イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

もういっぽん!:第3話『空気、変えてくれるんです』感想

 柔道着着込んで青春一本道をひた走るアニメ、顧問とライバル登場で部活アニメっぽくなってきたぞ! な第3話。
 お調子者で空気が読めない未知が持つ天性の引力をたっぷり描写しつつ、楽しいだけでは終わりたくない部活にそれがどう役立つのか、上手く予感を作る回となった。
 どっしり落ち着いて浮かれポンチ高校生の手綱を握ってくれる顧問の先生も、因縁ありまくりなツインテールのライバルも加わって、強い土台にしっかりお話に必要な機材が運び込まれてきた感じ。
 これを試合で組み立てて、どんだけバカデケェ青春のモニュメントを作れるか……期待が膨らむ第3話でした。
 あと、意味深過ぎる南雲のカットイン乱打な……来るのか、”嵐”が。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第3話から引用

 というわけで一生キャッキャ姦しい未知の落ち着かなさを、ビシッと引き締めてくれる大人が加わり、新生青高柔道部のエンジンが本格的にかかってきた。
 空気読まない・読めない未知のアホさは長所でもあるわけで、上から押しつぶして書き換えてしまうより、周りが補いながら強みを生かしたほうがみんなにとって良い。
 いいコの枠からはみ出す規格外の引力が、早苗やら永遠ちゃんやら南雲やらバリバリに引き付けてる様子は既にたくさん描かれているので、そこら辺をちゃんと見抜きつつ、致命的な間違いをしないよう目を配ってくれる大人が現れたのは、なかなかありがたいことだ。
 実際どうかと思うレベルで、未知常時はしゃぎ過ぎだからな……そこが可愛くもあるのだが。

 思春期特有のホルモンバランスで突っ走る青春、その当事者は気づかない危うさやあっけなさを、大人になってしまっている夏目先生は良く知っている。
 同時に何もわからないままひたむきに突き進むエネルギーが得難いからこそ、初心者から永遠とタメ晴れるところまで自分を鍛え上げ、子どもたちに向き合える自分でいようとしてもくれてる。
 そういう存在に甘え頼ることで、『柔道は楽しいし、このみんなでやる柔道はもっと楽しい!』というシンプルな真実を、未知たちは疑わずにすむ。
 そういう好ましい関係が一気に構築されていて、部活モノとしての足場が勢いよく組み上がっていく気持ちよさがあった。
 そこに剣道部の南雲はいないわけだがなッ!
 イヤほんと今回、南雲安奈がどんな視線で園田未知の充実と、そこに自分が寄り添わない不在を睨んでいるかメチャクチャ刻み込まれてて、大変なことよ全く……。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第3話から引用

 南雲の爆弾が破裂するのはまだ先として、直近爆裂する因縁ツインテールがファミレスに着弾!
 因縁なすりつけて雰囲気最悪にしてくる、人間関係毒ガス兵器……かと思いきや、後輩のパフェ取られたるから怒ってる描写を入れることで、憎めない人であると速攻理解らせてくる感じは凄く好き。
 感情の拗れは確かにあって、それを器用に飲み込めるほど大人ではないけども、天音なりに”部活”は大事で好きなのだと伝わることで、それぞれの居場所でそれぞれの青春が育ってる横幅が、しっかり出る。
 メインカメラに切り取られている青高柔道部の楽しい日々と、根本的には同じ楽しさ、真剣さで”部活”してるはずの相手と、なんかギクシャクした重たい感じになる。
 この後試合を通じて解決されるべき問題が、試合場を離れたありふれた放課後の中で際立ってくるのは、結構好きな描画だ。

 天音がバチバチぶつかることで、永遠が何にとらわれて動けなくなっているかと、それをぶっ壊す未知の自在さ、腰が軽すぎる危うさも見えてくる。
 軽挙妄動をJKの形にして煮詰めたかのような未知であるが、人生の勘所はキッチリ抑えベストタイミングで手を差し出すので、周囲に慕われ求められる。
 人間としての凸凹がハッキリした主人公で、なおかつ凹みの部分もギリギリ笑って済ませられる感じに抑えられているので、好ましい理想と生っぽい現実感が良いバランスで同居してる印象だ。
 フツーなら空気を読んで間に入らないピリピリした関係に、気にせず身を乗り出してダチ顔する太平楽は、凝り固まって動かない永遠と天音の未来を切り開く、突破口になっていく。

 

画像は”もういっぽん!”第3話から引用

 

 永遠は真意が理解してもらいにくい凹みを持っていて、天音との拗れた関係もそんな特質が、長く影を伸ばした結果のようだ。
 自身同じように永遠を誤解してしまいそうな経験を経て、でも今こうして真意を受け取って共に柔道している未知は、わかりにくさの壁をひょいと超えて、永遠の一番柔らかい部分へ適切に手を伸ばす。
 未知と一緒に柔道をしていると、永遠は自分が押し付けたくなかった自分ではなく、心の底から笑顔でいられる、”こうなりたい”と思える自分でいられるから、未知のそばにい続けるのだ。
 ややクドいSDコロコロ最高ハッピー演出、永遠ちゃんがどんだけ未知に救われ惹かれているかよーく解って、可愛くて最高だった。
 そらー狂うわな色んな女が……。

