血管ブチギレテンションでお送りするスラップスティック・ラブコメディ、マモ声の新キャラが颯爽登場を果たす第4話である。
ラムの闖入でヒビが入ったあたるとしのぶの恋人関係は、面堂終太郎という”四人目”が加わって決定的に破綻し、しのぶ→面堂→ラム→あたる……という一方通行な関係性でグルグル回りだす。
前回までの異様なテンションが少しだけ落ち着いて、この四角形ラブコメがどんな手触りなのかを見せる展開が続く、この四話目。
嫌味なほどにキザでイケメンながら、ダイナシ感溢れるコメディアンとしても有数な面堂に、宮野真守はぴっちりハマる。
ハンサムの極限からウザくクドい三枚目まで、血管ブチギレテンションを維持したまま上手くこなす技量の高さが、ここまでの話数で形成されたカオスで高速なるーみっくわーるどへの適応力を、しっかり主張してくる。
あらゆる女性にジェントルに振る舞い、男はみんな蔑ろ。
財力優しさ武力にルックス、圧倒的に強者でありながら、規格外の金持ちゆえの奇行とか、『暗いよ怖いよ~』の情けなさとか、笑いを生み出す適度な弱さをしっかり宿している。
『面倒を終わらせる』ことを期待されて名付けられておきながら、初登場回のタイトルには『コイツ自身がトラブルだ』と名指しされている。
そんなハチャメチャ人間をカウンターバランスにして、友引高校の奇妙で愉快な青春は、更に速度を上げていくことになる。
白ラン着込んだ学生ファッショという造形は、あんまりにも濃くて後の創作に大きな波紋を残す”男組””野望の王国”のパロディとしての味もあるし、(他のキャラもそうだけど)この作品自体が金字塔となったことで、面堂の影響を受けた『そういうキャラ』の始原としての不思議な存在感もある。
なにしろ古典になってしまったので見落としがちだけど、”うる星やつら”は軽薄をこそ尊ぶ時代の潮流に乗っかって短期連載から週刊掲載を勝ち取り、狂騒的なパワーを宿した”最先端”とだった。
そこら辺の勢いと”ナウさ”をどうにか、ノスタルジーと同居してリバイバルしようという気合は、色んなところから漏れてきていると思う。好きだし、良いことだ。
これは作品全体に言えるけど、原作発表当時はフレッシュなヤングの才能が暴れ狂う新たなアバンギャルドだったものが、その惑星的存在感ゆえに様々な影響を及ぼし、パクられパロられ定番となり、振り返って形になってみると『どっかで見た』という印象をあたえるのは、面白いし難しいところだと思う。(”七人の侍”現象とでも言おうか)
落ち物ラブコメってジャンル自体が、こっから始まる感じあるからな……。
既視感ともまた違う不思議なめまいを、このリブートの魅力にするべく作品がどういう工夫をしているのか、していくのか。
そこを見るのが、毎回の楽しみ(の一つ)だったりもする。
さておき今回は降って湧いた転校生が巻き起こす、恋の嵐が色んなところで強調され、しのぶは金持ちイケメンにころっと転び、非モテであるあたるはキザ男に怒りを燃やし、ラムは地上人の面倒な恋をフワフワ浮遊して交わして、暴力的に自由である。
この四角形はなんでもアリ日常SFとしての色が濃かった作品に、人間関係が軋んで回る面白さを足して、新しい魅力を発掘してくれる。
しのぶとラムがあたるを追いかけ、あたるが逃げつつ手を伸ばす一方通行の追いかけっこが、しのぶを引き付けつつラムを追う面堂の乱入によって、その質を変えた……というか。
クラスメートがしつこいほどに、四角関係が生み出す激震を遠巻きにしながら『一様な雰囲気だな……』と告げるのも、ここで生まれた四角形を視聴者側に印象付ける狙いがあるように思う。
モノノケから宇宙船まで、面白ければ何でもありのバトルロイヤルとはまた違う、”恋”という身近に起きやすいトラブルの目鼻立ちが、クッキリ迫ってきた感じね。
窓ガラスぶち破る程度は日常茶飯事、ヘリ通学から大砲構えての決闘まで、ぶっ飛んでいる所はぶっ飛んでいるのだが、作中のリアリティは基本学園ラブコメに落ち着いて、あんま突飛なことはなかった……はずだ。(ここら辺の感覚は、脳がすっかり作品の異常なテンションに慣れた結果かもしれない。気持ちいいんだもん、このハチャメチャ……)
面堂は女性全てに優しく、彼とあたるを比べてしのぶは、結構現金な判断をして追う相手を乗り換える。
ラムの横恋慕で幼なじみとの関係メチャクチャにされた被害者という立場から、自由に恋の相手を選ぶ主体性を持ったキャラにしのぶが変わるのも、面堂登場によって生まれた変化といえる。
ハプニングを装い、暗闇で異性に抱きついて関係を進めようと企む、エロティックでタフな主体性もガツガツ前に出てくるしな!
