ヴィンランド・サガ 第2話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
ギラついた復讐者の顔を捨て、見る影もないほど煤けた我らが主役が、どんな場所で生きているかを描く回。
理解のある御主人様、苦は多く実りは少ない労働、とりあえずの安全とコミカルな空回り。
奴隷の暮らしは表向き、悪くないように見える。
それは追々、個人が優しかろうが先進的だろうが揺るがない社会の軋みとか、ヤバい状況になって吹き出す暴力と本音とか、そういうモンを闇の中ギラギラ照らすための光なんだろうな…と、一期を見届けた身としては思わざるをえない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
かつての激浪を思い出せば、トルフィンが流れ着いたこの運命の森で…
こんだけ煤けているのも納得ではあるが、さて科目な内面の奥には何が眠っていて、光のない眼は何を見ているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
怒ったり恋をしたり、まだ生きた眼をしているエイナルとの対比で、上手く疑問が立ち上がってくる第2話だ。
二人の対照は、加害者と被害者、ヴァイキングと農民の対比でもあるかなぁ…
ここを切り開けば自分を買い直せると、告げられ向き合う未開の森。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
いつ終わるとも知れぬまま木を切り倒し、牛馬に並んで大木を押す暮らしは、商品として歯並びを確かめられる時間よりも少し、血に力が宿る手応えがある。
（画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第2話より引用） pic.twitter.com/CmRAw1sXjj
それは人としての尊厳を思い出し、踏みにじられる痛みに拳を握る元気を、エイナルに取り戻させても行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
人間以下と嘲弄され、日々の鬱屈のはけ口にされる扱いに、湧き上がる怒り。
それが”当然”でもなんでもない状況に、奴隷である彼らは置かれている。
かつての牙がすっかり抜けたトルフィンの覇気のなさは、そんな境遇を思い知らされて絶望に汚れた結果なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
それともまた別の悲しさと虚しさが、禽獣扱いも自分には当然と受け入れる何かを、少年の身体に刻み込んだのか。
トルフィンは自分を語らず、黙々と働き続ける。
戦乱によって故地と家族、農夫という転職から切り離されたエイナルにとって、奴隷身分は極めて不当である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
というかどんな事情があろうと、奴隷扱いは全ての人間にとって不当…というのが、この時代から千年を経て”常識”ってのが変わった、変わることが許されている僕らの感覚だ。
しかしかつての世紀末、略奪こそが正義であり、差別こそが当然だった時代が確かにあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
そうしなければ身内が飢え、攻めてくる敵になにもかも奪われる世界の中で、優しいことは罪悪…なのか？
未だ戦火が遠い、デンマークの開拓地。
穏やかなまま転がっていける時間は、想像より短いかもしれない。
枯れ果てた木石のように、不当な扱いに怒らず過酷な労働を飲み込むトルフィンに対し、エイナルの感情は大きく揺れ動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
怒りとそして恋心が黄金色の夕焼けに溶けて、無駄な文句を引っ込ませる。
（画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第2話より引用） pic.twitter.com/xptdah8mVH
これが現代舞台の学園ラブコメだったら、ドタバタ喜劇が後に続くのだと微笑ましく思える場面だが、身分差別と暴力の檻が分厚く人間を包囲するこの場所で、ときめきに光る瞳はどうにも不穏である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
なんもかんも、大惨事の先触れに見えて怖いよ～～（多分当たる予感）
その眩さが過酷な奴隷生活の中、エイナルが生きていく糧になってくれるのなら何よりであるが、安らぎは燃え尽き愛は両断されるのがこの世の習いと、第1話でじっくり描いたばかりでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
優しいご主人の元で真面目にやってりゃ、いつか幸せな風も吹いてくるさ。
そう思い込みたいのはエイナルも僕も同じだが、トルフィンの眼から光を奪ったものを思い出すと、それが儚い願いだろうなってことは、ようよう解る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
