リコリス・リコイルを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
天命の狂信者が用意した天秤の上で、少女が何かを選び、最後の決闘場に身を投げていく最終話一個前。
サックリ退場したと思わせて、ターミネーターの如きしぶとさで最終決戦を担当する真島の千両役者ぶりが、なかなか気持ちいい。
そこに至るまでの、試練の描写も良かった
たきなが塔から降りる決断をし、千束を覆う闇を光でこじ開けた時点で、(この段階での)真島と決着は付いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
あるいは、真島と千束が真に決着を付けるためには、彼女の父であり生き方の師であるシンジを超えていく決断が必要…という話かもしれない。
千束は望み通りシンジに直接全てを問いただし、残酷に裏切られてなお今までの生き方を貫く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
自分の命か、胸の奥に秘された心臓か。
たきなの未来か、己の信念か。
錆びた鉄骨はユースティティアの天秤のように不確かに揺れて、彼女の生き様を試す。
殺すか、殺さないのか。
死ぬか、死なないか。
そんな根源的で厄介な問いかけをアランの子供に投げかけるために、様々な事件と状況を手間を惜しまず編み上げたシンジは、千束という一人間を愛していたわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
彼女に宿る才能、それこそが世界を律するのだというアランの信念、それに殉じる己に酔いしれて、厳しい試練を捏造する。
愛してほしければ、俺を殺せ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
あの時俺に与えられた命大事の価値観を投げ捨て、俺の望むまま、殺しの天才でいろ。
シンジは臓物引っ張り出してまで、そんな問い掛けを千束に投げる。
ミカとは真逆に、その瞳が見ているのは千束という概念、殺しの天才という虚像だ。
天運(あるいは物語的都合/必然)に助けられ、千束は実弾でシンジを撃ってなお、殺めないですむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
自身に救いをくれた贖い主を超えて、彼が自分に差し出した虚構を生き様で貫く姿は、リコリコでミカと二人交わした魂の対話とはまた別の、父親越えのドラマだったと思う。
ヒトが神を殺すことで人となり、子が親を超えることで大人になるのだとすれば、シンジの描いた絵図を超え行くことは、千束が真実自分の足であるき出すための、過酷なイニシエーションだったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
ラスボスポジションを見事にかっさらった真島も、そういう意味では父超え/神殺しを成し遂げたのか
ここでいう”殺し”は勿論概念的なもので、シンジが世界絶対のルールであると信じる天命を超えて、個人が個人として好きにやりきること…己の生き様でそれを否定する事で、彼らは後援者を超えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
今まで自分を支えてくれたフクロウを返すことで、千束は真実千束となる。
何もかもが思い込みと誤解でしかなかったが、それでもシンジが与えてくれた命と夢は何より大事で、だから全てを賭して信じるまま生き抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
殺しの天命に逆らい、不殺の銃使いとして闘いきれるか…最終試験は、真島が問いただすことになる。
VSシンジは、まぁ中間テストってトコロね。
もう一人の父が与えてくれた人を殺さない弾丸を奪われ、親友の命を天秤に乗せて問われる信念。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
こんだけ苛烈な状況で、誰も殺さず己も歪まない結果をもぎ取れる時点で、千束の才能は”殺し”ではなかったのかもしれない。
聖人のごとく清らかに、己を捨てて夢に生きられる。
それが、千束の真実の才か。
アランの子ならぬたきなには、銃弾を見切って避ける眼も、極限状態で理想を信じ切る魂もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
決別してなおDAの子である彼女は、殺すべき命と護るべき命の天秤を、一方に傾ける傲慢…人間当たり前の優先順位表がある。
(画像は”リコリス・リコイル”第12話から引用) pic.twitter.com/1EpqEfxndg
今回Aパートは眼の書き方…そこにかかる明暗の使い方が大変鋭い話数だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
まっすぐに揺らがないシンジの狂信を、千束はあくまで陰ることのない瞳で受け止めて、影を纏うことはない。
しかし乱入したたきなは、一度踏み込んだ光から人間性の影へと回り込み、こんな状況を作ったシンジを断罪する。
それが道理に悖るとか、正しくないとか、そんなデカいことは考えていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
たきなが殺意の影に身を投げるのは、自分を光の中で抱きしめてくれた少女がコイツのせいで苦しみ、コイツさえ殺せば生命が繋がるからだ。
『心臓が逃げる!』と、シンジを全く人間扱いしない吠え声で呼ぶ時、瞳は狼のそれだ。
それが良かったな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
こんだけ悪辣で激烈な試練にさらされて、千束はなおあまりに強く正しい。
こすってもこすってもその魂は黄金で、死に向かいつつ何も揺らがない。
それは正しく、美しい。
でも人間ならば、酷薄な現実を前に苛立ち、怒り、揺らいでほしいとも思ってしまう。
しかし聖人の天命を背負った千束は、善き出会いに導かれて、嵐の中でも揺らぐことはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
そう出来ないのが、ミカが守りシンジが試した、錦木千束なのだと思う。
その代わりのように、たきなは殺す気満々で銃を構え、力強く吠える。
そんな生き方、アランに選ばれない凡才には出来ないからだ。
でもそこで揺らぐ未完成を千束は愛していて、そんな未熟な人間が織りなす街へとたきなを導いて、綺麗なものを教えてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
その出会いがあったからこそ、たきなは一匹の獣として、千束を愛するただの人間として、牙を剥き出しに怒り狂う。
喉笛を狙って、必要な未来をもぎ取ろうとする。
それは低劣な愚鈍にまどろみ、リコリスを贄に反映を貪るこの日本には、生まれ得ない闘争の本質だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
