イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-:第10話『DIYって、どんぞこ?・いんぽっしぶる?・ゆうきとやるきがあればなんでもできる!』感想

 タフという言葉はDIY部のためにある!
 新潟三条に燦然と輝く人情の光、不屈の闘志が明日を拓く青春日曜大工物語、圧巻の第10話である。
 前回衝撃のヒキからゼロに戻されたツリーハウス計画だが、どんな状況でも自分の手と知恵、みんなの力で何かを形作っていけるのがDIY精神。
 思わぬアクシデントに沈み込むよりも、新しいチャレンジに瞳輝かせる若人の志に地域が、学校が、先達が手を貸し、不死鳥の如き復活を果たす物語……を経糸に、10話そのありふれた難しさを描き続けてきた少女の思春期が、ようやく求めていた場所へ手を伸ばす瞬間が炸裂した。
 部室周辺の閉じた楽園を、一気に”社会”と接合していく横の広さと、作品がずっと真ん中に据え丁寧に掘り下げてきた関係性を爆心地へと導く縦の深さが一話に凝縮され、たいへん力強い話運びとなっていた。
 ぷりん、せるふ、DIY部のみんな……本当に良かった、おめでとう。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 初春の嵐にすべてを奪われ、いつも明るいDIY部に長く影が伸びる。
 雨の中傘もささず、濡れ鼠の12歳……その衝撃を三条の”姉”はバスタオルで拭い、お風呂で温めようと心を配る。
 ぷりん……人生に一番必要なものを、手放すことがけしてできない女(ひと)である。
 ここでジョブ子を鏡に、衝撃的な事態がもたらした一般的な反応、それに対しぷりんが見せた人間の当たり前を描いておくことで、そことはちょっと違った部分で自分を失っているせるふの異質性と強さが、良く描かれる。
 せるふはなくなってしまったものよりも、そこから新しく広がっていく夢のカタチに目を奪われ、現実を忘れてしまうほどに夢中になる。
 彼女が社会と適応するための、適切なSelfを取り戻させるのは誇り臭い倉庫から引っ張り出した、わたしとあなたの名前が刻まれた板……思い出のベンチの欠片である。

 ずっと窓越し、開かない扉を見つめ続けたぷりんは、今回思い出の扉を自分で開けて、ホコリを拭って結愛家の扉を開き、せるふの私室へとズカズカ上がり込む。
 10話足を止めた青春の逡巡を乗り越えさせたのは、ジョブ子が間近で見せた傷ついた様子……それにせるふも翻弄されているのだろうなという、豊かで優しい想像力だ。
 ぷんぷん膨らんで『アンタのことなんか知らない!』というフリをしてきた……ある意味そうすることが、子供時代との決別の証だったぷりんは幼なじみの苦境(で、自分のことのように苦しめる心の豊かさ)に背中を押されて、窓越し見ているだけの現状から踏み出す。
 そうせざるを得ない勝手な思い込みはあまりにも優しくて、特別で力強い。
 それはホコリを拭った板に、かつて刻まれた約束の名前だ。

 私室に踏み込んだぷりんは、せるふがずっと願っていた……DIY部に入って叶えたい最初に夢だった『同じベンチに一緒に座る』という行為を、既に叶えている。
 この特別な夜を越えて、逞しく自分の足で夢に突き進んでいく幼なじみを見届けたぷりんはまた窓の奥からひっそり見守る立場になろうとして、そんな彼女を見つけたせるふに呼ばれて、窓の外に出ていく。
 しかしその働きかけは、勝手に(そして人間としてあまりに正しく)せるふが傷ついているだろうと想像して、思わず面倒極まるわだかまりを超え手を差し伸べた、ぷりんの歩み寄りの後を追い明けている。
 ここでぷりんが、せるふの願いを知らず叶えていること、自分がずっと戻りたいと、新たに掴みたいと願っていた場所へ歩を進めたことで、せるふは妄想から目覚めて現実に帰還し、部の仲間と力強く進み出す。
 そうさせるのはぷりんの来訪であり、彼女が持ち出してきた思い出であり、そこに刻まれた自分のと、大好きな親友の名前だ。
 それこそが約束なのだ。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 役立たずではいたくないと、必死に自分にできることを探し伸ばしてきたせるふの歩みは、彼女の妄想の輪郭をちょっとリアルにして、でもやっぱり脳髄を覆い尽くす夢は夢いっぱいなままだ。
 ぷりんが親友を励まそうと必死に考えた、現実に必ず埋め込まれてるアクシデントを乗り越える秘策は、必ず上手くいくという理由のない……わけでもなく、実際DIY部で手を動かして、『自分には何かが出来るし、みんなならもっと凄いことが出来る』という実感に裏打ちされた夢の中で練られた、結構現実的な対応策と重なる。
 それは現実の難しさを一足飛びに乗り越えて、野放図で幼いイマジネーションに彩られながら、せるふらしく豊かに、力強く踊る。

