イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第15話『あんこ悲しや、恋の味!?/思い出危機一髪・・・/薬口害』感想

 次々うる星奴らが訪れている友引町の物語、第15話はランちゃん欲張りセットにサクラ先生の奇妙な発明まで加えて、三本立てで贅沢に。
 やっぱ砂糖菓子みたいな外装にドスの利いた中身を詰め込んだランちゃんは大変好みで、彼女にフィーチャーしたお話がたっぷり見れて良かった。
 あたるの出番があんま多くなく、ラムちゃんとの拗れた腐れ縁とか、こんな厄介な性格になった理由とか、レイに見せる純情とか、色んな表情を楽しめてよかった。
 ランちゃんと向き合ってるラムはあたる相手とは違う表情……ぶっちゃけ天然の地肌に腹黒塗料を塗りたくったヤバさが前に出てきて、そのちょい黒い色合いもまた好きなのである。
 山盛りキャラを詰め込んでスラップスティックに撹拌し、飛び出す化学反応をたっぷり味わう。
 るーみっくな面白さの根っこを、たっぷり堪能できる話数になった。

 

 

画像は”うる星やつら”第15話から引用

 というわけで第1エピソードからスーパーランちゃん祭り! ……なんだが、今回作画妙に可愛くて、ただでさえピンクの可愛さ爆弾なランちゃんがブースター積んで俺に体当りしくる仕上がりだった。
 食欲魔人なレイの本能に振り回される形で、献身と純情を弄ばれ流れる涙には、”造り”ばかりではない本物の健気がしっかり流れていて、しかしガツガツ食ってタフに思春期を駆け抜けるたくましさも、けして嘘ではない。
 飾っているからこそ本物で、いがみ合ってるからこそ仲良しなネジレ加減。
 レイを間に挟んで、宇宙幼なじみの美味しいところをがっぷり齧れるエピソードといえる。
 いつでも命の心配をしているヤバい関係性から、ようやく開放されると浮かれるラムちゃんの『きゃっほー』も可愛いしなぁ……。

 などと外野から堪能しつつも、ここの横線はたいそう面倒に拗れてもいて、なにしろレイが顔面だけ良い脳みそスライムなので、フツーに複雑な人格に育ったランちゃんだけがマトモゆえに空回りするという、厄介な構図。
 ラムは都合よく便利に過去の因縁やら、現在の多角関係やらの上をぴるぴる飛び越えて、ダーリンダーリンうるせぇ部分があり、ランちゃんが拗らせた本気に向き合いきれてない感じもある。
 つーかここでシリアスになっちゃうと、魅力的な物語を生み出す苗床が一個潰れて、話が終わっちゃうからなかなか煮込みきれない。
 この『終わらない物語の終わらなさ』ってのは、既に終わらない終わりをとうの昔に迎えた本編の決着も踏まえて多層的メタ構造の面白さでもあり、日本がそういう季節を結構前に終えちゃった時代感と合わせて、なかなか複雑に楽しい。
 ここを噛み締めてると、ジャンルを俯瞰で睨みつつその内部で、色んな都合と折り合いつけながらいきいき育まれる物語の営為自体が、俺は好きなんだなぁ……と思い知る。

 確かに描かれた物語が作品内部で蓄積して、ランちゃんから殺意の棘を引っこ抜きつつも、ピンク色の砂糖菓子は毒を孕んで今日も元気だ。
 和解することも敵対することも許さない、永遠の祝祭を踊る友引町で宇宙の幼なじみ二人は、食欲しか脳に刻まれていないイケメンを間にはさみ/実は結構な勢いで蔑ろにしながら、ちょっとずつ変化していく関係性を踊っている。
 変わることのない輪舞曲を演じているようで、しかし確かに何かが変わっていく手応えを作中一番感じ取れるから、僕はこの二人が特に好きなのかもしれない。
 レイを巡る鞘当も今回のキッス騒動が一見なかったことのようにまた繰り返され、しかしここでラムを許し手を取ったことは確かに、積み重なる物語に蓄積されていく。
 再びランちゃんが画面に映る時、このエピソードの残滓をどれだけ引きずって、どれだけちょっとだけ変わったように描くか……そうするべく、どの物語を選ぶか。
 そういう所も、令和うる星の個人的な楽しみ方だったりする。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第15話から引用