それでも筋骨に力をみなぎらせ、懸命に働き生きるこの若人たちの未来が、輝く場所へ繋がっていて欲しい。
奴隷生活に灯る微かな人間味が、そう思わせる
地主様も小作人に混じって汗水垂らす、ケティルの農園はこの末世でもそうとう”マシ”なのは間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
恵まれた立場に満足できず、偉大なる父の代用品としてしか求められぬ己に苛立ち、剣を抜…こうとして、いかさまキメきらない。
（画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第2話より引用） pic.twitter.com/G60mwjjaYV
若きオルマルの懊悩も可愛いもんだが、反抗の道具が危なっかしい剣と馬ってのが、なんとも不穏ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
それを上手く引き抜けることが何を切り裂き、何を取りこぼさせるのか。
思い知らされたからこそ、トルフィンは今あんな眼をしている。
戦乱は今感じるほど、遠い事象ではないのだろう。
どんだけ理解があって”マシ”に見えても、奴隷制を当然視する社会の上に乗った平穏と家族喜劇の足場は脆いもんで、いつ崩れてもおかしくないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
富と特権に生まれた時から守られてきたオルマルは、それを上から叩き潰すものにこそ憧れ、鬱屈の出口と求めている。
ずっしり重たい展開の気休めと、思わず体重を預けたくなるキャラクターであるけども、背負った剣の光がどうも、二の足を踏ませる感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
やっぱねぇ…この作品のだんびらは、宿ってる鬼気がちょっと普通とは違うからな…。
子供めいたはしゃぎ方も、トルフィン幼少期を思い出させていけない。
戦火は全く予想していない場所から平穏を焼き尽くし、灰の中に続く人生は重たく苦い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
それを実感している奴隷の二人は、隣り合いながらも交わることなく、労働の初日を終えていく。
戦争する奴らは、もれなくクズ。
（画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第2話より引用） pic.twitter.com/pszVqEMP3l
エイナルの吐き出した言葉には彼の人生が詰まっていて、オルマルの上っ付いた反抗とは違う苦さがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
トルフィンは同僚の脳裏に焼き付いた炎と同じ…しかし決定的に違う光景を思い出しつつ、光のない光を分厚い疲労の中に沈めていく。
奪うものと、奪われるもの。
悪鬼と人間、加害者と被害者。
過酷な現状を思えば当然ながら、文句と元気の多いエイナルに対して、トルフィンは家畜のように言葉少なく、奴隷の勤めを果たし続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
しかしその脳裏には、暴力に翻弄され続けてきたエイナルとはまた違う、剣を取ったからこその暗い絶望が、熾火のように燃え続けている。
失われた愛を取り戻すために取った剣で、奪った命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
復讐を心に刻んで突き進んだ道の先、何も得られぬまま流れ着いた、藁の寝床。
そこに温もりはなく、功しは遠く、無明の闇と炎の記憶だけが、じっとりと男を焼いている。
暗い…とにかく暗いスタートである。
まぁ言うたかて、あんだけの激動を経てなんも学ばない、変わらない主役とか見てて厳しいし、トルフィンが虚無に食われて立ち止まっている様子には、逆に納得が強くもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
この絶望、奴隷の身分から己を引きずりあげて、遙かなるヴィンランドへと歩を進めるきっかけは、何処にあるのか。
隣で眠る純朴な大男が、その呼び水となっていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
どっしりと構えた物語は焦ることなく、餌を保証された奴隷の平穏と、遠くに揺らぐ破滅の足音を伝えている。
”マシ”に思えるこの農場が、どんな差別と悲惨を抱え込んでいるのかも、追々吹き出しててくるだろう。
…まあ、ヴィンランド・サガだしな
かくして明けてから暮れるまで、奴隷エイナルの一日が描かれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年1月31日
このまま働き詰め自分を取り戻す物語が展開されるのか、はたまた思わぬ嵐が巻き起こるのか。
かつて”ヴァイキング”だった男の暗い夢は、いつ火を吹くのか。
次回も、大変楽しみです。
