イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第14話『頭脳戦のディールゲーム』感想

 勇気ある間諜たちの犠牲を乗り越え、決戦に向けて準備を整える千空に迫る、暴虐の黒い影。
 メンタリストの舌鋒が唸る、舌先三寸の前哨戦……ドクストアニメ三期、第14話である。
 一話ほぼまるまるゲンちゃんの見せ場って感じで、彼の交渉術、心理掌握術の凄さをたっぷり感じられる回だった。
 暴力担当のメンバーが復活してないこのタイミング、宝島の最大暴力たるモズが本拠地に乗り込んでくるという危機的状況に、直接対応することは不可能。
 ならば『皆殺し』というカードを切らせないまま、自分たちに都合のいい条件で絡め取って操るのが唯一の策という、謀と暴が交錯する”嘘喰い”テイストなお話だった。
 野心と智謀に優れ、盤面全部ひっくり返せるモズに上手いこと持ちつ持たれつのルールを飲み込ませて、少なくとも決戦までは共犯者の立場に閉じ込めておくことで、科学王国勝利の目も残る。
 ペラペラ野郎の超ファインプレーを、たっぷり堪能できて嬉しい限りだ。

 

 つーわけでゲンちゃんアゲの前段階として、賢いこと言って何が凄いのか言語化出来る連中が、今後の戦力確保も兼ねて復活していく。
 結構万全に駒が揃ってきて、科学王国優位で進みそうな雰囲気一瞬出した所で、アマリリスを追ってモズ襲来となる緊迫感も、龍水が言ってた『意外な視点からの突破口』がすぐさまクロムの一言で形になるのも、大変いい。
 眼の前に現れた脅威に付け入る隙があるのか、即座に敵対行動に移った方がいいのか。
 原始的で究極的な行動判断を迫られる状況がガツンとぶつかってくると、いい具合に油断が抜けて物語に真剣になれるかんな……。

 頭首暗殺の真実を隠して生み出された、イバラの独裁政権
 メドゥーサの絶対的破壊力に支えられたこの体制下で、モズはテキトーに女の子つまみ食いしながらうまい汁吸っていたわけだが、科学王国という敵対者が顔出してきて情勢が揺れる中で、そろそろ見限りを付けたい。
 ここに暴力行使能力に劣る科学王国が付け入る隙があるわけで、利害一致の共犯関係を偽装し、『力押しで制圧する』つう正解を選ばれないように生き延びるというミッションが、急に発生する。
 唐突でプレッシャーも強い中、ゲンちゃんは持てる心理操作技術、情報分析技術をフル活用して強者の鎧の隙間を作り、利益の幻影を押し付け、交渉をまとめていく。
 毎回現代人視点でのツッコミを頑張っているゲンちゃん、生きるか死ぬかの土壇場に慣れているわけでもないんだが、震えを欠片も見せず(見せたとしても相手を誘導するための餌として使い切って)鉄火場に挑むのは、大変偉い。

 

 今回のモズとの交渉は、最低限の実力行使能力がなければ言葉による交渉、中立者への利害誘導もままならないという、シビアな現実を良く描いている。
 メドゥーサという圧倒的な暴力をイバラがほしいままにしている限り、科学王国は自分たちの果たすべき理想を追求することも、平和に生きることもままならない。
 そして現状組成しているメンバーに、暴力行使に向いているヤツもいないわけで、イバラと拮抗しうる暴力装置アウトソーシングする意味でも、モズを身内に引き込むのは大事なのだ。
 親密さを装い、あえて訂正させ、真の目的を見誤らせる。
 詐術と事実の全てを駆使して、押しに押せば一人勝ちたゲームで譲歩を引き出したゲンちゃんは、やっぱ優秀な外交官だ。
 なんもかんも口からでまかせというわけではなく、事実の一部を的確に織り交ぜ、モズが手を伸ばしたくなる演出を交えて適切に提示したのが、ネゴつえーなって感じ。

 モズとの協力体制はあくまで一時的なもので、いつでも寝首をかかれる可能性のある危ういものだが、それでも貴重な実力である。
 科学王国が保有する戦力は直接対決を危ぶむほど強力だと思い込ませるために、身分を偽った後方撹乱を決戦の前に仕込むあたり、このお話の戦いはいつでも情報戦である。
 心理と認識に縛られた人間を相手取る以上、『実際にどうであるか』より『どう見えるか』が常に問われ、ここを偽装してジャイアントキリングの準備をする能力が、千空は非常に高い。
 駒とチート技術を揃えた上で余裕勝ちするなんて、お話としては退屈極まりないわけで、いつでも科学王国の戦いは劣勢から始まるわけだが、それをひっくり返すカタルシスの源泉としても、冴えてる頭は大事よね。

 

 んで今回は、ゲンちゃんの舌先三寸が最高に冴えて、窮地を乗り越え得難い加勢を得た……という形。
 モズがシンプルな実力行使の気配を隠そうともしないからこそ、喋り以外なーんも持ってないメンタリストがそいつを丸め込み、自陣に都合のいい結末を引っ張ってくる活躍は刺さる。
 現状分析自体は他のメンバーでも出来るのだが、生身の人間を相手取った心理誘導と交渉こそがゲンちゃんの強みで、暴力含めた”政治”になるとやっぱりこの人……って感じ。
 『利に聡く機を見るに敏な彼が、身内見捨てず交渉頑張ってくれるのはやっぱり、千空に惚れ込んでるからだよなぁ……』と思える話でもあって、ゲンちゃんファンに嬉しいエピソードでした。

 最終決戦兵器ドローンも完成し、モズ強襲の危機も乗り越え、欺瞞工作も順調。
 こっから撒き起こる一波乱二波乱、戦乱の宝島に大波小波の嵐来るッ!
 遂に決戦間近、次回も大変楽しみです。