よふかしのうた 第5話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
コウくんとナズナちゃんの楽しい夜は、段々と画角を変えて描かれていく。
今回は今まで(そしてこれからも)コウくん主観で描かれ、底を見通せない大きな謎だったナズナちゃんの内心へと、カメラが移っていく。
そこに照らされるのは、思いの外つまらない夜だ。
テーマパークに、安住することは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
ビカビカと眩しく輝く真夜中の祝祭は、夜の種族にとっては日常そのものでもあり、コウくんが白けた昼をそういう視線で見ていたように、ナズナちゃんの夜は孤独で味気なく、面白みがない。
”一人では”という但書が付くが。
銭湯での合流を結節点に、モノローグの権利はナズナちゃんからコウくんへと写り、吸血鬼はエロティックで危険な魅力を取り戻していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
鏡をパパっと見れない、一般的な社会活動から切り離された異形の存在が、自分の輪郭を再確認できる特別な相手。
コウくんがナズナちゃんとの夜に見出したものを、ナズナちゃんもまたコウくんの中に輝かせているのだが、繊細な自意識を迷わせる少年はその事実に、なかなか気づかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
ドキドキするのも、楽しいのも、夜が輝くのもお互い様なのだが、コウくんの認識において、いつでもリードは女が握る。
夕方に目覚めてしまったナズナちゃんの世界は、幻想的なギラつきには塗られていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
そこは異様に広くて寂しくて、ただ夜が夜というだけでは面白くない、トートロジーが成立しない当たり前の世界だ。
では、何が夜を面白くするのか。
(画像は”よふかしのうた”第5話から引用) pic.twitter.com/YG1ElZyQs7
鏡に自分を映せない吸血鬼は、『どっかの誰か』に聞こえないよう答えを既に言っていて、しかし彼女の特別な少年にそれが届くことはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
白いトランシーバー…退屈な夜を切り裂いて、心臓を震わせてくれる、コミュニケーション・メディア。
着信を待ちわびるナズナちゃんは、淫蕩な夜鬼というより…
頑是ない童女のように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
しかしコウくんのモノローグが重たい一人称に視点が戻ると、エロティックで背徳的なドキドキが世界を支配して、その小さな震えは押し流されてしまう。
そうなるように、ナズナちゃんは己を演出している。
(画像は”よふかしのうた”第5話から引用) pic.twitter.com/HPbIFsQZFV
年上の特別な女に翻弄され、恋とセックスと関係性の複雑なタピストリーを、あるがまま追いかけていく贅沢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
ナズナちゃんを等身大の人間として見ず、ずっと自分を上回り導き圧倒する憧れとして見上げ続ける視線は、彼らの感情勾配を一方向に固定する。
このアンフェアな距離感は、食餌とまぐわいの入り混じった吸血行為の悦楽によって支えられ、加速していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
お前の血が旨いから、成り立つ関係。
複雑怪奇な感情をそのまま育み、吸い/吸ってもらって満たされる、歪でコケティッシュな間柄。
セックスするよりも刺激的で、友達でもいられる特別な行為
牙を突き立て血をすする行為は、二人が一人きりの時生まれる広大な空白を、ピンク色に埋めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
一皮むけば、別に特別でも面白くもねー日常を、力強く押し流してみっしりと埋めていく。
強引に迫って、ゼロ距離で体温を伝えてくる美しい獣。
その時消える、居場所のない白々しさ。
コウくんはそれが恋になってくれると良いな、と祈る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
発情するのが後ろめたい、大事な友だちとのかけがえのない時間をそのままに、いつか恋となり願いが叶い、面白くもないただの人間である宿命をひっくり返せたらな、と。
その祈りは性的興奮と入り混じって、女の震えを覆い隠す。
Bパート、コウくんはナズナちゃんの過去へと踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
添い寝屋を営み、医療行為に勤しんで吸血のチャンスを作っていた、けっこう健気な勤務努力。
そんな”仕事”を任され、挑発され、危うく振り回されることは、二人の距離を縮めるのか。
(画像は”よふかしのうた”第5話から引用) pic.twitter.com/4i0SuxPSDX
ここまで夜を彩ってきたカラフルな光が、現実のそれではなく心の繁栄であることを、青と赤に発火する獣欲と、突然のチャイムでそれが消え去る瞬間が教えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
”いかがわしい”仕事と、真剣な医療行為の狭間。
血を吸う方便であると同時に、ちゃんと誰かを癒やしているマッサージ。
その境目も複雑に入り混じって、区別がなくなっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
立派なことと卑賎なこと、見えてなかった過去と混じり合う今。
色んな境界線が溶け合って、価値が転倒し世界が新しくなっていく快感で、ナズナちゃんはコウくんを魅了し続ける。
そこに宿る、微かで確かなズレ。
ナズナちゃん視点の描写が増えてきたことで、そこら辺が見えやすくなってきたかなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
真夜中のテーマパークで続く、女が手を引き男が座れる、アンフェアで心躍る時間は実は、結構色んなものを抑圧し、見て見ぬふりをすることで成立する。
夜は、夜というだけでは面白くないこと。
その白けたリアリティをナズナちゃんも所有し、コウくんの心身によってだだっ広い退屈を埋めているのなら、少年を誘惑する美しい獣だけが、彼女の顔ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
それでも、ナズナちゃんは獣であり続けようとする。
健気で歪で、チャーミングだ。
そんな彼女の”仕事”を体験して、少年の何が変わるか。
誰もがつまんねぇ顔して歩いてる夜に、吸血種という異物があることで、何が生まれているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月16日
そこら辺を、次回は描くだろう。
楽しみである。
ゆったりと、あまりに悠長過ぎるとも感じられる語り口で積み上げられるものが、激しく化学変化する瞬間を心待ちにしながら、次回を待つ。