機動戦士ガンダム 水星の魔女を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
第1クール終焉に向け、ガンッガンに不穏な要素をぶっこみまくり、魔女の窯が煮えたぎる準備を整える回。
京田コンテの繊細な表現力が、複雑怪奇にうねる企業宮廷の力学と、個々人の感情と因縁が絡み合う状況を見事に活写していた。つえーわやっぱ…。
まず不穏が踊る前景の整え方が上手くて、フロントで走り回る学生社長と、本拠地で頑張るバックスの関係が、スレッタの充実を連れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
やりたいことリストは順当に埋まり、笑顔でいられる場所も手に入れ、未来は薔薇色!
そう思わせておいて…ガツンだ!
頭が良くて性格が悪い。名作作りの基礎条件
最悪な親が周囲を包囲する世知辛い情勢だったからこそ、ベルメリアさんやフェンさんといった”家”の外から協力してくれる大人の存在が、ありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
暗殺策謀当たり前、厳しすぎるビジネスの現場を描いてきたからこそ、PV撮影現場確保を忘れッタしても笑える”株式会社ガンダム”の空気が心地よい。
今まで自分が描き、作中に布石した描写を活用するのが上手い(ので、大胆な省略も狙い通り繋がりを維持して機能する)お話が、スレッタが満たされている現状を上手く切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
友だちも出来て、やるべきことに満たされ、大事で特別な人とも繋がり、このまま全てが順調に…。
そんな心持ちに、こちらもシンクロする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
大人と子供、スペーシアンとアーシアンが力を合わせ、新たな技術の可能性、傷ついた人が新たに立ち上がる力に満ちた、”株式会社ガンダム”稀代の新製品テストで、そんな気持ちは大きく膨らむ。
カラダ失った人を癒やす以上に、人に出来る善行があろうか?
スレッタと仲間たちはこの世知辛い世界で、友情とか施療とか、間違いなく”良いこと”を積み重ねて自分を満たし、他人を幸せにしていける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
そんなあるべき幸福が、儚い夢でしかないサイバーパンク世界の現実は、厳しい風のように優しい温室に、容赦なく吹き付ける。
現実と理想が位置を入れ替え、幾度も立ち現れる巧妙なワルツ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
これを機能させているのは、例えばチュチュ先輩のでっけー髪の毛をヒョイとどかして、『わたし達が成し遂げること』を見届けようとする、ニカの何気ない仕草だったりする。
こういう小さな、しかし良く刺さる芝居を丁寧に重ねることで…
メインステージにキャラや状況を乗っけなくても、高圧縮の情報と情動が見ている側に染み込んで、展開を飲み込む足場を整えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ああいうさらっと『いいな…』て思える表現、それを生み出すアイデアがぎっしり山盛り、しかし重たくなくさり気ないの、凄い強さよねこのアニメ…。
スレッタが自分の居場所と定めた、善いビジネスと善い人間関係に満たされた”株式会社ガンダム”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
それは、間違いなく善いものだ。
ビジネスとサイボーグ技術に人間性が寸断され、再構築され現状を支配してなお、それが正しくなければ”善さ”なるものは、どこかへ消えてしまう類の、土の匂いのする善さだ
しかしそういう素朴で、絶対的なものも社会と技術の大きな変化は書き換えてしまえるし、ともすれば完全に消し去ってもしまえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
そういう大きなものが学園を包み、侵食し、そこから真・善・美を守るシェルターとして、地球料と”株式会社ガンダム”とミオリネの温室がある。
スレッタ(と、彼女に心寄せる大概の視聴者)が『此処だけは…此処こそは!』と思える場所が、冷たい風の吹き付ける現実においては少数派であり、酷く脆いアジールであることを、あまりに幸福な青春は忘れさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
忘れさせて、現実なるものが襲来したときのショックを最大化させる手筋でもあるか。
しかし確かに、多角的に厳しい風は青春の温室に近づきつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
前回青い果実に象徴され、すれ違って終わったシャディクの純情。
それが切り取られず根付き、恋色に色づく特権を、スレッタは許されている。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第10話から引用) pic.twitter.com/5iiVbBbP9O
スレッタは温室に入り、高い位置を取り、シャディクは地面に足をつけて、自分が入らなかった(入ることを許されなかった)場所を見上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ミオリネの花婿と、花婿になりそこなった男の対比は極めて残酷だ。
彼がデリング暗殺、ベネリット解体の暴挙に踏み出す足場は、そこにこそあるのか?
