イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

SPY×FAMILY:第22話『地下テニス大会 キャンベルトン』感想

 東西平和に奔走するスーパースパイ・ファミリーコメディ、今日の演目は超時空テニスだッ! という、SPY×FAMILY第22話。
 ”イナズマイレブン”か”男塾”か、はたまた”地獄甲子園”か! というトンデモ地下テニスに潜入し、謎めいた火種を回収する今回のミッション、恋に恋する<夜帳>が鉄面皮の奥に秘めたキュンキュンが爆走し、並み居る強敵皆殺し!
 イカれすぎたシチュエーションを更にイカれた主人公たちで薙ぎ払っていく、このお話の醍醐味が作画力でパンパンに膨れた力こぶでスマッシュされ、見事なサービスエースを決める回となった。
 とにかく佐倉綾音大劇場で、矢継ぎ早に繰り出されるキュンキュンボケと氷のような外面のギャップが、笑いを呼ぶやら萌えるやら。
 どんだけキツい態度とっても、フィオナくんはホントロイドさんのこと大好き祭りすぎて、そのダダ甘感が良いよね。
 これもある種のツンデレ……なんだろうか?

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第22話より引用

 そんな面白みを一発で伝える、薄暗くリアルな外側と水彩調も眩しい脳内。
 僕らが見守ってきた”たのしいフォージャー一家”を恨みでどす黒く塗りつぶすのではなく、認知の歪み抜きで明るい風景と捕らえている所に、フィオナくんの善さが詰まっている。
 あんだけ愛が重いなら、自分が関わらぬままヌルく優しく染められてしまった原因を憎みそうなところだが、フィオナくんはそういう病んだ対応はしない。
 ピコピコナイフみたいになっちゃったロイドさんも素敵だと、肝心な判断基準に目隠しして全肯定である。
 一番熱心な観察者の目から見ても、”ロイド・フォージャー”って冷酷無比な超スパイ<黄昏>を結構切り崩してんだな……そらそーか。


画像は”SPY×FAMILY”第22話より引用



 本当に欲しかったものを運命の導きで手に入れてしまい、気づかぬうち悲しみから大事なものを守りたい本心ダダ漏れ人間になってしまったロイドさん。
 変えてしまった偽物家族は心底妬ましいが、仕事仲間のアドバンテージは自分にあるッ! というわけで、任務にかこつけて夫婦設定ねじ込み、地獄地下テニスに颯爽参戦である。
 観客のテンションも出てくる敵も相当にイカれてるオモシロ状況に、引けを取らないフィオナくんのイカれっぷり。
 なんだその血管バチ切れギャグ顔は……可愛いね。
 唯一冷静な頭脳を持っているはずのロイドさんは真顔ボケの資質をフル回転させ、トンデモな状況を圧倒的実力でねじ伏せて飲み込む構えである。
 この関係者全員冷静にならない感じ、お話の強い所ブン回してる感じでいい。

 メインステージからはじき出された母と娘が、あざとい萌えアピールを的確に刺す中、フィオナくんは妬みつつ考えつかなかった『殺す』という選択肢が自然と生活の中に入り込んでいる当たり、虎杖悠仁の危惧は正しかったね……って感じ。
 クネクネ可愛く身悶えしてみても、頭を振って否定してみても、疑念を突破する手段として”それ”が安楽に飛び出してくるあたり、”いばら姫”の壊れっぷりが一番ひどい事実を再確認させてもらった。

 アーニャの読心能力は幼子の弱さ可愛さを切り崩さないまま、親世代の内面を読み策略を巡らす大きな武器であるけど、それで読み取ったヤバ発想を気づかれないまま事前に潰して、家庭内バランサーの仕事をひっそり果たしている所、たいへん偉い。
 アーニャちゃんが無邪気を装って慌てて繕ってくれないと、フォージャー家の嘘は結構早いタイミングで破綻していたと思うので、見守られ可愛がられるヒロインであると同時に、作品継続に欠かせない秘密兵器でもあるよね。
 四歳児ゆえの可愛げ身勝手浅ましさを全力で体現しつつ、エスパーの異能を生かして大人びた活躍も出来るあたり、完成度の高い造形だと思う。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第22話より引用

 小さな英雄が血みどろ愛憎劇を見事に回避させる裏で、ロイドさん好き好きガールは憧れの人に勘違いされ続け、地下テニスはやり過ぎホビアニの領域までかっ飛んでいく。
 このお話のキャラは軒並み”嘘”を付いてるわけだけど、内面を支配する圧倒的な”すき”が表に出ず、功名狙いの冷徹なスパイだと思われている(し、ロイドさんの隣を死守するべくそう思わせてる)フィオナくんも、ある種の嘘つきであろう。
 運命に選ばれなかった立ち位置の悪さ、戦争にぶっ壊された元少年に与えてしまった光の強さ、直接的暴力の圧倒的差のあわせ技で、全く勝ち目がない可哀想なキャラなのだが、そういうフツーの判断をぶっ飛ばすくらい愛に狂っていて、とっても良い。
 ここで傷つくマトモさを表に出しすぎると、フィオナくんのイカれっぷりを笑うどころの話じゃないからな……洒落を洒落でいさせるために、アクセル全開に押し切っていく判断は正しい。
 やっぱ俺は、誰かが好きすぎてアタマがおかしくなってるキャラが好きなんだな……イカれちまうくらいに強く、頭の中を塗れ!

 とはいっても毒ガスにサイバーラケットまで持ち出す超次元テニスはイカレ過ぎで、そこをぐぐっと力のこもったやり過ぎ作画で大暴れさせて、大変良かった。
 『ここは暴れさせどころだろ!』とずっと思ってきたので、フィオナくんのピンク脳内の描き方と合わせて、大変満足である。
 あのインチキテニスに改造なしの地力だけで拮抗してるの、<黄昏>はもちろん<夜帳>も相当だよなぁ……愛のなせる技か。

 

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第22話より引用

 なりふり一切構わないトンチキな敵手に、東西平和を背負った無貌の英雄は怯まない。
  その背中が、綺麗だから憧れた。
 それに守られるだけじゃ、満足できなくて横に並びたかった。
 いつ”EMIYA”流れてきてもおかしくないドデカ感情を、大変良いライティングでぶちかまして白熱の試合は次回に続くッ!

 色ボケに狂ってるだけと思わせて、根っこには自分を一人前の戦士に鍛えてくれた教官への感謝と憧れ、それを必要とするプロフェッショナルな心意気がある所が、フィオナくんの魅力である。
 殺戮を内省しないふわふわっぷりを、圧倒的な”暴”でねじ伏せて普通人のカワかぶってる”はは”とは、ここら辺真逆で面白い。
 そういう重たさをギャグ補正でぶっ飛ばせないあたりが君の弱さであり、好きな所だよ……。
 一切合切を圧倒的なクオリティと作画力でぶん殴る、このアニメらしい剛腕もたっぷり堪能できそうで、次回も大変楽しみです!