イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第19話『あげはとツバサ、カラフルにアゲてこ!』感想

 四人目の戦士を仲間に加え、ますます勢いを増していくひろプリ第19話である。
 あげは姐さん強化週間は今回も継続で、ソラましを大胆に表舞台からぶっ飛ばしつつ、ツバサくん&エルちゃんとどういう同居生活を送っていくのか、生活の手触りが濃いエピソードとなった。
 『画面に映る人数絞れば、濃い描写をたくさん詰めるんだからそうすべき』という、事実なんだけどもプリキュアだとあんまやらないタイプのレトリックを堂々ぶん回してくるのは、なんかスゲーひろプリ味だ。
 学校行かない組にフォーカスしたことで、チームの最年長と最年少がどういう距離感なのかとか、虹ヶ丘ハウスでの疑似家族的役割分担とか、呪われた両親を置き去りにすくすく育っていくエルちゃんとか、色んなモノが見れる回だった。
 ……やっぱとっとと不思議エナジー取り戻して、ご両親がエルちゃんが歩む人生階段、その一歩一歩を見届けられるようにしたほうが良いよなぁ……。

 

 つ~訳で前回が戦士・キュアバタフライの誕生を描く回だったとすると、今回は生活圏を同じくする聖あげはがどういう人物なのか、どっしり描いていく話数だ。
 みんなが幸せになれるように家事に気合を入れ、ちょっとオトナなメイク知識も教えてくれて、万能無敵なお姉さん。
 作中指摘されていたように、両親から遠い場所で暮らしているプリキュアたちに欠けている”見守る大人”としてのポジションに、スルッと入り込んできた感じがある。
 『ヨヨさんがいんじゃん!』と思わなくもないが、プリキュア特有のサークル性、”若さ”という属性を介して結ばれる強くて閉鎖的な絆はやっぱ特殊なモノであり、前回変身を果たすことでそこへの参入資格を証明したあげはさんが、『プリキュアごっこに参加してもいいママ』というポジションに入るのは、作品のロジックからして必然で必要……なんだろうなぁ。

 ここであげはさんを無敵のスーパー社会人にせず、相当な無理をして大事な人を喜ばせようとしてる様子、それにツバサくんが気づいている様子が、今回の軸になる。
 エルちゃんのナイトを自認する彼にとって、自分こそがやりたいことをより軽々と、心地よくこなせてしまうあげはさんは身近なライバル……であると同時に、エルちゃんを愛する仲間でもあって。
 それが同じ屋根の下生活を共にする環境に滑り込んできて、さてどういう態度で向き合うか……てのを探っていくのが、今回のお話である。
 チラッと軽い嫉妬を燃やしつつも、世話焼き少年の本分を全開にして、お世話する人のお世話を積極的に、対等に買って出る感じでまとまったのは、これからの暮らしが風通し良く楽しく進んでいく期待感を高めてくれた。
 あげはさんはソラましツバの児童サークルから、ちょっと離れた所に立ってる特別な存在なので、ここでその特殊性を掘り下げ足場を地ならしするのに一話使ったのは、とても良かったと思う。

 

 二人の間に立つ最強の重力源は、もちろんエルちゃん。
 サンドウィッチ食べたりお絵かきしたりプール入ったり、どんどん新しい楽しいことに向き合っていくエルちゃんがたっぷり見れて、大変ありがたかったです。
 ツバサくんがぷにバード形態に変身できるの、赤子と同サイズ、同レベルで対等にはしゃいでいる絵面を自然と生み出せる強みがあって、今回はそこを自覚的に取り回してもいた。
 児童の健やかな育成を助けるコンパニオン・アニマルとしての顔と、夢と使命を抱えた一人の少年としての顔を対立させることなく、両方ツバサくんの素顔として自然に描けているのは、結構好きだ。

 なーんも知らねぇ赤ん坊が自分のこととか世界のこととか、彼女なり学んで表現できるようになっていく様子に、結構丁寧な筆で向き合ってくれてるのがひろプリの、沢山ある好きなポイントの一つだ。
 コッスい浅知恵で各個撃破を思いつき、相変わらず弱さに寄り添うふりをしながらゴミカスムーブをキメてくるバッタモンダーを、エルちゃんは『めっ』する。
 それはツバサくんが彼女に告げた言葉を、あげはさんが芸術表現へと昇華してくれた思いを、真似して学び取る仕草だ。
 赤ん坊特有のオウム返し、与えられるものをそのまま反射して。自分のものにしていく学びのあり方が、今回さりげなく、しっかり描かれていて面白かったな。
 無垢な魂は与えられたものそのまんま自分に引き受けていくので、良いもん手渡すのは見守るもの、育てるもの、教え導くものの責任で、義務にもなるわな。

 いい塩梅に卑劣で卑屈な悪事積み重ねているバッタモンダーが、何を学び取って(あるいは学び取れず)ああなっているのか。
 そんな地金が書かれるか、書かれないのかいまいち分かんねぇのもひろプリの面白いところだと思うけど、悪もまた環境が育む(少なくとも、その側面がある)種子なのだろう。
 ツバサくんやあげはさんがエルちゃんに笑ってもらおう、幸せでいてもらおうと、いろんな経験や楽しさを手渡す手付きと真逆のものが、バッタモンダーとアンダーグ帝国には満ちていて、その結果あのひねくれたゴミカスが生み出されている……のか?
 エルちゃんの幸せ育成環境と、そっから素直に延びている”善”の芽を見とるとそういう事も考えるけども、まー明かされるにしても結構先だろうな。
 ここら辺の削り込みを抑えて、プリキュアが紡ぐ日常を大事に進めていくってのが、ひろプリのペースなんだろう。

 

 ギャルマインドの概念存在みてーなキュアバタフライに覚醒した結果なのか、最近のあげはさんは万事アゲて楽しく過ごしていく生き様が強調されていて、ちょっと面白い。
 人生を気楽に捉えナメてるわけではないけども、硬く重く考えすぎて身動き取れなくなっても面白くないと、人生をわたり切るための武器として選ばれている軽快なスタイル。
 これがツバサくんのちびっこ騎士道といい化学反応して、時に響き合わない不協和音に悩んだり、だからこそ分かろうとお互い歩み寄ったり、年の差含めた凸凹が上手く噛み合ってきてる感じが、なかなか楽しい。
 人生経験の分ちょっと先回りして、”少年”呼びを”ツバサくん”にあらためて、言うべきことをしっかり伝えている姿は、見ていて頼もしい。
 それでも無理に生活が軋むのであれば、共に闘い暮らす仲間に頼って過ごしていけばいいんだと、ツバサくんが手渡していくのも良かったね。

 そういうかみ合わせの良さを描いた上での、新アイテム&新浄化技のお披露目回でもありました。
 次回描かれるましろちゃん夢への第一歩が絵本作家なのも、”描く”ってモチーフがひろプリにとって大事だって話なんだろうけど、虚空から現れたミックスパレットの唐突感、『BANDAI様が年貢を納めろってせっついてるよ!!!』って感じがあって、なかなか面白かった。
 お商売のご都合をどう乗りこなしていくのか、ニヤケ笑いで斜めに見つめるイヤ視線をどっかに残しつつも、ひとつ屋根の下年も出身世界もない混ぜに、色んな楽しさを描いていくプリキュアの物語は、やっぱり見ていて面白い。
 何にもないからこそ何にでもなれる、純白のキャンバスに虹ヶ丘ましろは、何を描いていくのか。
 次回もとても楽しみです。