平家物語を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
清盛の死によって動揺する平家を離れ、びわは生母の面影を追う。
一方迫る義仲を倶利伽羅峠で迎え撃った維盛は、夜襲に総崩れと成り果てる。
京の都を捨て、西国での再起を図る平家一門。
逃げ延びたかの松原に、笛の音はあまりに寂しすぎた…。
そんな感じの栄枯盛衰無残絵巻、木曽殿が滅茶苦茶やってくるんだが! な第8話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
調整役だった重盛が死に、一代で野望の階段を登りきった怪物が斃れ、残るは栄華に膨れた有象無象のみ。
それでもなんとか命脈を繋ごうと足掻く試みを、運命の巨大な質量は容赦なく踏み砕いていく。
”一門”と号しつつ危機意識も連帯感も薄い平家一門を、強引にまとめ上げてきた清盛の存在感と、それ故ぶつかる部分を整えてきた重盛のありがたみが、滅びの足音が聞こえてくるとよく染みる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
出来の悪い生き残り達がどんだけ不手際をかまし、どんだけ無残に生きて、死んでいくか。
いたいけな安徳天皇の御輿を担いで、西方へとどんぶらこ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
こっから先は下るばかりの栄華道、見ているこちらもなかなか辛いが、まぁ史実がそうなんだからしょうがねぇ。
見届けるしか出来ないびわの辛さが、こういう局面だとシンクロ率高く視聴者にも響く構成である。
戦乱の気配に京を追い出されたびわは、猫を伴に連れて母を求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
微かな頼りを手繰り寄せ、遥かな越後も何のその。
しかし無駄足と京に戻って、源氏の狼藉にも遭遇する。
旗の色は変われど、刀を握ったものがすなるは皆同じ。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/ZaDMQEKrVy
しかしあの時ただ立ち竦んでいた幼子は、猫のように毛を逆立たせて怒り、暴虐に牙を突き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
身の丈はちっとも育たぬ童形であるが、びわの心は平家の屋根の下、確かに強く育ったのだ。
回り道、無駄足に見えるものが、意味を持つ瞬間が、確かにあるのかもしれない。
母を求めて三千里、天下の趨勢を遠くに聞きながら彷徨うびわは、結局同じ場所に帰ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
旅立つ前は”おっかあ”でしかなかった人は、浅葱御前という名前を知る。
ちょっとずつだがびわの旅が、確かな手応えを得て諸国を彷徨う描写が、なんだか優しくて好きである。
さて旅の果て、危ういところを力強き白拍子に助けられたびわ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
エンドクレジットを見ると、かの静御前のようだが…平家と一旦離れたこのタイミングで、義経サイドとびわに縁ができるの、面白い話運びだな。
安穏と風雅を楽しめた時代から追い出され、自分の足で世間を旅する。道連れの猫を守る。
びわは家に守られるべき子供から、自分なりの生き方を定める大人へと、脱皮する頃合いなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
そんな時代は青年の世界を広げるもので、思わぬ出会いは彼女に何を授けるか…こっからがとても楽しみだ。
”平家”とはまた違う家の在り方を、その眼で見るのも、また大事だろう。
さてそんな旅路の裏で、源平合戦はいよいよ加熱し、鎌倉の頼朝、木曽の義仲との二正面対応となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
安徳天皇と徳子、頼朝と政子、義仲一家、平家の頼りない現状。
様々な顔をした”家”がスケッチされていくのは、とてもこの作品らしい。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/uTYrXMMXyu
何でもかんでも口に入れちゃうお年頃、安徳ベイビーの可愛らしさが、待ち構える運命を思えばなんとも痛ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
夫を失い父を奪われ、それでも母一人子一人、乱世を強く生きていく決意を固めた、徳子の強さ。
それがどこか、敗残の頼朝を叱咤する政子と重なる。
木曾殿のワイルドなキャラに合わせて、劇伴もアップテンポで明るい感じに変わるが、それはあくまで彼のテーマである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
英傑と怪物亡きあと平家棟梁となった宗盛はなんとも柔弱で、武家の本懐を遂げるにはいかさま、器量が足りなく思える。
