イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-:第20話『勝利を告げる虹』感想

 難攻不落の精密機械を狂わせるべく、雨に愛された女の知略が唸る。
 どこまでも高く澄み渡る空へ、羽ばたくための比翼が今、雨上がりの空に虹をかける。
 葵の奮戦、雨音の献身の行く末を描く、VS敷島プロ後半戦である。

 ぶっちゃけ今までと同じ感じでもって、葵の才能ぶん回して終わっていくかと思いきや、思いの外敷島プロが強かった。
 この手強さを打ち破るべく、雨音が知略の全てを駆使して戦い方を編み、二人で勝ちに行く流れは天才少女が新しいステージに登ったのを強く感じさせたし、雨音を自由にしようと手放しかける場面には、人格的な成長をしっかり感じることが出来た。
 ただただゴルフが好きなだけの、幼い純粋さこそが葵の武器だが、複雑怪奇な血の定めを叩きつけられそれが揺らぎ……だからこそ、乗り越え手に入れた翼が導く新たな空が、澄み渡って見える。
 イヴとの最終決戦に向けて、もうひとりの主役の陣容をしっかり整える、大変良いエピソードでした。

 

 八打差を逆転していく無理筋な逆転劇。
 天候というアクシデントを事前に予期し、正気をそこに乗っける雨音の賭け……それに自分の全部を預ける葵の信頼が、上手いこと奇跡に説得力を乗せていく。
 今まで秘されていた親世代のネトネトを、間近にぶち当てられたからこそ葵は乱れたわけだが、新兵器携えた親父のエールを受けてそれを乗り越えてみると、自分が無意識に踏みにじってしまっていたもの、雨音がいてくれたからこそ至れた高みを、真摯に見つめる瞳が開いた。
 だからこそ4日使って奇跡を引き寄せる無謀な計画に、素直に乗っかり実行出来る強さも際立つ。
 常人なら尻込みするメチャクチャに、当然と楽しみながら飛び込んでしまえる天真爛漫は葵が元来持つ魅力であり、雨音も僕らもそこに惹かれ、蒼天を夢見てきた。
 悩み迷えばこそ掴めた新しい強さが、天鷲葵という少女の原点からまっすぐに伸びているのは、キャラクターに一本入った芯の強さを感じられ、大変良い。

 ここに葵を呼び戻し、また支え進めていく雨音の存在感も大変濃くなっていて、家庭の事情に飲み込まれ強制的に人生使わされていたスタートから、魂の全部を預けて共に進んでいく今に、少女たちが進み出す力強さが眩い。
 やっぱ女たちの心の絆が、ややこしい過去だのクソみたいなしがらみだのぶっ飛ばす爽快感がこのお話の強みだと思うので、決戦を前に雨音と葵がどんだけLOVEなのか、話数使ってしっかり示したのは良かった。
 葵もイヴもカスみてーな因縁に呪われて、それを振りちぎりながら自分だけの……自分たちだけのゴルフを貫く幼子なわけで、一足先んじて大人びた雨音がそういう檻をぶっ壊し、自分だけの真実の願いに突き進んだことは良かった。
 この決断が、雨音が誰より大事に思う葵が雲を切り裂き未来を掴む決定打となり、雨音が信じる最強の葵に近づけていくのが、良い二人三脚だと思う。

 

 この快進撃の壁となるだけの実力を、敷島プロはなかなかいい感じに体現できており、とても良い存在感があった。
 どっちにしろ主役意外は鎧袖一触蹴散らされるのだが、その倒され方と事後の書き方に各キャラ、結構差があるのがこのお話よね……ヴィペールさんとか香蘭ペアはいいよなーッ!(灘南ファンの恨み言)
 でもかつて競い合ったライバルたちが、葵と雨音の戦いを見守るセッティングはなんだかんだ、見てて胸が熱くなったな……。
 神宮寺部長は……まぁそのなんだ、その独特の高湿度ポジションを維持してください。

 雨音が計算ずくの運否天賦に賭けるしかないくらい、敷島プロの完成度は群を抜いていたという話でもあり、負けてなお格が落ちない負かせ方だったのは、凄く良かったと思う。
 このお話はトンチキ秘技でゴリゴリ押し込みつつ、マインドゲームとしてのゴルフを結構大事にして、心のあり方が勝敗に直結するルールでもって試合を作っている。
 それが競技とドラマが直結して生まれる熱量を下支えもしているが、無邪気な葵が絶対に思いつかない仕掛けを雨音が作って、二人で一人の戦い方が王者を刺す展開は、絆の強さを強調もしていた。
 そうやって勝った試合の後に、葵があえて雨音の手を離そうとするのが、誰かにもたれかかってばかりだった少女時代を終えて、葵が大きく育とうとしている手応えを感じれて、また良いんだよな……。
 たとえ強がりでも、雨音からの自立に踏み出そうとしたその頼もしさは、クソみてーな因縁に呪われた親世代の重圧、分厚い鎖を引きちぎってくれる未来に、確かに繋がってるだろうし。

 

 つーわけで恋人(ライバル)が一皮剥けた裏で、イヴの前に分厚い壁が降って湧いたところで、今週はおしまい。
 この唐突さを自覚的に、大声で主役に言わせることで飲み込ませてしまうの、開き直りの作劇が強力すぎて、大変面白い。
 かつての師匠がぶっ込んできた褐色の異端、あまりに前フリなさすぎるのが勢いに転じてて、メチャクチャこのアニメらしいよ……。
 ここでも親世代のネトネトした因縁が顔だしてくるの、バディゴル三部だなぁ……って感じですが。
 プロでの決着を前に立ちふさがる最後の試練、イヴとイチナはどう乗り越えていくのか。
 新展開も勢い十分、次回もとっても楽しみです!