イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-:第23話『夢を叶えるために』感想

 運命の決戦に向けて物語も全力疾走!
 怪我も病もなんのその、意思だけが迫りくる理不尽を撃ち抜く弾丸ッ!
 超圧縮の一年間を駆け抜ける、バディゴル第23話である。

 唐突なのは毎度のことながら、最後の試練として用意されたのはまさかまさかの怪我と病気。
 一応伏線張ってあるとはいえ、盛り上げのための盛り上げ、課題のための課題って感じが……正直ちょっとはするけども、個人的には妙にしっくり来る最終試練でもある。
 ここまで天真爛漫な才能で、あるいは傲岸不遜なプライドで他人を蹴散らし続けてきた、無敵の主人公二人。
 そんな二人を一番苦しめたのが、彼女たちにはどうしようもない家庭の事情とか、怪我や病苦なのはその無敵感を削ることなく、作品の推進力を衰えさせることなく駆け抜けるための、良いレトリックだ。
 同時に病気や怪我は万人にとっても、唐突で理不尽な普遍的試練であり、最後の最後でそれが襲いかかってくるのは、超人的(あるいはマンガ的)ゴルファーとして散々トンチキやってきた彼女たちが、あくまで医師で未来を切り開く”人間”なのだと書くための、良い問題設定な感じがある。

 まーた葵がワンワン泣いてて大変心が痛むが、終盤戦で雨音のキャラパワーをゴンゴン積み上げた成果がここで出て、涙を鋼の仮面に隠し、愛する女のために運命に立ち向かい支える展開が、ググっと胸に迫る。
 あんまりにも唐突過ぎる運命の一撃、泣いて暮れてもおかしくない時間をクライマックスに引っ張るため、不屈と知性を武器に立ち上がるポジションはもはや雨音にしか任せられず、苦境を覆して待ちに待った最終決戦にたどり着く説得力を、見事に背負ってくれた。
 葵にだけは弱みを見せられないと強がる、イヴの負けん気をライバル陣営の要も背負っているのだという、龍虎相打つワクワク感もあるし、そんな雨音が同じキャディーのよしみでもって、イチナを信頼して決戦の裏にあるものを預けてくる湿り気も、また良かった。
 誰もが人間だからこそ苦難に涙し、それを飲み込んで強がる。
 不屈の闘志と尽きぬ信頼こそが、未来を切り開いていく弾丸なのだ。


 意思という弾丸、ゴルフを楽しむ心。
 再戦どころか命がやべぇ、普遍的で大規模なピンチが二人に襲いかかったことで、話をまとめ上げるに相応しいテーマがぐぐっと浮き彫りになってもきた。
 散々トンチキぶっこみつつ、『ゴルフって良いスポーツだよな!』と大声で叫ぶことは絶対やめなかったアニメなので、こういう形に2クールの物語をまとめ上げてくれることは、大変嬉しい。
 葵がずっと子供っぽくて、ただただゴルフを楽しむピュアガールであり続けたことが、裏稼業の宿命に縛られ貪欲に勝ちを求め、そんな嵐の中で自分だけのゴルフの意味を探ってきたイヴの旅路と、力強く呼応もする。

 葵の純粋さとイヴの貪欲は、どちらが正しいというわけでも強いというわけでもなく、ゴルフが……あるいは人間が持ちうる可能性の豊かな発露であり、お互い響き合うことでもっと高い場所へと、僕らを連れて行ってくれる。
 それを証明するためにはドでかいピンチを無双系主人公に叩きつける必要があって、ここで怪我と病気でぶん殴ってくるのは大映イズム濃くて好きだなぁ……。
 あくまで盛り上がりの対価としてのありがたみなんで、最後はあまりに熱いゴルフ対決にゴルフ神が全英オープンに降臨して、なんもかんも上手く収まるハッピーが空から降り注いで終わりでお願いします。
 イヴも葵も好きだから、辛くて苦しいの見てるのイヤなの俺はッ!

 

 そういう最終決戦を前に、ライバルたちの始末を一気に付ける回でもあったけど、開幕数分でアイシャが一気に健気系野生児としてのポテンシャルを爆裂させて、作中一番可憐な存在にのし上がってしまった……。
 昔の女に執着し救われ、今の弟子である自分が無用であると見限り思い詰めてしまうナイーブさが、野生児の記号ぶん回してた雑ライバルから一気に芽生えてくると、ギャップで脳髄どうにかなってしまうよ……。
 ここでレオが過去に囚われるのではなくアイシャを選んで進み直すのは、イヴと穂高プロがたどり着いた高みがどんだけ人を自由にするか、示す意味でも良い展開だったと思う。
 ライバルキャラの始末が、良い時悪い時極端なのがこのアニメだけども、アイシャ&レオは相当美味しい退場貰ったと思う。

 天鷲のジジイがぜーんぜんいつも通りなのは横において、セイラさんも運命の重荷を下ろしただただ葵の母である自分に戻れた感じで、こっちも良かった。
 これもあの時雨音がガツンと言った結果であるので、過酷な運命だの重苦しい過去だのぶっ飛ばして、ちっとでも人間がいい場所に進み出るきっかけは大概、あの鉄の女がぶっ放している。
 やっぱ好きだなぁあの人……。
 葵は本人に何の咎もないことで苦しみまくっているので、ここでお母さんが家だの過去だのに縛られたまんまじゃあ見てる側もしんどかった。
 なので、セイラさんが(執事さんのナイスアシストもあって)立つべき場所にしっかり立ててるのは、最終決戦を前にありがたく嬉しいことだ。

 

 療養を名目に最終戦に必要な修行時間を積み上げ、秘打が飛び交うラストバトルへの説得力を作っていく回でもありました。
 あんだけトンチキゴルフでギャハギャハ笑ってた僕らが、その精髄となる最後の勝負を前に思うのは『二人ともゴルフを楽しんで、無事に帰ってきてほしい……』なの、良いように作品に振り回されてる感じがあって、最高に気持がいい。
 『スポーツに、勝負に挑む人を見守る観客が感じるべきなのは、何よりまずそれ』って所に、こんだけぶっ飛んだお話見てて最終的にたどり着くの、なんだかんだ真面目なアニメだよ本当に。

 世界最強最後の噛ませ犬も堂々お目見えして、舞台はゴルフの聖地聖アンドリュース。
 ゴルフサイボーグの腕が砕けたり、ガールズゴルフストーリーしたり、赤い因縁に振り回されたり、病や怪我という理不尽をも意思で跳ね返したり。
 あんまりに色んなことがありすぎた、でもずっと一つのことを語り続けてきた物語が、一つの結末へとたどり着く最終決戦。
 凄いものが飛び出してくるのはもう知っているので、ただただ楽しみに待ちます。
 俺、このアニメ好きだなやっぱ……。