イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第3話『シクシクホームシック! 泣かないでエルちゃん!』感想

 青き英雄と白き純真が出会い生まれる物語、ひろプリ第3話は赤ん坊抱えて裏山で石探そうぜッ! という回。
 サブタイ聞いた時に『”泣かないで”じゃねぇだろ……泣いて良いんだよ赤ん坊なんだから! ガンガン泣いてもらって、その涙をどう受け止めてどこに持ってくかが大事だろ!!』と勝手に切れていた僕も大満足な、赤ちゃんでしかねぇエルちゃんをちゃんと見据えたお話でした。
 むずがったり泣きわめいたりぽけーっと虚無顔したり。
 この時期特有の表情や仕草や丁寧に描かれていることが、エルちゃんの実在性をググっと高め、その気持に寄り添い面倒を見る人々のありがたさを強くしてくれます。
 ヒーローに必要な『優しい頼もしさ』を、こういう形でソラちゃんましろちゃんに分厚くしていくの、キャラの配置を生かした良い演出だと思う。

 

 お祖母ちゃんがソッコースカイランド人真実を暴露したり、両親との再開自体はこの段階でしっかり叶えたり、不要なストレス溜め込まずガシガシ進めていくスピード感なども、しっかり受け取りつつ。
 お話としては結構どっしりと、エルちゃんを間に挟んでソラましが絆を深めていくエピソードでした。
 裏山で魔法の宝石を探すという、ハンディでローカルな冒険感がなかなかいい感じで、少女二人がお互いを知っていくシチュエーションとして、透明感と温もり両方あったの良かったな。
 お姫様の物語であったり戦士のお話であったり、色んな要素をたっぷり贅沢に持ち合わせているのが”プリキュア”だと思いますが、豊かな情景のど真ん中に飛び込んでいい経験を共有する、児童の成長の物語としても切れ味良かったのは、大変満足。

 そういう場所でエルちゃん小脇に抱えて、お世話しつつ石探す二人ですが。
 子供の扱いに慣れてるソラちゃんが、コツとして伝えた『気持ちをわかってあげる、わかっているのだと伝える』行為が赤ん坊限定ではなく、ましろちゃんにしっかり向いてるのが良かったです。
 ソラちゃんはめちゃくちゃ感動屋かつ褒め上手で、ましろが自分たちのためにわざわざパンを焼いてくれたこと、焼く能力があること、それが異世界人の二人を思いやって作られていることを、しっかり感じ取って態度に表す。
 それが押し付けがましくなく、爽やかでありながら軽くもなく、凄く自然に心に届く手触りを持ってる。
 このナチュラルな気遣いと前向きさは、ソラちゃんが人間の表面ではなく真芯をしっかり見据えた上で、一人ひとりにちゃんと向き合う意識を持ってるから生まれるものだと思います。
 この共感力……を一人がってな凶器にしない、相手の事情も良く見た上で差し出せる落ち着きが、ヒーローとしてのソラ・ハレワタールの武器にもなってくんじゃないかなぁ。

 ましろちゃんもバトルの気配を遠ざけた美しい自然の中で、エルちゃんの気持ちが良くわかる優しさを示し、カバトンが出てきたらいの一番にエルちゃんを庇う心の強さも見せて、大変良かったです。
 ソラちゃんはかなり完成度高いところから始まる主人公で、それに対置する形で白紙の魂に自分だけのヒロイズムを刻んでいくましろちゃんがいると、僕は思っているのですが。
 ソラちゃんがそなえている共感を、今回ましろちゃんは両親と離れてる自分の寂しさに引き寄せる形で学び取っていく。
 異世界人で赤ん坊で、他人でしかないエルちゃんが自分と同じなのだと心から感じ入り、その涙を拭って笑わせる方法を身に着けていく。
 既に答えを知っているからこそ強く尊い、ソラちゃんみたいな生き方もあるし、今まさに自分に引き寄せて物事を学び、善さを伸ばしていくましろちゃんみたいな生き方もある。
 同じ屋根の下に暮らす二人の個性が、美しい自然や夕焼けの中入り交じる嬉しさも合わせて、少女たちの現在地を的確にスケッチする回でした。

