イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第16話『看守ウェストウッドの秘密』感想

 スタンド”サバイバー”の能力により、ファイト・クラブと化した特別監獄で行われる血みどろステゴロマッチ、決着ゥゥーーーッ!! のストーンオーシャン、第16話である。
 ほぼ全編肉弾アクション、”サバイバー”のバーサーク効果が原始の血潮をJOJOに取り戻し、ちょっと第2部っぽい匂いもあるバチバチの殴り合いとなった。
 相手の生爪をはぎ眼を抉る、スマートとはとても言えない極限バトルを通して、徐倫が何のために闘うのか、その根本を問いただすような話数となった。
 ”ストーン・フリー”はその応用力が強みなので、何かと搦め手が多かったけども、命と魂の強さを試される肉弾戦にも勝ち残ることで、本物の”凄み”を身に着けたと納得出来る戦いでもあったな。

 バトルは基本、闘争本能むき出しの野蛮さで進んでいくのだが、しかし肝心なところでは知恵が勝敗を分ける。
 ついさっきスタンド能力に目覚めたウェストウッドは、ただの人間を制圧する逮捕術(そこに象徴されるむき出しのマッチョさ)に固執して、”ストーン・フリー”を制圧しきれない。
 自分自身、隕石を降らせる異能を持っているのだから、相手に尋常の押さえ込みは通用しないと理解できそうなところで、柔軟な志向を手に入れられない。
 だから無限に延びる細い糸に耳を穿たれ、生爪を剥がれ、脱出を許してしまう。
 最終的な決着も、能力を逆手に取ったブーツによる関節打撃……それを思いつく徐倫の頭で(物理的にも)付く。
 ”サバイバー”が教えてくれる抵抗能力喪失に甘えて、魂の奥底に燃える炎を見抜けなかった結果、両腕奪われてなおパチキ噛まして勝ちに来る相手にぶっ飛ばされるのは、戦いに求めるものの差を良く見せる。

 逆に言うと”サバイバー”に闘志を吹き上がらせながら、自分がどんな相手と戦っているか、なぜ勝たなければならないのか考えられ続けれる知恵こそが徐倫真の強さだ。 『強くて偉い俺』のイメージに溺れ、超人格闘に適応できなかったウェストウッドとは、そこが大きく異る。
 これは”ストーンフリー”の柔軟さに通じる部分で、やっぱスタンドは魂の似姿なんだな……と思った。
 近接戦を好むマッチョ気質と、天空から狙撃してくる”プラネット・ウェイブス”があんま噛み合ってないのも、神父からDISKを埋め込まれ目覚めた、借り物の能力だからかもしれない。
 そのミスマッチが敗北を生むのだから、なかなかに皮肉である。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第16話から引用

 孤軍奮闘となった今回、驚き役・ツッコミ役・解説役まで戦いながらこなさなきゃいけなくて、ファイルーズさんの負担が半端ないことになってた今回。
 数多紡がれた叫びの中でも最高の『決着ゥゥーーーッ!!』であったが、朦朧となりながら見上げた星に希望と決意を込め、自分自身のスタンドをジョースター家の証たる星型のアザに収めての勝利は、壮絶ながら崇高でもある。
 スタンド能力に血を沸き立たせられながら、徐倫は”星”の暗示を持つ男を救うために戦ってる自分を思い出し、そこに帰ってくることで勝利を掴む。
 巨大な悪にひるまず戦い続ける血の定めを、むしろ誇るように親指で指し示し、己の魂を宿した糸で星を描いて叫ぶ勇姿には、相手を叩きのめして最強を証明する滾りとは、また違ったプライドが強くにじむ。
 ウェストウッドがマッチョな自分自身にしか足場がなかったのに対し、徐倫は己が変えるべき場所、行くべき高みを自分の外側に見いだせる。
 そんな上向きの視線が、空から降り注ぐものを勝ち筋に変える知恵を、戦士に与える。

 そんな感じの、戦士としての徐倫を彫り込むバトル回でした。
 クレバーに状況を乗りこなしていく姿も素敵だが、血まみれの激闘に身を投げてなお大事なものを見失わない、本当の賢さがにじむ激闘こそが、”空条徐倫”を良く教えてくれました。
 こういうむき出しのタフさと闘志が、柔らかく相手を受け止めつなぐ優しさと同居してる所、やっぱ好きだな。
 F・Fとアナスイが救援に向かう中、懲罰房には未だ異能の刺客が潜む。
 激闘、未だ終わらず。
 次回も楽しみですね。