 そのステップは時に、現実に対応する自我をせるふから奪って、彼女に『役立たず』の烙印を押すかもしれない。
 その時愛しく撫でる自分の名前が、親友との約束との証が、彼女を危うい夢から覚ましてくれる。
 自分の中に過剰にあふれているものを補い導いて、社会と繋がるアダプターとして活用するために、せるふに必要なもの。
 自分一人で得ることは出来ず、ぷりんが思い出させてくれるから掴めるもの。
 それをぷりんは窓から駆け出して部屋に上がりこみ、空回りする切実と誠実を込めてせるふに届けた。

 面白そうで惹かれて、実際手を動かしてみたら楽しくて、一緒にやったら最高で。
 DIYがせるふに与えてくれたものは、幾度も失敗する彼女の資質を『ま、いっか!』で諦めなくても良いのだと、失敗したらまた別のやり方で、手を貸してくれるみんなに欠けてる部分を補ってもらいながら形にすれば良いのだと、タフな心を与えた。
 でもそれはいかにもせるふ色で、現実味のないファンタジーへと危うく飛びついてもしまう。
 それを補うのがDIY部のみんなであり、誰よりも強く、仲良く楽しく一緒にいたいと願った、特別な幼なじみだ。

 ずっと心に秘めて、でも本人にこそ言えなかった、足りないあなたをわたしが満たしたいという、ぷりんの思い。
 黙って座ってられない一大事は、それがずっと昔から倉庫にあって、ホコリを被ってなお消えていなくて、今目の前にあるのだと否応なく、ぷりんに認めさせる。
 こうしてせるふの隣に立って、自分の名前が分かちがたくせるふの隣りにあることを確認して、そんな事実がせるふにとっても大切であることをその目で確かめて、ぷりんは素直になれなかった自分に『ま、いっか!』する。
 生真面目で賢く優しいからこそ、不器用に大好きな幼なじみと、己自身の幼さと向き合うしかなかった少女は、気づけば制服を着る年頃になった。
 物干し台にぶら下がり、風に揺れているのは二人をここまで運んできた時の流れであり、これから豊かに広がっていく学園生活……その先にある無限の未来だ。

 そこには、必ず二人の約束がある。
 想定外のアクシデントに傷よりも夢を見て、危うくそれに飲まれてしまうせるふと、そんな彼女の危機を勝手に心配して駆け出し、人間にいちばん大事なものを差し出せる自分と出会い直したぷりんは、かつてベンチに刻んだ約束を取り戻す。
 この段階で、せるふとぷりんはお互いが欲しかったものを既に取り戻している。
 どうやっても世間の当たり前からはみ出してしまう自分を、確かに夢と現実に繋げてくれる手応えと。
 夢に溺れる幼さと歩調が合わず、気づけば離れてしまっていた心をもう一度、隣に座らせたいという願いと。
 自身そんな幼く純粋な祈りを抱えつつ、素直になれずに窓の向こう見つめるだけだった足踏みと。
 当たり前の人間として欠けたものの多い、だからこそ生きた魅力を沢山宿した少女たちは、全然必要なかった慰めと提案を通じて、ずっと欲しかったもの全部を取り戻す。 
 ただただ、おめでとう。

