イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第16話『えるたろう一座のおに退治 』感想

 理不尽な惨劇に見舞われた故郷を背に、戦士たちは日常を生きる。
 赤子とともにレッツ生活、ひろプリ新展開一発目はフニャッとした手触りの日常エピだッ!
 ……薄々感づいていたが、ひろプリ相当変則的なことやりまくってて、ヘンなプリキュアなんだなぁ。
 俺はヘンなプリキュアが凄く好きなので、ここでエルちゃんと四人組が人形劇を通じてキャッキャするお話飛び出してくるのは、なんか良いなと思う。
 かなりじっくりコトコト煮込んでいく塩梅なんだな……敵ぶっ倒して奇跡の材料集める目的がこのタイミングで立つのも、『魔法の国に大ダメージ、復興のためには地球で頑張る』つう今まで第1話でぶっ飛ばしてた状況を、1クール後追いで変奏してくるのも、結構独特な手触りだ。

 

 んで今週もエル公がワンワン泣いてよく喋り、自分の足で歩いたり抱っこされたり、彼女なりの生を頑張っていた。
 俺はエルちゃんがエルちゃんなり生きてる姿を見るのが好きなので、そういう意味でも今回ありがたかったけども、まぁ話としては結構変な回だ。
 父母は目の前で呪いに侵されるわ、頼るべき年上は劇の最中にヒーロー性に思い悩んで沈み込むわ、なーんもわかんねぇ赤ん坊なりに『そら泣くわな……』という状況ではあるのだが、エルちゃんと四人の凸凹演劇は既に用意された”ももたろう”の筋立てを追いかけず、オリジナルなアドリブを交えて楽しく進んでいく。
 そこでは励まされるべき観客なはずのエルちゃんが、大人びた演者を励まし、鬼をぶっ倒す結末にたどり着いてないのに劇が途中で終わっても良い。
 ここら辺、トロプリが”人魚姫”を変奏しに行った手付きと似通ったものを感じて、性格極悪な現代人魚が世間に噛みつくあの展開が好きな人としては、なかなか嬉しい呼応でもあった。

 感情を押し殺し赤子を励まそうとする三人は、未だ庇護が必要な未成年であって、スカイランドの惨劇で自身が傷ついてもいる。
 エルちゃんの奇妙な働きかけは、感情を隠しきれないソラちゃんもまた愛されるべき子どもなのであって、無理くりヒーローの責務で傷を覆い隠すよりも、別の歩き方があるのではないか? という問いかけだった気もする。
 無論エルちゃんが人界の摂理を考え抜いて助け舟を出したわけではないが、すーぐ泣いちゃう純粋で鋭敏な感性は問題の核心をえぐるだろうし、エルちゃんは赤子なり”責”ということに敏感な、強すぎ正しすぎるガキなので……。
 ソラちゃん達もそうだけど、ガキが重い荷物に気負いすぎて無理くり背筋伸ばしている様子はプリキュアらしくもあり、一種のグロテスクを孕んでもいて、今回みてーに目の前で発生した惨劇のショックが全然抜けてないと気づいたり、ワンワン泣いて誰かに抱きしめてもらったり、そういうことを沢山して欲しい。

 

 クソカスことバッタモンダーくんとの因縁マッチを乗り越え、四人は仮想だったはずの”えるたろう一座”を現実に引き寄せて、夕日の土手を仲良く歩く。
 あのラストカットの頑是ない感じは大変良くて、親ァ呪いかけられて街はぶっ壊され、なかなか気楽にゃ生きられなくとも笑って進んでいく、朗らかなタフさがあった。
 『今後も色々あるだろうけど、五人はああいう感じで人生を歩いていくのだ』という、物語的な羅針盤をすごーく柔らかな描き方で示す……という意味では、新展開第1話らしい話だった……のかもしれない。
 いやそういう作品の真芯に近いサインが、このクニャッとした歯ごたえのお話から飛び出してくるの、十分以上にヘンテコなんだけどさ。
 でもやっぱり、泣いたり笑ったりするエルちゃんの”今”にアワアワ寄り添いつつ、今自分たちに出来ることと、それを果たす自分たちの今に確かな体温持って向き合う手応えは、俺好きだなぁ……。

 こういう小さな幸せを全力で捻り潰してくるのが、クソカスくんの良くないところなんだが。
 スカイランドとプリンセスを狙うアンダーグ帝国の戦術目標よりも、自分が拠り所にする暴力への陶酔を、スカイが前回見せた憤怒で格付けされた屈辱重視で個人狙いに切り替えてくるのは、搦手で本丸落とされる恐れが減って、見てて安心ではある。
 これが大局を見て必要な手を売ってくる理性的な悪党だったら、故郷詰めてエルちゃん狙い撃って、シビアな戦い強いられてただろうなぁ……。
 一応人形劇だのリレー競走だの、平和でのどかな日常を維持しつつ迫りくる暴力跳ね除ける余裕を作る上で、バッタモンダーが感情的で執着が強いキャラなのは、結構大事な筋の通し方よね。

 

 というわけで、問題は山積心に衝撃色々あるけども、せめて明るく笑えるように皆で進んでいくお話でした。
 前回描かれたむき出しの暴力と非日常から、ゆったりした日常に戻るにあたり、この作品独自のクッションを掛けて日々を旅する手付き、俺は結構好きだな。
 やっぱラストの、えるたろう一座夕日の歩みが最高にいい。
 救うべきものに救われたり、強さで自分を押し殺すことだけが答えではなかったり、自分たちだけの答えを物語に組み込みながら、プリキュアたちは日々を生き、人生を戦う。
 『やっぱひろプリ、そういう話なんだな』つう納得を不思議な手応えで受け取りつつ、しばらくはホッコリ日常話のターンの予感です。
 俺はこの焦らない感じかなり好きなので、次回も楽しみね。