機動戦士ガンダム 水星の魔女を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
禁忌の技術を用いたスレッタは魔女の疑いをかけられ、ミオリネは未来を掴むべく奔走する。
少女たちを捉える檻は、目に見えるものばかりではない…というお話。
MS戦を控えることで、作品が展開される舞台、そこに上がる役者を横幅広く描く回…
なんだけど、そこで終わらず予断と予測を上手く作ってはスカし、想定外の位置から殴りつけ、気持ちよく転がしてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
状況を整えている最中でも物語が停滞せず、ゴロゴロ転がっているダイナミズムを感じられるのは、大変に良い。
この楽しさを潤滑油に、状況描写も素直に腑に落ちていく。
前回鮮烈なデビュタントを果たしたスレッタは、今回檻に囚われ動けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
水星からの異邦人であるスレッタは、学園に構築された歪な社会においては力が弱く、自分を檻から開放できない。
MS戦においてはスレッタとエアリエルの力を借りてたミオリネが、今回は状況変化のハンドルを握っていく。
物理的実行力のスレッタと、社会的影響力のミオリネ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
こういう感じで赤と白の少女は役割分担していくのかな…と、バディの関係性を二話にして飲み込ませていく展開である。
花嫁であるミオリネが一方的に守られ受け取るだけでなく、王子様に益を与え、あるいは戦いを強要するフェアな関係。
それはミオリネが父に望んでいるものであり、反発しつつもダブスタクソ親父そっくりに、強権的なやり口を発露してしまう現場でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
父母という呪い、家族という呪い。
バックボーンにある会社≒家族の影響力は、一見特権的自由にある学園に長く延びる。
第1話で散々ハチャメチャぶっこいて、世間のルールから遊離したパラダイスに思えた学園だが、この話数ではその不自由がどっしり描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
決闘は外からの実力介入でひっくり返され、大人たちが定めた権力の構造は、そのまま学園に移入されている。
正しいから正しい、強いから強い。
傲慢極まる父王のルールを、強制的に押し付けられる不自由な檻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
学園の外側にたゆたう差別構造を、そのまま飲み込んだ人倫のスラム。
そういう顔も、どんどん見えてくる。
経済ピラミッドの上位を写し取る構造だからこそ、その歪さと差別意識もコピーされるんだろうな…。
ニカ達アーシアンの肩身は狭く、まともに飯も食えやしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
こういう根本的な生きづらさの畢竟に、自由を奪われ牢獄に閉じ込められたスレッタもいるが、そこに糧を差し出してくれるのが『他人に興味ない』はずのエランくんである。
ケット・シーさん立派になって…(プリキュア映画見た)
僕は飯も自由に食えない侘しさに追い込まれ、そこに差し出された魂の糧を腹にかっこみながら涙する場面がいっとう好きなので、スレッタとエランくんの好感度、この場面でグンと上がってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
そういう等身大の人情が、この最果てにも一応ある。
しかし企業と家に挟まれ、どう転がるかは解らない。
スレッタが虜囚の不自由に閉じ込められる中、ミオリネは地球へ逃げ出す自由と、踏みとどまって未来を掴む自由を天秤にかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
散々学園と親父のクソっぷり、分厚いフラストレーションを積み上げたから、前者を選ぶのも当然…と思わせておいて、前に進んで”二つ取る”決断をするのが上手い運びだ。
大人たちの審問場に乱入仕掛ける勇気は、便利に利用し振り回してる(ことに、多分ミオリネ自身気づいていない)スレッタから貰ったものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
多分この影響も無意識で、がんじがらめの世界を切り開いてくれる同志への信頼が、プリプリツンツンしてるお姫様の中に、ジワジワ湧き上がってきてる。
スレッタとミオリネが顔を合わせるのは、今回ラストしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
しかし離れたからこそ、そこで未来を選んだからこそ見えてくる運命の引力、互いの影響力があって、それをこういう風通しの中で強調してくるのは巧みだな、と感じる。
それは不自由の中、選ぶことで表現されていく。
退くか、進むか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
逃し屋に問われた時、携帯電話のカウントダウンがひっそり、強烈に画面に焼き付く。
否応なく転がっていく運命に翻弄されながら、スレッタもミオリネも何かを選ぶしかない。
選ぶことは出来る。
…出来るのだろうか?
王と魔女が、呪いを掛け合う重苦しい世界の中で?
