メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
リコ達は黄金郷を征く。
未知と危険が裏腹に張り付き、好機と恐怖に瞳を見開く、人智を超えたアビス第六層。
止められない憧れは眩く輝き、闇の奥へと人を導く。
心せよ。
希望に見えるものこそが、惨劇の端緒であることを。
心せよ。
それでも、人であることを
そんな感じの、ずっしりどっしり探検物語、食ったり走ったり盗まれたり、大忙しの烈日第2話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
やっぱ怪物的に美術が良くて、やや引いたカメラで世界を見せてくれるのがありがたすぎる。
リコたちが目を見開く驚異の、圧倒的説得力。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第2話から引用) pic.twitter.com/nLmSPRMlKh
多彩な表情を見せる第6層に、リコたちは魅せられ、潜り、一体化していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
そこで食べ、そこで眠り、クソをひり勃起し怒り泣き戦い、生きたり死んだりしていく。
安全なパッケージツアーではなく、巨大な生態系の一部として、掛け金を支払って驚異と興奮を手に入れ、不帰の致死点へと近づいていく。
わざわざエリア名にせずとも、アビス潜りは還らじの旅路である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
街の暮らしに戻る手段はなく、ただただ白紙の未来に、待ち受ける死に向かって、震えるのではなく瞳を輝かせて突き進んでいく旅路。
賭けに狂ったギャンブラー、未知に取り憑かれた狂人、命知らずの冒険家。
まともならけして選ばない道へと、風景が雄大であるがゆえにその小ささと、巨大な景色に飲み込まれず己を主張する強さが目立つ小さな命は、堂々踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
奇を好み、過酷な試練の中で輝く命の光に魅入られたものがどうなるかは、ボンボルドが嫌というほど示した。
無邪気に見えるリコのなかに、あのお面ヤローと同種の誠実な狂気があることは、画面外から作品を俯瞰する僕らだけでなく、リコ自身にも認識されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
それでも。
それでも潜らざるを得ない業を、深淵に死に生まれ、地上へと出産された少女は抱えている。
多分、生まれつき。
リコがアビス深奥に近づいていく歩みは、常人にとっては狂気と死への接近であり、彼女にとっては自分の生まれた場所…母、あるいは死に帰還していく歩みでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
人間を否応なく変質させる場所に近づくほど、リコは”本当の自分”を取り戻し、新たに生まれ直していくのだ。
アビスは、少女の揺籃である
小さな存在がただただ巨大なものに翻弄されるだけでなく、たしかにその身に宿る心の輝きを闇に突き立て、己の生き様を証明する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
それは肉体が変質し、あるいは死に絶えたから終わるわけではない。
ここまでの旅路、幾度も出会った探検家の遺骸。
あるいは悲惨極まる、少女たちの成れ果て。
それがただ愚かで哀れであったと言えないのは、既にこの物語に潜っている僕らには自明だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
世に逸脱と蔑まれ、正気じゃないと恐れられる暗がりにこそ、最も鮮烈で嘘のない人間の光がある。
そしてそれは、キレイなだけではありえない。
怖くて面白くて、大事な物何もかも投げ出しててでも潜りたくなる
そういう物語の新たな舞台として、第6層の多彩な表情は素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
ただ”幻想的で雄大”でおわらず、そんな場所でも命は争って糧を得、生きて行くのだという実感があるのが良い。
美しくも荒々しい場所で、小さな生き物は知恵を絞り、力を合わせて必死に生きる。
今回の描画はその衣食住を丁寧に追ってくれて、旅物語としても優れた質感だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
地面を一瞬で誘拐させる火球が降り注ぎ、いつ命を落とすか解らない危険領域。
そこでも人間はメシを食い、ねぐらで休む。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第2話から引用) pic.twitter.com/NiAzsPSaUl
