惑星ノーマンズランドの物語は、タイトル通り休みなし!
味方のはずの市民に追われ、敵のはずの悪漢を助けての大騒ぎ、新生トライガン第2話である。
ヴァッシュのオリジンを早出ししたり、世界観やキャラを広めに見せたり。
ややゆったり進んだお話が第2話にしてテンションアップ、騒がしくホコリ臭く世知辛い、この星のスタンダードをごった煮にしたような展開を見せた。
母は子への愛ゆえに恩人を付け狙い、極悪人にも親子の情がある。
厳しすぎる環境ゆえに奪わねば生きていけない星のルールから、全力で逃げ隠れする優男のハードな生き様が、ゴロゴロ勢いよく転がる回だった。
まだ魔人達とのシビアな闘いにはなっていないので、悪辣ながら憎めないこの星の人々の表情が良く見えて、コメディとしてもテンポ良かったと思う。
洒落になってない情勢なんだけども笑いは消えない、なかなか難しい塩梅の笑いをしっかり”動き”で駆動させれているのは、オレンジの表現力を正しく使いこなせてる感じだなー。
ツギハギだらけの錆鉄街を、賞金首が駆けていく。
妊婦がいかにも手作りなグリースガンを構えている姿と合わせて、序盤の追いかけっこはこの星に生きるということがどんな味なのか、活劇の中でしっかり見せてくれる感じがあった。
恩義も情けも確かにあるが、プラント壊れちゃそれもぶっ飛ぶ。
人が生きていくにはあまりに厳しすぎる場所で、それでも子をなしたくましく生きている舞台として、ヴァッシュが駆け回るサビだらけの街は凄く良かった。
ヴァッシュは極力(自分と人類をこの煉獄に叩き落としたような)シリアスな重力に捕まらないよう生きている男であり、踊っているような戯けているような足取りも、それを強く反射している。
誰かをおちょくっているわけではなく、むしろすごく真摯に真剣に、自分が笑いものになれる世界を夢見ている男。
しかしその剽軽は、重たすぎる宿命の中では”逃げ”と捉えられてしまう。
殺して奪うが当たり前の修羅界では、一番厳しい生き様なのに……だ。
ヴァッシュは糾弾の言葉をヘラヘラ笑って受け流しながら、自分を付け狙う恩知らずも凶悪犯も平等に助け、誰も殺さない。
彼の銃弾はここまで徹底的に”守る”ために使われていて、彼自身も必至に体を張って、ちったぁハッピーな結末に向けて必死に走り回る。
それは鋼のマチズモが当然なノーマンズランドでは、極悪非道の悪漢にすら罵られるスタイルだ。
……千葉さんがIQ低いモヒカンの声やってると、北斗みが増して荒廃した背景にしっくり来るな……。
生まれてくる我が子のために銃を手に取った母も、極悪に思えたネブラスカ親子も、赤い血が身体を流れ、誰かと思いをつなげている。
弾代を気にしすぎるヴァッシュと、虎の子のロケットランチャーをなかなかぶっ放さないネブラスカの重ね合わせは、似通った部分も戯けた可愛げも共通している二人が、殺し合わなきゃ生きていけない土地の宿命を良く語っている。
そういう場所でもみくちゃにハメられ、裏切られ、流れ流れてなお、逃げれる甘さを捨てれない男。
それがこのお話の主役だ。
ヴァッシュがネブラスカに対峙した時。『キミたち”も”助けたいんだけど』と切り出した視界の先にあるのは、敵味方の区別だけでなく奴らが盗もうとしたプラントも含んでいるんだと思う。
宿命の永生者であるヴァッシュの足場は、”キミたち”人間と同じくらいプラント側にも乗っかっている。
失われた技術(ナイヴズの共犯者として、ヴァッシュ自身が失わせた技術)にして人類最後の生命線……プラントは金で買われ盗まれるモノとして人間に扱われ、誰も彼らに共感を寄せない。
ヴァッシュだけが異形の兄弟と心を響かせ、どうにか人もプラントも手を取り合って生きていけないものか、重すぎる秘密を抱えたまま悩んでいる。
そしてその共生路線は、船ぶっ壊して狂笑してたナイヴズに最初から否定されていた生き方であり、その長い手はヴァッシュを逃してはくれない。
そんな男の苦笑いに新米記者はときめき、ベテランは背中から声をかける。
『メリルとのロマンス、発火早いな!?』と思わなくもないが、そんな乙女がなかなか踏み込みきれないヴァッシュの影に、激渋ロベルトおじさんが滑り込む流れは、新米×ベテランに座組を改めた効果が良く出てるなぁ、と思う。
疲れるほど人生に深く潜っているおじさんだからこそ、超人がひた隠しにする影と重荷に目が行く説得力があるし、この二人の絡みはバキバキに渋くて良い。
ていうか新ヴァッシュは彼が持ってるシャイでチャーミングな味がすごく良く整えられているので、メリルがキュンキュンするのはめっちゃ納得。
デザインの時点で”強い”のに、コミカルながらセクシーでもある仕草がブースター載せてて、魅力的な主役に仕上がってんのは凄く良いなー、と思う。
孝行息子力が原作より遥かに上がったゴフセフくんが、キモいマクロファージ爆弾にぶっ飛ばされて、今回はおしまい。
騒動を数珠つなぎにして大暴走(STAMPEDE)させることで、1クールで走り切るお話のリズムをなんとなーく体得できる第2話でした。
元気よく走っているからこそノーマンズランドの”当たり前”が感じ取れ、それで諦めたくないヴァッシュの生き方も、しっかり伝わるエピソードだったと思います。
誰も傷つけぬまま守ろうとする行き方は、殺せばこそ守れると吠える修羅の世界で、何を成し遂げるのか。
次回も厳しい縦断問答が続きそうで、とても楽しみです。