イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

星屑テレパス:第2話『夕焼ロケット』感想

 灰色の人間惑星逃げ出して、陽気な宇宙人と旅に出よう!
 人見知りの青春が出会いによって色づき、ロケットによって飛び立っていく様子をきららテイストで追いかけるアニメ、三人目の女(ひと)が顔見世する第2話である。
 海果とユウの出会いにディープに切り込んでいった第1話から、どう転がしていくか楽しみだったのだが、地球人にも寄り添ってくれる人がいて、見知らぬ火花を胸に届けてくれると解る展開で良かった。
 華やかに飾られたペットボトルという具体的な成果も象徴的で、トンチキ人間どもが出会って動き出したこの話は、出会いによって何かが変わっていくという、凄く普遍的な青春の物語になっていきそうだ。
 片や重篤な限界コミュニケーションハンデ、片やフワフワ浮ついて足場が整わないアーパーと、色々問題ありな主役たちに加わったのは、包容力豊かな夢見がち少女。
 赤毛のアンがきらら時空に迷い込んできたみてぇな語彙選択してくる遥乃ちゃんが加わって、宇宙を目指す少女たちの今後がどうなっていくのか、なかなか楽しみになる話数でした。

 

 

 

 

 

画像は”星屑テレパス”第2話より引用

 二話になっても表現の手数と横幅が分厚いのは相変わらずで、身体性を感じさせるコケティッシュな絵柄、可愛らしいSD、シリアスな空気を切り取る冷えた色彩、青春ど真ん中な青とオレンジと、色んな絵柄がテンポよく切り替わっていく。
 基本的には内気少女とグイグイ宇宙人が、それぞれの個性を元気良く混ぜ合わせて勢いを生むほんわかコメディなんだけども、時折関節にハイライト入った肉感とか、生きることの重たい難しさとか、それを打ち破る眩い一瞬とかが、鮮烈に混ざり込む。
 この意外な味わいがノイズにならず、作品が持つ豊かさとして機能しているのは強いなぁ……と、毎回感心しながら見ている。
 お気楽なキャッキャウフフを求めつつ、どっかで固めの芯が残ってくれたほうが食べやすい難儀な嗜好をしているので、(一般的に思われている)きらら色一色で塗りつぶすのではなく、いい意味で横目を使って振り幅出してくれているのは助かるのだ。

 このお話は、出会いと変化を大事にしていると二話で感じた。
 海果のコミュニケーション障害は結構深刻で、気さくに語りかけてくれる遥乃にちゃんと向き合いたいと思いつつ、自分ひとりでは言葉が出てこない。
 しかし矛先がユウに向くと、支え支えながら言葉を絞り出し、なんとか友達をかばおうと苦手な対話に挑む。
 そうやって自分を新しい場所に押し出してくれるものと海果は前回出会ったのであり、望んでいた変化は出会いの中にしかないという、結構シビアな視線がパステルカラーの理想郷に食い込んでいる感じを受ける。
 灰色の地球で一人孤独に、語らずとも自分らしく生きられる場所を求めていた海果は、おでこをつければ全部理解してくれる超陽キャに出会い、ロケットを飛ばすことになった。
 見つけた夢に向かって資料を積み上げ、シコシコ努力できるのは海果の強みであり、記憶も落ち着きもないユウには持ち得ない資質だ。
 縛り付けられて動けないほど、物事をよく考えて掘り下げる海果の資質は、ユウの軽妙な輝きが彼女にとって運命的救済だったように、ユウにとっても何かを開いていく鍵になる……かもしれない。
 少なくともその気配が、夕焼けの海風といっしょに爽やかに吹き付ける瞬間を、オレンジと青が交わる美しい風景の中感じられるのは、やっぱり良いアニメだと思う。