真島が一番見たかったもの、証明したかったものが、その宿敵をキャストに演じられるのはなかなか皮肉であるが、彼が投げつけた倫理的爆弾を受けてなお目覚めぬ人々では、演じれないドラマでもある
たきなは友達大事な優しさを、銃弾で人間薙ぎ払うことでしか表せない欠陥児童で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
その歪さ故にリコリコに追い出されて、そこで千束に出会って抱きしめられ、優しさの使い方を学べた。
そうやって新たに己を生み直したからこそ、一方の手で殺しの道具を握りつつ、もう一方に握った拘束銃で決着を付ける
千束が大事で大好きだからこそ、たきなはシンジを殺し心臓を取り戻そうとするし、生き死にの極限でなお、殺さぬ手筋を追い求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
千束に抱きしめ静止されるより早く、平気で殺す自分ではこの人の隣にはいられないのだと、直感し己を制していたのかもしれない。
倫理の首輪をつけた獣は、もはや人だ。
たきなの愛と激情が場を乱し、あるいは自分を撃ち抜いて、千束が持つ(はずだった)殺しの才能を目覚めさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
かつてシンジがかけた凡人への期待…あまりに舐め腐った計算は、たきなの中に育っていた/千束との日々で育った強い魂でもって裏切られる。
そこまで持っていた時点で、千束は父に勝ってた
千束がこういう極限状態で正しい選択を果たし、体を張ってたきなを止め、同じ道を歩かせる力を宿したのも、自分一人の力ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
ミカの愛を受け、シンジの思惑を越え、その幻想を信じぬいた結果、とても素晴らしい人に育ったからこそ、錦木千束は井ノ上たきなに強く響いた。
そしてたきなの存在が千束に強く響いたからこそ、自分を支えてきた夢に裏切られ、甘い幻想を打ち砕く戦いに身を投げてなお、彼女も立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
仲間を救うべくもう一つの戦場に駆けつけて、自分達だけで終わらないベストエンドをもぎ取りに行ける。
そんな二人の共鳴を、描く物語。
…で終わらせると、彼女たちを取り巻く世界のザラつきを切り捨てちゃうことにもなるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
やっぱ”私”に拮抗する”公”が弱いのがこの話の特徴で、久野美咲声の電脳神、クルミちゃんの差配でなんもかんもが丸く収まり、デカくてヤバいはずのモノが個人のドラマに圧倒されてしまう運びは、正直荒い。
まぁそこに焦点合わせている話でなし、極めて歪なリコリス・ジャパンは二人の少女の青春を描くための道具立て…てのは飲める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
そうして色んなものを後景に下げて、何を前に押し出すかの割り切りとバランス感覚が優れていたから、ここまで楽しく見れた(そして楽しく見終われそう)なんだしね。
目の前で人が死んでなお、その意味を受け取れないあの世界の日本人の愚鈍は、戯画であり批評なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
同時になんか”現実”なるものによく似た東京を成立させるには、あんまりに異質なミュータントにも思える鈍感さで、だからこそDAとリコリスが必要なんだろうな…とも感じた。
くるみにしても千束にしても、群たる”公”を圧倒する”私”が結構な頻度で生える世界で、それをどうにか制御しつつセカイの形を保たなければいけないと考えると、アラン機関が怪物的影響力を持つのも納得ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
愚鈍な個人を寄せ集めても、けして良い答えが得られない世界。
少数がその日常を庇護するため汚れ役を被り、鈍麻した平和な夢を見せて、羊を導く世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
まぁ、そういう場所の物語だったんだろうなぁ…と、今回見てて思った。
あの落着を見てると、そらー真島も爆薬で”現実”ふっ飛ばして、気持ちの悪い連中に目覚めて欲しくなるよなぁ…。
たきなと千束が生きた日常は、あの愚劣の上に乗っかってる、綺麗な砂上の楼閣で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
真島が銃弾と信念でどうだけ揺さぶっても、崩れてはくれないようだ。
土台にある愚かさを知りつつ、千束が愛しき水族館デートを、美味しいスイーツをたきなと共鳴させて、魂を繋げていたのか。
たきなが獣の目で打ち抜きたかったものは、塔の下に広がる寝ぼけた日常の中にこそないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
そんな疑問も湧き上がってくるが、さて次回、そこら辺を真島兄さんが暴力的に問いただしてくれるのか。
貫禄と実力、何度も食い下がるしぶとさは十分以上で、期待が高まる。ホンマいいキャラよ。
千束はとてもいい意味で等身大なキャラで、エゴを超越した聖なる自己犠牲を飲み込めるくせに、デカい世界のことはさっぱり分かんない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
神様に一番近い魂を持っているのに、シンジみたいに世界の形を勝手に決めず、目の前にある手が届くモノだけを判断材料に、世界と他人を愛すると決めてる。
そのコンパクトな”私”が、彼女を人間離れした理想を貫きつつチャーミングな隣人として、ギリギリ成立させているのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
そんな彼女が取りこぼすものは、たきなが食らいき拾い上げてくれることを、今回書いてもくれたしね。
聖人と獣…聖ヒエロニムスっぽくて、いい組み合わせじゃないの。
千束の聖なるミーイズムを学び取ったたきなが”殺し”を望み、それを”生命”を望む千束がギリギリでとどめて、友達として並び立てる関係を維持するのは、対等な距離感で凄く良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
ずっと千束に手を引かれて人道を歩き直してたたきなが、体当たりで抱きとめてもらう間合いにまで突っ込めた…つう話か
そうして近づいた距離は、真島の横殴りで引き剥がされたが、ロマンスに一時の別離はつきもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月19日
千束の心臓がどうなるかというサスペンスもうまく引っ張って、さて来週最終回。
大変楽しみですね。
…今からでもぶっ壊れねぇかな、あの世界の”平和な東京”…とは思うが、そうなると千束が悲しむからな…