イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

デリシャスパーティ♡プリキュア:第38話『おばあちゃんに会える!? おむすびと未来へのバトン』感想

 一年間のデリシャス旅もいよいよ終盤、クライマックスに向けてシリアスの足場を整えていくぞ! というデパプリ第38話、まさかまさかのタイムトラベルである。
 『なんで過去行けるかの説明とかは、らんらんとあまね先輩の個別回に混ぜ込んでお終わらせておいたろ!』と言わんばかりの初手大魔法から、スルスルと時を巻き戻しておばあちゃんとの再開、ジンジャーからのダイレクト真相受け取りと、デパプリらしい圧縮感で進んでいく今回。
 さんざんふわふわ幼い部分を見せてきたマスコットたちが、人間の理解を超えた大いなる法則の体現者であることを思い出し、時戻しのルールとか記憶と命削って託した思いとか、マジ重たいもんをボンボコ投げつけてきて面白かった。
 君らは子どもなのか老人なのか、時を越えて繰り返す条理超越の獣なのか……思わぬところで、ファンタジーとしてのコクが出てきたな!

 命懸けで未来に託すべき使命を理解してた大人が、それに殉じたことで子ども帰りし、外見や仕草もそれに伴った形だったので疑われずそのまま少女たちと出会って、後ろから追いかける形で幾度目かの幼年期を生きてきたと思うと、今までの交流の意味合いが結構変わってきて、新鮮な味わいだ。
 しかし思いの外唐突という感じはなくて、時折見せた芯の強さはかき消されても消えないかつての覚悟……その名残だったんだなぁ、みたいな納得がある。
 コメコメはまさかの定められた自己犠牲キメた一世とは別個体なので、パムパムとメンメンが持ってるリセット&リトライとは、また違った純白の成長記よね。
 今回こういうお話をやったことで、『デパプリってこういう話』て思い込みがまた削れて、新しい顔が出てきた感じはある。
 こっからお話をたたむに当たり、一気にシリアスでヘヴィなラストバトル、それに必要な硬質な味わいを入れてくると思うし、その下ごしらえとして空気を変えていくのは、結構大事だろう。
 ここら辺の導線を引くべく、ファイナル個別回に必要なダンドリ分散してたんだな……という、後からの納得もある回だったね。

 

 時を巻き戻し、張ってた伏線を回収して新たな導線を紡ぎ直す。
 今回はお話の編み物がしっかり纏まるよう、編糸のテンションを整える回でもあった。
 現代のあらゆる手がかりを潰され、最後にすがった大魔法で出会ったジンジャーは……猫耳完備にゃ語尾の覆面ジジイという、かなり強烈なビジュアルだった。
 あれナチュラルに受け入れてるおいしーなタウンの人たち、素朴通り越してややヤバいんじゃないか……とも思うが、まぁそういう街だわな。
 必要な情報を限られた尺で語り切るべく、ジンジャーが猫コスプレキメたクッキングダムの人間なのか、妖精が人化してるのか、判別つかないまま思いたくされたところとかも、結構凄い展開だと思う。
 まぁデパはかなり独特な速さで進んできた話だし、ここら辺のザックリ感が瑕疵になるかっていうと、そうでもないのが面白い所だけど。
 『あんまりにも秘密兵器なので、関係者の記憶封印含めた情報隠蔽が完璧すぎた結果現代にヒントが残らなかった』っていう謎解きは、ジンジャーが込めた覚悟が分厚く納得できて好きだな。

 露骨に『ラストバトルで、マナバッテリーとして使えよな!』と言ってる魔力貯蔵庫を未来に託し、ジンジャーは愛弟子達を未来に送り届ける。
 おばあちゃんとの対話含めて、デパの大きなテーマである”継承”をゴロリと、それが必ず継いでいる宿命の重さ込でお話の本流に投げ込む話運びだ。
 気合の入った重たさを引き受ける形で、バトル作画も大変良かったけど、なによりデリシャスフィールドも張れない孤軍奮闘の中、たった一人で粘りに粘ったブラックペッパー大先生の奮闘に涙する。
 たっくん……アンタまじ立派すぎる少年だよ!
 来年の歴史の教科書に乗るよう、オレ山川出版社に掛け合ってくるから……。
 男気全開のイケメン顔で戦いを引き継いだゆいちゃんも、ジンジャー達の遺志に感じ入るだけでなく、目の前でズタボロに転がってる愛と平和の戦士に目を向けてあげてマジ!!

 今回はジンジャー絡みの謎をまとめるだけでなく、たっくんの宿命にもつながるシナモンサーガへと、クッキングダム話を新たに舵取りしてた。
 ”窃盗”というキーワードでブンドル団にも繋がっている部分が、ようやく話の本筋に乗っかった感じで、フィナーレを前にデカい話が動いてる感じが強い。
 ここら辺は死人やら記憶剥奪やらがボンボコ出てくる重たい展開で、少女たちの朗らかでハンディな青春を無理なく描くために、あえて遠ざけていた要素かなと思った。
 世界を脅かす大きな脅威から遠い、等身大の少女たちの悩みと成長。
 それを大事に進めてきたお話は、大きな世界を巡る命懸けのシリアスと無縁だったわけではなく、確かにそこと繋がり、思いを継承しながら未来へ進んでいく。
 今後お話が重たさを増すなかで、らんらんやここねちゃんやあまね会長がそれぞれ、悩みながら見つけてきた一少女、一人間としての自分だけの答えが、厳しい戦いを勝ち抜く支えになってくれると良いかな、と思う。
 クッッッソ重たくデカい宿命をわざわざ背負うのは、そういう当たり前でかけがえのない、ちっぽけだけど大した夢と希望を守り抜くためだ。(キュアトゥインクルマジ大好き)
 ジンジャーと妖精たちも、大きな犠牲を払ってそれを託した。
 その重さを、若き戦士たちがしっかり理解してるのは良い。