アビスめしの旨そうな描写も大変良かったが、危険に満ちた場所でベテラン探検家がどう安全を確保するか、ディテールを彫り込んでくれたのが素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
手の結界を張り巡らせ、煙で獣を遠ざけて、少しでも安全を確保する。
ここは遊園地ではなく、ボーっと突っ立ってたら、すぐさま死ぬ場所だ。
アビスという極地に、リコたちが知恵をつけて順応し、チームとして力を合わせ乗り越えている様子がよく見えたのは、冒険の物語にとても大事なお話だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
その一歩一歩が丁寧に積み重なるからこそ、端から見れば愚行でしかない不帰の潜航に、どうしようもなく滾る気持ちも解ってくる。
アビスの冒険は滅茶苦茶危ない…どころでなく、腕は飛ぶわ腹は穿られるわのゴア祭りであるが、それでもなお”楽しそう”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
工夫をこらし、旨いものを食べ、最高の仲間と危機を乗り越える。
『それは楽しいことで、だからやってるんだ』と、エピソードが静かに殴りつけてくる。
その、生活臭のある手触りがとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
『こんだけ楽しい事なら、そらー止められないよなぁ…』と思えると、見守りたくなる気持ちが強く前に出る。
それこそが、お話を見続ける原動力だ。
怖くて、エグくて、それでも目を逸らせない。
僕らも、深遠に魅入られているのだ。
暴力、差別、人格変容、運命蹂躙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
”いけないコト”を山ほど描くのは、そらーつくし先生の性癖もあろうし、その闇こそ人間性のまばゆさを際立たせるキャンバスだからなんだが、同時に塞いだ掌の隙間から思わず覗き見てしまう”それでも”を、見るものに喚起する仕事があると思う。
本来避けるべき危険や禁忌に、それでも惹かれてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
別にこの作品視たからって、俺たちが怪物になるわけじゃないけども、それでもこのお話に引き寄せられ潜っていく歩みと、リコが闇の奥に突き進んでいく歩調は、確かに重なっている。
それでも。
それでも、見たいのだ。
情け容赦のない描写の数々が持つ、暴力的な強さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
それがずしりと心に突き刺さって、アビスを見る前の自分ではいられない不帰性も、作品の内部と外部が繋がる、強いシンクロ感を生み出す。
確かに何かが変えられてしまって、もう戻らない衝撃と、薄暗い喜び。
それが、確かにある。
『アビスに潜る』という作中の物語が、人間を否応なく人でなしにしてしまう世界の中、それでも人間が人間である証明を探し続けているように、このお話(アビス)に潜る僕らも、こんな人でなしのお話が何を語りかけ、何を伝えたいか、闇の中の光を自分なり探るのが大事なのかな、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
とまれ、リコ達の旅路は危険と喜びを背中合わせに進み、謎の闖入者に挑発されながら、奇っ怪な村へとたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
リコさん、取ってつけたような萌えキャラアピール止めてください。初っ端ウンコでしょアンタ。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第2話から引用) pic.twitter.com/0Yct3p7BsS
大事な大事なプルシュカを奪った存在は、賢いナナチの防御策をかいくぐり、存在を気取らせないツワモノだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
痕跡は村へと一行を導くように残され、リコ達は生物的質感のあるヒダの奥で、奇っ怪に蠢く異形の村へと侵入していく。
洞窟の書き方、どう考えても…だよなぁ。
リコたちにとっては未知への突入であり、俯瞰で見れば過去の因果に新たな可能性が踏み込んだ瞬間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
過去と未来が薄膜をぶち破って衝突し、何かが生まれ何かが変わり何かが壊れる、その瞬間。
それは嵐のようではなく、珍奇で優しい出会いとして始まる。
話も通じるし、まぁ大丈夫だろう!
