銀河を股にかけた四畳半ラブコメ、いつにも増して騒がしい令和うる星第9話。
前回顔見世した二重人格幼なじみとの関係がこじれる原因になった、ツラだけ異様に良い食欲怪獣が、家も学校も物理的にぶっ壊す大騒動を巻き起こし、あたるのオカンが色気づいた。
悪気のないトラブル体質は、ラムの関係者全員の共通事項なのかもしれん……。
というわけでラムを追って宇宙から降り立った、ブレーキの壊れたダンプカーが散々に暴れまわる今回。
顔面の破壊力だけで全てを乗り切っていくレイと、その奥にある禽獣めいた性根にウンザリ来てるラムの追いかけっこに、地球人が巻き込まれる構図である。
どんどん被害が拡大してって、諸星家にはピンク色のヤバい気配が漂い、カップルはバラバラに引き裂かれ、屋台は軒並み全滅と、いつも以上に騒がしい感じが面白い。
僕は戸田恵子の艶のある演技が好きなので、あたるママンがお化粧して”女”に火を入れている様子は、たいへんご褒美だった。
”おにいさまへ……”の折原薫とか最高にイイので、もっとヒロインやってくれんかな……。
さておき、当てつけるようにダーリンにしがみつき、結果嫉妬を煽って暴走させるラムの天然性悪っぷりが目立つ回でもある。
第2エピソードにおける『お前がいうんかいッ!』っぷりもそうだが、どーもラムは思い込んだら一直線、自分と他人を客観視しきれない危うさが濃い。
まぁそうじゃなきゃ、彼女っぽい気配は確かにあったしのぶからあたるを掻っ攫い、電撃ビリビリ重めに拘束する生き方はせんしな……。
るーみっくわーるどの人々の、欲望に素直に気性の赴くまま自由に暴れている様子は好きなので、それは欠点というよりは特徴、ある種の可愛げとして受け止められる。
そうやってアクの強い連中が大暴れしても、ギリギリ洒落になるいい塩梅をうまく狙い撃ったから、このお話はドタバタラブコメの古典になったんだと思う。
レイもそのご多分にもれず、というか知力削って外見にCP突っ込んでる分一切に抑えが効かず『ラム』と『めし』だけで突っ走る激ヤバ重戦車である。
マジで話が通じない、女は魅惑し男はぶっ飛ばす野獣っぷりに、ラム以外は見えない純朴を足して、なかなかいい塩梅である。
……ハタから見てる限りは。
今回に限っては、あたるマジとばっちりで大変だよな……母親が”女”剥き出しする瞬間にも遭遇しちゃったし。
そして後半は学園に来襲した野獣に、銀河最強ぶりっ子が餌付けを敢行する回。
先週あんだけドタバタやりあったのに、結局仲立ちを頼むのがラムちゃんなあたり、やっぱ幼なじみキテるな……。
餌にしか興味がないレイにラムがキレる所は『極めて正当な怒りだが、お前もランちゃんの思いを真っ直ぐ受け止めろ……』というツッコミと、結局幼なじみ大事なラムの純粋さが入り混じって、なかなか面白い味わいだった。
異様なテンションでモジモジメシ食わせては餌付け扱いに傷つき、しかし懲りずにまたメシを持ってくるランちゃんの健気さには、今でも通用するポテンシャルがあるね……。
前回から引き継いでランちゃん三部作の味わいもあるエピソードだが、過剰なぶりっ子っぷりをド荒れたヤクザ面で覆い、その奥にたった一人への純情を併せ持つ彼女の面白さが、良い感じにぶん回されていた。
この子が舞台に立ったことで、ラムの描線に立体感が出て、ただあたるを追いかけるだけで終わらない面白さが、いい塩梅に煮出されたと思う。
んでラム-あたるに地球人サイドから四角関係を作ったしのぶ-面堂軸に加えて、宇宙方面から引っ掻き回すラン-レイ軸……っていう構図なんだな。
1クールず~っと新キャララッシュ仕掛けてるような作りだが、この波が落ち着いて『いつもの面々』が出揃った後、どういう手触りの話を積み重ねていくかは楽しみね。
そしてそれを全て包みこみ、どんな大嵐もコメディ色に染め上げる八方破れの世界観……というか、世界律。
ツラの良さを最大限活用し、色んな場所に餌場を作ってるレイのちゃっかりさとか、それに飲み込まれてるママンでオチとか、大変”うる星やつら”らしいエピソードだったと思う。
ぶっ壊れた壁はいつの間にか直り、複雑怪奇な恋愛模様は騒がしくも大きな進展を見せず、大騒動があっても自習でダラける学生たちの日常は崩れず、終わりのない狂騒がずっと続く。
そんな”うる星やつら”が突然シリアスに揺れる時、生まれる破壊力を僕らは第5話で見届けたわけだが、次回もそんな回になりそうだ。
延々ドッタンバッタン繰り返す”いつものうる星”あってこそ、音符を減らして静かに届けるお話は特別に染み入るわけで、この大騒動の後にどんな物語を見せてくれるか。
大変楽しみであります。