シャディクと彼を取り巻く女たちは、企業トップとの謀略、家族の秘事も共有する、大人たちの世界にしっかり身体を埋め込んだ存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
決闘ごっこ、学生企業の充実感に夢中になって、高い位置でフワフワしてるスレッタ達とは違う角度から、冷静に冷徹に学園と自分たち、それを包囲する世界を見ている。
見ざるを得ない厳しさから保護されて、”株式会社ガンダム”は楽しく浮っついてられる…とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
厳しい選別と有用性の提示を幾度も繰り返し、選び選ばれなければ愛されることも、生き残ることすら許されない、ビジネス世界の獣の論理。
人はそれに過適応し、ルールと一体化したサイボーグになる。
魔女の娘としてガンド技術に選ばれ、あるいは幾度も捨てられ試されてきた(事を忘れさせられて、ママ大好きな無邪気な笑顔を維持している)サイボーグ・スレッタが、世界認識と行動理念においては”純人間”であるのは、なかなかに面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
その改造されていない生身は、厳しすぎる風に生き延びられるか
肉体を改造せず、精神と社会的身体をビジネス・サイボーグへと一足先に変えた(変えることで、柔らかな生身を守っているようにも見える)シャディクが、スレッタが身を置く高みに這い上がる事はあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
あるいは、温室に守られている少女こそが、現実の泥濘に引きずり落とされるのか。
豊かな表現は示唆に富み、色んなことを考えさせてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ついにロールアウトなった強化人士”ハニトラ”五号も、スレッタの立ち位置とは少し遠い藪に立ち、不用意に強引に間合いを詰める。
水星たぬきちゃんに汚ぇ手で触んなッ!
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第10話から引用) pic.twitter.com/vSL3DXDhhI
同じ顔、同じIDを持ちながら、僕らが愛した”エラン・ケレス”とは違うのだと叫びたくなる、腐れチャラ男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
『花江夏樹マジ怖え…』と思い知らされる、素体ごとの人格の差は果たして、人間を切り分ける決定的な差なのか。
顔と声と身分証明が同じなら、それは同じ人物ではないのか?
強化人士を巡る情景は、おそらくは沢山いる”スレッタ”の未来を不穏に照らして、たいへん良い感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
同時にオッサンになって人生に擦れたようで、恋は純情に守ってほしいナイーブさが自分にあることも、上手く照らしてくれる。
四号はこういう罠仕掛けるの、マジ下手な真っ直ぐボーイだったから…
スレッタのおぼこい憧れを弄び、政治の道具に付け狙う五号の振る舞いに、苛立ちもつのる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ここら辺、シャディクもグエルも擦れた仮面被った純情ボーイで、瑞々しい可愛げをしっかり宿してるのと呼応した描写だよなぁ。
真っ直ぐな愛だけは、どんだけ厳しい風の中でも弄んでほしくない。
そういう人情を上手く彫り込み、逆手に握って殴りつけるからこそ、グッとドラマに惹きつけられもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
露骨にチョロ蔵である(かわいい)スレッタが、的確に弱点を抜かれてなお拒んだ理由。
私は、ミオリネさんのスレッタだから。
そんな特別な愛着も、また別角度から削り込まれていく。
温室がミオリネの心象そのものであり、そことの距離はキャラの核に至る大事な描写だと、幾度も描いてきたからこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
