一進一退やきもき大学生活サーガ、ヒロイン一家一斉登場の第5話である。
名前呼び一つで機嫌を捻じ曲げ、家族にもバレバレな先輩LOVEを持て余してる宇崎の身悶えを、彼女を育み育ててきた環境を見せつつ描く回となった。
”花”呼びを頑なに拒む先輩も、断固として呼ばれたい宇崎も、自分の気持ちに素直になりさえすれば全てが前に転がっていくのだが、それが一番難しくて足踏みが続く。
亜実が一期より”押す”側に立っているので、勢いついてゴロンと進みそうなものを、なかなか肯定できない自意識と身体ののたくりは、しかし奇妙に可愛らしい。
そんな作品の美味しさを、沢山食べれる話数で良かった。
先輩と宇崎はいつもどおりの距離感として、公開なった宇崎一家……特に宇崎父はなかなかに新鮮なキャラしてて面白かった。
あ、月は相変わらずのセックスモンスターで、あんな円満な過程と頼りがいあるダーリンを側においておいて、なんで娘の彼氏の肉体にまで飢えているのか、更に謎が深まった。
もう、『そういう生き物だから』ていう段階だよな……FANZAにおけるオークと同じだよ。
宇崎ダディはそれと知らず、ジムで先輩を気持ちのいい若人として縁を結び、娘の語る『気になる先輩』にメラメラ暗い炎を燃やす。
関西ノリのややウザな感じが、期せずして娘と良く似てるの、良い造形だなぁ、と思う。
先輩も宇崎との間に生まれる思春期のモヤモヤをジムで発散し、いい気分になるところを共有するのだから、ダディとの関係も自然良いものとなっていくだろう。
先輩が筋トレでストレスを解消する→肉体が鍛え上げられ、精神が前向きに燃えていく→燃え尽き症候群から脱して、高校時代の輝きを取り戻した宇崎が更に先輩を好きになる……という流れになると、ダディはかなり強烈に娘の恋路を後押ししてることになるな……。
しかし挫折し燃え殻になったとは言え、先輩の根っこは体動かすと魂がイキイキするアスリート気質なわけで、それを思い出させたのも宇崎とのじゃれ合いの中だったからなぁ。
うぜーだりーと表面では拒みつつ、先輩の運命が動くのは全部宇崎絡みなあたり、1ON1ラブコメとしての骨の太さがしっかりある。
部に所属するでもスポーツを主題にするでもなく、しかし先輩がフィジカル・トリートメントを通じて精神活動をより良い方向に持っていく事が多いこの作品、その”運動”の書き方、実はかなり独特で好きなんだよな。
勝負にこだわらず結果を求めず、ただただ鍛えて気持ちよくなって人生前向きになって……つう変化の触媒として”運動”扱うの、フィクションだとあんま見ない画角だけども、一つの事実だと思うし。
今後もダディとのすれ違いコミュニケーションは積まれていくんだろうけど、二人をいい場所に導いていくジムでの日常、ラブコメの合間に時折切り取って欲しい気持ちだ。
んで、宇崎家に先輩の存在がバレたわけだが。
反抗期ド真ん中の弟くん、姉と違って素直なコミュ強オーラ漂わせる妹ちゃんと、弟妹もなかなかいいキャラしておる。
彼らは家庭という至近距離から、姉に『いや……それは恋だよ……』と事実を突きつける仕事を今回してたし、今後もしていくのだろう。
月を筆頭に先輩には好感な宇崎家、今後はファミリー全体でちょっかいを出して関係を煮込んでいく感じになる……かなぁ。
喫茶アジアが(主に他人の人生をコンテンツ化するカスのせいで)空気が淀みがちなので、別口の突破口として宇崎家があるのは、結構良い感じだ。
風呂でぷくぷく自意識と戦ってた宇崎は、事実を指摘されればされるほど己が追う立場なのを認められねぇ、ちっせぇちっせぇ魂の持ち主である。
『先輩が私を好きなんであって、私が先輩を好きだとダメなの!』という無駄なこだわりを投げ捨てられず、上からの攻めにこだわりすぎて勝てないこの子には、下からコントロールする恋愛柔術の修行が必要である。
でも追わせてカウンター取ったり、離れたと見せかけて飛びついたり、そんな器用な距離感で恋やってる宇崎見たくねぇなぁ……それじゃ”ドラドラしゃーぷ”じゃなく”FEEL YOUNG”掲載になっちゃうしな。
ていうかさっきも言ったけど、客観で見れば(娘の恋を認めたくないダディにしても)バレバレな恋を自分さえ認めてしまえば、一歩進んで楽にはなれるのだ。
しかし出来ない。
高校生レベルの自意識と関係に甘んじて、いじりつきまとい自分のウザさすら許してくれる、安定したぬるま湯から抜け出たくない宇崎が、”風呂”でぷくぷくやってるのはなかなか示唆的だった。
果たしてあの、乳だけデカい弱々クソガキが未来を選ぶ時は来るのだろうか?
彼女もその想い人も結構好きな自分としては、その身悶えをまだ見守っていたくもあり、はよう社会的にも精神的にも物理的にもくっつけと思いもし……描いてて気付いたが、俺この話、結構好きなんだな……。
次回も楽しみです!