伝説のその先を託され、未だ力及ばず。
未熟な自分に主人公が歯噛みする時、正統スポ根がやるべきエピソード……先輩方をお呼びしての、ド根性特訓回!
ウマ娘アニメ三期、ブルボン&ライス登場の第4話である。
ネイチャお姉さんに泣きついて意外なヒントを貰ったり、二期を彩ったレジェンドウマ娘がコーチ&ご飯係として特訓担当したり、既に終わった物語から資産を有効活用しつつ、超正統派主人公キタサンブラックに、歩くべき道を歩かせるエピソードだった。
思いもよらぬネイチャへの脚光といい、二期キャラが表舞台に立つ度『俺……あのアニメのこと相当好きだったんだな……』と、胸の中にホッコリ湧き上がる感慨に驚かされたりする。
久々に出会ったライスちゃんが大変可愛くて、自信満々に炊事担当を買って出てる割に主食しか作れないところとか、ブルボンさんが特訓頼まれた後ライスちゃんに協力お願いしにいったのかな……とか、見終わった後もライスのことを考える回となった。
『離れている間に愛しい人を思い起こせるように、装身具を手渡す』という、超正統派お姫様仕草をぶっ込んできたダイヤちゃんといい、お姫様力が強いコが好きなのかもしれない……。
寝言はさておき、ギリギリの勝負に勝ちきれない自分を鍛え上げるべく、ド根性重視のハードトレーニングに挑むキタちゃん。
一期でガッツリ”ウマ娘とトレーナー”やった反動か、沖野トレーナーがあんま前面に出ないのが寂しくもあったのだが、今回はトレーナーらしいところがたくさん見れて、彼が好きな自分としては嬉しかった。
結果としてトレーナー役はブルボンに譲るわけだが、やる・やらないの判断、誰が担当するかの判断を彼がちゃんとしている姿を描かれると、キタちゃんのウマ娘人生にちゃんと隣り合ってる感じが強くなる。
ハチャメチャなトレーニングも成長曲線が前のめりなときにはモチベーションを保てるけど、中盤の伸び悩みに心を削られ、折れてしまえば壁を超えることは叶わない。
ウマ娘アニメらしいど派手な絵面を振り回しつつも、結構鍛錬の勘所をしっかり踏まえた修行回になっていたのもなかなか良かったと思う。
なかなか伸びないタメの描写があればこそ、ダイヤちゃん勝負のG1、破れてなお毅然と立つ志に元気を貰って、仲間でライバルがいればこそ新しい強さを手に入れると描けていたのは、横幅の広い描写だった。
三期のダイヤちゃんは”サトノ”の冠、そして呪いをキャラの中心に据えて描かれ、悲願のG1獲得に向けて必死に背筋を伸ばす、崖っぷちお嬢様な印象が強い。
ジンクスの打破、夢の実現にむけて奇跡を当然と受け止め……あるいはそう思える自分を必死に作って立ち続ける姿は、ただ華やかなだけではないウマ娘の本質にググっと迫っており、大変いい質感だ。
デビューから一気に頭角を現す才気、元気っ子なキタちゃんと引き立てあう華やぎ、そして戦士としての不屈の闘志と、いろんな魅力が一つにまとまって”サトノダイヤモンド”になっているのは、見ていて楽しい。
『私の名前はサトノダイヤモンド』と、堂々告げて未来を見据えるその姿には、ルームメイトであり親友でありライバルでもある少女が、壁を超えるキッカケとなるだけの説得力が、しっかりあった。
日常パートでは尖って熱い部分を出さない……というか世界で一番お姫様なのに、緑の勝負服をまとってターフに進み出ると、走ってる最中も終わった後も颯爽と力強いの、僕の中で凄く”ウマ娘”って感じがするんだよなぁ……。
好きだ、サトノダイヤモンド。
今回は心の交流に足場が置かれ、特訓の成果である天皇賞の勝利はダイジェストに。
まー出てくるキャラも描くべきドラマも多い栄光の人生、飛ばすところ飛ばさないと全然まとまんないよね!
前回ゴルシから手渡されたルービックキューブが、やや急ぎ足の展開を情感豊かにまとめてもいて、2つ目のG1を勝ち取り二面完成させた様子が最後に映ることで、やり遂げた満足感を特訓回に与えていた。
ダイヤちゃんのブローチもそうだけど、小道具を活用することで要素を圧縮して、伝えるべきことをドラマの枠に収めきって進められている手際は、大変良いと思う。
史実を追いかけるだけならブルボン&ライスの再登場はやんなくてもいいけど、これは三期+外伝積み上げてきた『ウマ娘のアニメ』の最新話であり、その文脈や蓄積に向き合った描写も必要になる。
ここら辺のバランス取りはとても大変だと思うが、今後キタちゃんがどういう勝負をどんな強みで勝ち切っていくのか、上手いこと予感を作る根性特訓の描き方と合わせて、現状見事に舵取りしている印象だ。
全霊を振り絞って挑み、跳ね返されても諦めずに、壁の先へと挑む心の強さ。
ネイチャに相談したときは体の頑丈さが武器と思われていたが、ハードトレーニングを通じて結果を出してきたブルボンに導かれる形で、土壇場を制する心の強さへと昇華されていった。
今勝つために、これから勝ち続けるために、キタちゃんに必要なものはなにか。
ファンに向かってチャーミングなウインクを多数盛り込みつつ、こういうお話の背骨をしっかり立てて、美少女スポ根のど真ん中を堂々駆け抜ける話作りをしているのは、大変いい。
ここの手応えがしっかりしているからこそ、もしかしたらくじけてしまいそうなタイミングで不屈の勇姿を見せ、キタちゃんが特訓をやり切る決定打となった、ダイヤちゃんの存在感も高まるしね。
群像の書き方、活かし方も上手い印象だ。
つー感じで、大きなモノを託されたキタちゃんがさらなる躍進を遂げ、伝説となる足場を踏み固める回でした。
いわゆる『カウントを整える回』なんだけども、三階から落ちたキタちゃんの落下痕とか、細かいクスグリと可愛いキャラ描写で潤いを作って、挫けそうになる辛さを親友の立ち姿に励まされ、起伏のある展開でしっかり楽しませてくれました。
こういう回がこういう仕上がりだと、お話全体をどう作っていくか、見据えながら各話数を仕上げてくれてる感じがあって、作品への信頼感も太くなるよね。
次なるは最初の挫折を味あわせた荒々しき怪物との、リベンジマッチとなる宝塚記念。
苦しい特訓で学び取った勝負根性は、キタサンブラックに勝利を連れてくるのか。
はたまた遥かなる戦いの物語に、新たな苦悩が刻まれていくのか。
次回も楽しみです!