イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 23/01/29 ケダモノオペラ『灰色都市と弄月の夜』

 昨日はシェンツさんとアツいアイカツ映画地獄語りオンライン! ……のハズだったんですが、心優しいシェンツさんが未体験のZONEへと連れて行ってくれることになりました。

 

 シナリオタイトル:灰色都市と弄月の夜 システム:ケダモノオペラ GM:シェンツさん

 コバヤシ:マカミ:ヤミオオカミ かつて神と崇められたケダモノであり、神秘を忘れた現代においてはその力も衰えつつある。人間の行く末に強い興味を持ち、牙の疼きに苛まれながらも、人と魔の間を彷徨う迷い犬。侠客口調で喋る。

 

 というわけでこれでオイラも獣歌劇者だぜッ! という、ケダモノオペラ初体験セッションでした。
 大変楽しかったです!

 ルールブックだけ買ってチャンスがなかったんですが、スルリとオレの懐に潜り込んだシェンツ先生が鋭いオリジナルシナリオを繰り出し、その現代伝奇力に心地よくぶっ飛ばされつつ、軽妙なシステムに練り込まれた決断と偶然の楽しさをたっぷり堪能しました。
 世界観の作り込み、テキストとヴィジュアルが作り出す魅力的な雰囲気が強い導因になって、『こういう遊び方で楽しみたいッ!』という欲望が素直に溢れ出す所。
 そのすべてを受け入れる懐の深いデザインと、しかし展開に迷うストレスは極限まで削ってスマート&スムーズに仕上げ、最新鋭の”楽しくイヤな気分になれるシステム”としての完成度。
 そのポテンシャルを最大限に発揮する、シェンツ先生が一番得意なコースにブン回した最高の現代伝奇シナリオ。
 どれも大変素晴らしく、たっぷりとケダモノオペラ、味あわせていただきました。

 ストリテラが物語る権限を全参加者に分配し、共同作業を通じた集団的作家性をプレイ内部で結実させる方向性なのに対し、ケダモノオペラは作者/読者、シナリオライター/参加者、GM/PLという区分をあえて崩さず、個人の作家性をフル回転させそこに参加者を巻き込むように、システムが編まれている感じがしました。
 ともすれば独りよがりな物語行為になってしまいがちなこの形式を、ランダムな判定結果と変化していく状況に応じて生まれていく”予言”の力強さを活かし、PLの介入余地をしっかり残して、TRPG的な相互意思疎通と納得を大事に物語を編めるよう、ゲームになるよう仕上げているのは、素晴らしい出来だと思います。
 予言をどういう形で成就していくのか、物語をどういう方向性に展開していきたいのか。
 TRPGの一番美味しいところをロスなく共有するべく、あくまで軽便に磨き上げられた種々のシステムがしっかりと機能し、ダークファンタジーの味わい濃い世界観もその助けとなる”生きた設定”になっていて、自然熱が入ってセッションが加速する作りでした。

 ”予言”は途方に暮れるほど曖昧でも、不自由を感じるほど窮屈でもなく、程よいバランスで物語への想像力を掻き立て、それが予言を書いたもの/受け取ったもので小さく閉じこもらない共有性も宿している。
 ここら辺はシステムというよりライティングの強さで、シナリオ自作する時はPLの決定権を剥奪しすぎないよう、適切な文言を選んで作者独自のテイストを盛り込むバランス感覚を、大事にしなきゃいけないかな、とも感じました。
 ルールブックに刻まれている語り口や、シェンツ先生が選んでくれた言葉はどれもこのピーキーな感覚をしっかり獲得していて、今紡がれている魅力的な物語を二人でどういう方向に進めていくのか、途方もない自由を誰かと共有しているありがたさをたっぷりと感じながら、楽しくセッションすることが出来ました。
 システム的に絶対的共生券がある予言の成就が、その実PLの解釈とアイデアでかなり自在に飛び回れる作りになっているのは、自由度と安定性を両立させる見事なデザインであり、物語の可能性が大きく広がっていける力強さも感じましたね。

 このバランス感覚の良さはPCであるケダモノの設定にも生きていて、人食いの怪物でありながら人に惹かれる危うさをデフォルトで盛り込んだことで、常に狭間で揺れ動き続けるダイナミズムがキャラクターに宿っていました。
 人に焦がれつつ人にはなれない異形のケダモノ達には豊かなバリエーションがあり、それぞれのアーキが豊かな物語の土壌を有して、自然と想像力が羽ばたける滑走路になってくれています。
 予言の選択と解釈、その成就とを通じて生み出される物語の中で、悲劇や残酷劇を含めた色んな結末があり得るわけですが、世間的にはダメってされてるけど今、ここで向き合ってる二人が唯一選び取った選択肢として、インモラルなタブーを共有する快楽へと強く接近してて、パワフルでナウいなと思いました。
 得てしてこういう倫理を越境するTRPGは安定性に欠けるわけですが、ケダモノの設定面でも実プレイでの立ち回りでも、一般的に道徳的是認を得られる”正しいお話”に進んでいける手がかりもたくさん用意されていて、光にしろ闇にしろその卓で選び取られるべき方向性へ、力強く突き進める自由さを確保してました。
 とにかく窮屈で矯正されている感じがなく、しかし完全にフリーハンドで逆に不自由という罠にも陥っておらず、物語の可能性をより豊かに広げることが出来る、とても良いシステムだと思いました。

 

 というわけで、大変楽しいケダモノオペラ初体験となりました。
 その後のアイカツ映画地獄トーク含め、楽しい夜となりました。ありがとうッ!