イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-:第21話『虹と弾丸』感想

 超時空青春ゴルフストーリー第21話は、アイルランドでイヴのターン!
 元師匠が連れてきた野生児上位互換、リスクやマイナスを許さない難コース、なかなか見えない自分だけの弾丸……と、乗り越えるべき課題山盛りのプロターン前最後の戦いとなった。
 濃い口のライバルを贅沢に使い潰していくのがこのアニメのスタイルで、ぶっちゃけアイシャもそうなんじゃねーかなー、と思っていたけども、蓋を開けてみたらなかなかいい感じに粘ってくれて、イヴの奮戦が際立つ形に。
 自分に戦いのイロハを教えた師匠が、同型上位互換を引っ提げて挑戦状を叩きつけてくる展開、アツさの型がどう考えてもロボアニメで、今更ながらゴルフとは……? となっている。
 おもしれーから何でもアリだけどさッ!

 

 展開自体はギャンブル禁止の超高難度コースに、イチナの助言も跳ね除け今までのスタイルで挑むイヴが絡め取られる形で進む。
 今までこのアニメで”ゴルフコース”がクローズアップされるのは、トンチキ変形で自由自在にレイアウトが変わる闇ゴルフ場とかだったわけで、すごく真っ当に”ゴルフアニメ”してきたのは意外……であり、新鮮に面白かった。
 考えてみりゃ本来は、技巧を凝らしたコース設計の意図を読み戦略を練り上げ、どう勝ち切るかを積み上げていくのが競技の醍醐味なわけだが、必殺技だぁ命がけの賭けゴルフだ、ケレンの効いた(時折効きすぎた)アレソレが表に立っていた超時空ゴルフでは、聞いたトキねぇネタではあった。
 しかしそこかしこに罠が仕掛けられ、イヴの野性的なスタイルが飲み込まれる難所を持ってくることで成長の必要性が増し、イヴが自分だけの弾丸を生み出す流れに説得力が出ていたと思う。

 こういう場面こそキャディーの知恵に頼る……って予断も綺麗に裏切られて、イヴはほぼ独力で努力を積み重ね、最終的に覚醒へと至る。
 無論イチナが無限の信頼を寄せてくれたからこそ突破できた壁ではあるのだが、ここで『自分でメチャクチャ頑張って、死ぬほど努力した結果結果を出す』ってのが、イヴらしい強さの表現で良かった。
 ライバルの葵がネトネト湿度高い関係性を雨音と親父の間にぶっ込み、他人と関わる難しさを飲み込むところまで人格を成長させる形で壁を超えたのに対し、イヴはあくまで自分中心、誇り高いエゴイストとして堂々ピンチを受け止め、正面から殴り勝っていく。
 最終決戦に向けて物語燃料を積み込むターンで、こういう風に『このお話の主役は、こういう女たちなんだ!』としっかり書いてくれるのは、大変良い。

 

 この爆発的変化を促すのがシャア声の師匠であり、イヴが化けるキッカケはなんだかんだ、『お前の敵は同型機、俺の背中を追っているばかりでは勝てんぞ……』という、レオの言葉であった。
 アムロ声が病身を押して(JKに支えてもらって)愛弟子を見守ることで壁を超えさせたのに対し、レオは名前の通り獅子を千尋の谷に突き落とすような鍛え方をしているのも、宿命のライバル……その導き手を上手く対比する書き方といえる。
 イヴの強みだったギャンブル性を、ド派手なランニングショットで突き詰めたアイーシャも成長の起爆剤(噛ませ犬の別名)としてなかなかケレンが効いてて、主役が乗り越えるべき過去の自分の鏡として、良い造形だったと思う。

 レオが穂高プロに向けてる感情が思いの外デカくて、『やっぱ親世代は因縁に呪われてんな~……』って思いを新たにするけども。
 考えてみりゃ、決着付けきれずに死んだライバルの言葉に縛られてイヴを育て、いつか自分を越えていく日、呪いが解ける日を待ちわびていた部分もあったと思うので、『私たちのゴルフが混じり合ったベイビーとして、イヴが本物になる瞬間を待と~ね♡』つう、穂高プロのキモいプロポーズが破綻してよかったと思う。
 いやマージあいつの遺言、他人の人生縛り過ぎでヤバい。
 親世代の呪いが解けてきているのは、実力を示して鎖を引きちぎった葵&雨音の巣立ちを、セイラさんが祝福できているところからも感じられて、結構いい流れだなと感じた。

 

 レオの過酷な特訓に傷つけられながらも、その日々があらばこそ空白の記憶に地獄を生き延びる強さを刻んで、イヴはここまで来れた。
 レオが作り出した自分の上位互換を、取り戻した記憶に刻まれた父の虹と、レオ自身が生んだ弾丸ゴルフを融合させたイヴだけのゴルフで倒していくのは、二重の意味で親父超えの瞬間であり、そらーヴィペールさんも颯爽と立ち去るわな。
 イヴのゴルフ見るためだけに彼ピとスコットランドくんだりまで足を運ぶあたり、ヴィペールさん純愛すぎてウケるし、外野で観戦して”到達”を見届けるだけで満足なの、見返りを求めない生き様すぎて最高。

 因縁と愛憎でがんじがらめの親世代を、宿命の子どもたちが自由に羽ばたいて超えていくことは、彼らが子どもに確かに贈った祈りや愛が悪いものではなく、もっと高く広い場所へと子どもたちが飛んでいける、大事なギフトでもあったのだと証明もする。
 イヴと葵はただただ純粋にお互いを求め、最高の勝負ができる場所を求めて……そしてゴルフという最高のスポーツを心から楽しんでいるだけなんだけども、そのための翼は彼女たちだけでは動かず、彼女たちを不自由に縛っていた存在の助けがあって、ようやく高みに至る。
 ペア解消してからのプロ前試練編は、そこら辺の因縁をうまーく解して物語的推進力に変えていて、巧いテーマ設計とその解消だと感じるね。

 子どもたちがただただ自分の夢に向かって真っ直ぐ進むことが、自力では鎖を外せなかった大人たちが自由になるためのトリガーにもなってて、”自分のため”と”誰かのため”のバランス、関係性が凄く爽やかなのは、このアニメの凄く良いところだと思う。
 身勝手に自由に、ゴルフを楽しみながら誰かとの決着を追い求め、自分らしく突き進んでいく。
 その真っ直ぐな推進力で僕らを引き寄せてきたアニメだからこそ、イヴの手前勝手な努力がちゃんと彼女だけの武器を生み出し、その一撃が穂高プロへの愛憎に囚われてきたレオを打抜き、自由にもしていく。
 ……つくづく、間に立って実際にプレーしてるアイーシャの立場ねぇなコレ。

 とまれ、プロを前にイヴに立ちはだかった試練も大変いい感じの強度で描かれ、最終決戦に向けた成長に充実と納得を受け取れる回でした。
 フツーなら修行回挟むところなんだろうけど、ガンガン話を先に進めるべく試合の中で成長する形にしたのは、このアニメらしい勢いとテンポの産み方だと思う。
 立ち止まることなく駆け抜ける、虹色の弾丸。
 それがどこまで高く飛ぶのか、次回も大変楽しみです。