んなわけネーだろここアビスだぞッ! って事を、リコのナレーションが先取りして教えてもくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
ここが成れ果ての村であるのは、村人が軒並み人の形、あるべき生き方を捻じ曲げ、終わってるから…ではない。
確かに輝いた過去があり、それが過酷な冒険、アビスという地母神の胎から生まれ直すからだ
どんなに輝いて見えるものも、どんなに強く望むものも、グロテスクな運命に捻じ曲げられ、あるべき形を保てない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
その激浪に耐えきれず、この最果てに流れ着いてしまったもの達の過去は、第1話で一度語られている。
今週生き生きと旅してた主役と、同じように世界からはみ出し、冒険に魅入られた者。
”ガンジャ”の冒険を過ぎ去った回想ではなく、今目の前にあるものの源流であり、若人が世界に抗うもう一つの歩みとして重ねて描いてきたのは、凄く精妙な筆だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
それは確かに、かつてそこにあった。
友情も歓喜も決意も尊厳も、リコたちの物語から発せられる全てが、等しく確かにそこにあったのだ
しかし、今はもうない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
それは終わってしまい、変わってしまい、ねじ曲がってしまった。
ボンボルドとリコの同質性(そして異質性)を描ききった後で、今度は別角度から…おそらくは”チーム”として過去と現在を、対比し試験する物語が、ぐるりと動き出す。
村に秘められた秘密、見つめる瞳の思惑。
それは今後暴かれ、僕らを殴りつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
その足取りを、原作とは結構変えつつ、そのエッセンスとコアをより鮮烈に届けられる形にまとめ直しているのは、まさに”アニメ化”の醍醐味であろう。
大間違いを繰り返した人でなしの”敵”が、主役と何も変わりがない事。
一筋間違えば、皆同じく成れ果てる事
そんな暗い平等性を、このアニメは静かに見つめている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
堂々お目見え為ったOPからして、”ガンジャ”とリコさん隊が、終わりきった過去と現在進行系の希望が、ぴったり重なるように描かれている。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第2話から引用) pic.twitter.com/9mNt4ijvqh
今回描かれた”楽しい”リコたちの旅と同じく、”ガンジャ”も笑い、挑み、食べてクソして必死に生きた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
その成れ果てがいかなるものか、宿ったカルマがどんな地獄を生み出したかは、今後描かれるとして。
一つ確かなのは、それは終わった物語だ、ということだ。
過去であり、残骸であり、敗戦地であり…
光を食いつぶす闇に飲み込まれてなお、新たな犠牲を求めて蠢く、凶暴な怪物である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
未来を切り開く勇者として黄金郷に、希望にあふれて飛び込んできた”ガンジャ”は、今回描かれた主役たちと何も変わらない。
ではなぜ、リコたちこそが冥府深奥に到達する偉業を達成できるのか。
物語に選ばれる理由、”ガンジャ”になくてリコたちにあるものは、一体何か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
今後物語は、それを血と涙とゲロで描いていく。
震えるほどに醜悪で、吐き気がするほど嘘がないものへと、深く深く潜っている。
だから、引き返せないほどに惹かれるのだ。
そんなダイブに、このアニメは本気だ。ありがたい。
というわけで、現象を追いかけていると地道な旅路…なんですが、あえて1話使ってその実感を、心震わすスペクタクルと危険を描くこと自体に、作者の気概と気合を感じることが出来ました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
やっぱこの手触り、噛みごたえが最高にいいな…含まれてる毒素で身体がビリビリするのも、アビス潜りの醍醐味だ。
『圧倒的にスゲェ美術を見てぇのよ!』て欲求も、山盛り応えてくれて最高。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
毎回毎層、味わいの違う絶景を山盛り届けてくれるの、ホント嬉しいよなー。贅沢だわ。
夢のように美しい場所で、渦を巻く世界と人間の闇。
村に追跡者に、気になる要素も適切に配置して…さて次回どうなるか、楽しみですね!
追記 『アニメにはOPがある』っていう、定形中の定形すらもこういう形で活かし、相当複雑な構造のお話が視聴者を的確にぶん殴れるよう、構成を考え抜いて殺しに来てるのは、稀代と信頼しか無い。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
しかしOPなしで尺を作って、二層構造の物語を一旦視聴者の中に入れた上で、『今回語られるお話は、前回見せた知らねぇ連中と運命的に交わってるから!』と第2話で見せてくる構成、情報の染み込ませ方が巧妙すぎてビビる。
あれがホントの出だしにあっても、知らない連中がなんかやってるだけ。
でも第1話を食べておくことで、”ガンジャ”とリコさん隊が同種の存在であり、決定的に隔たれた異物である魅力的な矛盾が、グッと身近に迫ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月15日
同じように笑い、同じように走った二つのチームが、違う部分はなんなのか。
地獄の間違い探しの予兆を、見事に創るOPであった。素晴らしい。