 陰と陽、両極端な変人二人に交じるには遥乃のおっとりした包容力はいい触媒で、”三人目”をいい位置に付けたな、と思った。
 変人二人を社会に結びつけるだけでなく、遥乃自身も芝居がかったセリフが狙わず飛び出す結構な変人で、アクの強さは二人に負けてないのが良かった。
 奇人どもがそれでも自分らしく青春を謳歌できる、トンチキ部活モノとして期待している部分もあるので、三人集まって(OPと次回予告見るだに、そこにさらに加わって)何が起きるのか、化学反応をワクワク待ってもいる。
 ユウを宇宙の彼方までぶっ飛ばせる、物語を終わらせるロケットはまだまだ遠いわけだが、それを追いかけて学生に出来る何かをジワジワ積み上げ、ロケット工学をもう一つの柱に話が転がっていくと、なかなか好みの味付けである。

 

 

 

 

画像は”星屑テレパス”第2話より引用

 なのでその一歩目となる、海辺で飛ばしたペットボトルロケットがとても美しく夕映えしていたのは、大変良かった。
 世界の灰色の部分しか受信できなかった海里にとって、おでこパシーで何でもかんでも解ってくれるユウとの出会いは、世界に色を付けてくれる奇跡だ。
 しかし宇宙人の固有異能であるテレパスがなかったとしても、人は出会い言葉を通じて、心を動かされる。
 世界に輝く何かを見つけて、それを星の海に届けてみたい。
 夢見がちな遥乃の言葉は、海果の心のなかにある暗黒で痛みとして最初認識されるわけだが、勢いよく飛んでいく三人のロケットを目の当たりにして、それが遠い惑星の他人事ではないのだと、海里は微笑む。
 彼女が宇宙人に憧れているのは、他人に馴染めず自分が宇宙人になるしかないこの地上での生きづらさ故だが、そんな風に”ここではない何処か”に逃げなくても、手の届く場所に海里が生きていける星は、確かにある。
 三人の小さな宇宙サークルを、これからそういう場所にしていくのだ。

 前半は元気に弾んでいた可愛いSDやきゃるんとしたSEが後半鳴りを潜めて、結構シリアスな海里の生きづらさと、それをぶっ飛ばしていくロケットの勢い、眩いものを見つけた輝きが、しっかりした手応えで描かれていく。
 多彩な表現をどういうバランスで使いこなして、どういう印象を見ている側に与えるのか。
 ただ色んな描き方を使って制御されていないカオスを持ち込むのではなく、物語的秩序に従って表現を選び取り、使いこなして生まれるスムーズな傾斜が、心地よい視聴体験を生んでもいた。
 軽く入って重たく終わる、メリハリの効いた表現力が、効いてることを感じさせない、ライトな統一感で作品全体をくるみつつ、カメラに水滴が飛び跳ねる臨場感でロケットを飛ばして、何かが前に進んだ手応えを与えてくれる。

 ちっぽけなペットボトルロケットでは、宇宙に行けない。
 そんなこともわからないユウの欠落が微かに匂いつつ、友達と別れずにすんだ嬉しさに微笑む表情が、とても良かった。
 空の彼方にまで届くにはあまりに小さくて、日常を変えていくには十分すぎる、眩い彼女たちの100m。
 それが生き生きと飛び跳ねる様子が、ロケット発射と溢れる笑顔にはしっかりと切り取られていました。
 こういうものを積み重ねて、おでこパシーで何もかも解ってくれる特別な相手と、それがなくても影響を与えてくれる友達と触れ合いながら、海果の灰色宇宙は色づいていく。
 色づいていって欲しいなと、思える第2話ですごく良かったです。

 

 というわけで、新しい仲間を手に入れ作品世界が少し広がる、とても素晴らしいエピソードでした。
 おでこパシーという特別な異能だけ、ユウとの狭い関係性だけに頼って話が転がっていくと、窮屈で息苦しくなるかな……と思っていたので、遥乃との出会いが海果に確かな変化を与え、笑顔を生み出していたのは良かった。
 次回はロケットの物語には欠かせないメカニックと出会うようですが、どんな色彩が宇宙サークルに加わっていくのか。
 とても楽しみです。