機動戦士ガンダム 水星の魔女を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
地球料に腰を落ち着けたスレッタに、迫る氷の貴公子。
”製造日”しか持たない企業の子供が、瞳に燃やす冷たい炎とは…というお話。
エアリアルを賭けた決闘に向け、グエル先輩の尊厳がまたもやボーボー燃えるのであった…。
相変わらず手際よく見どころの多い話で、前回空気最悪な学園にチュチュパンチで空いた風穴…地球寮でのスレッタぐらしをまず届けて、エランくんの起源と現状、グエル先輩の激情と奮戦…と、いいテンポでお話が転がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
差別の重たさ、一人の寂しさを濃く書いた分、地球寮での暮らしは暖かい。
念願の”友達”が出来て、オドオドしながらも幸せそうな水星たぬきを見ていると、こっちもホッコリした気分になる。動物さんもいるしね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
地球寮で女子が並んで見ると、キャラデザが類型的ではないというか、上手く凸凹させて群像を埋もさせない工夫が効いてて、個性出てるのは非常にいい。
メンテナンスを請け負い、穏やかな日常を届けてくれる地球寮を見せた上で、エランくんが包囲されている冷たい場所を掘り下げていく、対比の作りも上手かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
ペイル社の四魔女は、企業の子である彼を”強化人士四号”としか呼ばない。
血縁はなく、スレッタが聞きたい誕生日は”製造日”だ。
ミオリネやグエルは過剰な血の鎖に縛られ、スレッタと出会うことでこれを振りちぎる契機を得ていくわけだが、エランは真逆に”血”が通っていないことが、苦しみの源泉にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
父の言いなりに誰かを踏みにじり、求められるまま強く在る生き方から、特大LOVEで脱輪しつつあるグエル先輩。
それはスレッタと出会い、決闘を自己表現の場として奮戦することで自分を取り戻していく、おそらく作中人物全員共通の流れの一つだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
ガンドの呪いと共に生まれ、兵器のパーツであることを望まれている子供として、スレッタに共感を寄せていたエランくんも、同じ流れに身を置いている。
母が被る魔女の仮面を知らず、無条件の信頼を寄せているスレッタが、ちょっと気になる系男子の話をする時、やはりエアリアルは彼女のシェルターとして機能する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
エランとしては怜悧な探査でしかない”そこ”への同乗を許していることに、少女の甘酸っぱい好意が心地よく薫る。
そらー人間自分に優しくしてくれる人間を好きになるわけで、ワーワーうるさい上に感情の沸点が低く、勝手に動いて大暴れするグエル先輩やらミオリネより、エランくんのほうが好感度は高かろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
大事なことを大事な人に告げる場所を、開け放って許す行為には、無防備な好感が宿っている。
そんな娘の素朴な思いを受け取る時、魔女は仮面を外し母の顔をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
これがスレッタ限定の人間性なのか、本性ってやつを苛烈なビジネスで覆っているのか、なかなか底が読みきれないのは面白い。
他の家族が軒並み最悪なので、一見プロスペラとの関係は満ち足りて暖かなものに思える。
しかし母は娘に真実を多く隠しているし、そこには始原の罪も宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
ドローンによる、無垢なる殺戮。
PROLOGUEで描かれた最悪のバースデイがスレッタの始まりだとしたら、無邪気な田舎者も、その家族関係も、見た目ほど純粋なものでは終わらないだろう。
そこを掘り下げるのは、スレッタの純朴が子供たちを縛る鎖を引きちぎり、差別意識や企業の権益、血と家の縛りといった、学園を支配する大人の理論に反逆する足場を、整えたあとだろうと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
そんな青春闘争の拠点基地として地球寮があり、既に変えられてしまった青年としてグエルがいる。
この波がエランくんにどう届くかは、次回の決闘を終えたあとに見えてくるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
危うさを孕みつつも円満な”母子”を描いたあと、出生を恨みガンドを呪う彼の家庭事情を置くのは、このアニメらしい鮮明な対比だ。
ここら辺、デート前の出発シーンでもお互いの寮の寒暖を対比して見せてたな…上手いよね
エアリアルと運命に選ばれ、ガンドを乗りこなしている(から、自分が怪物の胎に守られていると気づかない)スレッタに対し、エランくんは全身を赤く染め、苦しみながらガンダムに乗る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
スレッタが息を吸うように自然に乗りこなす荒波に、それ専用に作られてるはずのエランくんは溺れ苦しむ。
ガンド技術が現状、一般的なパイロットにどう影響するのか…世界観を見せる意味でも興味深い描写だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
エアリアルのビットは直接ビームでダルマにしたのに、ファラクトのはバステ漬けだったのも、主役機の異常性、それを乗りこなす主役のヤバさを語ってるわな。
魔女とその娘を通じて見ていると、ガンド技術は未来を切り開く明るい可能性に思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
しかしエランくんという”選ばれていないサイボーグ”に焦点が定まることで、ガンドの影が良く見えた。
『そらー運用には慎重になるわなぁ…』という納得と、『でも皆殺しで封殺は…』つう疑問が、面白く両立する。
