イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

蒼穹のファフナー THE BEYOND:第4話『力なき者』感想

 虚無の申し子を駆る反抗は、何も砕きえないまま地に縫い留められた。
 行き先を知らぬ叛逆を抱えたまま、少年と戦士たちは険しき対話の道へと進み出す。
 ただいま故郷待ってろ運命、ようやく1つの作戦行動が終わるファフナーBEYOND第4話である。

 

 初搭乗でニヒトを操る適性の高さと、ずーっと戦争して大人になった子ども達との実力差に揉まれ、美味しそうな鮭はゴルゴの銃弾でぶっ飛ばされ、挙句の果てにルヴィ様の煽りに乗ってレッツ学習!
 ソウシを翻弄する運命は過酷でありながらどこかホッとして、その後なんだか寂しくなる……とってもファフナー味の濃いものだった。
 それはみんなソウシを戦争の道具、運命の端末ではなく意思と尊厳のある一人の人間、教え諭すべき子どもとしてみているからで、だからこそ色んな厄介事も起きるんだろう。
 憎悪と復讐に取り憑かれて剣だけを持った人たちがどんな惨劇を引き起こすか、たくさん書いてきたシリーズだけに、必要だったとはいえソウシの家族と故郷を奪った事実を言い訳せず引き受け、その先になにか新しいものを探そうとする姿勢には希望が宿る。
 ここら辺、あまりに凄惨な脱出行が終わった後の物語で、新国連&人類軍が『因縁山程抱えているし、目指すべき理想は時に真逆だが、対話も協力も不可能ではない他者』になってるのと、どこか繋がるものを感じた。
 本当に……僕が耐えかねて視聴諦めちゃうくらい凄惨な殺し合いと騙しあいを経て、取引相手としてあの二人とアルヴィスが対峙できているのは、政治的現実を生きる上でのたくましさと、泥にまみれてなお微かに、分かり合えるかもしれない可能性が人に残ってる感じで良かったね。

 んでまーソウシは凄腕共にフルボッコにされるわけだが、彼の現状を示す上ではこの暴れっぷりは良かったんじゃないかと思う。
 何もかも壊してしまいたくなる憎悪と絶望が彼の中に確かにあって、それをかつてニヒトが行ったような殺戮に結晶化させるのではなく、何か別の所に届けるのであれば、それを選んだ人たちは頑張るしかない。
 真矢ちゃんもその重たさを身にしみて知っているから、一騎と魂で触れ合う時、母に語りかけるときの柔らかな顔を冷たく覆い隠して、『ぶっ殺したるぞクソガキ!』と、ソウシに圧力かけ続けるんだろうし。
 『いざとなったら私が殺します!』は、あんまりにも強く悲しい言葉で軽く泣いてしまった……。
 早く強さの仮面を全部捨てて、優しく笑うただの遠見真矢でいられる世界が来てほしいけど、そのためにも歴戦の兵士でい続けなければいけないというジレンマね……。

 本気で潰しに来てるソウシを相手に、訓練のように余裕を持ってボコる先輩たちは大変頼もしく、しかし腕一本頭一つぶっ飛ぶ痛みは必要経費と、何かが壊れている感じもソウシを鏡に良く見えた。
 そう遠くない死を、幸せな同居生活と横並びに話せてしまう零央と美三香(相変わらず可愛い)の姿が本当にキツくて、龍宮島が必死こいて守った人間性育成の夢が、戦争の現実に侵食されてる危うさがあそこには滲んでいた。
 美羽ちゃんが年相応に色鉛筆でお絵かきしてる描写と合わせて、凄く大事なものを守るために凄く大事なものが壊れかけてしまっている現状を、島の人達は異常と思えていなくて、それは”ファフナー”を見続けていたファンの価値観、作り手の視点を相対化し作中に焼き付けているものかもしれない。
 ルヴィ様の誘導に乗っかったソウシが、島の暮らしに何を見つけていくかは此処から先の物語なんだけども、偽龍宮島で”人間らしい”生活をニ年経験した彼にとって、色んなものが異質で異様になると思う。
 そんな彼をファフナー世界の当たり前でぶん殴る前半だったけども、それが美羽ちゃんの抱擁で終わったのは、希望の残る〆方……だったかなあ?

 

 微かな祈りがメチャクチャ手ひどいやり方でへし折られる事が、何度も何度も繰り返されている世界なので、今回日常に帰還する中で描かれた希望や、死を超えてなお受け継がれるものもまた、どこかに消えて行ってしまう怖さと裏腹だ。
 アイドルとして子どもにウケまくってる広登の映像とか、翔子やカノンの写真は肉体の死が全ての終わりではないのだと告げてはいるけど、しかし奪われ殺されたあとに残るのは恨みや憎しみも同じで、ソウシはそれに囚われかけている。
 島の人たちが本当に苦労しながら、あるいは今現在苦しみながらなんとか噛み砕いている運命の理不尽が、悪い種子として芽吹くのではなく、もうちょっとこー……いい感じに収まる場所をソウシと一緒に探していくお話。
 それがBEYONDなのかなー、って印象だ。
 ここら辺一番見据えているのは生き神様であるルヴィ・カーマっぽくて、無力だからこその可能性をソウシと美羽ちゃんに見出して、遠見式スーパースパルタも許容しつついい未来を掴もうと、なかなか積極的に介入してくる。
 歴代の超越者ロリが儚げ属性だったので、ルヴィ様のグイグイ行くやり手感は新鮮かつ頼もしいなぁ……。