色んな人がいる世間、そういう人物が頭になることもあろう。
平氏にあらずんば人にあらず。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
そう豪語し酒色と管弦にふけれた時代はもう終わり、ある意味厳しき平治の乱の時代へと先祖返りしているわけだが、そこを切り抜けた清盛の頼もしさ、重盛の勇壮は、今の平家には無い。
時は巻き戻らないし、去っていった人は帰らない。
そして、人は簡単には変わらない。
未だ華やかな宴三昧に、維盛は苦い顔を隠さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
橋合戦で、あるいは富士川で、血塗られた闘いというものがどんな質感をしているか、嫌というほど思い知っている彼だけが、リアルに滅びを感じているのかもしれない。
ヒゲは生えても、弟たちはどこか風雅が抜けない。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/KYiZZVMRvZ
戦備えよりも歌合わせの準備と、なんとも雅なことであるが…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
でも清経世代は(清盛が怪物になってまで造った)風雅と栄華があって当然で、武士というより貴族としてのアイデンティティの方が、当然強いだろうからなぁ…。
戦人としての自我は、彼らには頑張って創るものなのだろう。
その筆頭として、維盛の化粧がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
白粉を塗り、紅をさして顔を作るのは、取られた首が見苦しい青黒さを晒さぬよう。
シビアな死生観と微かな雅が入り交じる、平安公達の華やかな戦備えである。
そしてこの華やぎが、ルール無用の野人には通用しない。
…というか木曾殿、都会人の戦争作法は知った上で、夜襲の隙を作る下ごしらえとして活用してくるからな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
維盛は貴人なので、戦地と言えど床で寝る。
この時代”畳”というものがどういう扱いされていたか、今更ながら滅茶苦茶調べてる作品だわな。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/TdDf4sBeCt
相手を山出しと舐め、こちらのルールで推し量る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
傲慢と油断はもはや平家の宿痾であるが、維盛兄貴は必死にそれを追い出すよう、大軍を率いる武士であるよう、自分を戒めていたように思う。
しかしその心がけも、規格外の猛将には蹴散らされてしまう。
木曽殿の朗々たる名乗りを受けて、一旦上ずってしまう維盛が微笑ましいが、あの一瞬がやはり、武人としての非才を強く物語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
猛々しく、悪賢く、圧倒的な速度で戦場を駆け抜ける義仲のタフさは、PTSDでヒビが入った心をどうにか化粧し、武士であろうと頑張る若人には、けしてない。
むしろ乱を平らげ名を挙げた頃の、若き清盛がこんだけエネルギッシュで滅茶苦茶だったんだろうなぁ…と思わされる、倶利伽羅峠の闘いである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
富士川でもそうだったけど、『士気の崩壊こそが勝敗を決める』っつールールがシビアに徹底されてるの、数で勝る平家が総崩れとなる現実を、巧く説明しとるね
見えない幻に心が砕かれた時こそ、真の敗北。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
そんな事実を知らしめるべく、維盛兄貴は向いてない戦場で必死に”武士”を装い、引っ剥がされて涙するのかもしれない。
戦が当たり前の乱世に生きても、それに向いてない人も当然いたし、皆戦は嫌だった。
そんな、忘れられがちな事実を伝えるためにも。
かくして万軍壊滅の報が都に届き、平家一門は西国へと落ち延びていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
年相応の頑是なさと、母恋しの聞き分けの良さが、兎にも角にも悲壮である。
都落ちを決めた時転がり落ちた鞠は、逆らいがたき運命に惹かれる一門の、未来の暗喩か。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/EDfMSb02WG
女官との恋にうつつを抜かす資盛を、咎めるでもなく母は強し。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
自分を押し流す運命も、最後の御旗とすがる浅ましさも、全て許し守ろうとする徳子の姿は、一門の誰よりも”武士”なのかもしれない。
あ、今様妖怪後白河院は、この状況でも(だからこそ)タフでした。他人の家に荷物持ち込みすぎッ!