スレッタへの奇妙な優しさの裏にある打算…あるいはグエル先輩を縛っていた血の鎖とは真逆で、同じく苦しい企業の楔が見えたのと同じくらい、今回はエランくんの人間らしさが良く香った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
本当にパーツとして製造されたのなら、”母”との冷たい関係にも、脳髄を直接かき回す苦しみにも悩まない。
心があればこそスレッタに、企業にも家族にもガンド技術にも見捨てられた己の惨めさを共鳴させ、どこか自分と通じる温かみを得たかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
しかしだまくらかして得たエアリアルのコックピットは、自分と彼女が異なる存在なのだと思い知らせる。
救済への祈りは、失望と呪詛へと変換されていく。
ここの分かり易いションボリヤサグレ加減が、スレッタの事情なーんも聞かないまま決闘に飛び込んだグエル先輩と同じくらい、青春ど真ん中で可愛かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
分厚い氷で人を遠ざけ、自分を守っている彼は同種(になってくれるかもしれない少女)を見つけて、諦観が溶けた。
希望を見つけてしまった。
だから苛立ち、揺らいだ自分を安定させてくれる未来を決闘に求めて走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
グエル先輩の汗まみれの熱量とは真逆だが、この氷の中の炎もまた、真なる己を追い求める青春の歩み、そのものだ。
差別、利害、因習…社会のクソな部分で塗り固められつつ、学園の子供らはみんなピュアで可愛いね…。
そんな燃える氷にすり潰される形になった決闘であるが、360°包囲なビット戦闘の凄み、それを切り抜ける若武者の奮戦、月面という環境を活用した冷たい勝利と、見どころが多いバトルだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
最初に量産機でもって一対三の勝負を描いて、そんな実力者が新型搦め手で勝ちにくることで、グエルに格が残る
あるいはそれほどまでに、エアリアルとスレッタが欲しいと、欲望が燃え上がっていると示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
大迫力の決闘をドラマの中でどう活かすか、実はドンパチの外側が上手く組み立てられてて、このアニメらしいなー、と思う。
月の砂の特性を活かして、デバフで勝ち切るの、知略キャラの立て方ウマすぎる…。
先輩の達磨落し惨殺処刑は第1話と同じで、しかし見てるこっちは胸糞悪い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
あの時は超パワハラ噛ませ犬で、今は超熱血噛ませ犬で、同じ現象でもキャラの内面…その変化を知ると、ここまで見え方変わるものかと面白い。
シャープに印象的なイベントを差し込む手腕が、二転三転させるキャラへの評価。
それは今後エランくんとか、御三家最後の一人として露骨に個別回待機してるシャディクとかで、存分に暴れるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
ジェタークは血の鎖が濃いことの辛さ、ペイルはそれがないことの苦しみを、それぞれの王子様で描いてきたので、グラスレーがどんな”家”の地獄刻んでくるかは楽しみね。
この作品企業が国家を超越してる、かなりサイバーパンクな話だと思うのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
社会/技術構造の変化、それに伴う倫理の変化なんかを、”企業=家族=王家”つう構造でくるんで飲み込みやすくしてあるの、結構面白いんだよな。
この=は、シェークスピア劇がベースにあるからだろうけど。
企業の難しい論理が飲めなくても、クッソうぜぇ親の介入とか、あるいは”製造日”しかない苦しさとかはわかり易いし、学園を支配する企業が傲慢なるデリング王の宮廷であることは、既に鮮明に描いてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
ある意味、メカナイズされた宮廷ロマンスとして読める作りなんだな。
とすれば田舎から出てきた純朴娘が、それぞれの苦しみを抱える王子様(女性含む)を無自覚に夢中にさせ、みんなそれで狂っていくのは納得の作りで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
同時にハッピーエンドが約束された古いロマンスで終わらない陰りも、人間定義を書き換えるガンド技術に絡めて、上手く牙を研いでいる。
新奇なアイデアを多数盛り込みつつ、古く堅牢な構造の上に乗っけることで多くの人に飲み込みやすくしている工夫は、やっぱ凄いなぁと感心する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
そういう分かり易い筋立ての中で、弾む子供たちの青春と苦悩には嘘がなくて、皆の魂に血が通ってるのも偉い。
そんなバランスで転がっていく、美しき牢獄の物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
他の王子様が目立つので、ミオリネがいまいち噛み合わない感じなのは、本命はじっくり料理するスタイル故か。
エランくんがここまで自分を見せず、タメて今回ドバッと語ったように、見てる側の興味を焦らし期待を煽る手腕は高い。
そうして昂ぶった『見たい!』に、青春群像劇、サイボーグSF、宮廷陰謀劇…色んな角度でしっかり応える欲張りな作りが、今回も良く暴れる回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
さんざん『三敗はヤバいって!』と煽りちらして、先輩の今後にハラハラしたまま次回を待つのとか良いヒキよ。
みんな火の玉ボーイ好きになっとるからね
視聴者を牽引する物語の背筋が強くなきゃ、クソ噛ませ犬にこんだけ惹かれることもないわけで、おんなじ強い筆が次回、エランくんに及ぶと思うと大変ワクワクします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月1日
彼の孤独と苦悩を、ガンドに選ばれてしまった魔女はどう溶かすか。
次回も楽しみですね!