イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第23話『ジェイル・ハウス・ロック!』感想

 友との英傑の、さらに先に続いていく運命の戦い。
 神父はDIOの残した神秘を手に入れ、徐倫は父の記憶と敵の正体を知った後のストーンオーシャン第23話、全力で”メメント”である。


 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第23話から引用

 冒頭、DIOの語る謎めいた預言は神父を突き動かし、おぞましくも超越的な儀式によって”世界”の先へと進む道を切り開いた。
 『ド腐れ悪党が、なーに爽やかな風に乗って新たな門出だッ!』という感じだが、彼の人生を変えてしまったDIOの遺言を忠実に拾い集め、監獄で得るべきものは全て得た神父は、堂々と約束の場所へと旅立っていく。
 ある種秘教的なおどろおどろしさと、圧倒的なパワーを有して生まれた”緑の赤ちゃん”……新たなる神と一体化した神父は、DIOが夢見て成し遂げ得なかったオカルティックな超越へと、自由に突き進んでいくことになる。
  それが具体的にどのようなものであるかは、今後徐倫が彼に追いすがる中で見えてくる(そして、とても理解が難しい)モノだが、まーロクでもないのは間違いないよな……。

 ”世界”の先の光景、天国、神。
 神父が突き進む道を飾る言葉だけは綺麗だが、それが生み出すものは人間がしちゃいけない死に方に満ちてて、その姿勢も極めて身勝手で独善的だ。
 DIOを引き継ぎ”世界”の先に突き進む資格が、間違いなく己にあって、そのためにはなにもかも踏みつけにしてかまわないと断言できる猛烈なエゴ。
 それが掴み取る未来が、人間の持つ輝き……例えばF・Fがその死に際、『それこそがあたしなんだ』と思えたような魂の光に満ちているとは、絶対に思えない。

 

 しかし邪悪なる運命は牢獄の外へ解き放たれ、徐倫はその事実をもう知っている。
 ならば追うしか無い! と、覚悟ガンギマリの”凄み”でエンポリオくんを気圧す徐倫
 その立ち姿が監獄での厳しい体験に鍛え上げられた、鋼の精神を反映して高邁であるほどに、それを砕く”ジェイル・ハウス・ロック”のヤバさも際立つ。
 神父が帰依する超越的な邪悪に立ち向かえる、人間唯一の武器が高邁な精神であるのなら、その根源たる”記憶”を三つに制限し、戦士を無力な家畜に変えてしまう異能は、直接的に身体を砕くよりも凶悪であろう。

 F・Fの命を奪い、関わるもの全ての運命が大きく切り替わった激戦。
 そこから打って変わって、不気味な霧が闘争の決意を砕いていく、真の牢獄が描かれていく。
 その静かなモダンホラーテイストは逆に、”ジェイル・ハウス・ロック”の脅威を際立たせていく。
 強い決意さえ維持できれば、難攻不落の牢獄も圧倒的な脅威にも、人間は立ち向かえる。
 しかし三つしか記憶が持たず、永遠に同じ場所で足踏みし続ける精神牢獄に囚われれば、戦う意思それ自体を砕かれれば、肉体は生きていてもどこにもいけない。
 ”ジェイル・ハウス・ロック”は、そういう形のない牢獄に脱獄犯を閉じ込めていく。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第23話から引用

 そんな徐倫の新たな牢獄を不気味に、重たく描いた後に、気高き精神のヴィジョンである彼女のスタンド……運命を紡ぐ糸は絶対に消せない意思を、その身に直接刻む。

 『エンポリオに会え!』

 一見徐倫を思いやってるようにすら見える、ミューミューの柔らかな攻撃に抵抗の証を全て拭い去られても、”ストーン・フリー”で刻んだ思いだけは消えない。
 ”ジェイル・ハウス・ロック”が許す三つの猶予を使い切らず、『二つだけでいい』と思い切る姿に、出口のない牢獄に閉じ込められ武器を奪われたかのように見えた徐倫が、未だ魂の輝きを失っていないと解る。
 そういう強さはエンポリオくんも同じで、電撃ビリビリトラップにハメられながらも、徐倫に真実を伝えるべく何度も立ち上がり、幾度も焼かれる。
 つーかアニメのエンポリオくんは幼気な少年力がめっちゃ高いので、ひどい目にあっていると大変心が痛むが、しかし彼もまた運命に抗う戦士の一人、監獄の恐怖にビビっているばかりではない。

 牢獄に潜んで待ち受ける”ジェイルハウス”は、エンポリオくんが言っていた通り『監獄自体が脱獄を阻み、囚人から戦う意志を奪う』スタンドだと言える。
 一足先に自由になり、自分が見据えるどす黒い未来へ進みだした神父に追いすがるためには、2クールの長きにわたり物語の舞台となり、徐倫達から自由を奪っていた場所そのものと、最後に決着を付ける必要があるわけだ。
 ここで徐倫と共に戦うのが、生まれた時から監獄に捕らわれ、外の世界を知らないエンポリオくんなのも、彼が乗り越えていくべき運命に向き合った選択で、とても好きだ。
 あんだけ徐倫の決意にビビっていた彼が、故郷でもあり檻でもある監獄から出れないと諦めていた少年が、肉を焦がす電撃に怯まず進んだ先に待っているのは、どんな覚悟なのか。
 第2クールラストを飾る、奇妙で鮮烈な戦いをアニメがどう描くか……来週も楽しみだ。