イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第28話『天国の時 新月まであと3日』感想

 リキエルを退けた徐倫達は運命に導かれ、惨劇の記憶眠る大穴へと挑むッ!
 いつも以上にモダンホラーテイストモリモリ、ぶっちゃけかなり怖い”アンダー・ワールド”戦開始のストーンオーシャン第28話である。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第28話から引用

 ”あと3日”で始まって”あと2分”で終わる、奇妙に捻くれた時間の牢獄。
 まだ72時間猶予があったはずなのに、罠に飛び込んでみれば常識を飛び越えた攻撃が激しく襲いかかってきて、決断までの猶予はまったくない。
 いつも通りのJOJOって感じもするし、『地面が記憶した過去へ、攻撃対象を誘い込み惨劇を再現して殺す』という、極めて奇っ怪な”アンダー・ワールド”相手だからこその浮遊感だな、とも感じる。
 やっぱ六部……特に刑務所出てからの第3クールはどんどんスタンド能力が観念の領域にぶっ飛んでいって、一体何が起こっているのか見てる側が腹に収める前に、致命的な事態がどんどん進行してしまう無鉄砲な勢いがある。
 それは徐倫自身が巻き込まれた奇妙な運命であり、そこでメソメソ文句をいうより、訳解んないものの渦中へと前進して、拳で制圧して欲しいモノを掴み取るドラマが、異能力に反映された結果……なのかもしれない。

 不可視の攻撃で視力を奪われたら、墜落で相対速度を上げてその正体を見極める。
 明らかに罠な大穴に飛び込み、命綱ごと仲間を引きずり込まれて、なおタフに悪夢の中でもがく。
 敵は認識やら常識やら時間やら、なにもかも捻じ曲げてこちらを殺しに来る相手ばかりだけども、どんな異様な状況でも頼れるのは心の強さ、揺るがぬ決意、そして結ばれた縁である。
 ……これが味方の専売特許ではないと、謎のアポロ11号演説で熱く示したリキエル、結構異質な敵だったな。

 

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第28話から引用

 過酷な戦いの中でも徐倫は優雅な優しさをけして失わず、口づけとともにエンポリオを死地の外側に逃がす。
 セクシー……である以前にジェントルな唇は、神父がドス黒い闇の中でなんかネットネット、DIOの息子とイヤ絆を確かめてる場面と対照的だ。
 アニメで色と動きが付いてみると、常にまばゆい光の方へと己を進めていく徐倫と、薄暗い影につきまとわれる神父のシンメトリーが、より強調されて届く感じがする。
 ふたりとも運命に導かれ仲間を増やしているのだが、それが生み出すものは真逆で、しかし確かに闇の中にも光の中にも、出会いと縁は存在している。
 神父は味の感覚とかバイタルサインとか、ヴェルサスと自分が同質であることを確かめて近づこうとする(そして安全圏からガーガー口だけ出していることにキレられ、関係が悪化していく)のに、徐倫エンポリオが大事だからこそ遠くに離す。

 それは手放してなお信じられるもの……父との強い絆を取り戻すため、徐倫が戦ってるから可能な選択かもしれない。
 神父も失われたDIOを求めて、闇の濃い場所でネトネト好き勝手ぶっこいてるわけだが、それは信徒を増やす教化の側面を持ちながら、徹底的に独善的で孤独な歩みだ。
 自分に”天国”を教えてくれたDIO(この言葉の響きが、エロティックな薫りを帯びているのは意図的である)と同化し、吸血鬼が求めた闇を超える光にたどり着く歩みは、世界全部を自分と同化していく願望と、ねっとり絡みついている。
 徐倫は他人が自分と違うこと、自分が他人と同化できないことに怯えておらず、むしろ私が私であり、貴方が貴方であることを大切にするべく、死地に己を投げ込んでいる感じがある。
 適度な距離をおいて誰かと離れ、しかし繋がっていることで揺るがぬ自分を手に入れられる。
 刑務所での経験を経て”ちょっとした百戦錬磨”になった徐倫が持つ、同化を拒む強さを神父は、けして持ち得ない。
 徐倫エンポリオにしたような親愛のキスを、エンリコ・プッチはけして果たせないだろう。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第28話から引用

 ド濃厚な作画のノリにも助けられ、病院から穴蔵……脅威がより濃く暗い場所へと近づいていく歩みには、得体のしれぬ闇に飲み込まれていく恐怖が色濃い。
 地の底を進んでいたはずなのに空飛ぶ飛行機の中に突然飛ばされ、時は数年前に一気に巻き戻り、周囲を取り巻いてるものが現実なのか悪夢なのか、確かめる手段もない。
 全く奇妙な闘いに取り込まれ、悪党どもはそれを安全圏からせせら笑う。
 地面に染み込んだ死の記憶を操る強敵に、主人公打つ手なし!!
 ……はたして、本当にそうなのか?

 徐倫エルメェスに預けた命綱は、スポーツ・マックスへの復讐を果たしてなお罪の重さを捨てきれない彼女ごと”アンダー・ワールド”に飲み込まれて、機能しない。
 しかし離れてなお機能する”ストーン・オーシャン”で繋がっているからこそ、徐倫は大ピンチに巻き込まれてなお同じ場所を目指せる戦友と、共に戦えている……とも言える。
 徐倫は常に危険の最前線に自分を置き、仲間を後ろに下がらせる。
 何の気負いも衒いもない、魂の奥底から湧き出した自然な勇気を間近で示されることで、エルメェスエンポリオ徐倫を信頼し、超常の恐怖に晒されて文句も泣き言も出てこない。

 

 一方ヴェルサスにやらせるばかりで自分は血を流さない神父は、隣りにいるはずの相手との同化に失敗し、ブツブツイライラ離反の種を闇の中育てていく。
 最初なーんか妖しい雰囲気でいい感じだったのに、すっげぇ生っぽいクソ上司感で最悪になっていく手触りが、妙にJOJOで好きである。
 まームカつくよね、こういう態度……。

 JOJOの悪党は皆安全圏に身を置き、危機と運命から逃れて結果だけを得ようとする色が濃いと思う。
 奇妙な使命感に突き動かされ、欲しい物のために傷をいとわない神父であるけども、そういうドス黒い性根と、それが生み出す不和からは逃げ切れていない感じが、ヴェルサスとのやり取りに滲んでいる。

 天国だ、運命だ。
 オカルティックな使命感を大言壮語しても、その根っこには他人を便利に使い潰し、なおかつ自分との共通点しか近づく足場を持たない生々しい狭苦しさが、じっとり息をしている。
 大地が夢見る悪夢に飲み込まれるスケールのデカさに、妙に笑える小市民感が入り混じったこの闘いは、危機にひるまぬ徐倫を支える光の強さと、神父が纏う矮小で強力な闇の濃さを、一緒に教えてくれる。

 グツグツと沸騰するヴェルサスの反感は、どんな急変を連れてくるのか。
 出口なき死の幻惑に捉えられた徐倫の、運命はどこへと転がっていくのか。
 光り輝くフロリダで結構ノンキしてる男二人は、どういう形でお話に飛び込んでくるのか。
 次回VS”アンダー・ワールド”後半戦、大変楽しみです。