イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

シュガーアップル・フェアリーテイル:第11話『つくるべきもの』感想

 天啓と災厄が入り交じる品評会前夜、シュガーアップル・フェアリーテイル第11話である。
 人と妖精の織りなす悲しき秘史にインスピレーションを受け、見事な逸品を作り上げたアンちゃんに襲いかかる極悪人間の最悪行動ッ!
 最終回を前に、大変このアニメらしいコクが出てくる展開となりました。
 悪意のポップ速度と勢いが毎回濃厚で、可愛らしい乙女力とかキュンキュンな恋心では覆い隠せないアクが出てこそ、『あ、この話食ってるな……』って実感も湧くしなッ!
 剥き出しの暴力こそが恋を加速もさせて、よくあるすれ違いを沸騰するお湯で強引に溶かして確かめた互いの気持ちが、一体どうなるのか。
 工房追放の憂き目からどう大逆転決めるのか。
 次回最終回、いい塩梅に盛り上がってまいりました!!

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル

 つーわけで公衆の面前でモジモジイチャコラ繰り返しつつ、芸術家は新たな発想を得るべく史跡を巡る。
 シャルと一緒の職人修業を追いかける形で、銀砂糖細工というアートがどう生まれてくるのか、それに必要な発想を作者はどう得るのか、色んな角度から照らしているのは結構好みな部分だ。
 今回はアンちゃん、人間に都合よく捻じ曲げられた歴史の奥にある、悲しき真実に触れることで、社会的に受けが良いテーマと個人的な感情を上手く混ぜ合わせて、作品に昇華させる道を見つけた。
 『シャル大好き!』っていう甘ったるい個人的乙女主義では他人の心は動かないが、その熱量をより広範に描けるモチーフに乗せることで、真に迫ってかつ普遍的な芸術を形にできるわけだなー。

 『はい、世界の真実を知るお偉いお坊様でござい』って面して大聖堂にふんぞり返ってる連中が、古代文字一切読めず世界の真相も知らないのか、知ってて大衆には女性差別内包した教理投げつけてんのか、そこら辺の事情はわからんけども。
 キレイなガワに人間の生臭い所、たっぷりと詰め込んだ作風にふさわしく、宗教界も相当に腐ってるのが解るやり取りで、大変良かった。
 この大きなフレームの終わりっぷりに色々悩まされつつも、世界全体を変えてより善くしよう! つー方向には進まず、あくまで手仕事の範疇、自分の個人的生活に収まる奮戦で話がとどまっているのは、個人的には好感だ。
 少なくともアニメの範疇では、あんまデカい事取り扱わないよなー……フィラックス動乱の真ん中には立ったけども。
 世間の風は冷たいけども、愛した人とともに自分にできる限りのことを、必死に頑張る。
 このサイズ感が一職人見習いアン・ハルフォード、山あり谷ありの人生を追う手応えと重なって、独自のグリップ感を生み出しているのはお話の強みだ。

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第11話より引用

 というわけで作画のギアが三段ぐらい跳ね上がり、シャルの剣が闇を切り裂くフェイズの到来だよ!(キャッキャ)
 普段バトル漫画で腹を満たしているボーイなので、シャルと”暴”が結びつく瞬間全体的な温度が一気に跳ね上がるなり、嬉しい気持ちが湧き上がってしまう……。
 甘いロマンスや職人修業だけでなく、バトル要素にも気合い入れて頑張ってくれてる所も、このアニメの好きな部分だ。
 シャルはあまりに鞘走りが軽い暴力人間なんだが、そういう輩じゃないと対応できない剥き出しの悪意がこの世界多すぎて、結果としてバランスが取れているのは面白いところだ。
 いやー、治安悪すぎでしょ……。

 海辺のお城でプライドベッキベキにへし折られて、牙を失ったジョナスくんが突破口を作るものの、工房に渦巻く嫉心はいかさま、粘ついて重たい。
 サクセスストーリーなのだから主役は補正貰って成功をかっぱぐわけだが、その都合の良さに対する世間のリアクションがこんだけ生々しいと、ジャンルの定番を越えた独自の”匂い”も濃く出てくる。
 長年コツコツ、風通しの悪い業界に尻落ち着けて才能もね~のに必死に頑張ってきた結果、サミーくんの職人根性は大変良くない方向にネジ曲がってしまいましたッ!
 ……”渡る世間は鬼ばかり”みたいな湿度の”悪”で、全く困ったもんだよ。

 結果としてハードコアな脅迫傷害行為が恋の橋渡しにもなっていくが、やっぱ命がけの修羅場こそが余計な荷物をぶっ飛ばす”風”って話だなッ!
 やや降って湧いたピンチを都合よく使ってる感じもあるが、この強引さが個人的にはジャンルの醍醐味だとは思うし、勃発した厄介事は長く長く尾を引くし、便利なだけでは終わらない。
 愛するダーリンに剣で護られ優しく抱きしめられても、クズの嫉妬が消えるわけじゃねーもんな!

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第11話より引用

 というわけで最悪工房の極悪空気はどーにもなんないので、新入りお前が出てけ!
 自作した砂糖壺と頑張って作った品評会用見本はもって帰っていいから!!
 ……やっぱマーカス伯父さん、根っこの部分ではフェアな人ですよね。
 派閥大事で凝り固まってる部分はあるが、身内と言えども正せる心意気はあるし、根は悪い人ではないと思う。
 まぁ部下はクズ中のクズだがな! そこシャル、不要に煽んないッ!!

 悪気なく血に飢えた狼をけしかけてきたジョナスとは、また違った方向で悪知恵が働くサミーの計略にハメられ、ラドクリフ工房を追い出されたアンちゃん。
 いつにもまして波乱万丈、夢への道は腐った嫉妬で埋め尽くされてどうにも大変だッ!
 この生臭さと最後まで取っ組み合いしながら、さてはて砂糖菓子と妖精に彩られたロマンスはどんな決着を迎えるのか。
 次回最終回、大変楽しみですね!