 

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 タフさはせるふの専売特許ではなく、お風呂に入る気力もなかったジョブ子は一晩眠って気力充実、ガッツリ青空に全力疾走をキメる。
 他の仲間も気合十分、アクシデントがなんぼのもんじゃと、闘志を顕にする。
 誰と闘うわけでもねぇ、全国大会を目指すでもねぇDIY部であるが、困難にへこたれないタフさを示す場面は沢山あって、そんな泥臭いガッツが”食う”行為でしっかり下支えされているのは、とても好きだ。
 三条ローカルの美味しそうなメシを描くことで、正直キツいんだけどもへこたれず立ち上がる少女たちに活きるための燃料を、供給してくれる地元の良さもしっかり見えてくる。
 ガツガツ食ってモリモリ働く描写が多いの、ホント好き……。

 事務連絡のミスから資材を奪っていったのも学校の外に広がる”社会”なら、それを補ってくれるのも”社会”だ。
 嵐に見舞われ一回ゼロになったことで、DIY部は学校の外に広がっているものと確かに繋がっていく。

 僕は音声をOFFにしてテンポ良く繋いでいく、モンタージュ演出の努力描写が好きなんだけど、ここはそんな表現をあえて用いず、”社会”に存在する色んな人とたしかに言葉をかわし、そこから受け取ったありがたみをしっかり腹に入れて、前に進んでいくDIY部を書いたのも良かった。
 笹団子と背負子の端材に象徴される、古くて暖かなものだけを称揚するのではなく、ジョブ子が得意とする最新ITや、DIY以外の趣味が下支えしてくれる希望のあり方なんかをしっかり織り交ぜて、人間が豊かに立つための多彩な足場を広げているのは、とても好きだ。

 後に先生が力強くまとめるが、このお話は加速していく技術と社会の中で、それでも確かに息をしている手仕事の強さ、受け継がれて新たな形を得ていく古いものの意味に、ずっと向き合ってきた。
 それは対立し光を打ち消し合うべきではなく、お互いの良さを補い合いながら、より豊かで強く、優しい人のあり方を広げていける。
 そういうあり方が、自分に足りないものに結構シリアスに悩んで、だからこそ仲間に自分だって出来るのだと認めて欲しかったせるふの青春が、彼女に足りないものを補い、豊かに溢れるものを皆と繋ぐ部活動と友情に重なっているのが、とても好きだ。
 DIYという派手さのない題材だからこそ、せるふが困難に諦めず現実的な解決策をつかめる自分を探すまでのジュブナイルと、ぷりんが自分の中の優しさと素直に向き合うまでの旅路を、じっくり丁寧に歩くことも出来た。
 そんな二人と仲間を繋げ、当たり前の寂しさを埋めて自分を肯定できる確かな手触りを掴み取るのに、DIYが、何かを形にするための古くて新しい技術と道具がどんな助けになるかを、しっかり描いてきた。

 その歩みがここで、学校と家庭の外側にぐわっと広がって、思わぬ厄介事もかけがえない助けも与えてくれる”社会”と繋がれたのは、最終コーナーを回りお話全体を総括するタイミングとしっかり噛み合って、とても良かった。
 窮地に陥ったDIY部を”社会”は見放さないし、そんな可能性が”社会”にあることを全員が信じて、部員は嵐に顔を上げて青い空を、そこに広がってる捨てたもんじゃねぇ社会を見つめる。
 世の中そういうもんだし、私達はそういうもんだよと、あまりにポジティブに世界と技術と人間を信じてお話を進めていけるのは、やっぱ凄いことだと思う。
 青雲の志に燃える若人を真ん中に据えつつ、”終活”を視野に入れてる老人たちもまたそこに手を貸し、夢の手伝いをしてくれる描写も、時間的な奥行きを生み出している。
 あのオババ達が携帯ギラギラにラメって、新しい技術に適応しながら人生謳歌してる様子、めっちゃ大事だと思う。
 夢は遠い日の花火ではなく、色んな歳の、色んな足場に人生のっけてる人たちがふれあいながら、形にできるものなのだ。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 そんな親友の奮戦を今まで通り、遠くに見つめながら、しかしぷりんは幼なじみの部屋の中を、もう見通せる。
 そこに何があって、何が大事に守られていて、同じものが自分の胸の中にあるかを、嵐に背中を押されて踏み出した瞬間、彼女はちゃんと確かめたのだ。
 だから今まで見えなかった窓の向こうは鮮烈に描かれていて、自分とせるふがどこにいるのか……どこにいたくて、どこから来たのかは、何にも隠されていない。
 この鮮烈極まる到達点は、『開かない窓を見つめるぷりん』というモチーフを執拗に的確に重ね続けた結果、最大火力を狙い通り発揮した演出で、最高に良い。