 第2エピソードは動きのない喫茶店でのダベリと、山盛り回想されるラムの悪どい無邪気が、面白いリズムを作るお話。
 かなり強めで黒い感情をぶつけているようで、それを率直素直に相手に言えてる時点で、それは得難く風通しの良い友情なのではないか……みたいな、不思議な感慨が湧き上がる回でもある。
 こうして並べるとランちゃんが瞬間湯沸かしブリっ子に育ったのは、まーまーラムのせいであり何より母親のせいであって、そらー恨みにも思うよな……となる。
 ダーリンにビリビリ電撃入れてる間はあんま目立たない、ラムの生っぽい悪辣さもランちゃん相手だと際立って、いい具合にキャラがウェザリングされて立体感が出る感じがある。
 ヒロインとして”ラムちゃん”やってる時には、見えない表情が見れて嬉しい……という感覚。

 こんだけ散々な目に合わされれば顔を見るのもイヤ! となりそうだが、幼なじみは幼なじみであって、ランちゃんは結局喫茶店の支払いを持つ。
 そこにはあたるもレイも介在していなくて、二人だけが確かに手を取り合っていた遠い過去と、そっから拗れて絡み合ってなお続いている時間が、これからも維持されていく。
 そこには”ラブコメ”という様式(第1エピソードでメインカメラの真ん中に、しっかり捉えられていたモノだ)からちょっと離れた、勝手気ままに性悪でもある二人の生身が、とても良い角度から切り取られている感じがする。
 無論ラムちゃんがダーリンを追いかける物語は”うる星やつら”の基本であり、例えば第3エピソードとかでも可愛く演じられるわけだが。
 こんだけ色んなキャラがいて、面白ければ何でもありと賑やかにカオスが詰め込まれ、豊かな作劇空間が展開されている話なら、そっから離れた物語もまた、楽しみたくなる。
 幼なじみの厄介な過去と、殺意や恐怖や憎悪を健全に取り込みつつちゃんと向き合ってる”今”は、そんな願いを叶えてくれるから、僕のお気に入りなのだろう。
 つーかラムはランちゃんが突きつけた自分のヤバさに、いい加減シリアスになるべきだとは思う。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第15話から引用

 コズミックな桃色毒入り砂糖菓子をたっぷり堪能してED……まだ終わってない! つう第3エピソードは、また別の角度からラムの”今”を切り取る。
 四角関係の恋敵なはずのしのぶとも仲良く、サクラ先生を交えてキャッキャしてる様子はやっぱり微笑ましい……が、あたるが絡むと鬼女の色合いが濃くなるというか、思いの外甘ったるいだけで終わらない雑さが今回は強い。

 『普段から電撃ビリビリぶっ飛ばしてるわけで、ラムがあたるを扱う手付きはいつでもハードコア』……ってのは、まぁそうね。
 ”好き”って気持ちに勢い付きすぎて、思い通りにならない苛立ちをかなり強めに叩きつけるあたり、やっぱラムってヤンデレの先駆者的な顔があると思う。
 まージャンルを作っちゃった作品は皆、後に細分化され立ち現れる様相をだいたい内包しているもんではあるが。

 あたるのオンリー・ユー宣言は、ほれ薬ならぬほら薬を飲まされたテキトーな嘘になっていくわけだが、では”君待てども…”やら ”君去りし後”で見せた純情は全部出任せなのか?
 話数ごとにテイストも雰囲気も、ジャンルすら切り替わっていく物語構造体を緩やかに貫く、キャラクターの統一性。
 気まぐれに浮気と本気が入れ替わり、なにもかもデタラメかと思いきや確かに揺るがぬものはあって、しかしそれすらも繰り返す狂騒の中、曖昧に揺らいでいる。
 15話話数を重ねて、キャラもたっぷりと追加されて色んな話が生まれ、そこら辺の多彩な魅力が令和うる星にも宿ってきたなぁ……などと、思う話数でもあった。
 最後まで魔法薬の影響下、トボけたでまかせばかりを口にしているあたるの本音が、ずーっと見えきらない所が良いなと思う。
 それを露わにしてしまえば、混沌として魅力的な無限の可能性、終わらない祝祭は一つの形にまとまらざるをえないのだ。
 ビッククランチめいたそんな瞬間は、まだまだずっと先……あるいはそれを永遠の向こう側に置き去りに、楽しい時間は続いていく。

 

 そんな感じの、豪華三本立て食べごたえぎっしりスタミナ定食でした。
 凄いスピードにブレーキをかけることなく、昭和の勢いのまま突っ走って来たお話がどこに来たのか、何が書けるようになったか、騒がしさの中で教えてくれるような仕上がりで、とても良かったです。
 これでまだまだ出てないキャラがいて、次回は龍之介遂に登場だってんだから、まー凄いわな。
 まだまだ掘り出すべき鉱脈が原作に眠っている中、どんな描き方で”うる星やつら”の魅力を蘇らせてくれるのか。
 アンソロジーとしての面白さもじんわり滲み出してきた、令和うる星が来週も楽しみです!