イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第4話『アル美、涙の理由…前代未聞の「巨獣生け捕り作戦」開始!』感想

 予算、規約、相次ぐアクシデント……。
 波止工業に楽な仕事はないッ! ブルバスター真夜中の出撃、戦士よ今宵涙を拭え!! な、世知辛い系ヒーローお仕事アニメ第4話である。
 島に重たいもんを残して働いてるアル美ちゃんに迫る個別回としても、凸凹色々ある波止工業が一つにまとまったお仕事サンプルとしても、大変良い回だった。
 浮かれたり凹んだり、色々忙しかった主人公が仲間のため為すべきことのため、一本筋の通った行動を果たすカタルシスも強く、前半戦の〆として素晴らしかったと思う。
 アル美ちゃんは寡黙でツンツンした態度の中、とても大事なものを噛み殺して頑張ってるのだと理解る書かれ方をしてきたので、愛犬の成れの果てを前に溢れた涙は、見ているものに熱く届いた。
 『変わり果ててしまった愛犬』という強いカードをいいタイミングで切って、ブルバスターが向き合っているのが一体何なのか、その本質を熱量高く見せれたのは、作品の芯を立てる意味でも良かったと思う。
 このお話、中小企業の新入社員ジュブナイルであり巨大ロボットヒーローモノでもあるのだが、なにより災害復興の物語として僕は見ている。
 なので被災者でありヒーローでもある、当事者性の高いアル美ちゃんを真ん中に据えて、故郷が奪われるということ、変わり果ててなおそこに思い出があるというのがどういう事なのか、提示できたのは大きく感じる。
 銭金と政治とルールにがんじがらめ、なんとも生きにくい浮世になお、熱く燃えている志。
 そういうモンを、重機ロボで追いかけ直していく話なのだ。

 

 つーわけでアル美ちゃんの規約違反をギャーギャー片岡さんがわめきたてて、今回のお話はスタート。
 片岡さん、いかにもお話の火種を持ち込むべく造形されたヤダ人間に一見すると思えるのだけど、よくよく向き合ってみると言ってることに一理あり、その奥に彼なりの考えがあり、しかしそれを上手く他人に届ける能力に欠けている、どこにでもいる経理のオッサンなのだと解ってくる。
 人情のないゼニゲバ亡者に思える片岡さんにも、片岡さんなりの考えや思いがあって予算やルールにしがみついておるわけで、ここら辺の情感を(今回、アル美ちゃんに上手くやれたように)個別回で切り出せると、コクが出てきていいと思う。
 細かく細かく世知辛い板挟みを描き続けることで、作品世界のリアリティは独自の手触りを得てきていて、それがキャラにも滲んで(あるいはキャラ造形がリアリティの足場になって)『掘り下げたら面白そう』ってネタがこのアニメ多い。
 それぞれの事情と人格を抱えて、時折衝突しつつも一つのミッションに向かって力を合わせる、会社/チームとしての面白さも持っているアニメなので、そこら辺に踏み込んでいけるとまた楽しいと思う。

 この序盤では、そういう深掘りカメラは主に沖野くんとアル美ちゃんに向いていて、前回の武藤さんの叱咤激励を受けて顔を上げた沖野くんは、同僚突然の来訪に心臓バクバク言わせるのであった。
 こういうところでも沖野くんの”若さ”が描かれると、それが変化していく面白さも際立ってくるので、ピュアな感じが濃いのはいいことだと思う。
 科捜研もビックリな鮮明化技術で巨獣の正体に近づき、生け捕り作戦開始となるわけだが、頑なだったアル美ちゃんが沖野くんに事情を打ち明け、協力を頼むまでの四話かかったのは、結構いいペースだなと思う。
 世間知らずの人情知らず、ヒロイズムに酔っ払って他人の人生土足で踏むクソガキに、早々簡単に心開かれちゃいかにも嘘っぽいし、しかし沖野くんなり苦労もしてる描写も積んで、ようやく被災者と都会っ子が歩調を合わせる所まで来た。
 噛み合わない世知辛さを濃厚に積み上げてきたお話が、結局古臭い義理人情エンジンで動いているのだと確認する意味でも、そんな馴染み深い熱量に結構沖野くん親和性が高いのだと見せる意味でも、アル美ちゃんの個人的なミッションに彼が協力するのは大事だ。

