イマワノキワ

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ひろがるスカイ!プリキュア:第8話『飛べない鳥と、 ふしぎな少年』感想

 新たな地平へ翼を広げ、輝く夢へと飛び立つ戦士たちの物語、ひろプリ第8話はスカイランド神拳 VS 喋る鳥! 他人(ひと)の夢を嘲笑(わらうな)うな!! である。
 コッチの想定よりもファンタジー濃度多め、要素過積載でぶっ込まれた怪鳥少年ツバサくんと、身近なヒロイズムの体現としてエルちゃん見守り隊を頑張るソラちゃんのファーストコンタクトを、二話ブチ抜きの贅沢な作りでどっしり描く回となった。
 ファンタジー生物がUFOやら不思議な揺り籠やらでバンバン空を舞う中、かなり生っぽいコンプレックスを”空”に抱く航空力学少年をブッ込んできたり、ソラちゃんの異世界オトボケとはまた違った角度から、二言三言余計にブッこんでくるましろちゃんセンスとか、そらプリ独特の呼吸も強く感じられる回となった。
 総体としてみると間違いなくいい話なんだけども、要素要素の削り出し方に結構な特徴があって、どっかヘンテコなのは……まぁプリキュアって大体そうだわな。
 そういうトボケが積み重なって、作品独自の味になってくもんだし。

 

 つうわけで可愛い可愛いエルちゃんが離乳食食ったり(美味しくて可愛いね)、ガラガラに興味津々だったり(賢くて可愛いね)、プルプル震えながら亮の足で立とうとして危なっかしかったり(力強くて可愛いね)、赤ん坊なり必死に生きている姿をしっかり伝えてくれる今回。
 社会適性のない正義バカとも思われていたソラちゃんが、思いの外生っぽい防犯意識で警戒心を高めていると解ったりしつつ、実は最初から隣人だった人化怪鳥プニバードのツバサくんとの関係を深めていく。
 かなり正当な理由アリでバリバリ警戒しつつ、それを解くにはこれまた正当なツバサくんのコンプレックスを、預けて大丈夫な相手だと納得しなきゃダメという、どっしりした話運びに相応しい、地道なスタートである。
 現状お話の端っこを丁寧に処理しているのが好印象のひろプリだけども、急に異世界同居人(本性は鳥)が増える一大事に関しても、独自の舗装を行ってから話を回しにいってる感じが面白い。

 ソラちゃんの警戒もツバサくんの危惧も、倒れようとしているエルちゃんに思わず手を伸ばす”仁”を共有することで打ち解けていくわけだが、そこに理由は特にない。
 弱く愛おしいものが危うい状況に置かれているのなら、思わず心が動き体が付いていく。
 そういう理由なき仁愛が、ツバサくんがじーっとエルちゃんを見守っていた理由なのは、彼が空に憧れた切掛とも重なって凄く良い。
 ツバサくんの親父さんは自分も飛べない鳥だと理解しつつ、我が子を助けるために何も考えず嵐の中に飛び込んで、飛翔の奇跡を成し遂げた。
 そういう理屈を蹴っ飛ばした直情のヒロイズムというものが人間にはあり、それは確かな優しさとして父から子へ継がれている。
 そう描かれることで、優しい心に育まれて大きくなっていくエルちゃんもまた、正しく優しい人になってくれるのだという期待と希望が膨らむのは、赤子を話しの真ん中においている物語として結構大事だと思う。

 

 ツバサくんがソラちゃんの警戒をなかなか解けなかった裏には、生来飛べない鳥として宿命づけられた種族への偏見と侮蔑に、強く傷つきなお夢を見る心がある。
 真の英雄たる相を持つソラ・ハレワータルは他人の夢を笑う心を持たないので、おそらく家族以外で初めてまっすぐに、その思いが自分のヒーロー志願と同じであると感じ入り、キラキラした瞳で握手を求める。
 幼子への仁愛と同じく、理由なく渦巻く『なりたい』という気持ちに冷水ぶっかけるよりも、同じ熱を心から取り出し掌に宿し、共に繋ぐ。
 そういう事が迷わず出来る少女がこのお話の主人公なのは、やっぱりありがたい事である。

 『喋って飛ぶ鳥がフツーに隣人だったり、魔法一発でインチキ飛行する世界だから、学問としての”飛翔”は地球にしかない』というロジックが妙に新鮮だったりしつつ、飛ぶことに憧れてしまった飛べない鳥は、異世界だからこその夢を学び、自分だけの翼を希う。
 『ブタですらUFO乗って好き勝手絶頂、空から街ぶっ壊しまくってんだから、ツバサくんも魔法で飛べばいいじゃん!』と思わなくもないが、しかしツバサくんは他でもない自分こそが空を舞う実感を、強く求めている。
 エルちゃんが不思議な力で空を飛べても(その結果マジヤバい状況に赤子が突っ込んでいっても)、両の足で震えながら大地を踏みしめ、自分を前に進めれる意味は、とても大きい。
 誰かに支えられるのではなく、あくまで自分が行ける場所、掴めるものを増やそうとする願いは赤ん坊にも自然に宿り、少年を未来に進めていく。

 だからなんの力もなく飛べもしない無様な鳥が、戦地に突っ込んでいった赤ん坊を追って身を投げることは、自然だし当然だ。
 そういう必死で切実なもがきを嗤っちゃいけないし、留めず支えてあげたほうが世界は善くなると、真正面からこの話が叫んでいるのはすごく好きだ。
 ツバサくんにとって””翔ぶ”ということは”守る”という事と重なりかけていて、そうやって大事な夢を追って生きていいのだと、ソラちゃんの真っ直ぐな肯定が勇気を手渡してくれた。
 ヒトの姿を取った時片目を隠している前髪が、プリキュアとしてなりたい自分に近づく時、大きく開けてツバサくんに新たな世界を見せるのが、僕は好きだ。
 理由も保身も後悔もなく、ただただ胸の奥から湧き上がるものに素直に、自分を前に進める。
 そのためには優しさを自分の中から引っ張り出し、あるいは他人から手渡される事が思いの外大事なのだと、じっくり描くウイング回前編でした。

 

 バトル片付けるには遅すぎるタイミングでブタが出てきて、どうなるかと思ってたら次回に続いたわけですが。
 思いの外ボッカンボッカン街壊しまくってて、勝利さえすれば修復されるとは言え、自分の強さを確認する道具として他人の平穏を踏む仕草は、見てて心が痛い。
 あげは先輩も小さな英雄として戦場を駆けずり回る中、まだ自分の体も支えられねぇガキがフラフラ戦場に迷いでて、一体全体どうなることか。
 ……エルちゃんが鉄火場に迷い込む展開、ピンチ作るためのご都合に見えてその実、赤ん坊なりに大好きなソラちゃんがヤベー場所に進み出る助けになりたいと、形も理由もねぇ熱に突き動かされて体が前に出た結果だからな……それはツバサくんがエルちゃんを追って翔ぼうとするのと同じ原理で、駆動する人間の光でしょうよ。
 そういうのを『俺の強さ』の薪にしようと、大上段に暴力振りかぶる以外の手立てを思いつけない所に、カバドンの浅ましさ、哀れさもあるわけだが。
 そういう無明迷妄もただ憎んだり嘲笑ったりするんじゃダメなんだろうなぁ……などと思いつつ、新たな戦士の覚醒を描くだろう次回、大変楽しみです。