どー考えても正体隠す気がない(少なくとも視聴者には)能登仮面が顔を見せ、丁々発止の根回し戦闘を華麗に切り抜けてもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
スレッタは母が水星から送り込んだ毒であり、偶然であり運命に思える出会いも、決闘の勝利も、遠大な呪詛の一構成要素でしかないと、”ゆりかごの星”は既に描いている。
娘がなーんも知らないまま捉えられた、『ガンダムである/ガンダムではない』という定義と、その罰。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
露骨ガンドARMなのをシレッと『新種のドローン技術です。安全に採掘できて便利です』と言い逃れる、鋼鉄製の面の皮。
学園の人形遊びは親たちの上部構造に支配され、翻弄され、利用されている。
傲慢なるデリング王を頂点に、佞臣が複雑に騒ぎ立てる軍事宮廷。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
ここに仮面の魔女はスルリと滑り込み、切り崩せそうな虫に粉をかけた。
前回爆破テロの下剋上を企んでたと書いていたことで、政治工作のターゲットにヴィム・ジェタークが選ばれる必然性もすんなり入る。
能登仮面の思惑は見えきらないが、エアリエルの主たるプロスペロが顔を出したことで、状況は大きく揺れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
MS技術のショーケースでもある決闘で、圧倒的な力を示せば、奪われつつあるシェアも回復できて、利のみを正義とする企業連合体の目的にも叶う。
こういう大人の思惑に、かわいい水星たぬきだけでなく、憎らしい噛ませ犬も囚われているのは、なかなか複雑だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
学園という狭い水槽の中で、小さな差別意識を突き合わせている子どもたちが、社会なり親なりの長い手に囚われ、不自由ではない。
その不自由を見て見ぬふりして…
あるいはシャディクのようにひと足早く、上部構造に片足を突っ込んで、現状を追認していく歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
学園から出ようともがいているお姫様は、そんな腐ったスタンダードにどうにか反逆する術を、必死に探している。
そういうデカい視点ではなく、あくまで父への愛憎で動いてるのが、体温あって良い。
檻の中の檻ともいうべき、扉があって鍵がかかる小さなスペースを、子どもたちがアジールとし、心を許した相手に共有している様子が、このアニメ結構大事にされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
エアリエルのコクピット、ミオリネの温室、あるいは牢獄に届けられた糧。
そこは囚人たちが小さく守れる、幼さの聖域だ。
そこが安らかなる鋼鉄の子宮として描かれているのか、それとも母なる暗黒の寝床なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
プロスペラの魔女っぷりを見るだに、シンプルな聖母子礼賛とはいかなそうである。
ミオリネが地球に生きたい理由も、死せる母の故郷に惹かれてる…って話なんかな?
さておき、自律したルールで動いているように見えた学園は大きな檻でしかなく、それを包む社会もまた、不自由に満ちていると描かれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
全てのガンダムは廃棄する。
PROLOGUEで描かれ、魔女を魔女にした殺戮は絶対のものではなく、複雑怪奇な政治的定義と、超エゴ人間の独断でどうにでも揺らぐ。
ガンダムを国際条約で規定される呪いに定めたことで、『ガンダムである/ガンダムでない』というジャンル定義が作品内部で常に問われてるのは、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
なにしろ長くてデカいジャンルなので、そういう自省と再定義を繰り返して新生していくことは大事だ。
『GUND-ARM』を審議の大正とすることで、ジャンル内批評を物語の同軸に乗せた…と言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
。
ガンダムである罪は傲岸の王が代表する力によって定義され、水星の魔女が代表する知略によって揺るがされる、相対的で危ういものだ。
異邦人であるスレッタは、それに挑戦する権利を持たない。
ならばとMSを動かせないミオリネが、大人が押し付けた決闘ゲームを逆手に取る形で、自分たちの望む未来へ道を開いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
そこにスレッタの同意はない。
大嫌いなはずのダブスタクソ親父と同じ傲慢さで、ミオリネは二人のためになる明日へ、王子様の魔法に背中を押されて踏み込んだ。
ミオリネが完全に正しくも、間違っても、強くも弱くもない半端さが、大変いい感じだなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
今回メソメソお腹空かせてたスレッタも、同じように半端で無力だ。
先に進めば二つ。
嵐の中道を示してくれる呪文も、親たちのエゴを見れば、無原罪とはいかないだろう。