 

 んで、ゆいちゃんはそういうデケー重荷だけでなく、あのお葬式以来ずっと心に抱えてきた小さく大事な荷物を、大魔法に助けられて祖母に預け、受け取り直す旅もした。
 祖母の死が、物語が始まる前に苛烈な鉄槌として”和実ゆい”を鍛え上げ、超人的フィジカルとメンタル、傷つく人の心に届く強い言葉を備えたヒーローとして完成させた描写は既にあったが、今回はそこにダイレクトに切り込む話である。
 自分の大きな部分を育み、それゆえその喪失によって大きく魂を削られ、襲いかかった”死”に負けじと踏ん張った結果魂を大きくした少女にとって、宿命と諦めていた再開に向き合うのはあまりに怖い。
 その時友が手を握り、運命の戦化粧をここねちゃんが施してくれることが、どれだけ震えを止めるか。
 ここでここねちゃんのメイク要素持ってきたのは、化粧を魂の武装として描き続けたトロプリの”魂”が継承されてる感じもあり、最高に良かった。

 この時間軸では祖母に甘えるだけの、だからこそ大きくなった時、背骨をまっすぐに支えてくれる土台を育ててる真っ最中のゆいちゃんは、避け得ざる時の流れに愛を引き裂かれた痛みに負けず、体と心を大きくしてきた。
 祖母から受け取った言葉があまねを筆頭に色んな人達の心を救い、継承したレシピが腹と魂を満たせるありがたみも、十数年の人生経験に裏打ちされて分厚いだろう。
 触れ合ってはいけない過去と未来が、それでも魔法で巻き戻って直接目にし、手で触れ、言葉で伝えられる感謝の奇跡。
 その手触りを受け取ることで、ゆいちゃんは祖母から受け継いだものの意味、未来に受け継いでいく価値を再確認する。
 自分が祖母の生き様を引き継いで、飯を作って施し、苦しむ人に言葉を紡ぐ生き方こそが、避け得ぬ終わりを乗り越えて永遠を掴む、たった1つのあがきなのだと再確認する。

 今回ラストでゆいちゃんは、祖母がずっとそばに居てくれた実感を得る。
 それは再確認であり継承であって、時が巻き戻ったから豁然と気付いたものではない。
 一瞬、しかし特別な筆致で描かれた祖母の葬式で愛された子供だった自分を壊され、そこから必死の生存闘争を笑顔を作って乗り越えてきたからこそ、祖母がくれたものをその死で終わりにしないために奥歯噛み締めてきたからこそ、ゆいちゃんは器のでかい、悩みの少ない主人公として、お話に立つことが出来た。
 おsんな彼女の揺るがなさに支えられてきた物語の奥、あまり語られずしかし確かに存在していたものの質感を、揺らがぬ主人公がほぼ唯一揺れる祖母との再開の中で描くことで、継承され拡大していった思いは、新たに輝きを手に入れる。
 それはずっとゆいちゃんの側にあり、地域と家庭に根付き地道に生き抜いて死んだ人から受け取ったものであり、和実ゆいという一人の少女が、震え泣きじゃくりながらそれでも地に伏せず、自分の足で前に進んだ結果、既に形になっていた光だ。
 それに照らされてこの話は進んできたし、色んな人達がその懐に抱きとめられ、メシを食わしてもらって、腹一杯に未来に挑むガッツをもらえた。

 先週ナルシストルーがあまねのりんご飴に、真っ直ぐ生き直す決意を育んでもらえたのも、ゆいちゃんがジェントルーと菓彩あまねに言葉という生きる糧を与えた、その先にある営為だろう。
 誰かにお菓子を振る舞うこと、そういう家に生まれた自分が大好きな、パフェになりたい自分を見つけ直させた、継承の果てにこそ、社会と上手く接合できず、自分だけを愛し他人を踏みつけにしてきた男のつまらねー生き方が、ちょっとずつ善くなっていく希望がある。
 他のプリキュアも、それ以外の人たちも、ゆいちゃんから色んなものを受け取って、それを色んな人に施して、幸せの輪を広げていけた。
 その原点は、今回描かれた祖母の暖かな掌、それに包まれていた日の記憶が継がれていることにある。
 その思い出を無に帰さないよう、和実ゆいが決死に『いい人』として生き続けてきた事実にこそ、絶対的なはずの”死”すら奪えない継承の価値、その証明があるのだ。

 

 そういう暖かく芯のある手触りを、物語が最終コーナーに差し掛かったこのタイミングで主人公に差し出せたのは、とても良かった。
 人生に悩みまくりな他メンバーを支えるべく、自分のことは後回しなゆいちゃんがいかさま、古き善き家事従事者……日本の”母”と同じ手触りのキャラクターになりかけていたことは、レトロな価値観をリバイバルして継承する物語であるデパの、ちょっと気になるポイントだった。
 その完成された人格をちゃんと切り崩して、自分の原点と震えながら向き直させたこと、時を遡って出会い直すことで受け取れる思いの強さを書けたことは、クライマックスに分厚さを与えると思います。
 大変良かったです。次回も楽しみ!