 箱罠制作を巡るアレソレも、ベタ足ながらジンワリ染みるいい話で、大変良かった。
 青年団と社長の関係もそうだけど、『結局”そこ”でしょ!』と思える人と人の繋がりが事態を好転させていく……その予感がちゃんとあるのは、良いなぁと思う。
 巨獣災害というフィクションに生っぽさを与えるべく、地元と本社、人情と利益の板挟みになってる中小企業の世知辛さを、作品の地盤に据えたこのお話。
 どうにもならない息苦しさこそがリアルなのだと、ヒネたニヒリズムで終わるのではなく、それを真正面に据えた上で人間が人間であるから生まれる力で押し流し、未来への道を拓いていく。
 『結局そういう、古臭いヒロイズムの話なんだよ』と、今回の話運びは告げてくれた感じがあって、大変良かった。

 

 かくして苦しい台所事情をどうにかして、罠を据えるだけの簡単なミッションが始まる。
 社長が後方から指揮、武藤さんが現場でのバックアップ、アル美ちゃんがブルバスター操縦を担当する波止の”仕事”……発生するアクシデントとその対処が細かく描かれたことで、業務の解像度が上がったのが凄く良かった。
 一中小企業が担当するにはハードな業務だと思うけど、世の中こういう目立たぬスペシャリストたちが回している部分も多いだろうし、地道な仕事描写が積み上がって生まれるリアリティが、名もなきヒーローの横顔を鮮明に削り出していく。
 厄介な配信業が現場に乗り込んでくるのも、いきなり巨獣が襲いかかってくるのも、波止の”仕事”のうち。
 武藤さんが救命対応に相当慣れてたのが、『命がけの職場なんだな……』って手応えがあって良かった。
 ……ブルローダー、コクピットむき出しじゃなくて装甲付けないやっぱ!?

 巨獣とのど迫力肉弾バトルは血湧き肉躍るが、それでぶっ飛ぶ予算と傷つく人命を目の当たりにすると、独自の後ろめたさが興奮に交じる。
 『怪獣とロボットのプロレスの裏に、人生と業務があるんだなぁ……』と、別角度から見慣れたはずの風景を思い返せる味付けは、やっぱりこのアニメ独特の味だと思う。
 水かきの生えた厄介な”敵”も、シロと同じく島の生物が異形化したものだと思うとなかなか複雑な顔してて、しかし排除しなきゃぶっ飛ばされる危うさはアクションにしっかり宿っていて、手に汗握る緊迫感もあった。
 巨大重機が巨獣とぶつかる鉄錆の実在感がしっかり出ているのは、ロボアニメとしてのこのお話の強みであるし、エンタメとして波止の”仕事”として、力を入れて描かなきゃいけない所でもあろう。
 そこしっかり出来ていたのは、大変良かった。

 武藤さんがもらい事故で動けない中、謹慎中の沖野くんが遂に起つッ!
 熱いシチュエーションに水ぶっかけるゼニゲバ野郎が、禿頭に光らせた微かな人情。
 さんざん憎いあんちきしょうとして描いていた分、15分ズレた時計は良く刺さる。
 片岡さんなりの思いを若造に気づかせないまま送り出し、土壇場でブルローダーが間に合って巨獣鎮圧完了、罠にかかったかつての愛犬に、二階堂アル美号泣である。
 そらー泣くよ……。
 変わり果ててしまってなおかつての面影を残すシロは、巨獣災害に見舞われた島それ自体の象徴のようにも感じ、怪物から家族に戻してやることもできない、諦めて殺すことも出来ない、アル美ちゃんと波止工業の難しい立場が、そこには立ち現れていた。
 眼の前で溢れる人生の複雑さを目の当たりにして、沖野くんが今までの軽薄さをひっこめ黙って見守るのも、良い変化の書き方だったと思う。

 

 かくして各々力を合わせ心を重ね、一つの業務を成し遂げた波止工業。
 ”貴重なサンプル”を捕獲して状況に変化が生まれるのか、世知辛い板挟みは続くのか! ……という所で、次回に続く。
 大変良かったです。
 俺はこのお話が災害復興モノだと気づいて、もう一歩体重が乗っかった感じがあるので、被災者代表であるアル美ちゃんがどう描かれるのか、どう泣くのかは結構気にしてました。
 シロを捕獲してしまった、保護できた瞬間に溢れ出す涙が熱くも人間臭く、彼女が背負ってきた荷物に相応しい筆で書かれたの、とても良かったです。
 沖野くんも人間に大事なモンを目の当たりにして、こっからまた変わっていくと思いますが、そこも含めてこの超リアル系ヒーローストーリー、いったいどうなっていくのか。
 次回もとっても楽しみです。