しかしそれでも運命はとどまらず、激しくうねる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
その波を乗りこなし、より自分らしく自由になれる檻の向こう側に、二人は進んでいけるのか。
異様な速度で屹立したグエル先輩の完全敗北尊厳凌辱フラグは、果たして完遂されてしまうのか。
檻としての学園、無力な子供としての顔を鮮明にしたことで、先輩がぶっ倒してスカッと水星する餌食ではなく、どーにかせにゃならん同胞の体温手に入れつつあるの、ほんと凄いなぁと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
話数…ていうか秒数の使い方が相当上手いよね、このアニメ。
何書いてどう刺すか、考え抜いてる印象がある。
メチャクチャで乱暴で、だからこそ破天荒な自由を象徴すると思えたMS決闘は、社会と大人が伸ばす操り糸に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
しかしルールはルールであり、ミオリネはその意図を逆手に取って、エアリアルと婚約者を守り、自由を手に入れるための手段として活用する道に飛び込んだ。
この条文利用は、義母になるプロスペラの政治劇の巧さ、クソ親父のスーパーエゴっぷりに通じる感じがあって、なかなか楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
憎みつつも親の影、社会の長い手に包まれながら、その影響を受ける子供たち。
彼らのあがきがどんな波紋を生み、軌跡を生むのか。
次回も楽しみだ。
追記 ダイレクトに突っ込んでズコズコドビューするわかり易さから、徹底して距離を取っているからこそ描ける、間接話法の誘惑。
全くド好みである。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
閉ざされた小さなアジールに『入れてあげる』ことで親愛と連帯を示す動きは、己の体内に入ることを許すエロティックな特別さとひっそり繋がってて、婚礼と性愛を戯画化しつつ、運命で繋がってる二人を面白く照らしている。
スレッタもミオリネも、外形化されたお互いの心、その一番柔らかい褥を…
相手に許すことから関係を始めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
ジェターク一派には身を挺して『入れてあげない』事を選んだ、母なる音質。
そこに踏み込ませ、赤い実を食べさせた時点で、フィジカルでエロティックな繋がりを白い少女は赤い婚約者に許している。
衣一つ脱がぬまま、果たされる特別な契約。
エアリアルの内側を許したスレッタもまた、ミオリネに操は捧げており、鋼鉄の兵器で共に眠ることで、親との関係に翻弄され傷つき、しかし屈しない少女たちの縁は深まって行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
主役二人の距離感は非常に清廉に、ある意味少女小説的な肌理で描かれているが…
だからこそお互いの最も柔らかな部分を最速で許す特別さ、その選別のエロティシズムが馥郁と匂う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
象徴にクッションさせて、誰かを運命と選び取るダイナミズム、そこから生まれるセイの躍動を静かに描いてくる筆。
貴方だけに。
その囁かれぬ呟きは、やっぱエロい。素晴らしい。
この香り立つエロスが無自覚だってのが、子供を主役とする物語として大変いい感じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
成り行きに流され選んだフィアンセが、実は世界で唯一自分を抱きとめてくれる特別なのだと自覚した時、二人の頬はどう赤らむのか。
それを見届ける瞬間が、今からありえんほど楽しみである。
追記 技術それ自体が呪いであれ祈りであれ、在り方を生まれた時から定められる本質主義と、使うもの、社会的文脈によってその在り方を定められる相対主義のせめぎあいとしても、このアニメは見れると思う。技術論的な視座があって面白い。
水星追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
『ガンダムは安全なドローン重機、過酷な環境での助け』てのは能登仮面の言い逃れであると同時に、軍事転用されることでしかガンド技術育てられなかった呪いの奥にある、本質的な祈りでもある。
その本領すら煙幕に利用して、企業宮廷で意思と謀略を通すのが、”水星の魔女”なのだろう。
エアリアルくんの使われ方は『人命救助用具』『立ち向かうべき場所からの逃走を封じる壁』『尊厳を蔑する婚礼に勝利する騎馬』『幼子を守る聖域』と、現状ポジティブな色が濃い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月10日
これが生の政治に揉まれて、ロクでもない兵器の本分に戻ると、悲しい気持ちになるだろうな…エアリアルくん好き。
ガンド技術はカテドラルが定義し封じたような、人の魂を喰う呪いなのか、かつて望まれていた宇宙へ花開く希望の階なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年10月11日
異様なガンド適応を見せているスレッタがこれからどう闘うかが、一つの答えになってくのだろう。
それは彼女の意思であり、母の思惑でもあるか…。