イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アキバ冥途戦争:第3話『メイドの拳、膵臓の価値は』感想

 萌えと暴力が合体事故起こし、良くない煙がモークモク! ぶっちぎりロクデナシストーリーの王道、地下MMAが主題の第3話である。

 

画像は”アキバ冥途戦争”第3話から引用

 ……なんて嬉しくない全裸なんだ……。
 あんまりにも”媚び”を削ぎ落としたソリッドな人体描写に、今更ながら作品の”本気”を感じ取りむしろ喜んでいるけども、今回も話は大変にロクでもない。
 つーかちったぁキャラ萌えとか肌色サービスとか、横目をふる要素を混ぜて贅沢できそうなセッティングなのに、あえてそういうモンを積極的に踏みにじっていくまーったく可愛くない作風が、一直線の悪趣味覚悟を感じさせ大変良い。
 半端に二兎を追うなら、最初から最後までオタクの頭を踏めッ! ナメるならケツの穴までナメろッ!!
 そういう後退のネジの外し方、僕は嫌いじゃない。

 

 臓器売買と違法フィギュア取引、八百長試合に異邦人ヤクザと、ロクデナシの種が随所に蒔かれた今回。
 しかし話には不思議な手応えと満足感があり、『このまんま、無表情サイボーグが暴力無双し続けるのかな……』と思ってた所に、気持ちのいいストレートが入った。
 やっぱ主役の強さにある程度”対等(タメ)”張れる相手がいてくれたほうが張り合いも出るし、激戦の中でこのお話が全力で踏みつけにしている”可愛さ”ってモノの輪郭も、ちょっとだけ見えた気がする。
 ……いや、やっぱ全力で踏んでいるな。メイド喫茶業界は当然として、フィギュア業界の人にも謝っておけよ!!

画像は”アキバ冥途戦争”第3話から引用

 今回はW主人公の心がヘアゴムで通じ合うエピソードであり、鉄面皮にまーったく似合わないデコ上げで、嵐子は武装し続ける。
 それは自室で自力で創傷を縫い上げる奇人にマジビビりつつ、それでもなごみが差し出してくれた歩み寄りを、侠(おんな)は無碍に出来ないからである。
 顔には出にくいがやはり、嵐子の心には古臭いヤクザ・スタンダードが静かに燃えており、看板にツバ吐かれたら、人情を踏みつけにされたら、黙ってはいられない。
 金と欲にまみれ、命も夢も紙のように軽いこの末世で、嵐子はもはや失われてしまったものを信じ、求め、その残骸を無垢なるなごみに差し出されて、鉄面皮に感情を走らせる。

 嵐子が”可愛い”としたらその偽りなき迸りであって、トウのたったデカ女が無理くりフリルで飾り立てられている無様さを越えた所に、真のメイド心は宿る……はずだ。
 ぶっちゃけ髪上げ嵐子ちゃんはまーったく可愛くないし、それは製作者が意図したところでもあろうが、同時に外装に関係ない部分で嵐子の性根が髪上げされる今回、彼女は今までより全然”可愛い”。
 何が譲れなくて、何を大事にしたいか。
 キャラの価値観が見える時、やっぱり見てる側の心は作品に近寄っていく。

 そういう回だからか、もはや恒例となったクズヤクザの虐殺は嵐子ではなく、クズがクズを獲るアキバの日常に仮託されていく。
 何も生み出さない無為な試合であり金儲けだったが、自分の”可愛い”を見つけた助っ人外国人と、どクズ共にも確かに宿る絆を手に入れて、”とんとことん”の毎日は続く。
 そういう手応えと爽やかさがある回で、まーた嵐子が血みどろブッシャーな虐殺ギャグで話を締めていたら、せっかく作り上げたものが霧散していただろう。
 同時にパターンを崩すことで、『嵐子とこのお話は”そういうの”ばっかでもないんだな……』という実感が強まり、第三話の心地よい裏切りとして良く刺さった。

 

 同時にヤクザ世界のロクでもなさを(主に店長が捨て身で、しかもワリと勝手に)残してもいて、なごみの無垢、嵐子の侠気が報われる場所なのかは、未だに疑問が残る。
 取り立て屋との水飲み漫才は、テンポも運びも切れ味が良くて大変面白かったが、そこから突き出される結果はマジでろくでもない。
 キラキラした眼で『ワイハでイケメン囲う!』と、超終わっている夢を迷わず突き出す店長を見ていると、”とんとことん”の未来は変わらず暗いのだと、心の底から確信もさせてくれる。
 クソトラブルを引き込む装置として、店長の徹底した無能、下衆、不思議な憎めなさは大変良い仕事をしていて、今後もひどい事件を沢山生み出してほしいものだ……。

 こういうドブみたいな世界で、しかし確かに人情は重なり合い、縁は生まれていく。
 それに一度裏切られ地獄を見たからこそ、嵐子は上手く笑えない可愛いメイドになり、なにかキラキラしたものを諦めきれないからこそ、似合わないメイド服を着込んで自分の信じる”可愛い”を追い続けてもいる。
 そんな嵐子の熱を、なごみが感じ信じる回でもあった。

 クソヤクザは純粋無垢なボクサーアニメを見て、地獄の地下闘技場を生み出した。
 主人公を見守った純朴な少女は、カネのため偽造され生命の取り合いに繋がる。
 神様なんてどこにもいねぇこの世界、御伽噺が語るキレイなものは必ず薄汚れ歪んでしまうが、そこで描かれていたはずの綺麗な情念は、二人の間に確かに息をしていた。
 『”メガロボクス”の後によーやるよ……』というジョーパロの隙間から、そういう形で『今回ファイターとセコンドの話をやった意味』が浮かび上がってくるのは、結構好きだ。

 ドブの中に輝く確かな輝きを書くほど、心底ろくでもないこの世界がすぐ裏切ってきそうで怖くもあるが、しかしトンチキでまーったく可愛くないメイド達の”可愛さ”を作品を追う縁と、信じたくもなる。
 そんなお話との距離感を、ジャブで探ってストレートに殴られる、なかなか気持ちのいい回でした。
 抜け目なくねるらの姐さんとの交流シーンも積まれてて、『あ、間違いなく終盤でヒドイことになる……』と思わされつつ、”とんとことん”のろくでもない日々は続く。
 次回も楽しみです。