ここでしのぶのあり方に一種の図太いリアリティが生まれるのは結構好きで、ラムとあたるの追いかけっこに勢い付ける噛ませ犬から、独自の存在感を得るきっかけになった感じがする。
まぁ膂力の方は、描写の過激化に従いどんどん人間離れしてくんだけどさ……。
あんだけモテるのにラム一筋な面堂が、あたるに変わってメインヒロインの値段を上げてくれている側面もある。
こーんなに可愛いのにあたるはラムに塩対応で、主役の視線だけ追いかけてると『本当に可愛いのか? 俺の高鳴る鼓動を信じて良いのか?』と不安になるところを、面堂の熱量が裏打ちしてくれた感じがした。
いや、どう見てもとびきり可愛いだろ……。
『ラムちゃんはぜってぇ、”今”通用する無敵ヒロインとして描くぞッ!』つう気合が揺るがないのは、大変偉いと思うね。
俗人であるあたるやしのぶ、ぶっ飛びつつも規律は守る面堂が”学校”に縛られるのに対し、ラムは制服も着ず授業も受けず、ただただダーリンとイチャイチャして、文句言われれば空に逃げる。
天女めいて非日常な彼女に面堂は地上から手を伸ばし、それを軽やかに振りほどいてラムは自由に飛び続ける。
野放図で無茶苦茶な彼女を地面に繋ぎ止めれるのはあたるへの愛だけだが、肝心のダーリンはイカれた青春の中燃えれる何かを見つけられず、冴えない非モテながら色んな女の子に声をかけて、自分だけを愛してくれる束縛に落ち着きはしない。
このあたるの浮遊感は、宇宙人であるラムのぶっ飛び加減とはちょっと違うけど、自分が何者であるか、混沌極まる世界でどんな存在であるかを定められない、結構普遍的なフラフラかなとも思う。
『ラムに愛されてる自分』を肯定して、諸星あたるはどんな人間なのか決める足場にしてもいいものを、他人に追われ押し付けられる自己定義はまっぴらごめんとプライド高く、自分の手で恋を狩り己を証明しようとする。
1-4でも飛び抜けたアホと見込まれた非モテ非リアが、生まれながらに”勝ってる”面堂に張り合う裏には、そんなちっぽけで当たり前なアイデンティティ探究が、静かに匂っている。
自分の冴えなさを『空から振ってきた美少女宇宙人に選ばれた、特別な俺』で補わず、自分だけの証を求めて肘鉄くらい、どうにも冴えないあたる青年の充実しなさ……既に混沌と楽しく充実してるラムの連れてきた日常を認めない頑なさは、チャーミングで結構好きなのだ。
ともあれ終わらない日常の中で、四角関係は天女の雷でドタバタとぶち壊しにされ、結論を見ないまま未来に転がり続ける。
宇宙に向けて飛び立ったロケットには、新たな厄介の種。
新キャラ登場はテコ入れというよりノルマで、矢継ぎ早に作品世界の住人を登場させていかないと、描けないものが多すぎる。
4クールあってもなお短い、物語の長さも存在質量も過大なお話を、どんなペースとテンポとテンションで語っていくのか。
その狂騒に巻き込まれる中で、僕が見つけるものはなにか。
ただ懐かしいで終わらない手触りがあって、楽しい視聴となっております。
次回も楽しみですね。