まぁ徳子の強さは現状肯定の強さ、負けない強さであって、この状況を打破する強さではないので、運命は変わらんわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
そして我が子を抱いて竹の如く、折れず曲がらずの気持ちを保っている健気を、正面からへし折る激浪が待ち構えてもいるからなぁ…。
まだただ続くよ、平家滅亡RTA!
家族を都に残し、廃都福原へと落ち延びていく兄弟たち。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
侍大将が、一家の主が、けして見せてはいけない弱き涙を見つめた時、資盛の表情が締まるのが印象的だ。
そこにあるのは、強き”おっとう”の顔ではなかった。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/0OZPweM7WD
幼いときから慣れ親しみ、その弱さも美しさも一緒に育ってきた、生身の表情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
かつて不安な先行きをびわに取りすがった時、一喝して武士の顔を取り戻させた資盛の優しさも、万軍崩壊の責に涙する兄には、もう届かない。
その涙は、背中を見せている家族には見えない。
ただ、弟にのみ解る。
来たるべき時代を、乗りこなす能力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
家門に相応しい資質。
そういうモノに恵まれなかった人として、維盛は描かれ続けた。
向いていない人が必死に、戦場に向き合おうとした結果心にヒビが入り、敗勢は決定づけられ、今ここに涙の都落ちである。
愚かとも、惨めとも言えよう。
しかしここまで維盛を一人間として、体温ある筆で描きぬいてきたこの作品は、武士たり得ず父たり得なかった若人に、厳しくも温かい視線を投げかけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
なんの飾りもないこの涙を、資盛(と僕ら視聴者)が見届けれたことは、教科書の中の渇いた存在がどれだけ活きていたか、描く物語だからこそ。
そう感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
徳子が少女から強き母となったのと同じく、時の流れは少年に髭をはやし、栄華を終わらせていく。
話数としては短いものの、その流れが急に感じない秘訣が、この維盛の涙には宿っている気がする。
皆必死に生きて、抗えぬものに抗って、運命に負けていく。
それでも、花は咲いたのだ。
清盛夢の都も蜘蛛の巣に覆われ、たった三年前の宴が遠く思われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
鳴り響くのは同じ笛の音のはずなのに、自分たちを取り巻く空気が変わりすぎて、その響きの意味も変わってしまった。
これを感じ取る感性が、清経の雅なところだなぁ、と思う。
(画像は”平家物語”第8話から引用) pic.twitter.com/eG4RzbMyQV
若武者敦盛は勇壮に、西国での巻き返しを睨んで意気を上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
しかしその炎は平家全体のムードとは言えず、貴族然とした手弱女振りが、西方に落ち伸びていく船団に漂っている。
燃え盛るかつての都、不確かな薄明かり。
順風満帆とはとても言えない状況で、平家は追い立てられていく。
敦盛が示す武者振りはあまりに小さく遅すぎた感じもあるが、この先待ち受ける闘いの中では頼りになるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
勇者もいれば芸術家も猛母もいる、多様な平家一門。
権力基盤が安定していれば、様々なジャンルで家門を上げただろう才達が、追い立てられて散っていく。
もう月見の笛は遠いけれども、確かにその雅は風に乗ったのだと、噛み締められる強さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
そういうモンは清経には遠くて、”平家物語”の通奏低音である哀れなる無常を、雅に嘆いているが。
どっちにしても、木曽殿が体現する新たな風…あるいは懐かしき無骨な武者振りが、東から迫る。
その切っ先に立つ遮那王殿を、このアニメがどう描くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月3日
びわは落ちていく”平家”が出会えない、見届けられない場所に伸びる、一門の”眼”でもあるのだなぁ、などと思いつつ、来週を楽しみに待つ。
…とにかく安徳ベイビーが賢くママ好きなフツーのガキで、それが俺には辛いよ…。