 高い塔で助けを待ってるラプンツェルに見えて、その実無明の迷いを晴らしたのは嵐に傷ついてる(はずの)幼なじみを黙ってみてられず、思い出に立ち返って駆け出したぷりん自身なんだよな……。
 このぷりんの歩みが、なかなか世界を見通せず夢に溺れていたせるふが、ずっと自分を見てくれていた幼なじみの顔をちゃんと見つめ直して、ぷりんと出会い直す結末を引き寄せているのも最高。
 誰かに与えられるのではなく、自分で掴み取っているわけよ……この世最上の幸福と尊さを……。
 ここで朝焼けに眩しく、自分のいちばん大事なものを自分の外側にこそ見つめている少女の姿は、後に来る”勝ち”を全力で約束してて最高だった。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 ここでけして負けねぇガキどもの勇姿を見届けて、先生が一番身近な”大人”としてトラックブン回し、最高の真心と奇跡を届けてくれるのも最高だった。
 せるふ達が夢中で駆け抜け体現するDIY精神は、かつて同じ場所で眩しく輝いていた先生の思い出も蘇らせ、青春が遠くに隔たったからこそ手に入れた自分の力でもって、教え子の夢を支える。
 ずっとそこにあって、ボロボロに傷つききつつ消えていないもの。
 時の流れに晒されて、時代遅れとけなされて、でもだからこそその価値を今確かめる意味があるもの。
 そういうものが確かに継がれていて、両腕腰に当ててふんすと意気を漲らせている様子は、教師として大人として……なによりDIYの同志として、先生を奮い立たせた。
 そういうパワーが、凹んで足踏みしてるヒマがないほど夢に夢中な若造にはあるのだ。
 そんな熱量に突き動かされて走ったら、先生みたいに強くて優しい、幼さの最良の部分をけして殺さないままの”大人”になれるのだ。

 ドローン飛び交う近未来の三条市で、加速していく時代の中で、それでも手仕事が与えてくれる豊かな実感、それが縁取る力強い自己像を忘れないこと。
 作品全体のテーマをしっかり確認する仕事は、大人であり教師である先生が果たすべき、大事なメッセージだ。
 卒業式めいた全員の名前呼び……あんまりにも刺さる。
 自分が期待し見据えていたグランドテーマが、なんも間違えず作品のど真ん中にあったと確認できた意味でも、ずっぷり心に刺さったぜ。
 未来へ進んでいく年下の仲間に、思いを受け継ぐ同志に先生が投げかける真摯な言葉を聞く子どもたちの表情も、晴れやかに颯爽と輝く。
 今までで最高のコールを張り上げて、手のひらを太陽に向けて、明日に向かって一直線!

