イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

D4DJ All Mix:第7話『ミンナカワイイ!』感想

 それぞれの季節、それぞれの音楽を追い求め駆け抜ける日々の記録、爽やかな7月の風に乗っかってPhoton Maidenいくぞ! という回。
 いやー……凄く良かった、めちゃくちゃ良かった。
 予測だともっと肩の力が抜けたコミカルな回になって、福島メンバーがオタク気質全開で大暴れ! みたいな感じかと思ってたんだけども、フタを開けると事務所に所属し仕事として表現活動をやってるユニットの特異性と、凄くしっかり向き合う回だった。
 大人が用意してくれた楽曲とイメージを裏切らず、獲得したファン層を満足させつつも、アーティストとして人間として感じ取っているワクワクをこそ、ステージで形にしたい。
 未だ”自分”なるものが固まりきっていない10代の少女だからこそ、ときに借り物の”らしさ”に引っ張られたり、あるいはその殻を破って自分を見つけ直したり。
 Happy Around! に代表される、友だちと楽しく自分らしくがいちばん大事なアマチュアリズムをそのまま適応は出来ない、プロだからこその難しさと楽しさ、そこに宿る等身大の人間味。
 福島ノアの賢さと背伸びを真ん中に据えて、Photon Maidenらしさを全力で追いかけていく歩みの中で、彼女たちを包んでいる会社やスタッフがどんだけ誠実なのかも解って、めちゃくちゃ良かったです。
 

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第7話より引用

 というわけで今回はややヒキ爆エモ情景が山盛りたっぷりで、透明感マシマシな演出がマジ冴えるッ!
 今までのエピソードでは勝負どころでズドンと打ち込んで、『イイハナシだったな……イイハナシだったよね?』みたいな実感を上手くまとめる仕事をしてた強い美術が、刻々と変わる日差しを多彩に捉えつつ、出し惜しみなしの大盤振る舞い。
 『人間の存在感がどうしても薄くなるロングショットに、あえて少女たちを置くことで醸し出される透明度こそが、Photon Maidenというユニットの色なのだ!』という強い主張を、勝手に受信してビリビリ震えてたりした。

 あまりにもキレイな世界で一人きり……あるいは仲間たちとだけ立ち尽くす孤独感も、新たな挑戦を頑張る少女たちの不安や孤独、それを跳ね除けていく気概や期待を上手く反射していて、凄く良い見せ方だった。
 めちゃくちゃ至近距離で大事に思い合ってるんだけども、どこか静かに涼しげにお互いの間を風が通り抜けて、でもそれが孤独な寂しさではなく、自分の足で立って前に進んでいく力強さ、その歩みを互いに支え合う親密さに繋がっている。
 様々な情景に切り取られる”Photon Maiden”は、展開するお話の熱量と同じくらい雄弁に、彼女たちがどんな存在で、どんな時間を過ごしているかを語ってくれていた。
 この奥行きのある語り口は自分の好みであるし、Photon Maidenのキャラ性にしっかり噛み合った演出だったと思う。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第7話より引用

 というわけで前半戦、常に新しい輝きを求める咲姫に触発される形で、福島ノアが動き出す。
 まず仲間を説得してより大きな構造へ進む、という話の運び方がかなりカッチリしてて、まがりなりとも会社所属のプロ集団であるPhoton Maidenの特異性を、上手く削り出す……と同時に、メッチャ仲良しJK組でもある彼女たちの魅力が、元気に弾んでいた。
 ガッツリ気負ってメガネとスーツで武装するノアもカワイイけども、とにかく乙和の砕けたチャーミングがあらゆる局面で暴れ倒してて、最高に強かった。
 ユニット内の理性担当として、クールでタフな反論を真っ直ぐ投げかけてくる衣舞紀も存在感あったし、後に全員”らしくない、だから良い”と評される個性と、それが生み出すアンサンブルの良さが良く出ていたと思う。

 ノアはめちゃくちゃ勉強してて頭もいいので、自分がどういう環境でビジネスをしているのか、肌で感じ頭脳で噛み砕き、必死に己の糧にしようといつでも頑張っているのだと思う。
 大好きなPhoton MaidenがPhoton Maidenでいるために、どれだけ沢山の大人が関わり頑張って仕事をしてくれているか、ちゃんと見据えているからこそ、そこに届くだけの説得力がなければ、自分のやりたいことは出来ないと考える。
 その生真面目な賢さは時に、世の中に認められている”大人らしさ”を形だけ借りてきてノアを縛るのだけども、そんな不器用な背伸びすら大人たちはちゃんと見守っている。
 Photon Maidenがユニットの中で色々考えている段階で、事務所の大人が彼女たちをしっかり見ているカットがあったの、俺は凄く良いと思ったんですよね。
 そういう人たちに支えられ、時に重責に縛られつつも、彼女たちが真実”らしく”音楽を仕事に出来るように、手伝ってくれる人達がいる。
 ”仕事”である以上彼らが借り物の言葉では動けない厳しさも含めて、若きプロフェッショナルであるPhoton Maidenが何処で闘ってるのか、鮮烈に描かれるエピソードだと思う。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第7話より引用

 形だけの”らしさ”に縛り付けられたプレゼンは大人の心を動かすには足らず、ノアは夕日の会議室で一人泣きじゃくる。
 ここでぽわぽわ不思議ちゃんに思える咲姫ちゃんが駆け寄ろうとして、さんざベタベタ仲良しっ子力を見せつけてた乙和が止めるの、めっちゃ良い。
 ここまで見せられてきた四人のキャラだと逆の立ち位置になりそうな所で、『この関係こそが今のPhoton Maidenなんだ!』と告げてくるのは、驚きと納得と、ダチが本気で流す涙をあえて止めない優しさを感じられて素晴らしかった。
 透明感と柔らかさがウリのPhoton Maidenだけども、その奥には青春ど真ん中の熱いたぎりが確かにあって、今回ノアが舳先に立って新たな挑戦へ頑張る姿には、そんな熱量をしっかり感じることが出来た。