軌道に乗ってきたビジネスに視界を狭め、スレッタの思いに目が行かない”遠さ”は良く刺さる。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第10話から引用) pic.twitter.com/VmagXmmmQV
同性が嫁婿の間柄になれる先進性を作品の真ん中にぶっ込みつつ、プロスペラとの嫁姑関係を企業謀略に混ぜ込んで食わせやすくしたり、”夫婦”の良くあるすれ違いを此処にねじ込んで、共鳴の足場に使ってきたりするのが、このアニメのやり口でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ステレオタイプのヤスリがけと活用が、異様に上手い
会社がデカくなってくやりがいに視野を狭め、他人の気持ちを慮れない冷たさはデリングそっくりでもあり、そんな父にようやく認められたからこそ、ミオリネは”株式会社ガンダム”というビジネスから、けして目を離せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ここら辺、経営者と実務者の視野差でもあるよなぁ…。
スレッタは仕事を通じて育まれる人との繋がりや、自分がなにかの大事な一部になっている帰属感をこそ、ビジネスの醍醐味と感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
ミオリネは幼年期から仕込まれた優秀さを活用して、ビジネスのスタンダードに従い金で人を雇い、システムを的確に回していく状況自体に、やりがいを覚える。
どっちが正しいという話ではなく、どちらもあって”株式会社ガンダム”なのだが、極端にスレッタの一人称に寄せて物語を描く今回、ミオリネの…彼女が父から確かに継承し体現するビジネスの冷たさが、強く強調される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
それに晒されれば、柔らかな果実は枯れ果ててしまうような、厳しい風。
しかしそれは有史以来、人間社会にずっと吹き続けてきた風でもあり、これに乗って人間は地平線の向こうへ、大海原へ、あるいは宇宙へと漕ぎ出してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
宇宙こそが人類の根拠地となり、怜悧な企業論理が全てを覆い尽くしつつあるサイバーパンク世界は、あくまで人間の歩み、その延長線上にある。
ミオリネが必死こいて働きまくり、計画を制定し人事を整えることでしか、スレッタ達が感じた充実は維持できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
株式の牙、シェア率の爪でお互いを引き裂き合う現場がけして甘くない事を、企業の子どもとしてミオリネは嫌というほど良く知ってて、自分の居場所を守るためにも、負ける訳にはいかない
そこで人情と実益、”二つ”をもぎ取る豊かさは重大の少女にはまだなくて、二人の心はすれ違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
前に進んで”二つ”になりたいスレッタの思いは、儚くすれ違い地に落ちる。
ここで照明落ちて真っ暗になるの、最強のベタ足演出で凄い好き。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第10話から引用) pic.twitter.com/h8i9d4Xdhd
お互いがお互いを見れてない哀しさを描くべく、スレッタとミオリネの体格差を悪用してくるところとかも、ブッチギリの”冴え”で本当に凄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
このすれ違いを埋めるためには、まずミオリネは血の呪いを越えてビジネスに組み込まれた人の息吹を、自分を抱いてくれる女の子の温もりを、見据える必要がある
そして同時に、スレッタも甘い夢から目線を下げて、自分たちを包囲している現実を見据える必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
それはつまり、母に呪われた己の出生、ガンダムという呪いに目を向け、彼女の純粋なる幼年期が終わる日でもある。
『ハッピーバースデー、スレッタ・マーキュリー』と告げる準備は万端だ!
