メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
宿命と嫉心が混ざり合い、ファプタの中に燃える炎。
己すら焼き尽くす憎悪は、仇に牙を突き立てる獣へと向かっていく。
食い尽くされ、蘇り、また食われる生き地獄の中で、流れ込む思いと記憶。
その瞳に宿るのは、無明か決意か。
そんな感じの超NO容赦! 久野美咲の声帯はもう限界ッ!! 烈日第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
害するものは害され、血を絞るのなら己が絞られる荒野の平等が、運命に空いた風穴から流れ込んでくる。
お陰でかわいい可愛いファプタは血みどろモツ煮込み、ゴア業界のスーパースターだよ!
正直趣味に全力疾走したやり過ぎ感山盛りであるが、虐殺の穂先に経ったファプタが一方的に殺す側ではなく、容易に殺され続ける立場にあると描くには、こんぐらい血まみれじゃなきゃ足りない感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
食われ犯され続けた母の立場を、心底から思い知るために必要な通過儀礼…とも言えるか。
運命に呪われようが記憶を流し込まれようが、”わたし”は他ならぬ私でしかなく、何かを選ぶのは”誰か”ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
意思なき道具ではなく、生き様を否応なく選ぶしかない生命である重荷は、ファプタにも村の住人にも選択を迫る。
生きるか死ぬかの土壇場で、どう己の心身を使うか選ぶ権利。
これを剥奪されたからこそイルミューイは哀れであり、ファプタは己で選んだわけではない炎に焼かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
それは未だ切れぬへその緒から供給され、ファプタを意思なき嬰児の立場に押し留めている。
噛みちぎるべきなのは敵の喉笛ではなく、自我を閉じ込める母なる羊膜なのかもしれない。
生まれるためには痛みが必要なようで、ファプタは心も体もズタズタに揺すぶられ、未知に翻弄されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
己の中にたゆたっていた燃える血とは、別のものが世界に…そこから何かを学び取っていた自分の中に、確かにあるのだという実感。
微かな残り香とともに、仇から手渡されたもの。
それがファプタの瞳を様々な色に変え、激しく錬鉄していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
無軌道な憎悪に、人の証たる優しさに、確固たる決意に。
様々に色に変える瞳は宝石のようであり、鍛え上げられた武器のようでもある。
それだけが、過酷極まる奈落の奥底に届く、鋭い光明だろう。
ベラフが手放し、捨てきれなかったものだ。
レグを退け、ファプタはリコを手に掛けようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
その刃はガブールンに退けられ、優しき機械の命が終わる。
それを超えてしまえば、憎悪の獣に成り果てる最後の一線。
彼女の王子を奪った憎き女への激情を、命で購う。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第11話から引用) pic.twitter.com/33YqvmEvaA
正統なる裁きと振り回した暴力は、愛しい人の命を奪う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
それを教えるために自分を使う自由がガブールンにはあり、彼もまた選択の只中へ己を投げ込んでいく。
決断は炎となり、ファプタは不定形の激情に表情を歪ませる。
獣と人の入り混じった、美しい貌だ。
そこに颯爽とたどり着くナナチは、先週見せた幼子の表情をもうしていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
消えゆく命に託された新たな帽子は、戦士の兜のように瞳を塞いで、揺るがない強さを支えている。
そうなれるようにナナチは二度目の別れを選んだのであり、今ファプタを翻弄するものを超えて、その前に立っている。
ベラフが成れ果てた己の身を食わせ、ファプタに届けようとするもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
過酷な運命に魂がすり減ってなお、確かにそこにあった暖かな思い出は、末娘に宿った憎悪の炎と矛盾し、同居もしうる。
譲れなかったはずの理想が忘却され、絶対に守らなければならなかった夢が、あっけなく崩れる。
そんな無情の嵐にかき消えそうだった、もう消えてしまった温もり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
闇の中の光。
烈日に確かに宿る、暖かなる闇。
ベラフは己を食わせることで、ファプタに過去を届ける。
それは彼自身ずっと目を背け、忘れていた…忘れていたかったものだ。
ファプタは復讐のために火葬砲で母なる緑の膜をぶち抜くことをレグに望み、レグは苛烈な戦場で、それに応えることを選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
閉ざされた門は開き、風が吹き込んでベラフは思い出す。
自分がかつて人であり、輝く瞳を持ち、その全てがかき消えて、なお消えないものがあることを。
それが不滅であることを伝えるためには、己を終わらせる必要があり、食い殺されることで繋がるものを、ベラフの思い出を食ったナナチは支え、導き、見届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