 未知はただ無遠慮にゴリゴリ押し込むだけでなく、柔らかく引いて受け止める立ち回りも出来て、ナチュラルに人間相手の駆け引きが巧い。
 ここらへんの強さが未知一人では成立せず、メガネの参謀役が手綱を引いていればこそ機能しているとこ含めて、主役の特別さがいい塩梅で描かれている。
 そして空気を読まず空気を変えれる(読む必要があるなら、早苗や先生が読ませてくれる)強さは、未知を中心に”部活”していくこのお話にとって、とても大事な力だ。
 試合の緊張、一人じゃないからこそ生まれる特別な力。
 大会に挑む時に描かれる様々な壁を、人の輪の真ん中に立って越えていく推進力が主役にあることも、ここでのやり取りから見えてくる。

 『つーか永遠ちゃんはコロコロ転がってキャッキャウフフ青春堪能して人生最高かも知んないけど、誤解の刃で切り裂いちゃった天音先輩は一体どうなんだよ!』と、自然に思える因縁も良い。
 永遠との間にある重たいしこりをしっかり書きつつ、それが色んなモノが食い違ってしまった結果の、解かれるべき青春の結び目であること……それを越えていく力は未知から永遠にちゃんと伝わっていると描いているのは、話の見通しが良くなってありがたい。
 ゴツゴツ不器用にぶつかりつつ根っこの善さがしっかり解るので、天音にも良い結末を用意して欲しいと自然に思えるのもグッドだ。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第3話から引用

 そんな風に柔道部で育まれる大事な関係の横で、NAGUMOのAIがOMOIッッッ!!
 どう考えても尋常な重力と湿度ではないでしょうよ、この”視線”のぶっこ抜きはッ!!
 早苗もそうなんだが、未知が無自覚にぶん回す暖かさに自分がどんだけ依存し執着しているか、その重さを理解られてしまったらもう友達ではないと賢く理解して、アホ女子高生ライフをある種の擬態として維持している姿が、まー切実よね……。
 むろんみんなで楽しい学生生活には欠片の嘘もなく本気なんだが、同時にその距離感を成り立たせている以上の質量が南雲の中にはあって、無自覚に庇われると思わず溢れる……抱きつくッ!!!
 未知という太陽が生み出す引力圏……”柔道部”の外側から光を見つめ続ける南雲は常に影の中にあって、アホな未知はその寂しさに気づかねーんだわ気づいて欲しくねーんだわ……。
 大好きな親友だからこそ、胸に抱えたこの思いは簡単に預けられず、なんでもない今まで通りを演じつつも、変わっていく関係に心が揺れている。

 その上で、あくまでカッコいい南雲杏奈でい続けたい気持ちもあって、爆エモ光線に満たされた車内の対峙では、バキッとプライド叩きつけてるのホント良い。
 永遠が未知の光を浴びてどれだけ笑顔を咲かせているのか書いているからこそ、剣道部という居場所で離れて咲く自分を語りつつ、南雲が未だ影の中にいる現状が際立つ。
 剣道部の仲間を勝たせたいという気持ちも、それを成し遂げうる強い自分でいたい気持ちも、遠く色んなものを見つめる視線も、それを太陽に気づかれたくない影も、全部本当のことなのだろう。
 複雑な明暗が踊る青春のキャンバスとして、南雲杏奈は圧倒的に”本物”で、メインカメラに捉えられた時の爆発力が、今から大変恐ろしいです。
 備えをしなきゃな……やがてくる”嵐”への……。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第3話から引用

 ”嵐”はさておき、三人で挑む初めての県予選は波乱の予感……未知アホズラやめなッ!!
 因縁のライバル相手にグツグツ勝負論が沸き立つのもいいが、未知が隣にいればこそ永遠ちゃんが未解決の問題に向き合う足場を得れてる感じが強くて、大変良いです。
 霞ヶ丘との勝負は純粋に競技として盛り上がるだけでなく、未知の主人公力が青学柔道部の枠を超えて、より広い所に届く強さをもってるかを示すとも思うので、どう描いてくれるかワクワクします。

 本気でぶつかりあえばこそ心にわだかまった影を吹き飛ばせる、”柔道”の凄さ。
 その楽しさに一緒に組み合ってくれる、かけがえない仲間。
 作品の真ん中にあるものは、テンポ良く転がっていく青春の中で堅牢にブレない。
 そんな体幹の強さが、やっぱり魅力的な作品だ。
 次回初めての団体戦、どんな輝きが眩しく光るのか。
 とても楽しみです