イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君は放課後インソムニア:第2話『猫の目星 さそり座の二番星』感想

 眠れぬ夜を少しでも安らかにする方法を求め、片手繋ぎで青春行脚。
 放課後インソムニア、第2話である。
 出会ってしまった二人が秘密を抱え、昼の時間をどう過ごしているかを丁寧に描くエピソードであり、ガラクタと夢でいっぱいの避難所を見守ってくれる大人と出会う話でもあった。
 透明度が高いのに生活感に満ちた空気が心地よく、丸ちゃんと伊咲ちゃんがその中を静かに進んでいく様子も、とても微笑ましい。
 二人だけの秘密基地を形にしていく描写が良いだけに、それが壊れてしまうかもしれない来訪者にはハラハラしたが、自分ひとりで背負いに行った丸ちゃんの侠気と、逃げ場所を必要としている切実さに向き合った大人の対応が見れて、大変良かった。
 天文部というオフィシャルな肩書を手に入れ、二人の時間は良い方へと転がっていくように思うが、どうにも伊咲ちゃんの総身から”死”の気配が立ち上っていて、どっかり腰を下ろして安心して見守る……とはいかない。
 思い違いであることを願いたいが、心臓悪くてどーのこーのって話しとったからなぁ……。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第2話より引用

 というわけで前半は同志と居場所を見つけた二人が、LINEで秘密のやり取りしつつえっちらおっちら、仲良く秘密基地を整えていく。
 もうさぁ……完全に”仕上がって”んじゃないのよッッッ!!!
 丸ちゃんは自虐するほどイヤなやつではけしてなく、自分からやること見つけて楽しそうに過ごしているけども、それは心の傷を預けられる伊咲ちゃんが、隣りにいてくれるからかもしれない。
 今回は伊咲ちゃんとバディ感ましまし、とにかくずーっと画面に映り続ける構成だったから、丸ちゃんソロだとどういう人なのかを、一度しっかり見てみたい気持ちがある。
 朝っぱらからビール飲んでいる親父を頼りにせず、自分で弁当二つ作ってる描写とか、不眠症に苦しんでる事実とか、影が濃い気配あるしなぁ……。
 あんま関係ないけど、丸ちゃんが太眉三白眼で可愛らしい顔立ちしてる所好きだな、このアニメ……。

 んでそんな鬱屈ボーイを照らす太陽、曲伊咲がまーかわいい。
 表情豊かにぴょんぴょこ跳ねて、無自覚あざとい火力の高さ……ええなッ!
 この子もまだ鬱屈の理由を顕にはしておらず、しかし見られてしまった辛さを一緒に背負ってはしゃいでくれる丸ちゃんと、楽しく過ごしたい気持ちは良くわかる。
 今後お話が進むに従って、二人それぞれの生き辛さが掘り下げられていくのだと思うけども、それが分からなくても今、秘密基地を作り上げていく楽しさは伝わってくる。
 出会えたことで得られたそんな時間は、過去や未来がどんなものでも嘘にはならないし、してはいけないものだ。
 同時にひどく危うくて、脆いものでもある。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第2話より引用

 倉敷先生に見つかってしまうことで、憂鬱な昼間を楽しく過ごしていた時間も終わりを告げる……のか?
 ハラハラと見守っていたが、真っ直ぐに自分の思いを告げ、伊咲ちゃんを背中にかばった丸ちゃんの振る舞いが、主人公への評価を上げる。
 伊咲ちゃんとの関係を秘密にしてるのも、自分の評判に引っ張られるのを避けてる感じだし、丸ちゃんは周りを慮りすぎて、窮屈に生きるしかない少年なのかもしれない。
 そういう子どもが、同じ傷を持つ仲間を守るべく、小さな嘘をつく。
 そらー好きになっちゃうよなぁ……。

 不眠症は誰にも告げられない傷だったはずだが、丸ちゃんは倉敷先生になぜここが大事なのか、伊咲ちゃんと共にいるのかを率直に告げる。
 それは同じ悩みを抱え、だからこそ楽しく秘密を育める仲間がいてくれることが、彼に勇気を与えたからだと思う。
 一人ではないのだと、出会いと触れ合いの中で知ることで、丸ちゃんは優しくて強い、潔い青年になっていく。
 楽しいだけで終わらない、青春の揺り籠としての役割がこの天文台にはあって、その手応えを感じ取ったから、倉敷先生は二人を守る大人の腹芸に勤しむ。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第2話

 かくして”天文部”という看板を堂々掲げて、共に夜を過ごせるようになった二人。
 かなりじっくりその生活を追いかける中で、ドアノブだったり望遠鏡だったり、まるちゃんが細かい工作得意なのが解ったりもする。
 おもちゃと自虐する観測機は、やっぱり特別な感動を二人に手渡してくれて、学校の夜はとても綺麗だ。
 ど派手な超常現象が起きるわけではないが、だからこそじっくり解像度を上げて高校一年生に迫っていけるのは、このアニメ独自の強みと感じるね。

 月より綺麗なものと出会ってしまった丸ちゃんだが、特別なライティングで縁取られたその一瞬よりも、『月から手を伸ばす』というファンタジックな言い回しをかなりマジに告げている表情と、冗談の奥にある本気を感じ取っている様子に、強く心が動いた。
 こんなに楽しい時間なのに、伊咲ちゃんは友達を地上において遠くに行ってしまう自分を、常に心のどっかに置いている気配がある。
 そして思いの外優しい丸ちゃんは、新しく出来た大事な友だちがそういう、冗談では終わらない何かを抱えているのだと、解ってしまう繊細さがある。
 真夜中の天体観測は、自由気ままなツーちゃんも加えて底抜けに楽しいけども、どこか危うく揺れ続けてもいる。
 さて、二人の青春はどこに流れ着いていくのか……という所で、今回はおしまい。

 

 第1話で感じた真っ直ぐ青春を駆けていく力強さ、主人公たちに受ける好感を素直に伸ばして、出会ったことで動き出した物語の手応えを、しっかり伝えてくれる第2話でした。
 小さな波乱もありつつ、それ故丸ちゃんの人格がより良く見えて好きになったり、野放図な自由に溺れはしない毛並みの良さが伝わったり、大変いい感じです。
 憂鬱なはずの昼をも楽しくしてくれる、特別な仲間との出会いが今後、どんな風に二人を変えていくのか。
 次回も穏やかで暖かな物語を、味あわせてくれそうです。