 今はそばにいない(からこそ新たな船出をどう進んでいくかが難しく、事務所も慎重に出方を探っている)恩人の言葉を受けて、ノアはスーツを脱ぎ捨て制服の”福島ノア”に戻ることにする。
 メガネを掛けた賢さももちろん彼女の一部で、その冷静な分析が仲間を助けることも多々あるんだけども、人を動かす時必要なのは、”福島ノア”が本当に伝えたかったのは、そういうことじゃなかった。
 プレゼンは友達や会社の大人を相手取る、ある意味身内のコミュニケーションなんだけども、Photon Maidenが表現集団である以上、こういうスケールで自分の思いをしっかり見据え、届けて心を動かせられないなら、観客を喜ばせることも難しいだろう。

 新しい、飾りのない自分たちを新たに知ってもらうことで、ファンにより大きな楽しさを手渡す。
 そういう気持ちが強くあったからこそ、ノアと仲間たちは悪戦苦闘しつつ、新しい試みに挑んでいるわけだし。
 その特効薬として、夕日の下校風景に眩しく輝く飾りのない友情こそが”答え”なのだと描いていく筆、青春DJ群像劇としてあんまりにも良かった。
 プロでやっていく難しさ、大人に混じって頑張る厳しさを”らしさ”として描きつつも、お互いが大好きすぎる10代ユニットとして一番強いトコ見逃さないの、大変良いと思います。

 

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第7話より引用

 

かくして借り物のスーツとプレゼン資料を全部投げ捨て、カワイイ大好き剥き出しの”福島ノア”で挑むプレゼンは、大人との遠い距離感をググっと詰めて、胸に滾る炎を届けていく。
 オタク早口全開なあ、溢れんばかりのフォトン愛。
 それが今回、新しい自分たちを紹介したいと思った最大の理由なのだと告げる時、ノアの身体は計算を超えて前へ、前へと出ていく。
 その後ろをえっちらおっちら追いかけて、机によじよじしてる咲姫ちゃん可愛いねぇ……。
 Photon Maidenは共感覚として発露する彼女のセンスを、最強のエンジンとしてブン回ってるユニットだと思うので、ノアが選んだ裸の勝負がけして間違いではないと示す新たな光が描かれてるの、めっちゃ良い。

 この剥き出しをこそ大人たちが求めていたのだと、ちゃんと納得できる展開になっているのは、やっぱ少女たちを見守る1カットが効いてるなぁ、と感じた。
 仕事でやっている以上何でもOKってわけではなく、勝ちを確信できる何かがいるわけだけども、それは必ずしも冷静な数字や耳障りの良いビジネスタームではない。
 自分たちが引き受け、より広い場所へ飛び立たせるのだと信じた少女たちが飾りを脱ぎ捨てて、本気で好きだと、楽しいと思える熱。
 この形にならず曖昧で何より大切なものを、ちゃんと受け止めてくれる人たちがPhoton Maidenの周りにはいてくれる。
 音楽ビジネスの一番いい所に身を置けてる、Photon Maidenの強さと良さが、よく滲むエピソードだったと思います。


 

画像は”D4DJ All Mix”第7話より引用

 勝負の新曲”4 many colors”にフォトンオタが最初当惑しつつ、展開される圧倒的な可愛さと説得力に飲み込まれて、『これもPhoton Maidenらしさだ!』と受け入れていく様子が、ステージではしっかり描かれる。
 ステージを終えたあと少女たちを彩るのが、一番Photon Maidenらしいサイバーな虹色なのが、真実”らしさ”を見つけるエピソードのまとめとして凄く良いなと思う。
 今回のエピソードはユニットと会社、あるいはファンとの距離感が大事だったと思うので、色々悩んで説得して、自分たちを見つめ直して掴んだパフォーマンスが、がっちりファンの心を奪っている様子が描かれると、満足感が分厚い。
 ここまで各ユニット、色んな角度からそれぞれの”らしさ”と、それを新たに輝かせる挑戦が切り取られてきたわけだけども、最後にプロであるPhoton Maidenの”らしさ”がどういう形になるのかしっかり確認できるステージが来たのは、12個のエピソードをつなぎ合わせて一つの物語を作っていくセットリストとして、かなりいい仕事だった。
 オムニバスはやっぱりこういうバラエティと、全体を通した統一感の両立が難しく、また面白いところだよなぁ……。

 

 というわけで、大変良いエピソードでした。
 生真面目に頑張る……頑張りすぎる福島ノアを中心に据え、彼女が大好きで彼女を大好きな仲間たちと、それを見守る大人やファンまで幅広く捉えた、爽やかなお話でした。
 楽曲は誰かから譲り受けるけど、”Photon Maiden”をどうしていくかを選び、時にお仕着せの衣装を脱ぎ捨てて自分たちで”らしさ”を作っていく、表現集団としてのもがきもしっかり感じられ、手応えがありました。
 曲やステージを越えたトータルの”売り方”が焦点になるの、仕事で音楽やってる特異性だよなー、と思う。

 最高の〆でユニット個別編が終わり、次回からは夢のAll MIX!
 初手はリリリリちゃんとPhoton Maidenですが、次こそ唸るか福島メンバー大暴走!!
 来週もカワイク楽しく熱く本気で、D4DJらしい話が見れそうです。
 とても楽しみですね。