イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

好きな子がめがねを忘れた:第4話『好きな子のめがねを選んだ』感想

 高円寺から吉祥寺、異様なビカビカ感で光り輝く中央線沿線に燃える幼い恋心……アニメ好きめが第4話である。
 凄まじい輝度と透明感で描かれる情景が、結構オーソドックスな両片想い物語と全然噛み合っておらず、しかし段々と高まってきたキャラ……特に小村くんのテンションとは不思議な馴染み方をしてきて、大変独特のコクが出てきた。
 『クールな顔して心の中じゃ……』って塩梅では全然なく、メチャクチャ”汁”ダダ漏れになってる大騒ぎは、常時イキっぱなしのイカレ感満載であり、『ムケたな……伊藤くん……(”Argonavis”からの古参っ面)』と、思わず腕組みしてしまった。
 やっぱ小村くんが相当な変人であり、三重さん好きすぎて頭オカシイ人なところが自分の好みと噛み合って、ぶっちゃけ色んなところが悪目立ちしているこのアニメを、美味しく食べれる助けになってる印象。
 でもこの変人たちを、淡い水彩のいかにも透明度高いエモ作画で叩きつけられていたら、それはそれで違和感あったと思うし、なんだかんだこの組み合わせで良かったんだと思う。

 

 つーわけで今週もラブリー中坊たちは微笑ましい恋模様に踊っておるわけだが、間接キスだぁ実質デートだぁで一生おほってる小村くんは小村くんとして、三重さんが無自覚にグツグツ煮込まれてきてる感強くて良かった。
 『好きな子がめがねを忘れる』という世界律に投げ込まれている以上、三重さんは常識を蹴飛ばし異常を丸呑みする、ちいとヘンテコな気性の持ち主である。
 そんな世間の風から浮いた小動物が、主人公だけには特別な距離を許す……という唯一性がこのラブコメの駆動装置になっていて、しかし三重さんは三重さんなりに感情と価値観があり、他人と触れ合いながら生きている。
 小村くんが恋の体熱に浮かされながら、一方通行気味に差し出しているものはペシッと地面に投げ捨てられるわけではなく、常識的な回路ではないにしろ真心を宿して、三重さんに刺さっている。
 ボサボサペロンな忙しい朝の自分を気にする時、”外部”として唯一立ち上がってくるのが小村くんだったり、青春ピタゴラスイッチで同級生に壁ドンするハメになった時、前のめりに『ダメ~!』言い出したり。
 三重さんは三重さんで小村くんが特別好きなのだと、お話が前に押し出してきた。

 この相互の熱量が噛み合ってしまい、恋というラベルを告白を通じて貼ってしまえば(ひとまず)ラブコメは終わりなわけで、めがねを忘れた三重さんの視力は物理的な視力だけでなく、自分の気持ちも見えなくするためのデバフになる。
 毎回なんやかんやめがねを忘れてドキドキシチュエーションを作る必要上、己の恋心にうとい三重さんに対して、加速したモノローグで画面を埋め尽くす小村くんは自分がどこにいるか自覚的だ。
 その上で『これは双方向な恋ではない』と自分を諫める何かがあって、『いや……全然イケんじゃね?』と既に思える関係は、心地よい宙ぶらりんに留保され続ける。
 三重さんが恋に踏み込まない理由は、彼女のチャーミングなキャラ性と合わせて飲み込めるとして、何が小村くんを押し留めているのかは、もうちょい深い描写が欲しくもなってきた。
 ”難聴”とも揶揄される極度の鈍感が、ふとした拍子で転がりだしそうな関係を押し止めるラブコメのスタンダードであるけど、小村くんは三重さんからの特別な行為にも、それで高鳴る自分の心臓にも結構率直で、お陰で大変キモいことにもなっているのだが(褒め言葉)
 なんでキモいまんま突っ走らず、小さなジェントルマンとして延々めがねを忘れた三重さんにご奉仕出来る精神保っているのか。
 ここら辺の内膜をそのうち描いてくれると、より楽しく作品を噛み砕けるかなと思った。

 

 というわけで、お互いが抱える心の質量がちょうどいい距離感で一時停止をして、微笑ましいゴルディロックス距離を保っている現状を、かわいく描くエピソードでした。
 体温高すぎる小村くんと、一見クールな三重さんの噛み合い方が丁度良くて、一番掛け合いの多い二人の波長が合っているのは、見る上でいい感じだなぁと思った。
 小村くんがツルンと清潔な純粋培養純情天使ではなく、結構ギラついた欲望抱えつつもなんとか抑えて、三重さんの意識せざる特別に収まってる感じが、なかなか楽しい。
 ぶっちゃけ出オチ感あるワンアイデアを多彩に活かしつつ、それが生み出す関係性の妙味に軸足が映ってきている感じで、『ああ、ラブコメアニメの第4話を今食べてるな……』って実感が、なかなか楽しかったです。
 今後どういう転がり方をしていくのか、次回も楽しみです!!