フツーの学園ドラマなら、穏当に波乱を越え思いを伝えあって回収されそうな青春のすれ違いであるが、このお話の舞台は蛇の巣でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
鹿が草食む、あまりに美しき廃墟とかした地球からやってくる魔女たちは、どんな運命を物語に投げ込むか。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第10話から引用) pic.twitter.com/cq38m6CK2I
そしてボブ…ボブじゃないか!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
グエル・ジェターク男の旅路を、最高に活用する偶然のめぐり合わせで、第1クールクライマックスに向けて準備は万全である。
いやー…やっぱオモシロすぎるなこの男。
見てる側の想像を三歩上行く展開で、キャラのポテンシャル最大に引き出してるのも良い。
地球の魔女たちが、もはや昨日を果たさなくなった”学校”にいるの、決闘ごっこに明け暮れる超最先端学園を舞台にしてきた今までの描写と最高に響き立って、ホント素晴らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
お前らがキレイなおべべ着込んで、決闘だビジネスだ自己実現だと浮かれてる、その足の下。
地球寮のみんなが魂の起源とし、なんとか空の上で差別に負けずのし上がって、成果を持ち帰ろうとしている場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
その土臭い臭気が、荒んだ少年兵の現状が、一発で伝わる見せ方をブチ込んできた。
荒廃してなお自然豊かで、終わりきった美麗が確かに宿るのマジ良い。最高。
あの最悪の”学校”を本拠地にしてると見せたことで、凶暴に荒くれて幸福をぶち壊しにしてくる魔女たちもまた、世界と大人の犠牲になってる子どもなんだと理解らされちゃうの、凶暴ですらあるよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
学園とはまた違う厳しさだが、あの子達が否応なく向き合ってる風の匂いは、スレッタ達と多分同じで。
でもかたやひっくり返され奪われれる高御座、かたや簒奪し混乱させる地虫の立場と、天と地に分断されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
そういう世界は情け容赦なく、スレッタが満たされ守られてる温室の外にあって、テロルこそがそんな事実を、水星の幼き魔女に教えるのかもしrない。
果たして、人の証は夢でしかないのか。
引き裂かれた人の心は、けして繋がらぬまま孤独なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
そこら辺を激しく問いかけそうな、運命の炸裂前夜でした。
大変良かったです。
メチャクチャ色んなキャラと要素をブチ込んで、しかしスルッと食えて楽しいのは本当に凄いな…胃もたれしない新食感、水星の魔女ッ!
このてんこ盛り感って、メインターゲットである10代に馴染みがない…けど、今後世界に漕ぎ出すにあたって絶対向き合わなきゃいけない諸要素を欲張りに盛り込み、『難しくてわッかんねー』と拒絶されないための、貪欲な野心だと思うのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
世界と人間定義を書き換えてしまうほどの、画期的な新技術。
ビジネスの論理が冷たく世界を席巻し、否応なく荒れ狂う未来を身近なドラマと感じさせるために、”家”の最悪を丁寧に煮込んで、馴染みのある味を染み出させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
『ガンダム、俺たちのアニメじゃねぇっす』と言われたところから始まってる作品だなー、って思う。
ここでニューテックなりビジネスなりに興味と親しみをもって、自分の内側に引き受けていくのって、メチャクチャ若い子にとって、それを引き受ける社会とエンタメにとって、意義深いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
同時にそういう教導的意味合いだけでなく、それを触んないと古臭く、”今のアニメ”になんないつう話でもある
ここら辺の手付きはプリキュアを筆頭とする児童アニメの味わいもあって、”Do It Yourself!!”と合わせて、前のめりになれてる大きな理由かな、と感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
絵空事を楽しむ以上の、あるいは絵空事を心から楽しむからこそ、その先にあり土台でもある今と未来を、捕まえる形のない武器を手渡せる。
そういうフィクションの強さにもしっかりアプローチしている所は、とても好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
若人の最前線に殴り込む決意が、真新しい題材をどう料理し面白く見せるかっていう、新鮮な楽しさに繋がってもいるしね。
ここら辺の理念と作劇、面白さと歯ごたえの共犯は好きだし、とても強いと思う。
まぁそういうのを心底に届けるためには、ガンッガンに惹きつけられる最高の魅力と、それを容赦なく殴りつける悲惨さが同居しなきゃいけんわけだがなッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月12日
『俺たちは、”それ”をやるぜ…』という犯行予告としても、大変力強い回でした。
次回も楽しみッ!!