ベラフの消滅と不滅は、ファプタがたどり着くべき場所に先んじている感じもある
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第11話から引用) pic.twitter.com/62E0YdQiP9
ファプタはベラフの仮面に空いた穴…眼であり口でもある異形に入り込み、その命に騎馬を突き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
”食う”ということは双方向的な行いで、腹に落としたものは身の養いとなり、人間は自分が食べたもので作られていく。
人間の限界を思い知らされ、虚ろな穴に成れ果ててなお、意思を宿す瞳。
ファプタは匂いに宿った記憶で”一杯食わされる”と同時に、成れ果ててなお賢者であったベラフの祈りを己に引き受け、それによって組成を変えられていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
知らなかったことを知り、流し込まれる思いに翻弄され、運命の濁流に足を踏ん張って、己を選ぶ活力を得ていく。
ファプタはベラフを食べる。
これはベラフがイルミューイの仔を食べてしまった過去の意趣返しであり、蛇身の母としてその身でファプタを養うことで、ようやく彼の原罪が晴れた感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
乳を以て命を繋ぐことが、けして許されなかった異形の親子と、それを食って命を繋ぎ、獣に堕ちた賢者の聖餐。
それが終わっても、現実は続く
未知なる思い出に揺さぶられ、復讐の炎であることに揺らいだファプタだが、考える暇を奈落は与えてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
”ガンジャ”が望んだままの理想郷を掴めなかった、最大の原因。
アビスの過酷さが、成れ果て村になだれ込む。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第11話から引用) pic.twitter.com/Qv5IRqrhlj
弱肉強食地獄絵図。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
イルミューイの優しい羊膜が遠ざけてくれていた、一寸先の闇は過酷に、平等に、あらゆるものを餌にしていく。
それが村の外の当たり前で、各々の欲望を揺藍し、甘受し、精算する”人間的な”社会システムが維持できていたのは、この苛烈さを無効化していたからこそだ。
完全な閉鎖系では成り立たないからこそ、その荒々しさを”祭り”として内側に取り込み、咀嚼し糧とすることで、村は存続できた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
しかしそれは制御可能な”優しい暴力”であり、いま村に押し寄せる圧倒的現実とは質を異にする。
ワズキャンが神がかり、イルミューイが孕み、成れ果てが共犯した欲望の聖域。
それを打ち壊して焼き尽くすことを望んでいたファプタこそが、母なる村が遠ざけていた暴力的リアル、最初にして最大の犠牲者になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
因果応報の平等主義は、話数が進むほどヒロイン力を上げてきた異形の姫にも、一切容赦がない。
健気だろうと可愛かろうと、食われて死ぬのだ。
そして食われた程度では終われないのがファプタの呪いであり、母の祈りで生まれた祝福でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
『永遠に切り取れる肉』として、母とほぼ同じ状況に置かれてるのが因果だし、容赦ないなぁ…と思う。
質感ある記憶を体験してなお、己を還らえないのであれば、不滅の痛みを糧としろ。
ベラフがその眼で見届け、成れ果ててなお己の最奥にしまい込んできた柔らかな記憶とは全く違う…そして根本的に同質な、世界の異質性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
牙となり爪となり襲い来るそれは、圧倒的な実感を持ってファプタを翻弄する。
そらそーだ、食われてるからな。
『アタマでどんだけ考えても、答えなんて出ないよー!』と、健気なこと言った三秒後にこの肉ミンチなんだから、つくづくこのお話はフィジカルである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
飯を食い、糞をたれ、死にたくないと願う生身の体があってこそ、人の死と生がある。
そういう姿勢は、リコがぶりぶりひり出してた頃から共通だ。
しかし肉を引き裂かれる痛みよりも強く、ファプタを切開するのはガブールンの死だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
仇を燃やし己も燃え尽きる、宿命に呪われた炎でしかないのならば、なぜその終わりに涙するのか。
失われて欲しくないと願う心があり、燃え盛る恩讐に突き動かされ、愛を告げるその牙で仇の喉笛を引きちぎる。
ベラフに託された思い出を食って、未知に震えるファプタであるが、彼女が目を開いて今見つめるものは、ずっとそこにあったものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
意思なき炎であり、誰かを愛しうる人であり、血に狂う獣であり、不滅の姫でもある。
矛盾に満ちて広大なのは、ファプタの外に広がる世界だけではない。
