イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プロジェクトセカイ カラフルステージ感想:kick it up a notch

 新たな伝説に向かって突き進むVivid BAD SQUAD、新たな階段をこはねの覚醒とともに登っていくイベストである。
 ”Find A Way Out”で過去の因縁が綴られた大勝負であるが、メインは暁人ではなく大河さんとのお別れ迫るこはねが持っていく形になった。
 過去と向き合い今の自分が進める道を見定めた時点で、結果は成長した暁人を追いかけてくる……って形かな?
 運命共同体としてチーム一丸、お互いを引っ張りあって闘っている構図でもあるので、誰が勝つかはそこまで問題ではないのかもしれない。

 ともあれストリートの空気にそぐわぬ小動物系が、今まで溜め込んできた努力を炸裂させ、新たな地平へとみんなを引っ張り上げる今回。
 街に身を置き人の顔を見て歌える強さが、こはねの翼になっていく。
 それは大河さんが失われた凪の面影を微かに見出した弟子が、謎めいた教えに出した答えでもある。
 ストリートの荒くれた闘争心が特徴であり、魅力でもあるビビバスの物語から、正直こはねは少し浮いてる感じがあったけども、今回彼女の優しい視線が街に住む人、新たに街に受け入れられていく自分に向くことで、なんで『ストリートのセカイ』の主が彼女だったのか、自分的に納得できた感じがあった。

 街には対立や衝突、そこからこそ生まれてくる強い想いや燃え盛る熱量があるけど、それだけが街の全部じゃない。
 むしろ見落とさず、見守り、受け取って歌い上げるこはね的な要素があって、人はその街を居場所と定めて、新たに挑むことが出来る。
 そんな優しさこそが壁を打ち破る強さになって、ストリートテイストの薄い少女が新たな文化を、仲間を、歌を自分らしさに変えていく物語を生み出す。
 そうやって学び取ったものがステージを震わせ、同志を高みに押し上げていく。
 やっぱり愛しくも切なくこはねの”才”を見上げている杏ちゃんの視線含め、小豆沢こはねの物語はそういうお話だったのかなと、自分なりに飲み込ませてもらった。

 

 そんな話に一つの答えが出るタイミングで、”間違えない”ことに固執して固くなっているこはねとともに歌い、背中を見せて導く仕事をビビミクとビビルカが果たしたのは、凄く良かった。
 いろんな世界にいろんなミクがいるわけだが、ストリートの世界のミクは颯爽とカッコよく、師匠ポジションでグイグイ導いてくれるミクだった。
 ソロで大舞台の先陣を切る決断に悩むこはねに、もはや言葉は不要とばかり歌で教え歌で支え歌で押し上げるその在り方は、今までずっと見てきたミクらしさに溢れていた。
 そういう領域までミクと一緒に駆け上がって、気まぐれで始まったはずの大河さんとの師弟関係を、更に一段重たい所まで押し上げさせたこはねの成長は、嬉しいと同時に少し寂しくて、他のユニットの物語と同じく、何かが終わり変わっていくだろう気配を色濃く宿している。
 ここ一年くらいの物語はバチャシンがダイレクトに導きを与えるというよりは、セカイをかけがえのない避難所として活用しつつ子どもたち自身が答えを掴んだり、現実での出会いに活路を見出す展開が多めで、色んなものが変化しているなと思わされる。

 言葉ではなく歌で示された、至るべき高みへ共に駆け抜けていける可能性。
 そのエールをしっかり受け取って、セカイから響く音楽を体現してより多くの人をより高い場所へ押し上げていった今回のこはねには、”拝啓、あの頃のわたしへ”でみのりが見せた凄みに似た、護られるものが闘うものへと化けていくカタルシスが強い。
 その化けっぷりに当てられて、大河さんも最後の試練を愛弟子に与える気マンマンっぽいが……やっぱビビバスは大人勢の未練が色濃くて、上世代にも未完の物語がまだ残ってる手触りが独特である。

 継承と突破を大きなテーマとする以上、若い世代が生み出す新たな神話が旧世代の夢を砕き、新たに生まれ直させる奇跡を描くのは大事……なんだろうな。
 世界レベルで結果を出している大河さんが、それでも街に遺した未練を背負い、燃やし、あるいは身勝手な重ね合わせを振りちぎって自分たちだけの未来へ進みだしていく、若人たちの肖像。
 進級を前にそこに一つ、特別な筆が刻み込まれそうな感じがあるが、その主役は誰になるのか。
 今回こはねが魅せた覚醒のまばゆさに、気圧されつつ燃える想いの行く先が、今から楽しみである。