イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第7話『クラウディアの勇気』感想

 子どもらの夢を詰め込んだ秘密のアトリエは、見事完成と相成った。
 そこに相応しい仲間となるべく、クラウディアの小さな戦いが始まる……ッ! という、ライザアニメ第7話である。
 あんだけ弓に特訓シーン沢山描写して、今回は弓使うバトルをお預けにする作りに揺るがぬ気合を感じるが、この夏休み冒険映画テイストで果たして、世間的には大丈夫なのか。
 気にはなるが、まー俺が今楽しんでるからいいべッ! くらいの気持ちで、リラ師匠交えた女子勢の瑞々しいキャッキャウフフとか、イマジネーションを形にする錬金術の深奥に踏み込んできたライザの成長とか、父親とクラウディアの向き合い方とか、色々面白かった。
 娘を愛すればこそ縛り付ける父との距離感に、クラウディアが悩んでいたのは前回アトリエに叫んだ夢が『パパの前でフルート吹く!』だった時点で感じられたが、ここの関係変化を二話かけてどっしりやるの、やっぱ18歳のお話じゃねぇ感じはある。
 しかし僕個人の好みとしては、体だけ育ったガキンチョたちが派手さのない、普遍的で堅実な自己確立の冒険に勤しんでいる様子が大変良いので、このペースと調子で進めて行ってほしい。
 話数的にはそろそろ島の地下に封じられた邪悪機械とか、古代文明の恐るべき秘密とかチラ見せしてきてもおかしくないと思うけど、ちびっこ冒険者への地道な教育が延々続いて、バトルだのダンジョンハックだのあんま起きないからな……。
 ヴィジュアルやジャンルから想起される展開からは正直ズレてるとは思うけど、俺はこのしっかり目の噛みごたえ、そこに滲む滋味豊かなジュブナイルは好きだな。

 

 つーわけで、クラウディアがライザ本当の仲間になるべく、小さな勇気を振り絞って弓の修行したり、ドレスを着たり、親父に反発する回だった。
 もうちょい湿り気ある複雑な感情を投げつけてくるかと思ったが、作品全体に漂う頑是ない空気そのまんまに、大変無邪気でピュアな距離感がエピソードを満たしていた。
 ライザと二人、楽しい時間を共に過ごす姿にはとても爽やかな味があって、見知らぬ島で人生左右する出会いに飛び込んでしまった時特有の、マグマのような熱量がそこに混ざる。
 放任主義のようでいて、足を止めて的中する段階から実践的な機動射撃へと過負荷を上げて、お嬢様の手習いではなくパーティメンバーに必要な強みとして、弓術を鍛えるリラ先生の教師っぷりが良い。
 まぁ第二、第三の試練がまだ待っているので、鍛えた弓の活かしどころは次回以降なのだろう。
 ここら辺、積んだ描写をどうもぎ取るか、全然焦んない作りだよなー。
 のんびりしてるとも言えるし、どっしり構えてるとも取れる。

 僕はこのお話が課す試練が、分かりやすく派手”ではない”ところが好きだ。
 今回もドレスの修繕をしたり水浸しの部屋を直したり、モンスターを倒し何かを壊すのではなく、作り上げて直すこと、その過程で何かを学ぶことに重きを置いて話が展開した。
 『体験に裏打ちされた豊かなイマジネーションが、無限の未来を切り開く助けになる』という本作の錬金術は、機能としてはプリキュアとかの不思議アイテムとほぼおんなじで、ライザのメンタリティもだいたい似通っているように感じる。
 優れた教師に導かれて、島でくすぶって『ここではないどこかに待つ、誰かが用意した何か』を求めるだけでは終わらない自分、実際に何かを生み出せる自分を、地道に引き寄せるための鍵。
 そういうモノとして、ライザの錬金術は描かれているように思う。

 そんな足取りを逆位相から照らすいい仕事を、何かとあたりが強いボオスくんがしっかり果たしてくれた。
 彼なり地面に足付けて、島にいる今を大事にしながら何事か成し遂げようとしている彼にとって、ライザたちが現実から逃げた空想主義者に思えるのは、無理からぬ視点だと思う。
 『オメーらは物珍しい”外側”に、便利で気持ちいいだけのユートピアを夢見てるだけ』っていうツッコミは、的確だからこそライザがちゃんと応じて、自分たちなりの成長を示さなきゃいけない肝所なのだ。
 クラウディアのパーティー参加許可を求めて挑んでいる、父親からの試練とはちょっと別の所で、物語の真価をもうちょい深く問う嫌味がぶん投げられたのは、結構大事なことだと思った。

 師匠たちの導き方が良いので、『ここではないどこか』を求めて始まった一夏の冒険が、子どもから大人になっていく真っ最中のライザたちにとても地道で、人生観まるごと変えてしまうようなインパクトを持っていることは、なんとはなしに感じ取れる。
 ここら辺、危険で派手な戦いや探検から距離を取って、モノの見方や発想力、状況ごとの判断力を重視しながら子供らの面倒見ている描写が、地道に積み重なっているのが効いてる印象だ。
 クラウディアが家の軛を振りほどいて、あるいは華やか(っても、田舎島に相応しいコンパクトで品のいいイベントなんだけど)なドレス選びの中で、自分の足で未来に進んでいく自分を掴む流れにも、そういう善い地道さがあった気がする。
 シコシコ弓の腕を磨き、友達と一緒に過ごす楽しい時間、浮かび上がる小さな試練に背中を押されて、昨日までとはちょっと違う自分になっていく。
 このアニメが子供らのそういう歩みを、丁寧に拾い上げているのはやっぱり好きだ。
 フルート一つ吹くにも気後れしてたお嬢様が、実はお転婆な本性を前面に出して欲しい物を掴みに行く根本に、ライザへの友愛が熱く燃えてる感じも良い。
 ムチムチ太ももの油っぽさ、いかにも和製ファンタジーめいた第一印象を飲み込む形で、非常に堅実かつ丁寧な子ども時代とその変化が積み上がっているのは、人によっては『思ってたんと違ーう!』となるんだろうけど、僕にとってこのミスマッチは凄く好ましい、意外な不意打ちである。
 ぶっちゃけ、もうちょい派手で粗雑に進んでいくのかなと、ナメてかかってたからなぁ……。

 

 という感じの、四人目のパーティメンバーが実力を保護者に認めさせるための、青春テスト前編でした。
 ここで選ぶジョブがおしとやかな支援系ではなく、バリバリ物理火力な射手なの、元気よくて好きだな。
 親父さんの頑なさが、娘大事ゆえだってのもしっかり伝わる運びなので、どっしりした展開を気持ちよく飲めているのもありがたい。
 新米錬金術師とその仲間たちが、ここまでの物語で見つけたのはなにか。
 それを示すことで未来の扉を明けていく次回、何を見せてくれるのか楽しみです。