ヴィンランド・サガ SEASON2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
開墾も進み、トルフィン達の人生にも潤いが満ちてきた。
しかしノルド人社会に”優しさ”の居場所はなく…という、後々波乱の足場になりそうなエピソード。
今の価値観なら”野蛮””残酷”と切り捨てられそうなものが、社会の真ん中と根底にガッチリ居座る作品世界。
そこにおいて非暴力主義で開明的な『マトモな御主人様』でいることは、必ずしも正しくも強くもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
状況を動かすアクターとして、暴力が今よりもさらに一般的で、決定的だった時代において、剣に頼らずどう意志を通していくのか。
今後トルフィンに重くのしかかりそうな、静かなる嵐の予兆だった。
というわけで馬も貰った理解者も得た、俺たちの奴隷ライフはバラ色だッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
恋に浮かれるエイナルに引っ張られる形で、トルフィンもどんどん変になっててニッコリ。
まぁその恋、大惨事にしかならんだろうけどね…。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第7話より引用) pic.twitter.com/6s0xKASrxt
人間の手を離れた場所で育ったり枯れたりして、その結果次第で生死が決まる麦の苗。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
岡惚れにのぼせ上がるエイナルの見えない所で、陰湿なやり取りが頬を腫らしているアイネルズにも、いつ理不尽に踏みにじられてもおかしくない暗さがある。
まー、ヴィンランド・サガだしな。
このまま地道に幸せに、小作奴隷続けて自分を買い戻す…とはならないだろうから、どこでどんな横槍が入ってこの”日常”が崩れるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
それこそ、いきなりヴァイキングが上陸してきて全部焼き払いかねない世界だってのは、これまで幾度も描かれたとおりだ。
不吉な予兆は奴隷だけでなく長者にも伸びていて、長子トールギルの帰還は荒くれた戦場の空気を、平和な農場に持ち込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
”蛇”と打ち合わせる拳の粗雑な力強さと、食い詰めて手枷をはめられた兄妹の不自由と。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第7話より引用) pic.twitter.com/nrLz16dzac
女を奪い殺し合い、耳を繋げて戦自慢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
流石にそれほどの苛烈さではなくとも、この農場もまた暴力を基礎材に成り立っている。
トールギルが持ち出した両腕切断を苛烈と退け、労役による賠償を持ち出したパテールですら、棒打ちによる制裁を主に求める。
規律維持には、それが必要だと。
”鉄拳”の誉れで農園を維持している以上、富を盗む不届き者に容赦なく加撃出来る強さを、ケティルは求められる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
盗人に同情して視界を歪め、誰も殴らぬ平和な…現代的な解決を探るマトモさは、1000年前の世界では誰にも求められていない。
それが、生き死にの現場に身を置きたくない臆病ならなおさらだ
戦による死も、植えによる死も、病による死も、なにもかもが今より遥かに近かった時代。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
暴力は脅威を遠ざけ平和を守る、共同体の剣として強く求められた。
男の証を立て、敵を踏みにじる強さこそが、安らぎを守る盾になる。
トールギルが頭の天辺まで染まった生き方こそが、この世界のスタンダードだ
結局ケティルは”鉄拳”のイメージを、今の立場を危うくしないために、兄妹を打ち据える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
片時も剣を手放さず、角盃に満たされた酒を一気に飲み干して、浮かれ騒ぐ宴から逃げて、奴隷の柔肌に救いを求める。
(画像は"ヴィンランド・サガ SEASON2"第7話より引用) pic.twitter.com/MFAxbS1Hbk
ケティルは世界を満たすヴァイキング主義に、抵抗して優しい訳ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
殺し殺されが当たり前の残酷から、これまた当然の反応として逃げたくて、逃避として優しいだけだ。
その癖世界は、長者に勇者であることを求める。
血も涙もなく敵を殺し、味方を守る英雄たれ。
そんな通念を全部跳ね除けて、世界を変えていく強さは”鉄拳”にはなく、許されざる密通の中で己の弱さを、アイネルズに預けるばかりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
背中を丸めた赤子の姿勢では、彼の全てであるはずの女が自分を見ていないことも、優しい奴隷が何を見つめているかも、知ることは出来ない。
これまで幾度も示されたように、この世界で優しいこと…弱さの現れとして優しいことは罪だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
なにもかも奪おうと迫る暴虐に抗えず、されるがまま死体を晒す犠牲を、救うものは誰もいない。
この現実認識に立って、クヌート”陛下”は悪徳の限りを尽くし覇道を往く。
その先にしか、楽土はないからだ。
トルフィン達に『マトモな暮らし』を与えているケティルの優しさは、逃避でしかないことが今回示されたが、では真の強さとは何処にあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
ここで物語の始点、トールズ父さんの生き方に話がもどってくるのは面白いな、と感じる。
殺さず、殺されないこと。
最強の勇者でも、貫き得なかった生き方。
土に汚れ悪夢にうなされ、麦に祈る日々を越えた先で、トルフィンはそんな魂の故郷に、また戻ってくるのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
クヌートの対存在として立つには、ケティルの優しさがあまりに軟弱であると示された以上、主役が真の強さと優しさを、目指す立場になってくんだろうけども…道は険しかろう。
アイネルズを巡る愛の物語も、彼女が奴隷…つまりは本来小京都過去を持ち、それを剥奪され生き死にの自由がなくなった存在であることを考えると、単純に気持ちやら世間体やらで収まる気配は薄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
そういう部分は、容赦なく殴りつけてくるお話でしょコレ…。
どれだけ純粋な愛に見せかけても、初戦は柔肌への逃避、奴隷と長者の恋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
その冷ややかな現実味を、最後に刻んで終わるエピソードでした。
クヌートがひと足お先、真実の愛がどんな手触りかを死体の山で知ってるお話なんで、ここのもつれも酷いことになりそうだ…。
主役の開墾ライフはいい手応えながら、それを包む社会がどんな風に軋んでいるのかも、丁寧に積み上げていく物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2023年2月22日
その重荷に耐えかねて始まるだろう終わりは、どれだけの残酷を僕らに教えるのか。
震えて待ちつつ、今は穏やかな日常を寿ぎたい。
来週も楽しみです。