イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

もういっぽん!:第7話『秘密兵器先輩』感想

 勝っても負けても続く、ただ真っ直ぐな青春一本道をひた走る柔道群像劇、第7話はたった一ヶ月の青春ファイナルラップに姫野先輩参戦……の巻。
 ここまでは園田未知の存在質量に脳髄揺すぶられて人生曲がった(結果まっすぐになった)女ばかりが画面に写っていたわけだが、今回は主役と直接の交流なし、むしろ先生や亜実に太い絆を持つ先輩の復帰戦。
 しかしちょっと遠い場所にあるからこそ、主人公が放つ前向きなオーラがどれだけ強い影響力を生んで、不完全燃焼のまま終わりかけていた青春が動き直す手応えも強く感じられた。
 顧問として教師として、亜実さんを見つめ続けてる夏目先生の誠実さも強く感じられて、金鷲旗に挑む青西柔道部の歩みがより力強くなる、とても良いエピソードでした。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第7話から引用

 というわけで先輩の物語に踏み込む前に、霞ヶ丘との合同練習。
 亜実さんから先輩へのパスルートを開けるって意味でも、敵味方関係なく懐に入れる未知の凄みを描く上でも、そして”部活”の風通しの良さを見せる上でも、好きな描写だ。
 畳の上で勝敗つける相手でも、というかだからこそ掴んだ道着を通じて鍛えた技の冴え、それを生み出す心の強さを感じ取って、垣根を超えて絆を深められる。
 軽薄なまでに他人との距離が近い未知の描き方は、そういう”柔道”の善さを作品に焼き付けるためなんだろうなぁ、と思う。
 結構繊細な機微に目が行く子なんだけども、あえて立ち止まらずどんどん前に行くという、南雲と向き合う中でも彫り込まれた人格が、緑子とキャッキャする中でも生きてる感じ。
 他校との交流にギスギスした感じがないのは、勝利至上主義に凝り固まらず、負けてなお続く”部活”を主題に選んでる強みだとも感じる。
 かといって馴れ合って勝負の重さをナメてるわけではなく、本気で勝ちたいからこそ要らないこだわり投げ捨てて、自分を磨くべく”敵”の胸も借りるという、良いバランスの描写になっていた。
 これを逆にすると、同じ部内でも目指すべき目標、競い合うライバルとして親友に向き合えるって事で、『アタシら最強~~』って心地よい身内感を出しつつも、それがベッタリ張り付かない清々しさの足場がここにあると思う。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第7話から引用

 というわけで一見軽めな今風ギャルが、どんだけ高い湿度で”柔道”睨んでるかがズッシリ展開されていく。
 南雲のときも思ったが、やっぱクローズアップで何かを見つめる女達の表情を引っこ抜く背筋が分厚い作品で、気にしない風を装ってる姫野先輩の視線が何にとらわれているか、追いかけるのが楽しい回だ。
 先生の誘いをギャル半身で躱していた先輩だが、心の奥にはくすぶった思いがあり、それは昔なじみの現役続行宣言で熱く燃えなおす。
 亜実さんと直接顔を合わせる場面がないのに、むしろだからこそ姫野先輩との特別な距離感が随所に光ってて、人間と人間を結ぶ引力の描写が上手いアニメである。

 永遠もそうだけど、未知との闘いは勝敗関係なく強い傷跡を残すようで、懸命に前向きに勝負に挑むその溌剌が、何かが動き出す原動力になっていく。
 迷った末に明けた扉の先で、瞳を叩いた全力の眩しさ。
 亜実さん越しにそんな震えを受け取って、たった一ヶ月の最終章へ姫野先輩は進み出す。
 それを”たった”と言わせない強い視線が、部活に勤しむ高校生を優しく包んでいるところが、僕は好きだ。
 『本気で、思いっきり、楽しく柔道やれよ!』と、作り手が腰を入れて画面越し、若人への讃歌を歌い上げようと頑張ってるところが、真っ直ぐでいい。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第7話から引用

 終わりを決意した時の、自分ひとりの部活に先生突き合わせるのが心底すまなさそうな表情と、その先生に決意を伝えるべく叩き込む投げが成立するまでの、細やかな足運び。
 そして未知を定めた瞬間の眩しい瞳と、後輩たちに手を差し伸べられ、友に進んでいく中で生まれる笑顔。
 大変良い。
 イモい子が多い青西女子柔道部で、洒脱な気配がある先輩の存在感は新しくも心地よい風だし、先輩ながらブランク抱えた新参者として、謙虚に膝を折って教えを請う姿勢も涼やかだ。
 あっという間に”先輩・後輩”の最良な距離感が出来て、五人目の仲間として姫野先輩が待ち望んでいた居場所が部室にできていく手触り、無茶苦茶気持ちが良かった。

 『青春の美味しいところ、全部撮って出し!』みたいなモンタージュで以て、金鷲旗までの一ヶ月がどんだけ”部活”だったか伝えつつ、遂に大会が始まる。
 一枚絵の切れ味が良くて、伝えたい感情や関係性がギュギュッと濃縮された絵がドンドン出てくるの、このアニメの良いところだなと思う。
 モンタージュ演出でパパパッと状況が進むのが個人的に好きだってのもあるけど、決断と変化の先にどんなかけがえない楽しさがあって、それを少女たちがどう受け止めたのか、ちゃんと分かるのが嬉しい。
 それは試合の結果と同じくらい大事で意味があることで、この途中経過(であり、大切な結果でもあるもの)をしっかり描いてくれるのが、未知たちが進む物語の色んな場面を、豊かに色づけてくれている。

 降りしきる雨すらも笑顔で受け止められる、最高の時間。
 その成果を試合に問う金鷲旗……次回も大変楽しみです!!