イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

宇崎ちゃんは遊びたい!ω:第11話『なんだかそろそろちゃんとしたい!』感想

 揺れ動く僕たちの性(サガ)、一つの決着に向けて滑走を踏み固めていく、宇崎二期第11話である。
 前回ありえん最悪っぷりをブン回していた桜井父だが、我が子の現状を組手の中で見切る能力は非常に高く、コンプレックスの対象だからこそ相手に刺さる言葉も投げれて、結果として煮え切らない状況に強い一発を入れてきた。
 そのモヤモヤを喫茶亜細亜に集うおじさんたちに受け止めてもらって、自分とあの子の未来のために決意を握りしめレディーゴー! ……って思ってたら、想定以上に宇崎がウザいのでクリスマス直前で足踏み!! という状況。
 二期ラストにしっかりまとめ上げるべく、いい具合に話が進展したと思う。

 

 そのきっかけはやっぱ最悪クソ親父で、まさかまさかの柔の家だった先輩に青春ぶつかり稽古、苛立ちすら火薬に変えて息子を前に進めていた。
 色々ヤバい部分もあるが、我が子の気質と現状をちゃんと見切って、本音を吐き出しやすい”勝負”の形を身勝手で包んで整え、これ以上なく具体的にガツッとぶつかっていったのは、しっかり”親”だったかなと思う。
 先輩も湧き上がって当然の反発を覚えつつ、他の優しい人(例えば榊とか)に刺されても無視できてしまう釘を、親父だからこそ身体の真ん中で受け止めて、宇崎と”ちゃんとする”べく悩んで考えて……と、結構いい塩梅。
 本当にクソで大嫌いなら、耳に痛い忠告も無視するもんな……突き刺さって揺れるのは、血を分けた父親の存在が色んな意味で大きいからだろう。

 そんな桜井父がぶっ刺した釘は、宇崎に向き合う自分こそが、先輩の好きな宇崎の価値を決めていくという、人間社会の相互性。
 心地よいぬるま湯の中で一生足踏みするお話が一歩踏み出す時、『社会の中の俺と君』という視点が”大人”から投げかけられるの、ジュブナイルだなー0って感じ。
 いい出した親父の社会的立ち回りがどーなのか、って話はあるにせよ、大学生という立場を考えると、先輩にとっては無視できない、優れた忠告であろう。
 ここら辺、中学・高校舞台のラブコメだったらそこまで重さがないネタなわけで、時折薫るセックスの気配と合わせて、大学生である意味が大きめなのは凄く好き。

 宇崎が酔っ払って垂れ流す惚気に立ち現れる、自分と他人の距離把握が下手くそで、スペック高いのにソロでしか立ち回れない先輩の姿。
 それは心理戦で父に上回られ、バンバン投げられてる様子からも見て取れる。
 自分がどんな存在で、何をしたいかは、一番身近なはずの自分の中を探ってもなかなか見えてこず、むしろ他人や社会といった自分から遠く思える場所に、遠いからこそ反射するしか確認手段がない。
 そんな事実とがっぷり四つ、向き合うしかない時間が先輩にも近づいていて、一番身近なその現れが”異性”である宇崎……って形か。
 ここら辺の腰の弱さを二年ぶり組み合って即気づくあたり、桜井父はなんだかんだ、息子を良くみている。

 

 無責任な傍観者、他者をコンテンツ化して消費する最悪人間であることを止めたマスターの助言もあって、先輩の方の腰は定まってきた。
 涎ドバドバで宇崎ちゃんを消費してる娘を置き去りに、父は真人間への道へひと足お先しつつあって、こっちの親子事情も複雑だなぁ……ネタが濃すぎて、あんま表に立たないけど。
 柳ちゃんにもドンビキされていたし、いい加減亜実は自分の嗜癖が、それきっかけで人生ドロップ・アウトしかねない超危険行動だってことに気づいて欲しい……が、あいつの垂涎がないと、宇崎と先輩の身悶え距離感が”お話”にならないからなぁ。
 ここら辺社会と自我に挟まれた”人間”と、お話の都合をスムーズに回す”キャラクター”の間にある摩擦熱を感じることが出来て、結構好きな軋みだったりする。

 しかしなー……肝心の宇崎が、『中途半端に身悶えする不器用な先輩』が大好き全肯定なので、『そんな先輩を唯一愛してあげる特別な自分』に酔ってるのもあって、会計性が変化しそうになるとウザくしがみついてくるのがな!
 この『可哀想な先輩と、それを愛する自分』の特権化こそが宇崎花の”人間”だと思ってるので、勝手に見下してマウント取ってるウザさはむしろ大好きなんだが、否応なく時が流れていく二期、このままだと愛着抱えて先輩とモラトリアム心中してしまう。

 お互い現状の歪さとそれで踏みつけにされるものを確認して覚悟を決め、歩み寄って関係性を変えていく”正しい成長”を、道徳の時間みたいにぶん回す話でもねぇんだが。
 ”人間”としての二人がこのままではいたくなくて、でもこのままでずっといたい気持ちもあるという、生っぽい身悶えは結構彫り込めている話で、そこが好きだ。
 あの子らに”ちゃんとして欲しい”と見てる側も思うのは、チャーミングな二人がなんだかんだ好きで、変わっていくことを望んでいる二人の願いがちゃんと叶うといいなと、思えばこそだろう。
 『人として!』みたいな力んだ訓示は横にどけて、なりたい自分に近づいていく凄くオーソドックスで、だからこそ面白い自己実現のお話……その結末としての恋愛成就を、ちゃんと見届けて二期を終わらせてほしい気持ちは強い。

 同時に宇崎がうぜーのも先輩がよえーのも彼らの”人間”で、なかなか変わらない僕たちの似姿がそこに踊っているのも、楽しく見守ってきた。
 残り二話、そんな正しくはないけど本当ではある”人間”を楽しく描いて、お話に一区切り付けてくれたら最高だな、と思います。
 そのための足場は、二期かなり頑張って整えてきたと思うし、次回も楽しみ!