魔王を殺して生まれた平和に、みっしり詰まった現実の臭気がコメディに漏れ出してくる、Lv1魔王アニメ第7話である。
共和国にイチャイチャバカンス兼視察に行ってきた魔王&勇者は一旦休んで、アホバカスパイスーツに身を包んだゼニアが体を張って、フレッドの本拠地に潜入するお話となった。
相変わらず無意味で無価値なケツのドアップとか、おバカ極まる脳筋加減とかほのぼの楽しかったが、共和国を公共の敵に追い込みたくて仕方がない勢力が表舞台に顔出してきて、なかなかいい塩梅に生臭くもなってきた。
どう考えても孝雄ボイスの大臣が濡れ衣被せて流刑にして偏見助長して一触即発の状況まで追い込んでるっぽい。
同時にフレッドが上手く泳げた世間の波をパーティーの仲間たちが乗り切れなかったのは事実で、彼らが魔王を倒せる人類の規格外じゃなければ、ありふれた青春の終わりと再出発ですんでた物語が、”勇者御一行”だからこそ国家レベルの謀略に絡め取られた印象だった。
ここら辺をドカンと爆破して、社会の底辺這いずり回っていた元勇者が顔を上げるまでのお話でアニメは収まりそうかなぁ……。
いきなり当事者間で発火されても間が持たないので、コミックリリーフ兼ねてゼニアがまず顔を突っ込んだ感じもある。
その秘書官は……まー極めておバカだった。
潜入工作はとことん物理のゴリ押しだわ、フレッドの誘導尋問にはペラペラ引っかかるわ、裏のないノンキさが人間サイドのネトネト感に比べて、むしろ救いですらある。
全力でファンタジーしてた時代からたった10年で、卑近なまでに近代化した世界で人々が魔族をどう記憶しているのか、気になるところではあるんだが、現状人類の敵を張るほどには実力も知名度もない感じ。
フレッドがヘラヘラハンサム顔をぶら下げつつ、抹殺も辞さない強硬姿勢を保っているのは、10年前のガチンコ殺し合いの記憶が消えてはいないから……かな?
現状作中にいる魔族が魔王様とゼニアだけなんで、善良な種族にも思えんだけど、そうなると10年前に皆殺し戦争してた理由が解んなくもなるので、こっちはこっちで色々ネバついたモンがあるんだろう。
それはそれとして、自作自演のテロルで睨み合いを殺し合いに変えなきゃいけない理由が大臣(もしかしたらその背後にある国家)にはあるっぽくて、ここらへんの種明かしは楽しみだ。
10年の年月を経て、秩序に迎合できた側も排除された側も旧友を強く思っているのに、運命の流れは超ろくでもない方向へと転がりつつある。
僕はこのお話、単純明快な魔王殺しの青春が終わってしまった後、ワクワクもしないし真っ直ぐでもない現実に擦れねじ曲がってしまった元勇者たちが、かつての自分と自分たちを取り戻すまでの物語なのかなと、半分まで見て思っている。
すれ違ってしまった生き方と思い、それぞれの立場と組織が追い詰められたのっぴきならない状況に、膝を屈して賢く生きるのか、思うままに生きるバカに戻れるのか。
そこら辺を問うのに、王国と共和国、フレッドとレオの(当事者は望んでない)対立構造は、必要かつ重要な発火台なのだろう。
……まぁ、物理的にボーボー燃えたがな魔導庁……。
巨大な政治機構の中で省庁トップにまで上り詰め、怜悧で悪辣な鎧着込まなきゃ足元を掬われる生き方してきたフレッドが、悪態の奥に隠している気持ちが見える回でもあった。
かたや自分を慕う武闘派の部下たち、かたや一大官庁のメンツと部下。
レオとフレッドが10年間で人数背負う立場になってて、マックスだけがワンルームしか居場所がない個人になっている構図は、逆転すれば余計な荷物がない分自在に突っ走れる、個人の強みを照らしてもいるだろう。
マックスは勇者ぶっ殺した後見えてきた現実に、すっかり捻じくれて青春の後処理出来ていない感じだが、親友二人がのっぴきならない所に追い込まれていく流れに身を投じることで、そこに始末をつけてく話になってくのかな?
ガサツに見えて湿度高い感情が濃いマックスを、魔王様のLOVEがどんだけ支え後押ししてくれるかは、今後の楽しみだ。
こんなにキャラが立った痛快ラブコメとして、今後が楽しみになるとは見始めた時思っていなかったので、最近の展開には意外な嬉しさがあるな。
つうわけで元勇者パーティの拗れた関係に、外野から爆弾投げ込まれるエピソードでした。
諜報任務を期待されて飛び込んだゼニアが、蓋を開けてみたらな~んも魔導庁の内実分からんまんまテロに巻き込まれてるの、このアニメらしくていい。
ポンコツながら善良でタフなので、自分から厄介ごとの真ん中に突っ込んでいってひどい目にあっても、楽しく笑える塩梅なのはありがたいね。
張り巡らされた謀略の絵図も輪郭が見えてきて、次回も楽しみです!