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 と思ってたらよ……来ちまったわけよ、最高の”瞬間(とき)”が……。
 物語が始まった時、せるふには見えなかったもの。
 窓の向こうでずっと自分を見つめてくれていたぷりんの瞳が、どれだけいつも隣りにいてくれたかを、せるふは見つめて目を輝かせる。
 やっぱりせるふの魂を特別に満たしてくれるのはぷりんで、でもその特別さと向き合う姿勢がなかなか育たないから、二人の思いは繋がらなかった。
 それはぷりんの素直になれなさと、せるふの未成熟両方が生み出した、愛しいすれ違いだ。

 しかし今、せるふはぷりんを見つけた。
 それは一方通行になってしまっていた強い思いにしっかり目を向けて、現実的でより豊かな関係性をお互いが引き受けて、未来に向かって進めていく姿勢を、DIYが作ってくれたからだ。
 野放図な夢をイメージイラストに宿して、みんなのやる気を高めたり。
 なかなかうまくいかない自分を、役立たずと切り捨てず丁寧に支えてくれたり。
 そうしてちょっと自分の難しさと仲良くなって、何かが出来るようになったり。
 いろんな体験がせるふの世界を広げて、年相応に困難や難しさを受け止める足腰を整えて、一番身近で煌く星の色を、しっかり見つめさせた。

 僕はせるふの幼さだけが世界の答えなのだと肯定されてしまうのが結構怖かったから、ここで部のみんなで決意新たに空を見上げた事がぷりんを見つけ直すきっかけとなり、呼びかけてもらうのをずっと待ってた……だけで終わらず、一番最初に嵐の中駆け出してもくれた友達を見つける成熟が、彼女の瞳に宿ったのはとても嬉しかった。
 作品を好きになって、勝手に思い込んだお話との”約束”を、120点で果たしてくれた感じがあったのだ。
 ぷりんが自分を励ますために、古ぼけた思い出から引っ張り出してきた約束のベンチに、刻まれたわたしとあなたの名前。
 それがずっとそこにあって、でも自分は手を伸ばしきれていなくて、今こそ思いを受け止めるべく大きな声で呼びかける瞬間なのだと、せるふはしっかり自覚する。
 それは人がその最上の形で”大人”であるために、いちばん大事なことなのだと思う。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第10話より引用

 せるふは世界でいちばん大切なものに大きく手を振り、力強く呼びかけ、手を繋ぎ微笑む。
 今そうしなければいけない自分を、同じものを差し出してくれたぷりんに報いるべき責務を。
 なによりも一緒にいると何よりも楽しい友達への気持ちを、電動ドライバーに込めて手渡す。
 完全に……エンゲージ……。
 そらー仲間たちも、力強く見守るわなぁ。

 ぷりん加入まで10話、OPで示された最高ハッピーな世界にたどり着くまで沢山の時間がかかったが、俺はこの緩やかな歩みがとても好きだ。
 そんだけの時間をかけるほど、自分の並外れた優しさを持て余してる女の子が素直になるまでの歩みは大変だし、そのありがたみを幼い夢からなかなか抜け出せない女の子が見つめるまでの旅は長い。
 当たり前でありふれた思春期のすれ違いと、かけがえない出会いと、小さく確かな成長と、それが後押ししてくれる約束への帰還。
 そういうモノを描くためには、色んな人がそれに関わって幸せになっていくDIYの価値を、自分が工具を握っているような確かさでしっかり描く事、近未来技術と無理なく融和したローカルな街並みの解像度、そこで弾む青春の圧倒的瑞々しさ、部員それぞれの陰りと眩さが……アニメとしての飛び抜けた素晴らしさが必要だった。
 ありふれた青春の、特別な手触りを手作りで組み上げる難行に挑み、見事に成し遂げたからこの終わりは、最高に胸を打つ。
 おめでとう、本当におめでとう。
 二人がお互い歩み寄って、黙って立ち止まってなんていれない心の高鳴りに素直に踏み出して、ここから続いていく未来は、間違いなく最高に輝くでしょう。
 ツリーハウスは物語の象徴として高くそびえ立ち、自分たちの手で作り上げた確かな手応えを宿して、世界と自分の明日を展望するための足場として、みんなを支えてくれるでしょう。
 こんな眩いものを描いて、最高の幕引きが待ってないはずないのよ本当に。

 二話早いけど、最高のアニメでした。
 ありがとうございました。
 残りの話数、見届けさせてもらいたいと思います。