 色々歪なところはありつつ、島が人間が返ってくるべき心の故郷であるのは間違いなく、ソウシという爆弾を責任持って大人しくさせ抱え込む所まで引っくるめて、ようやく最初の旅が終わった感じがある。
 むさ苦しいタンクトップが雁首揃えて、ワイワイ酒飲んでる絵面が出てきたのが、俺は凄く嬉しかった。
 物語の真ん中に立って、悩みと発見を繰り返して大人になっていった特別な存在以外にも、みんななんか抱え込んで必死に戦って返ってくる話なので、あのビールには人間の尊厳が滲んでおる。
 こういう人たちに見守られ、教えられたり教えたりしながらソウシは島……そこに残った人間文化と対話していくのだろうから、彼らが生きている臭気が画面に宿っていることは、とても大事だろう。
 無邪気に遊んでいるだけだったように見える子どもたちが、致死の戦場から戻った親に静かに抱きつき涙する姿にも、何かを必死に堪えながら理不尽に押しつぶされないよう、頑張って楽しく過ごしている生き方が見えて、尊くも苦しかった。
 島の人達は戦争という非日常を生きる顔と、親として人間として日常を維持し続ける顔両方を持たなければならず、それは前者だけを延々装備し続ける新国連(あるいは人類軍)よりも厳しい、中庸の道なのだろう。
 それでも誇りを持って、人間の当たり前を頑張っていかなきゃ凄く大事なものが壊れるのだと、人を愛し家族になること、皆で笑うことを頑張ってきた島の人たちの表情が、良く見える回だと思った。
 同時に”人間であること”とその礎たる平和を、異質生命フェストゥムの襲来で決定的に揺るがされた中での文化的奮戦は、どうしようもなく歪んでいってしまうという現実も、また重ね合わらされた感じね。

 

 島が保護している人間味を全世界に開放し、永遠の価値として再生させるためにはフェストゥムとの戦争状態をどうにかせんといかんわけだが、クソみてぇな旗をおっ立てて基地壊滅させてたベノンと、それが叶うのか。
 『エイリアンと対話できるわけねーだろ! 人間性燃やしながら絶滅戦争だよッ!!』っていう路線の限界は既に示されているし、島の目指すところは平和的決着なわけだけど、ソウシと家族になれるくらい人に近づいたフェストゥムに、そこに行き着く可能性が生まれているのか。
 ここは次回以降、敵さんの描写を通じて解っていく部分かと思う。
 やっぱフェストゥム人間になった一騎が(人間だからこその険しさを演じて)極めて冷酷にぶった切ったものに、凄く人間的な痛みをフェストゥムが感じているってのは、面白い鏡合わせよね。
 同化と学習を凶器に人間追い詰めていた連中が、地獄の中でなお人間であることを諦めなかった人たちの物語を通じて、その新たな使い方を学びつつある展開……とも言えるか。
 ここら辺はスフィンクス型とかエスペラントとか、人とフェストゥムの境界線を越えうる存在を、話を進める中で物語に組み込んできた成果……あるいは呪いって感じもある。
 完全に理解不能な異物ではなく、どこか通じ合う可能性があればこそ尋常じゃない憎悪が生まれるってのも、繰り返し描かれているしね。

 そういう連鎖を断ち切り、変わっていける可能性を物語世界に刻むための刃として、現段階のソウシは鋭く尖っていなければいけないと思う。
 怒りに黒く塗りつぶされた彼の心に、無力を思い知ったからこそ力を求める意思、敵を貪欲に同化することで自分が変化していく道が、どんな軌跡を描いていくのか。
 そこに美羽ちゃんの運命がどう重なっていくかが、今後大事なのかなと思います。
 ホントねー、絵画でもイラストでもなく”お絵かき”やってたのが、無茶苦茶デカいの食らったよ……体だけデケーガキをよー、キツすぎる運命に投げ出すのはいい加減やめようッ!
 これが本当に子供の身の丈で書かれると、視聴に耐え難く辛いってのも、ソウシや美羽ちゃんが過剰な成長させられてる理由かな~。

 

 という感じの、BEYOND第一章完ッ! って話数でございました。
 毎回何らかの形で、燃えるロボアクションをしっかり組み込んでただただ喋るだけにしてないのは、親切な構成だなぁと思ったりもする。
 やっぱファフナーが超かっけぇシーンは、たくさん食べたいからな!
 そこを満たしてもらいつつ、新主人公を立てた意味合いも段々と見えてきて、反発しつつも閉じこもることはないヤンチャボーイの未来がどうなっていくか、大変楽しみです。
 ソウシが涙をにじませ叫びつつアクティブなのは、話が停滞しなくて有り難いよね……沢山暴れな!(狙撃斬撃ぶち込みつつ)
 次回も楽しみですね!