋人を救おうともする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ネーニヤ=ファウスティナが立ち去る時に、人々に見せた過去の傷。
ジャンヌのそれは、彼女がたどった複雑な個人史の帳を開ける。
なるほどなー…コールドスリープ・ヒロインだったのか。
彼女をカプセルの中でコポコポ培養し、殺戮人形の使命に閉じ込めていたフードの男が、一体誰か気になる所だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
彼女の残酷な支配者に見えていたルスヴン先生も、どーも彼の”処刑人”のこと大事に思ってるっぽいしな…。
現状の材料で犯人当てすると”先生”なんだが…フードの男の正体はまだ謎、かな。
父母の罪を背負い、心を殺した人形でいようとしたジャンヌであるけども、クロエとの出会いでその鎧にはヒビが入ってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
ルスヴン先生の言葉通り、人間と吸血鬼の戦争が落ち着いてから目覚め、ルカくんの騎士として生き直した日々、ヴァニタスとの出会いが、それをさらに揺らしただろう。
なんやかんや、チョロくて可愛くて強い”恋人”がヴァニタスも好きなわけで、女王風情にかき回されて元の人形に戻るのは、好みの結末ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
”殺す”以外の決着を許されていない処刑人形に、ルスヴン卿の命令の読み替えとか、治療の可能性とか、自分の信頼とか、必死に手渡す姿が可愛かった。
『自分は人形のままだし、クロエは救えない』と、時を巻き戻して孤独に落ちようとしているジャンヌをせき止めるには、信頼の楔がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
信頼に足りる治療者として、自分を信じ切ること。信じさせること。
ジェヴォーダンの事件を幸福に終わらせるために、ヴァニタスは拗ねた態度を引っ剥がす必要がある
それはあの、深く傷ついて誰も信じられない…でも運命に流されるままではいられない青年に、新しい景色を見せる戦いになりそうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
いい加減、アイツもより善く生きたいと願うごくごく普通の人間だってことを、自分に理解らせる頃合いではあろう。
まぁその希望が、新たな絶望の種にもなろうが…
そうなったらなったで、信頼でお互いを繋いで、人生の荒波に飛び込んでいけば良いんじゃねぇかな、と思う。C'est La Vieって感じね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
これまでの人生経験上、自分ひとりだとクラーい結末しか思い浮かばない傷追い人が、信じられることで希望に進み出し、他人の希望になるの、凄く好きよ。
ここでノエからの信頼に背中を押され、ジャンヌを過去の牢獄から引っ張り出そうと身を乗り出すの、色んな人の思いが絡んで話が動くこのアニメらしくて、とても好きな構図です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
それが上手くいくかは、次回以降の激戦を超えた先で解るのでしょう。
次回も大変楽しみです。
追記 『延々同じ場所で同じことを繰り返し、変化を掴むことが出来ない』というクロエ達の牢獄は、永生者たる吸血鬼の種族的特徴でもあり、そこに切り込み治療する人間の医師、若き吸血鬼のコンビ……っていう構図でもあるのだな。
ノエとヴァニタスが特権的に過去から開放された”正しい”人たちというわけでもなく、彼ら自身重たい過去に縛られつつ、そこからの開放を求めて必死にあがいてる当事者にしてる所が、作品のテーマから主人公を借りさせず、ガッチリ食い込ます巧い作劇。
しかしジェヴォーダンの事件ははるか昔に終わっているはずの物語で、それが蘇り、当時とは違う形で決着しそうなこの流れは、吸血鬼社会の宿痾として忌まれ、諦観されてきた”病”に立ち向かうお話らしくて好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
延々過去の悲劇が繰り返される、出口なき宿命。
ヴァニタス自身過去に囚われながら、周囲の人とのふれあいで自分を変え、周囲を変えて、突破口を探している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
その足掻きがノエの信頼を育み、ジャンヌへの愛着を生んでもいる。
これらが結び合って、”魔女”と”獣”を狂気の病から開放しそうな…”ジェヴォーダンの獣”という物語を解体しそうな現状。
このエピソード自体が、凄く”ヴァニタスの手記”という作品がどういう構造をもっているのか、自己言及的に凝集してる感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月11日
白い雪の結界(クロエの閉鎖し自足し諦観した心)が解かれた時、”今”のジェヴォーダンはどんな風景で描かれるか。
決着が楽しみである。