 手前勝手な暴力で奪い去ることしかしねぇクソブタが、大変いい感じに大暴れすることで、隣に立つ人に学んで持ち前の善性を育てていけるましろちゃんの善さ、人間の善さも際立つしね。
 ブタは憎まれ役と悪いお手本をキッチリ引き受けて、『めっ!』が言えるヒーロー・キュアスカイの魅力を引き立ててくれる、良い立ち回りしとるよなぁ……。
 あと急に『キュアスカイは、変身しなくてもカラテがすでに強い』って出てきたのは無茶苦茶オモロい。
 ヨヨさんが急に雷電っぽい解説始めたりとか、自然石割り正拳突きの前のキグナス氷河っぷりとか、崩した表情もチャーミングなひろプリ初のギャグ回としても、かなりいい仕上がりだったと思う。

 

 エルちゃんはエピソード中わんわん泣きじゃくって、なかなか伝わらない気持ちをどうにか分かってもらおうと頑張ってます。
 裏山での冒険を経て両親との通信がつながった時、今までのむずがりとはちょっと違った、めちゃくちゃ重たい涙がスーッと流れたの、大変良かったです。
 今までの泣きじゃくりが”わがまま”だったってわけではなく、それもまた赤ん坊なりの真実なんですが、求めていた両親の顔を画面越し見つけた時安堵に笑うよりも、寂しさに泣くのが先に来るのは、父母恋しい子どもとして真実の反応だなと思いました。
 つーかあそこでそれなり以上に取り乱しつつ、涙を拭うよりも目を大きく明けてようやく見つけた一番星の光を目に焼き付けようとしてた両親、マジ頑張ってて偉い。
 もっと限界なっててもおかしくない状況だったと思いますが、限られた時間の中我が子を預ける相手に筋目も通し、涙と一緒にあふれる愛を精一杯伝えようとしていた二人は、変身できなかろうが戦えなかろうが、小さなヒーローだったのだと思います。

 プリキュアにおける赤ちゃんって(他の要素がそうであるように)経済的な”ウリ”でもあって、『自分より小さな存在を可愛がりたいッ!!』という、メイン視聴者層の強い欲求を拾い上げて、がっちりフックするための物語装置という側面が結構あります。
 そこにばかりフォーカスしていると、生身で決死に生きてる赤ん坊個人を取り落としてしまうこともあるわけですが、現状エルちゃんは赤ん坊特有の生っぽい仕草とか、ようやく顔が見れて静かに泣くその心とか、一つの生きた存在であることを大事に描かれてる感じがある。
 その寂しさ、理不尽な運命に小さな体で振り回される辛さをしっかり書いた上で、涙を拭って笑わせるべく心を寄せて、自分にできることを精一杯やってる等身大のヒロイズムを、少女たちに宿していく筆先は、僕は凄く良いと思う。
 何しろ一年の長丁場なんで、今後どういう方向に筆が進むかは分かんないけども、今エルちゃんと彼女を見守る人たちに焼き付いている細やかな筆致を、今後も大事に進んでくれると嬉しいな、と思いました。
 販促担当である以前に/以上に、何よりまず一人必死に世界を生きてる命だからな……そこマジ大事にしてほしいよ俺は。

 

 というわけで、ソラちゃんとましろちゃんとエルちゃんがどういう足取りで、一緒に人生を進んでいくのかが良くわかる第3話でした。
 ともすれば独りよがりの正義を押し付けることになりかねない、ヒロイズムという主題。
 その担い手が凄く自然に、凄く豊かに他人の気持ちを分かろうとし、分かったと確かに伝えてくれる存在だと知れたのは、大変良かったです。
 そらーましろちゃんもドンッドン好きになっていく……偶然と運命が交わる場所で出会ってしまった、彼女の特別な女の子を……。
 ヒーロー手帳に刻印(きざ)むことで、まし→ソラだけでなくソラ→ましも相当”強い”って解るところも、思わず身悶え必死のトキメキ力よな。

 あまりにハンサムな英雄に、既に虹ケ丘ましろの心は燃えている、滾っているッ!
 心の奥から湧き上がる彼女だけの正義をどう結晶させ、純白の戦化粧を身にまとうか。
 次回爆誕キュアプリズム、大変に楽しみです。