過酷で捻くれきった運命に押し流され、それでもなお意思を宿した己自身が、世界よりも未知なる存在として、血みどろの嵐の中で立ち上がってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
ファプタは己の牙で、絡み合った因縁で、彼女を愛した人たちの思いで、へその緒を断ち切り、己の実相を見つめつつある。
真実、生まれつつあるのだ。
それがなんかキラキラした夢とか希望とかだけで終わらず、沢山の人が死んでいく過酷な闘いと、そこに絡みつくドス黒い炎も必須なのが、アビスだなぁ…って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
万色入り交じる曼荼羅を描くなら、そらー光の絵の具も、闇の深さも両方必要だよね。
その根っこは繋がってるんだから。
絶望の果てにファプタは意識を闇に閉ざし、影にギラつく瞳に射抜かれながら目覚める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
仇なる者たちが選んだ、己を差し出し命を繋ぐ決断。
それが成れ果てに残った欲望と悦楽なのか、終焉に際して”人間性”を蘇らせた結果か。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第11話から引用) pic.twitter.com/UPXWKbWaGL
判断はつかぬまま、ファプタは仇の血肉を喰らって糧とし、宿る思いを腹に落としていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
(リコがそうしたように)言葉を学び穏やかに分かり合っていく道は、獣の姫には残されていない。
食うか食われるか、仇か仲間か。
牙でそういう切り分けをする以外に、炎に選べる未来はないのかもしれない。
しかし確かに今回、ファプタはベラフの思い出を食い、ガブールンの死を喰い、差し出された聖餐を口に入れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
それは己の使命も願いも押し流していく、圧倒的な獣の波にもう一度立ち上がり、瞳に炎を宿す助けとなっていく。
未知に戸惑いつつ、噛み締めた実感を力に変えて。
ここまでリコ達が進んできた奈落グルメ旅を、凄く猟奇的で捻れた形で、今回ファプタは走っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
それはあのイドフロントで、プルシュカが一瞬友達と駆け抜けたあの冒険…笛と成り果ててなお続いている歩みに、少し似ている気がする。
子どもたちの足跡は血と涙で描かれつつ、重なっていくのだ。
感情も肉体もグッチャグチャにかき混ぜられつつ、たどり着いた地平。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
瞳に宿る光はかつて、賢者が人間の証と信じた輝きそのものだろう。
だがファプタが選び取る決断は、ベラフのそれとは違い…違うからこそ意味がある。
それぞれの業、それぞれの因縁、それぞれの心身。
そこに宿った価値を証明するためには、凄惨なる精算に挑む必要があるってのが、アビスの流儀である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
苛烈なる始まりを知らぬまま村にあぐらをかいてきた連中が、ぶっ殺されたり食われたり己を差し出したりするのは、村のルールだった”精算”の精算っぽくて、結構好き。
復仇の正当性はありつつ血に濡れた大虐殺者でもあるファプタが、落とし前をつけて新たに進むために、『もういいって!』と言いたくなるほど過剰に食って殺して蘇って…してた感じもあるな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
その暴走は過ちではなく、正しくもない。
世界に満ちた眩い矛盾そのものとして、炎は燃えている。
それが行き着く成れ果ては、一体どこか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
世界の全てから拒絶された者たちが手に入れた、どこにもない故郷の精算は、いかな残酷に燃え盛るのか。
幼子達はその祝祭に、何を学んで進み出すのか。
烈日決着まで、後数話。
続きがとても楽しみですね。
追記 (BGM:タチムカウ~狂い咲く人間の証明~)
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
ロボットであり、道具的存在であるはずのガブールンおじさんが、一番優しくて全うってのは皮肉だし、凄くこの話らしい描き方だと思う。
人間の形をしてるかとか、どう生まれてきたかとかでは人間の条件は決まらないのだ。
それは眼差しに宿る光と、生命の使い方だけが与える資格だ。
ベラフもガブールンも、魂を燃やしきって己を示した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
では迷えるファプタは…? つう所なんだが、未だ底を見せないワズキャンもまた、人でなしなりの人間証明をまだ隠してて、面白い描き方だと思う。
あの飄々オッサン、欲望の権化なのに何望んでんのか見せきらないから、大変オモロい。
リコもナナチもレグも、ファプタと同じ運命の子どもたちが決断を果たし、道を作って他人に預けてるのが、またいいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月14日
彼らにとってファプタが翻弄されている嵐は、高い授業料払って超えてきた人生講義であり、譲れない答えは既に出してある。
幾度も迷ってなお、進む道は掴んであるのだ。